平成28年後期講座⑨地域活性化としての観光振興と地域の変化について

平成28年後期講座⑨地域活性化としての観光振興と地域の変化について
第1講義
観光における「図と地」論 演じたくなる観光舞台創造
近年、国宝や重要文化財、絶景や記念物等の非日常世界の貴重、稀少な資源だけでなく、地域の
人々が日常暮らしている生活風景や生活文化を味わい、体験することに興味や楽しみを感じる観光
客が増えている。前者を「図」と呼び、後者を「地」と呼ぶことにすると、観光客が関心を示す「地」の
観光は快適な空間を舞台として観光客が役者を気取るような観光といえる。役者を気取りたくなる舞
台づくりが今後望まれる。
第2講義
ポスト・ツーリスト都市バンクーバーの現状
世界で最も住みやすい都市のひとつであり、世界有数の観光デスティネーションでもあるバンクー
バーでは2010年に冬季オリンピックが開催され、ウインタースポーツ都市としても世界にアピール
している。本講義では、バンクーバー市中心部のウォーターフロント遊休地に建設されたオリンピッ
ク・ビレッジの跡地利用を中心に、同市が都市と観光をどのように結びつけようとしているのか考察
する。
第3講義
英国におけるフットパスの再発見と地域活性化
英国のフットパスは、18世紀の囲い込み以前から存在し、「歩く権利」が法的に認められている公共
の自然道である。英国には4,000km以上に及ぶ大小さまざまなフットパスがある。現在、フットパスを
歩くことで地域の活性化を推進しようとする活動が注目されている。本講義では、2007年に発足した
全国組織であるWalkers are Welcome協会に焦点をあて、地域振興に取り組んでいる町を紹介する。
第4講義
地域のみんなが観光にかかわるしくみを考える
今年、わが国の世界遺産登録件数が20件になり、もはや世界遺産は珍しいものではなくなりました。
その中で、世界遺産を活用した観光振興にはどのような課題があるのでしょうか。世界遺産登録を
めざす他地域の事例を見ながら、観光振興には一部の人びとだけがかかわるのではなく、地域のさ
まざまな人びとがかかわる必要があることを学びます。そして、多様な人びとが観光振興にかかわる
ためのしくみについて考えます。
第5講義
コミュニティ主導の観光まちづくり-大阪市の事例-
近年、地域の人々が地域振興を目的にまちづくりに関わるケースが、日本全国で見られるようにな
りました。中でも「観光」をキーワードに地域でイベントを開催したり、ボランティアガイド組織を立ち
上げたり、地域住民はもとより外の地域からそれらを楽しむことを目当てに来訪者が増えています。
この講義では、大阪市の地域が主導する観光まちづくりの事例を挙げながら、地域振興について
考察します。
第6講義
世界遺産・法隆寺地域の仏教建造物をめぐる
我が国で最初に世界文化遺産となった法隆寺と法起寺をはじめ、斑鳩には数々の文化財が保存さ
れています。藤ノ木古墳から法隆寺の西院伽藍・東院伽藍を経て法起寺にいたる観光のモデルコー
スを紹介するとともに周辺の宅地開発による環境破壊を指摘します。
1
第7講義
世界遺産・古都奈良の文化財をめぐる~東大寺~
古都奈良の文化財を構成する東大寺・興福寺・春日大社などは奈良を代表する観光名所として、早
くから多くの観光客を集めてきました。とはいえ、大半は表層的な観光に終始し、寺社の歴史や魅力
を深く味わうことなく帰路につきます。東大寺旧境内の探索コースを紹介し、深い観光の楽しさを伝え
ます。
第8講義
世界遺産・古都奈良の文化財をめぐる~平城宮跡~
2010年の平城遷都1300年祭に合わせて第一次大極殿が復原された平城宮跡の保存・活用事業は、
多くの問題を抱えています。平城山丘陵の古墳群や松林苑跡から平城宮跡に下るモデルコースを紹
介しながら、それらの問題点を指摘し、遺跡保存のあり方について考えます。
第9講義
アジアにおける世界遺産観光振興の光と影
世界遺産は人類が後世へ伝えていくべき普遍的価値を持つ物件が登録される。世界遺産登録は地
域観光振興と密接に関連付けられるが、世界遺産によっては、見せ方の難しいもの、観光資源化し
難いものもある。本講義では、アジアの世界遺産観光の現場を具体的に紹介しながら,そこで生起し
ている光と影を論じたい。
第10講義 大阪市あいりん地域における国際観光振興と地域活性化
日本人の家族団らんは畳による多人数・多様性に始まります。靴を脱いで清潔感ある暮らし。障子
や襖の「聞えよがし」の文化。近年、アジアから来日する旅人はリピーターも増え、そのような和の暮
らしを体感・共感し、自国の生活に取り込もうとしています。品質の良い日本規格の住宅部材を取り
込もうとしています。中国・タイ・マレーシアとその風潮は4年後のオリンピックの後押しもあって流行
となっています。今、彼らが求めている事例を紹介してまいります。
第11講義 遺跡が地域を変える-観光資源としての遺跡の可能性遺跡は、土地(地面)に刻まれた歴史である。つまり、「地域の歴史そのもの」であると考えられる。
また、その数は多く、全国で約46万ヵ所も存在する。これらを観光資源として活かさない手はない。
観光資源としての遺跡の可能性について、具体的な事例をあげながら講義する。
第12講義 自文化の自分化による地域創造 文化の運河を掘る為に
グローバル時代において、地域の文化(自文化)が伝承されず、消滅することも生じている。地域文化
を再認識(自分化)し、これらを基盤に個性的な町を想像することが今地域では望まれる。地域全体を
博物館と考えるエコミュージアムでは地域の記憶の井戸を掘り、水脈にあたる地域の基層文化(テー
マ)にたどり着き、そこから新たな産業や文化を創造する活動が自文化の自分化を通して行なわれる。
さらに、新たに水脈を作り出す「文化の運河を掘る」ことも志向される。
2