地理 B のには適さない。名古屋市の区ごとの人口は絶対的数値 1 地図を用いた地理的技能(15 点) なので,Aのような階級区分図ではなく,Bで示したよ 解答・配点 うな図形表現図を用いるのがより適切である。一方,昼 問1 3点 問2 3点 すべきであり,この点はCもDも適切である。しかし, 問3 下図参照 3点 名古屋市の区ごとの昼夜間の人口の流出入をみるには, 夜間人口比率は,相対的数値であるため階級区分図で示 人口流出地域か人口流入地域かの判別ができることが重 要である。すなわち,100 を下回れば人口流出,100 を こえれば人口流入がみられるといえる。したがって指数 100 を基準に階級区分をおこなうべきであり,100 をま Z たがって区分しているDは不適切といえる。 頻出 問3 山地に降った雨水は,尾根を分水界とし,谷に流れ 込んで流下する。地形図中の等高線に注目すると,高所 から低所に向かって凸型に張り出している箇所が尾根, 反対に高所側にくい込んでいる箇所が谷を表している。 したがって,Z地点からの地表水は,まず北西方向に, その後,南西方向に谷を下って日向椎葉湖に流入する。 問4 3点 問5 3点 基本 解答のポイント *谷線に沿って経路が書けている ●出題のねらい 地理学習において,地図を活用した技能は重視されてい 問4 2万5千分の1の地形図では,細い実線の主曲線間 る。さまざまな図法の特徴や,地理情報の地図化,地形図 隔は 10 m,太い実線の計曲線間隔は 50 m であり,国民 の読図や作図などを通じて,地図に関する基礎的な知識や 休暇村の標高は約 100 m であるとわかるので 技能を身につけておこう。 ある。南海加太線は「かだ」駅より西に路線がなく終点 が適当で となっているが,JR 線以外の鉄道(複線以上)の地図 ●設問解説 )ではなく(単線)の地図記号( 記号( 問1 グード図法(ホモロサイン図法)は面積を正しく表 ) で記されているので, は適当ではない。西にある2つ す図法(正積図)であるが,距離や方位は正しく表現さ 並んでいる地図記号( )は小・中学校である。高等 れていない。従って, 学校は( は正しい。面積・距離・方位・ )で示されるので は適当ではない。国民 いん けん がん 角度(角)をすべて同時に正しく表すことができる地図 はない。流線図は,交通量や貿易量などの地域間の流れ 休暇村から見下ろした海にみられる地図記号は隠 顕 岩 ( )であり,沿岸部は岩がけ( )の地図記号で をあらわす場合に用いられる。グード図法(ホモロサイ 表される海食崖となっている。砂浜は図中の加太湾岸や ン図法)は海洋部が断裂しているため,海洋上の移動を 南東の二里ヶ浜にみられるように平坦地形に砂れき地の 示した流線図には適さず, 地図記号( は誤り。正積図は分布図の 作成に適している。正積図の中でも,低緯度地方のひず )で示される。また,干潟とは干潮時は 水面上に出て満潮時は水面下に沈む砂や泥からなる平坦 みが小さいサンソン図法と中高緯度地方のひずみが小さ な地形をさし,海岸線に沿って地図記号( いモルワイデ図法を緯度 40 度 44 分で接合し,陸地の されるので, ひずみを小さくするために海洋部分を断裂させたのが グード図法(ホモロサイン図法)である。したがって, ・ はともに正しい。 基本 )で表現 は適当ではない。 問5 地域調査の方法には,地図,統計,書籍を用いて行 う文献調査(予備調査)や,聞き取りや地域観察を行う 野外調査(現地調査)がある。新旧の地形図を比較する 問2 地理で扱う統計は,人口や降水量などの絶対的数値 と地域の歴史的な変化を知ることができるが,地形図で と,単位面積あたりや人口1人あたりで示す相対的数値 読み取れないことがらを調査する場合は他の方法を用い とにわけられる。