リベリア (276KB、2014年3月)

リベリア医療情報
以下は必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の服用方
法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバイスを受けるよ
うにしてください。
最新更新履歴:2014 年 2 月更新
1.赴任前の準備
(1)予防接種
入国に必要な予防接種として、黄熱病が義務づけられている。
そのほかに A 型・B 型肝炎、破傷風、狂犬病、ポリオ・腸チフス・髄膜炎の予防接種は、必
ず赴任前に済ませておく。着任後、リベリア国内でこれらの予防接種を受けることは、ほぼ
不可能である。
リベリアの多くの医療機関では、小児の基本的なワクチンを除いては、咬まれた後に感
染予防のために接種する狂犬病ワクチンも保管していないことが多い。
(2)その他の準備
モンロビアには、レーザー治療を取り入れているような信頼できる歯科クリニックがある
が長期に休診することもあり、歯科治療は赴任前に済ませておく必要がある。また、コンタ
クトレンズ(1 日使い捨て等の短期間用が望ましい。)、コンタクトレンズ用点眼薬、眼鏡は予
備を含めて持参することが望ましい。持病の治療薬は十分持参し、念のため成分名を英語
で書いた診断書を用意すると良い。
マラリア予防のために蚊帳は必需品だが、現地では入手困難のためガーナで購入する
か日本から持参することが望ましい。
2.医療事情
内戦終焉から 10 年が経過し、治安は大きく改善しているようだが、人口 10 万人当たりの
医師の数は 2.6 人と世界で最少レベルであることや、CT は中国政府の協力で建設、中国と
エジプトが支援している地方の病院に 1 台しかなく、MRI は 1 台も無いこと等から、この国で
受けられる医療には限度があり、精密な検査を要するような病気には対応できないといえ
る。そのため、専門医の診断を仰がなければならない病気や、精密な検査を必要とする病
気の場合は、医療事情の良い他の国で受診する事も考えなければならない。
(1)医療機関
首都モンロビアには、公立病院や私立病院、個人クリニックがある。公立病院の医療費
は基本無料だが、患者が多く設備の充実度や清潔度の面から受診には適さない。私立の
病院は比較的衛生的で、日常の一般的な傷病のための受診には利用でき、臨床検査も受
けることができる。歯科は、唯一モンロビアに設備の整ったレバノン人経営の歯科クリニック
がある。
主な医療機関は次のとおりである。
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<私立機関>
①Family Health Center
場所:42 S. D. Cooper Road, Paynesville, Monrovia, Liberia
電話:+231(0)-880-349-658 / +231(0)-5-788-612
診療時間:月・水 08:00am~ 5:00pm
火
08:00am~ 6:00pm
木・金 10:00am ~4:00pm
第二・四土曜日 10:00am ~4:00pm
★予約のあるほうが望ましい。
備 考 : ア メ リ カ で 10 年 以 上 の 医 師 と し て の 経 験 を 持 つ 女 医 Dr.Alfredmy
Chessor-Samukai が開業しているクリニック。
外観は普通の一軒家の住宅だが、内部は清潔に機能的にクリニックとして改造さ
れている。
検査室(腎機能や肝機能検査等を含む)、薬局、診察室から成り、超音波検査器、
心電計、モニター等の機材も揃っている。ただし、機械の不具合から現在ここでは
レントゲン撮影ができない。医師の専門分野は Family Medicine だが妊婦や小児
の診療も行う。マラリア検査は、顕微鏡検査と検査キットによる検査で行ってい
る。
JICA フィールドオフィスから車で 20-30 分とやや遠いが、小規模でもかなりの検査を受
ける事ができ、医師も信頼できる。モンロビアでの日常の傷病の受診には最適の
医療機関と言える。
②SOS Clinic
所在地:Old Congo Town
電話:0886512830
