がん細胞を見つけて 狙い撃ち 身体にやさしい治療を

(一般向け資料)
量子科学技術研究開発機構
プロジェクト「RI医療応用研究」の横顔
がん細胞を見つけて
狙い撃ち
身体にやさしい治療を
どんな研究をしているのですか?
[プロジェクトの仲間です]
まず、プロジェクト名にあるRIとは、
「放射性同位元素」と言って放射線を出
す物質です。ずばり文字どおり、その放
射線を医療へと応用するための研究をし
ているのが私たちのしごとです。
放射線の医学利用と言うと、身近なと
ころでは、骨折したときのレントゲン撮
影だったり、また最近では重粒子線がん
治療という言葉も耳にする機会も増えた
ことでしょう。これらは、いずれも体の
外から放射線をあてます。
笑顔の裏には努力の影。日夜、ネ
タ探しに明け暮れ、クオリティの高
私たちは、それとは異なり、体の中か いものまね新作披露会。そんな楽し
ら放射線を出すことで、隠れていた小さ そうな職場は我が家の子供たちの理
ながんを見つけ出したり(診断)、体の 想の職場・・・いえいえ、わが子よ、そ
中でがんだけを狙い撃ち(治療)するた れはとんでもない誤解です。母たち
めの「放射性薬剤」の開発をしています。 は終わらない毎日を、コツコツと忍
耐強く、世のため、1歩でも先に進
具体的には、RIの製造から薬剤の設
めるために努力しているのです。そ
計・合成、細胞や動物を用いた薬剤の評
う、新しい発見や実験が成功した時
価までの多岐にわたる研究を、少数精鋭
の例えようもない達成感、一度味わ
で日夜励んでいます。(Y.S)
うと忘れることのできない、経験し
た者にしかわからない、それは、そ
れは、宝物のような時を掴むため。
年齢差17歳、理学・工学・薬学、
出身も年齢も様々ですが、良い薬を
創り出すため、力を合わせて突き進
んでいます。
(石岡典子記)
診断
治療
(一般向け資料)
―量子ビームを利用して「がん」の診断・治療に役立つ
放射性薬剤を開発しています―
○ 臭素-76(76Br)や銅-64(64Cu)を標識した診断薬
・76Brや64Cuは、陽電子(ポジトロン)を放出します。
・がんの早期発見に有用なPET(ポジトロン断層撮像)を
使った画像化ができます。
・褐色細胞腫や大腸がんなどの診断に応用できます。
・小さいがんも見つけることができます。
(右図:76Br標識メタブロモベンジルグアニジン(76Br-MBBG)を投与
したマウスのPET画像。矢印はがんの位置を示します。)
○ アスタチン-211(211At)を標識した治療薬
・211Atは、治療効果が高いアルファ線を放出します。
・がんだけに集まるので「狙い撃ち」できます。
・がんの成長を抑えることができます。
(Sh.W)
最近の研究成果
悪性褐色細胞腫に対する新規治療薬としてα線放出核
種アスタチン211(211At)標識メタアスタトベンジル
グアニジン(MABG)を開発し、褐色細胞腫移植マウス
において、MABG(単回投与)が副作用無く腫瘍サイズ
を半分に縮小することを見出しました。本成果から、
MABGが悪性褐色細胞腫の効果的な治療薬となることが
示唆されます。(2016年6月プレス発表、米国核医学
会発表(口頭発表))(Y.O)
(ちょっとお勉強コーナー)
MABGの3Dモデル
(I.S)
「放射性薬剤」ってなぁに?
「放射性薬剤」とは、放射線を出す物質が加えられたお薬のことです。放射
線を出す物質は、放射線を出さない普通の物質に、加速器と呼ばれる大きな装
置から出されるビームや、原子炉から出てくる中性子という放射線などを当て
ることによって作られます。このお薬は大きく2つに分
けられており、治療用(お薬ががんに集まり、お薬か
ら出る放射線でがんをやっつけます。)と診断用(放
射線を出す物質ががんに集まり、そこから出てくる放
射線を機械で測ることによって、がんがあるかどうか、
また体の中のどの部分にあるのか、を体の外から調べ
ます。)があります。(A.S)
加速器から出されたビームを当てる場所(
)
(一般向け資料)
ー私たちの実験の様子をちょっと紹介しますー
生物系の理論化は結構たいへんデス(汗)
この匙で人類の幸福に貢献するのだ
がん治療に効果のある試薬はどれだ!
ここでRIを製造してます、
もちろん照射中は入っちゃダメ!
試薬を混ぜれば日本一
只今今宮婚活中~
RIの実験は時間との勝負!
いない人、発見!
(一般向け資料)
最近のトピック
わたしたちが開発した“がんの新たな
治療薬”の研究成果が,Newton特集記
事に掲載されました。ビジュアルな
MABG・分かりやすい治療メカニズム
の説明は,一読の価値ありです。私も中
学時代に睡眠学習したNHK英会話でも
紹介されました。「正確ながん治療への
取り組み」をPinpoint Cancer Attack
と英訳するんですね。科学も英語で学ぶ
時代。(T.S)
実験に協力してくれるハツカネズミ君のこと
体内における薬剤候補物質の吸収、分布、代謝、排泄、
さらには効き目、安全性を調べるには、薬剤候補物質を体
内に投与して試験する必要があります。でも、いきなりヒ
トで試験するわけにはいきません。この時活躍してくれて
いるのがハツカネズミ君です。彼らの存在は新薬開発には
無くてはならないものであり、医療の発展に対する彼らの
貢献は計り知れません。試験の適切な実施のため、私たち
の試験は関係法規を踏まえた実験規程の下、実験倫理委員
会の承認を得た上で実施しています。(Y.O)
今後はどんな研究にチャレンジするのですか
私たちのプロジェクトでは、放射線医学総合研究所と連携して、基礎から臨床
研究まで切れ目のない効率的な研究体制を構築しています。今後は、MABGの
臨床応用を目指し、MABGの安全性試験を進めてゆく予定です。また、治療効
果の最大化を目指して、放射性薬剤に対する細胞及び生体応答についても研究
を深めます。さらに、患者さん一人一人にベストな治療計画の立案を可能にす
るため、PET診断,コンピュータ解析を駆使して,線量評価技術の確立に挑み
ます。MABGのような画期的な放射性薬剤を今後も生み出してゆけるよう、プ
ロジェクト一丸となって努力してゆきたいと思います。(T.S & Y.O)
問い合わせ先:国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
量子ビーム科学研究部門 研究企画室
住所:〒370-1292 群馬県高崎市綿貫町1233
℡:027-346-9447 Eメール:[email protected]
研究成果は子供を育
てるのと同じだね。