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新宿りんご
なんでしょう
今夜は新宿に居た頃の事を
妙に思い出します
ハルクのマリオネット
ガード
(
)
西口から東口に抜ける細い橋の下で
いつも歌っていた
あのお兄さんは
まだ何処かで歌っているのかな
パレットビルの
パスタというよりスパゲッティ
あの安いお店
あのミートソース、美味しかったなぁ
そうそう
ふじしんのチャーハン
一升瓶に入ったキンキンに冷えたお冷や
あの組み合わせ
今でも
あのチャーハンが
マチミサキ 作
世界一のチャーハンだと思える
劇場の踊り子さん達は
幸せになれたのかな
相変わらず
雀荘では
あの緊張感が続いているのだろうか
早朝にまるで
矢印のように
始発が唸り
そして
1日が動き出す頃
汚物やゴミの散らかる裏道を歩いていく
途中で
あくび混じりの
飲み屋の女将さん達に
ホイル
(
)
銀紙に包まれた
残り物やサンドイッチを
手渡され
ありがと、と苦笑い
それを片手に
表通りに抜けると
都庁や
有名企業のビルへ
向かっている
エリートの群れ
それに逆行するように
後ろめたく
私は歩いていく
みんな
歩くのが
とても速くて
一番空いている
汚ないポイントを
せめて
邪魔に思われないよう
流れと逆に
止まり止まり
隠れるように
歩いていく
このまま
きっと
世間のしあわせとは
逆に
歩いていくのかな
そんな不安に包まれ
ため息まじりに
あきらめながら
歩いていく
それでも
昇る太陽の光は
どちらにも
平等に
あたって
影の出来る向きは
みんな同じだという事に気付いて
少し笑い
そうして
ドラキュラのように
また来る夜にそなえ
すみか
(
)
住処へと
安心して帰っていけた
懐かしい
あの頃の
新宿の朝
新宿りんご
掌編︵938文字︶
随筆・エッセイ
2016−10−06
2016−10−06
マチミサキ
新宿りんご
作
更新日
登録日
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文章量
星空文庫
Copyrighted ︵JP︶
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