グリーンレポートNo.568(2016年10月号) 視 点 JAグループ地域生産振興:JA全農みえ 若手担い手農家との信頼関係構築に向けた 「アグリキャンパス」 の開催 ∼8JA、23人の受講者が多岐にわたるカリキュラムで研修∼ 三重県は、温暖な気候や中京・阪神などの大消費地に隣接した立地など、恵まれた条件のもと、 地域の特色に応じたさまざまな農畜産物の産地が形成され、生産の大部分が兼業農家に支えられ てきた。しかし、高齢化による生産者の減少や水田を中心とした農地集積が進み、農業生産基盤 は、担い手経営体など地域農業をリードする担い手に集約されつつある。そのようななか、JA 全農みえでは、地域農業を支える中核的担い手の課題やニーズを知り、 「農業者の所得増大」や 「農業生産の拡大」につながる事業の展開・信頼関係の構築が重要であると考え、県内の若手担い 手農家を対象に、営農の課題を解決し、生産性・品質の向上と人材育成をめざす「アグリキャン パス」を初の試みとして実施した。 農業経営の基礎を実践的に学ぶ 「アグリキャンパス」は、全5回のカリキュラムが組 まれており、農業経営の基礎となる①農業経営のための 知識②農業・農政の最新情報③低コスト・省力化に向け た技術情報などの提案、営農課題に関する視察研修など の内容で実施した。 開催初年度は、受講対象者を「水田を中心に営農を行 っている担い手農家および担い手農家の後継者」で、 「年 齢は20∼40歳代」とし、県内JAを通じて募集したとこ ろ、12JA中8JA管内から23人の若手担い手農家が受 ▲講義の様子 講することとなった。 部門間連携で充実したカリキュラムを実施 表−1 研修カリキュラム一覧 受講者は、水田の担い手が中心であるものの、営農規 [情報提供]農業情勢・米穀情勢報告 農薬使用防除の基礎知識 第1回 [講 演]効率的な施肥を行うための施肥・土壌の基礎知識 [視察研修]広域土壌分析センター三重 主な研修内容 模や就農年数、経営形態が異なることや、JAグループ をより身近に感じてもらいたいという思いから、研修内 容の絞り込みに苦戦した。そこで、JA三重中央会およ [情報提供]農業情勢・米穀情勢報告 [講 演]農業の人事労務管理 第2回 会計・税務研修 [視察研修]パールライスセンター (精米工場) びJA全農みえの米穀課、園芸振興課、肥料農薬課、農業 機械課など、営農支援に関わる関連部署との協議を重ね [情報提供]農業情勢・米穀情勢報告 食味審査結果および土壌診断結果報告 (ICT技術を活用したスマート農 第3回[視察研修]農業機械メーカー 業について) 青果物卸売市場、物流業者 (輸入農産物の流通など) [情報提供]農業情勢・米穀情勢報告 「アピネス/アグリインフォ(総合営農情報サービ ス)」について 第4回 [実習研修] 「新Z−BFM(営農計画策定支援システム) 」を用 いた営農モデル作成 [情報提供]各関連部署からの情報提供 (水田農業に関する新技術、園芸振興策、低コス 第5回 ト・省力化肥料農薬、スマート農業など) [意見交換] ▲開講式であいさつする東副本部長 4 グリーンレポートNo.568(2016年10月号) た。 その結果、 直近の農業情勢・米穀情勢や業務用多収穫米、 個別の施肥相談・指導、受講者自身が栽培した米の食味 審査による成分・品質分析などを受講生へ提供した。 鉄コーティング直播、 地下水位制御システム 「FOEAS」 といった新技術に関わる情報提供、経営のための会計・ 「アピネス/アグリインフォ」については、研修で実際 税務・労務管理講習や営農計画策定支援システム「新Z に自身のスマートフォンやタブレットを使用して、1㎞ −BFM」を活用した営農モデルの作成実習、最新のス メッシュ気象情報、農薬情報、防除のポイント、 『グリ マート農業、青果物・輸入農産物の流通動向を学ぶ視察 ーンレポート』記事などを検索して受講生の理解を深め など、多岐にわたるカリキュラムでの研修会とした(表 たことで、研修終了後も活用する姿が多くみられた。 −1) 。 さらなる信頼関係の構築に向けて このような研修のほか、全農が提供する総合営農情報 サービス「アピネス/アグリインフォ(http://www. 研修会の最終日には、アンケートを実施するとともに、 agri.zennoh.or.jp/) 」の無料会員登録(3年間)や、広 受講者とJA全農みえの各事業部関係者で意見交換を行 域土壌分析センター三重が行う土壌診断の結果に基づく った。受講者からは、栽培技術研修やマーケティング・ 6次産業化をテーマとする研修、営農や経営に関する各 種情報提供について要望が出されたほか、 「継続して開催 してほしい」 「他地域の若手農業者と交流ができる貴重な 機会だった」との声も多くいただいた。一方で、 「多様な 講義内容に対して時間が短い」 「生産現場での実践的な 研修メニューを取り入れるべきでは」といった意見・要 望もいただいた。 ▲広域土壌分析センター三重の視察 ▲修了証書を手渡した研修会最終日 これらの意見・要望を、第2期のカリキュラムに反映 させるとともに、第1期受講修了者へ①DMやメールに よる営農技術の情報提供(病害虫防除技術情報、麦生産 ▲パールライスセンター(精米工場)の視察 技術情報、生産資材情報など)②生産や経営に関する情 報支援ツールの活用サポート③営農技術・経営支援に関 する視察研修会の開催案内などを行っていく。 ★ JA全農みえでは、地域農業を支える中核的担い手と さらなる信頼関係を構築し、経営所得の確保と営農の安 定への貢献および農業生産の拡大につながる事業展開に 向け、この取り組みを今後も継続しレベルアップさせて いきたい。 【全農三重県本部 営農対策部 営農対策課】 次号のJAグループ地域生産振興は、JA全農福島の「相馬地方で の飼料用米振興の取り組み」を紹介する。 ▲「新Z−BFM」を用いた営農モデル作成 5
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