階級区分図(コロプレスマップ)は, ることが必要となる。 相対的数値を示すのには適しており,絶対的数値を示す 地形図からは,住宅地・畑の範囲や,道路の分布は読み − − 79 取れる。 また,ここでは割れ目に沿ってマグマがわき上がり線状 モータリゼーション(車社会化)の進行や閉鎖された店 噴火を起こす火山がみられる。 舗の分布は,地形図からは読み取れない。モータリゼー 広がる境界の大部分は海底に位置し,海嶺を形成して ションの進行は世帯ごとの自動車保有台数の統計,閉鎖 いる。アイスランドは大西洋中央海嶺が海上に現れたも 店舗の分布は商店街の観察調査からわかる。 のである。図1において広がる境界に該当するのは 地形図では,駐車場の地図記号はない。また,農家の高 東太平洋海嶺である。 齢化を地形図から読み取ることもできない。これも,野 レアス断層で,ずれる境界の事例である。 外調査や文献調査が必要となる。 で,狭まる境界の事例である。 地形図からは人口の増減や流出入は読み取れない。地域 ごとの人口統計は,役所の統計資料や国勢調査からわかる。 の はカリフォルニアのサンアンド はチリ海溝 頻出 ⑵ 問題文に「弧状列島」とあるので,重い海洋プレート が軽い大陸プレートの下に沈み込む,狭まる境界だと考 えたい。日本列島以外には,大スンダ列島などがこの事 例である。 2 世界の大地形(20 点) 図2にみられる地震震源分布から,右側が海洋プレー 解答・配点 ト,左側が大陸プレートである。海洋プレートが沈み込 問1 プレートテクトニクス 2点 む接触面(図中Y付近)で,プレートの移動に伴ってひ 問2⑴ 語句:広がる境界 2点(完解) ずみがたまり,地震が発生すると判断したい。 記号: 解答のポイント ⑵ 大陸プレートに海洋プレー 3点 * 「大陸プレート」と「海洋プレート」が書けている トが沈み込んでおり,その接 * 「大陸プレートに海洋プレートが沈み込んでいる」 触面で地震が発生するから。 ことが書けている (38 字) *「二つのプレートの接触面で地震が生じる」こと 問3 3点 問4 3点 問5⑴ 3点 問3 狭まる境界に沿って新期造山帯が分布し,弧状列島 2点 や大山脈を形成している。一方,古期造山帯は,古生代 2点 において造山運動が生じた地域である。 ⑵ ホットスポット 問6 ケスタ が書けている アパラチア山脈は,古生代の造山運動によって形成され ●出題のねらい た褶曲山地であるが,現在は侵食がすすみ,丘陵性の山 世界の大地形をみると,険しい大山脈もあれば,平らか 容を示す。古生代に繁栄したシダ植物が堆積し,地下で な大平野も存在する。このような大地形の違いを理解する 圧力を受けて炭化がすすんだため,良質の石炭を産出する。 には,プレートテクトニクスの考え方をきちんとおさえてお グレートディヴァイディング山脈は,オーストラリア東 くことが重要である。本問では,プレートテクトニクスを中 部に位置する古期造山帯の山脈である。東部に位置する 心に,造山帯の形成について問うている。また資源や交通 が,環太平洋造山帯には含まれない。 など人間生活との関連でも地形を把握するようにしたい。 アフリカ大陸の大部分は安定陸塊(アフリカ 状地)で あるが,南部のドラケンスバーグ山脈は古期造山帯であ ●設問解説 り,北部のアトラス山脈は新期造山帯のアルプス・ヒマ 問1 地球表面は何枚ものプレートにわかれ,下部のマン トル対流にのって互いに水平移動しているとする学説を, ラヤ造山帯に属している。また大陸東部のアフリカ大地 溝帯は広がる境界が形成されており,火山活動も活発で プレートテクトニクスとよぶ。