診療時間:24 時間
備考:診療科目は一般内科、産婦人科、小児科。施設は比較的衛生的で入院施設もあ
り、裕福層や外国人が多く利用している。レントゲン、マンモグラフィー、超音波検
査、マラリア検査を含む一般的な血液検査全般、便、尿検査が可能である。救急
車があり、緊急時には病院への搬送サービス(有料)も行っている。
③St. Joseph’s Catholic Hospital
所在地:Congo Town
電話:0886510869
診療時間:24 時間
備考:ミッション系の総合病院で、設備はモンロビアで最も整っており、他の病院からも重
症患者が搬送されて来る。検査は、レントゲン、超音波、マラリア検査を含む一般
的な血液検査全般が可能である。
しかし、患者数が多いにもかかわらず、医師の数が少なく午後から不在となること
も多いため、日常の傷病のための利用は可能だが待ち時間が長いことが予測さ
れる。重症者ややむを得ずの外科手術が必要な患者の搬送には、この病院が良
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い。
<公立機関>
①JFK Hospital
所在地:Sinkor
電話:0886602286
備考:リベリアで最大規模、最高レベルといわれる国立病院で、一日外来 500 人、病床
は 225 床である。しかし、医師はわずかに 25 人しかいない(2009 年調査)。救急、
一般診療、小児科等、全診療科をみている。外来は多くの患者で混雑しており、建
物の老朽化や医療器材の不足が顕著で、日常の受診には適さない。
日本からの無償援助で改築した母子病院が、隣接している。
<歯科>
①Dr. Hassan Dental Clinic
所在地:Randall Street
電話:0886510565
診療時間:午後診療・要予約
備考:口腔外科と歯科が専門のレバノン人のクリニック。UNでの歯科診療も担当したり
しているため、不在のこともあり事前予約する方が良い。歯科診療台1台、レント
ゲン撮影設備があり清潔である。レーザー治療もおこなっている。外国人や裕福
層の患者が利用している。
(2)緊急時の対応と措置
緊急時は、24 時間対応可能な私立病院(SOS Clinin または St. Joseph’s Catholic
Hospital)で受診し、必要に応じて国外での受診や緊急移送を検討する。なお、その際は、
保険会社と協議しながら行うことをすすめる。
3.医薬品、衛生用品
(1)携行することが望ましい医薬品
全てが海外からの輸入品で、インド製のものが多い。しかし、韓国製やヨーロッパ製のも
のを取り扱う業者もいる。日本製は全くなく、整腸剤や湿布などは入手できないので、持参
することを勧める。また、持病があれば、必要量持参すること。蚊取線香や防虫剤はスーパ
ーマーケットで購入できる。ホテルでは蚊取線香を利用できない場所があるため、電池式の
虫除けを持参できればお奨めする。蚊帳は入手困難である。その他、家庭常備薬も使い慣
れたものを持参するほうが良い。
(2)現地で調達できる医薬品
一般的な常備薬(かぜ薬、胃腸薬、痛み止め、目薬、虫刺され、虫除け、消毒薬、軟膏な
ど)のほか、ガーゼや包帯などの衛生用品は入手可能である。購入に際しては、用途や成
分名を正確に伝える。
抗マラリア剤(コアテム、アルテミシニン製剤など)やマラリア予防薬(ドキシサイクリン、メフ
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ロキン、マラロン)、抗生物質、軟膏、鎮痛剤なども薬局で入手できる。特にインド系の薬局
は、薬剤の種類も衛生材料の種類も多い。
蚊取線香、虫除けクリーム、殺虫剤なども調達できる。
(3)現地で調達できる衛生用品
生理用品、ガーゼ、包帯、サポーターもある。
ウエットティッシュ、トイレットパーパー、テイッュペーパー等、日常に必要なものは殆ど入
手できる。
(4)薬局
たくさんの薬局があるが偽薬も多いため、店構えがしっかりしていて店内が整然と整理整
頓されている薬局を選ぶと良い。
①B-KAY PHARMACY
所在地:Broad Street
電話:0886512090
②Choithram & Sons (LIB) Inc.
