特別講義 【日時】2016 年 10 月 7 日(金) 13:00~14:30 (3 限) 【場所】C102(香美キャンパス) 東京工業大学名誉教授 鈴木 寛治 講演題目:多核金属錯体と基質分子の相互作用 クラスター錯体は化学結合で直接結びつけられた複数の金属中 心で構成されている。クラスター錯体を分子サイズから見れば、こ れまでに幅広く研究されてきた単核錯体と金属ミセルや金属ナノ粒子の中間に位置するも のであり、クラスター分子と基質分子との間の相互作用を調べることにより、金属ナノ粒子 やバルク金属の表面や縁辺部の果たす役割を明らかにすることができるものと期待される。 これまでに多数の水素で架橋された遷移金属ポリヒドリドクラスターの合成法を確立し、 分子構造や配位した水素の挙動やさまざまな反応気質との相互作用を明らかにしてきた。 今日は限られた時間のなかで、2 核錯体、3 核錯体と NHC (N-ヘテロ環カルベン) やベン ゼン、ピリジンなどの多官能性分子との相互作用に絞って解説する。 ㈱三菱ケミカルホールディングス取締役 浦田 尚男 講演題目:日本の化学企業のイノベーション 日本の化学産業はこれまで石油化学に依存しながら大きく発展をし てきた。ナフサの熱分解により、エチレン、プロピレン、ベンゼンなど の基礎製品を得、これらをポリオレフィンなどのプラスチック、合成繊 維原料、合成ゴム原料などの誘導品に変換する。これら誘導品は、プラスチック加工業、繊 維工業、ゴム工業などの関連産業へと販売され、様々な用途へと展開される。現在では、化 学製品の無い生活は想像できないほど、生活との密着度は高い。併せて、化学産業の発展に 伴い、触媒化学、有機化学、無機化学や高分子の加工技術、製造プロセスに関わる化学工学 などの学問の進歩にも寄与してきた。 しかし、石油化学製品は大量生産ゆえに汎用化となり、他社との差異化が難しく、また、中 国、韓国などでも大型の石油化学プラントの建設・稼働があり、汎用石油化学製品の輸出も 難しくなってきた。 このような状況下、日本の化学企業は汎用製品から高い技術力が必要な機能化学製品の 開発・製造へと舵を切り、日本の優位性を発揮し、他社との差異化を図っている。本講義で は、 「日本の化学企業のイノベーション」というタイトルで、日本の化学企業が現在或いは 将来の事業として、どのようなことを行おうとしているのかを紹介するとともに、大学で学 ぶ化学との関連性についてもお話しする。
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