脱石油系プラスチックビーズ “モイストセルロースの開発” 熊本県産業技術センター ○研究主任 城崎 智洋 研究主幹 永岡 昭二 研究主任 堀川 真希 研究主任 龍 直哉 熊本大学 教授 伊原 博隆 准教授 高藤 誠 コーディネータ 緒方 智成 1 プラスチックマイクロビーズの問題 直径5 mm以下 プラスチック ポリマービーズ 洗顔フォーム、化粧料、歯磨き剤、ボディソープなど (CH2-CH2)n ポリエチレン (CH-CH2)n CH3 ポリプロピレン etc. 残留性有機汚染物質*を吸着 生物濃縮性 日本化粧品連合会が自主規制 オランダ、オーストリア、ベルギー、スウェーデン で禁止 カリフォルニア州では2020年以降禁止 ニューヨーク州でも禁止の見込み *Persistent organic pollutants : POPs。PCB,HCH,DDT,PFOS,PFOAなど。 2 多糖球状粒子 多糖球状粒子 20 µm セルロースマイクロビーズの 走査型電子顕微鏡写真 n セルロース、プルラン、デキストラン、 グルコマンナン、キチン、キトサンなど 3 多糖微粒子の用途 塗料 研磨材 光散乱材 多糖微粒子 クロマトグラフィー用分離材 化粧品 吸水材 4 カルボキシル化セルロース 親水性にするためにカルボキシル基を導入 O CH2OCH2CONa H OH CH2OC(CH2)2CONa H O O H O OH OH O H H H O O H H n カルボキシメチルセルロース OH n コハク酸セルロース 高い保湿性 安定な分散液や乳化液を形成 化粧料 食品 洗浄剤 5 カルボキシル化セルロースの問題点 カルボキシメチルセルロースの問題点 有毒 ClCH2COOH コハク酸セルロースの問題点 自己環化反応 R: セルロース カルボキシル基の離脱1),2) 1) S. Nagaoka, H. Tobata, Y. Takiguchi, T. Satoh, T. Sakurai, M.Takafuji, H. Ihara, J. Appl. Polym. Sci., 2005, 97,149 2) Breslow, R. Organic Reaction Mechanisms, 2nd ed.; Benjamin: New York, 1969. 6 TEMPO酸化による保湿性多糖粒子の調製 HOOC COOH NaBr, NaClO HOOC 多糖 多糖 HOOC COOH カルボキシル化多糖 2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl (TEMPO) 7 TEMPO酸化反応 COOH TEMPO NaClO NaBr n n ・6位を選択的にカルボキシル化 ・食品添加物の次亜塩素酸ナトリウムのみが消費 される環境負荷の低い反応 ・TEMPOは人体に無害、使用量は少量(触媒量) ・常温、常圧、短時間(約2時間)で反応 ・カルボキシル基が脱離しない安定な構造 ・カルボキシル基の導入量を自在に制御可能 (粒子の保湿性を制御可能) 8 カルボキシル化多糖の調製法 セルロース球状粒子 (1.0 g) TEMPO (0.0125 g) 0.4 M NaOH aq. NaBr (0.125 g) NaClO (4.72 mL, 10 mmol) 水 (100 g) pH 10 ~ 10.5 0.1 M HCl aq. HOOC 室温,2時間 pH 2 ~ 3 室温,1時間 ろ過、透析 凍結乾燥 COOH HOOC セルロース HOOC COOH 9 カルボキシル基の導入確認 νc=o 1732 cm-1 Absorbance NaClO: 30 mmol* NaClO: 20 mmol* NaClO: 10 mmol* NaClO: 5 mmol* cellulose 4000 2000 1500 650 Wavenumber (cm-1) カルボキシル化セルロースの赤外吸収スペクトル(ATR法) 10 カルボキシル基の導入量の制御 Carboxylate content (mmol g-1) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0 0 5 10 15 20 25 30 35 NaClO (mmol) 次亜塩素酸ナトリウムの添加量とカルボキシル基導入量の関係 ※カルボキシル基量は相対的な値です。 11 カルボキシル基の導入量の制御 5 µm 5 µm 5 µm NaClO: 5 mmol NaClO: 9 mmol カルボキシル基量: 1.25 mmol/g カルボキシル基量: 1.75 mmol/g NaClO: 10 mmol カルボキシル基量: 1.85 mmol/g 50 µm 25 µm NaClO: 20 mmol NaClO: 30 mmol カルボキシル基量: 2.15 mmol/g カルボキシル基量: 2.18 mmol/g カルボキシル基量と多糖微粒子の形態変化 ※カルボキシル基量は相対的な値です。 