所在地:16th Street, Sinkor
電話:0886269567
4.妊娠、出産、育児
現在、JICA ではリベリアへの家族の帯同は許されておらず、関係者がこの事に直面するこ
とはないが、一般的な状況は下記のとおり。
(1)妊娠した場合の対応
緊急時の対応には不安が大きいこと、マラリアなどの風土病や他の感染症などを考慮し、
妊娠が判明したら帰国することを強く勧める。
(2)出産後の対応
未調査
(3)育児
哺乳瓶、紙おむつ、粉ミルク、ベビーパウダー、ベビー石鹸、チクビ、お尻拭き等は、入手
は容易であるが少々高価である。
5.手術
(1)現地での手術について
盲腸炎、帝王切開、ヘルニア手術等、一般的な手術は行われている。しかし、やむを得
ない緊急性の高い場合を除き、ここで手術を受ける事は勧められない。
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6.現地での傷病
(1)一般の疾病
首都モンロビアのある沿岸部は、熱帯モンスーン気候のため年中高温多湿で、細菌や真
菌の繁殖には適した環境であり、食中毒や皮膚病にも罹りやすい。そのため、「生ものは口
にしない」「皮膚は清潔に保つ」を心がける必要がある。
5~11 月の半年が雨季で雨が多く、クーラーや扇風機を利用して換気と乾燥を促さない
と湿気が高く室内やクローゼットにカビが発生し、肺炎等健康被害をもたらす可能性もある。
乾季は、気温、湿度ともに高く、特に屋外で行動する場合は、水分摂取を心がけ脱水症や
熱中症にならないよう注意しなければならない。また、12~1 月には砂塵を含んだ季節風ハ
マターンが発生し、咳、咽頭通、結膜炎等に罹る人が増え、髄膜炎が流行することもある。
(2)風土病、感染症
マラリア
リベリアのマラリアは悪性といわれる熱帯熱マラリアがほとんどで、1 年中、全国に流行し
ており、5 歳以下の子供の死亡原因の 18%(2010 年)を占めている。医療事情の悪さ、マラ
リアに免疫のない日本人の症状の重篤さから、感染予防のために蚊帳の利用や虫除けス
プレーの利用などの防蚊対策の徹底はもとより、マラリア予防薬の内服は必須と考えて良
い。予防薬(Mefloquine、Doxicycline、Malaron)は、現地でも購入できる。
経口感染症
コレラ・食中毒・赤痢・アメーバー症・ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)等に代表される
様々な腸管感染症や肝炎(A型・E型)等が蔓延している。口にするものには常に気をつけ
「boil it, cook it, peel it or forget it」を徹底しなければならない。
メンタルヘルス
治安上の問題からモンロビアでの行動は制限されている。自由に出歩くことが困難で娯
楽施設もないため、仕事以外は自宅で一人で時間を過ごすことが多くなる。このような環境
で長期滞在する場合、定期的に国外旅行に出たり、熱中できる趣味を持ったりして、気分転
換を積極的に図り、精神衛生に努める必要がある。室内でできる趣味の道具があれば必ず
持参し、無ければなにか趣味をもつ事を勧める。
(3)有害動物、病害虫
蚊(ハマダラ蚊、ネッタイシマカ)、ネズミなどは多い。
ダニやノミの被害も多い。
モンロビアで犬や猫を見かけることは少ないが、見かけても近づかない。
7.保健衛生
(1)飲料水
上水道は全く完備しておらず、水はいまだに給水車によって供給を受け、タンクに保存し
て利用するシステムである。そのため、加熱しないままでは飲用には適していない。必ずミ
ネラルウオーターを飲用にして、レストラン等で提供される氷も口にしないほうが良いと思わ
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れる。
(2)濾過器の入手
下記で、フィルター式ろ過器が入手できる。(大 175US$、小 30US$程度)
店名:MASRI
所在地:Vai Town, Monrovia (Renault garage の隣)
(3)その他の留意点
医療事情が悪く、健康を害した時に受けられる医療には限度がある。その為、予防対策を
徹底し病気に罹らないように気をつけ、病気になった場合は、早めの対応を心がける必要
がある。
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