12 粒子の吸湿量 0.8 2.18 mmol g-1* 吸湿量 (g/g) 0.7 0.6 1.85 mmol g-1* 0.5 1.75 mmol g-1* 0.4 1.26 mmol g-1* 0.3 0.2 0.31 mmol g-1* 0.1 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 吸湿処理の時間 (hr) 吸湿処理時間と吸湿量(温度:40℃、湿度:90%) ※カルボキシル基量は相対的な値です。 カルボキシル基の導入量によって 保湿性を調整できる。 13 粒子の保湿性 Cellulose microbeads (COOH : 0.31 mmol g-1) -0.28 oC, 104 mJ/mg Endothermic Carboxylated cellulose (COOH : 1.26 mmol g-1) -1.9 oC, 109 mJ/mg カルボキシル基量の増加により、水の束 縛量(保湿量)が増大している Carboxylated cellulose (COOH : 1.75 mmol g-1) -2.7 oC, 100 mJ/mg Carboxylated cellulose (COOH : 1.85 mmol g-1) -3.0 oC, 118 mJ/mg -20 -10 0 10 20 Temperature (˚C) カルボキシル化セルロースの示差走査熱量計による 束縛水の調査 14 カルボキシル基量と保湿性および粒子形状 保湿性多糖粒子のカルボキシル基量と吸湿量および形状 No. カルボキシル基量 (mmol/g) NaClO添加量1) (mmol) 吸湿量 (g/g) 円形度2) Cel-0 0.31 0 0.304 0.977 Cel-1 1.26 5 0.381 0.848 Cel-2 1.75 9 0.498 0.874 Cel-3 1.85 10 0.611 0.899 Cel-4 2.15 20 0.622 0.550 Cel-5 2.18 30 0.684 0.560 1) 1 gの糖に対して添加した量 2) フロー粒子画像装置によって測定 ※カルボキシル基量は相対的な値です。 15 本発明の特徴と従来技術との比較(まとめ) 本発明 カルボキシメチル セルロース球状粒子 ジカルボン酸エステル化セル ロース球状粒子 モノクロロ酢酸を用いて糖の水 酸基にカルボキシメチル基を導 入。 ジカルボン酸を糖の水酸基にエス テル結合で導入。 ○ × ○ TEMPOは触媒量の使用でよく、無害 であり、食品添加物の次亜塩素酸ナ トリウムのみが消費。 モノクロロ酢酸が有害 ○ ○ × 糖の6位の炭素がカルボキシル基に なっており、安定。 エーテル結合でカルボキシル基 が導入されており安定。 ジカルボン酸の自己環化反応によ る脱離が起こる。 ◎ ○ △ TEMPO酸化セルロース 球状粒子 技術概要 環境負荷 安定性 生産性 従来技術 TEMPO酸化によって糖の 6位をカルボキシル化。 常温、常圧、短時間(約2時間)で製 造。酸化剤の添加量でカルボキシル 基量を調整可 ホモミキサーでかき混ぜて 製造。 化粧品に使用可能な原料のみで 製造 24時間加熱が必要。 16 本技術に関する知的財産権 •発明の名称:保湿性粒子およびその製造方法 •出願番号 :特願2016-131615 •出願人 :熊本県、熊本大学 •発明者 :城崎 智洋、永岡 昭二、堀川 真希、 龍 直哉、伊原 博隆、高藤 誠 17 実用化に向けた課題 • 現在、粒径10 µmのセルロース球状粒子につ いてカルボキシ基の導入量を制御して調製が 可能なところまで開発済み。他の粒径での調 製が今後の課題であり、実験データを取得し ていく。 • 実用化に向けて、スケールアップして調製でき るよう技術を最適化する必要もあり。 18 企業への期待 • 製品化に向けて、大スケールで化粧品や医薬 品グレードでの製造技術を持つ、企業との共 同研究を希望。 • 化粧品、医薬品、塗料などの分野への展開を 考えている企業には、本技術の導入が有効と 思われる。 19 産学連携の経歴 • 2008年 JST 地域ニーズ即応型事業(分担) • 2009-2011年 科学研究費補助金 基盤研究C(分担) • 2010年 経済産業省 中小企業等の研究開発力向上及び実用化 推進のための事業(分担) • 2011年 JST A-STEP FSテージ 探索タイプ(代表) • 2011-2013年 科学研究費補助金 基盤研究C(代表) • 2013-2014年 JST A-STEP FSテージ シーズ顕在化タイプ(代表) • 2015-2016年 JST マッチングプランナー プログラム 探索試験(代表) 20 お問い合わせ先 熊本県産業技術センター 材料・地域資源室 研究主任 城崎智洋 Phone: 096-365-5172 Fax: 096-369-1938 E-mail: [email protected] 21
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