また,地球表面には火山 ある。 活動や地震活動が特に激しい地域が帯状に分布し,この 地体構造と地下資源との関連はおさえておきたい。一般 地域を変動帯とよんでいる。変動帯はプレートとプレー 的に新期造山帯では銅鉱石や原油,古期造山帯では石炭 トの接する境界付近に形成される。 が多く産出される。鉄鉱石は安定陸塊の 問2⑴ 変動帯にどのような地形が生じるかは,プレート 出される。 状地で多く産 重要 同士の関係によって決まってくる。その境界は,狭まる 問4 図3は日本列島における第四紀(約 260 万年前か 境界,広がる境界,ずれる境界の3つである。写真はア ら現在までの地質時代)の隆起・沈降のおおよその傾向 イスランドのギャオを撮影したものである。こうした溶 を示したものである。 岩と裂け目がみられる地形は,マントル対流によって, フォッサマグナとは,日本列島を地質的に東北日本と西 地殻の下からわき上がった物質が,両側にわかれていく 南日本にわける地溝帯である。そして,その西縁は新潟 ことによって形成される。すなわち広がる境界である。 県糸魚川市から諏訪湖を通り,静岡県静岡市安倍川に至 − − 80 る糸魚川・静岡構造線である。図より,隆起量 1500 m ●出題のねらい 以上で最も隆起している地域はフォッサマグナの西側と 世界の気候について出題した。気候はさまざまな人間活 判読できるので,誤文と判断する。 動とも大きな関わりをもつ。産業,特に農業との関わりは 凡例より,アミがけ部分が沈降地域であることがわか 深いため,気候についてはしっかりと理解しておきたい。 る。日本列島全体では,アミがけ部分が狭いので,全体 そのためには,単に気候に関係する語句を覚えるだけでな 的に隆起したことが読み取れる。 く,各種現象の発生原因やメカニズムをしっかりと理解し 西南日本の南側の外帯と北側の内帯をわけるラインは, ておくことが重要である。 中央構造線である。これは諏訪湖から伊勢湾・紀ノ川・ 吉野川を経て九州へ向かう,大断層である。図をみても 明らかに中国山地など内帯の山地の隆起量は小さいの ●設問解説 問1 A∼Cはいずれも中緯度に位置するので,東岸・西 で,正文とわかる。 岸の違いや内陸か沿岸部かの違いをみていく。西岸のA アミがけされている沈降を示す地域は,関東平野をはじ は夏季に亜熱帯(中緯度)高圧帯の影響を受けて乾燥, め,大阪・濃尾・越後・石狩の各平野なので正文である。 冬季に偏西風の影響を受けて湿潤となる地中海性気候区 問5⑴ デカン高原の間帯土壌として,レグールが知られ (Cs)である。ハイサーグラフは左上がりとなるいが該 ている。間帯土壌とは母岩の影響が強い土壌である。レ 当する。Bはロッキー山脈東麓の内陸に位置するため降 グールは文中にもあるように玄武岩が風化した黒色の肥 水量が少なく,グラフが左寄りになるうである。東岸に 沃土である。綿花栽培地域とも重なり,黒色綿花土とも 位置し海洋の影響の大きいCは,年間を通じて降水量の よばれる。選択肢のテラロッサは地中海沿岸の石灰岩分 多いあとなる。なおABCはそれぞれシアトル,デン 布地域にみられる赤色の間帯土壌である。 頻出 ⑵ ホットスポットとは,マントルの深部からマグマが上 頻出 ヴァー,ボストンである。 問2 気候区の特徴をしっかり理解しているかを判断する 昇し,地殻を貫いて火山活動が生じている地点である。 ために,気候の3要素のうち降水量に注目して出題した。 ホットスポットの位置はほぼ固定されているので,この Iは低緯度にあるため熱帯である。赤道からやや離れて 上をプレートが移動すると火山や海山列ができる。ホッ いるためサバナ気候区(Aw)に属することから,雨季 トスポットの例としては,ハワイ諸島が知られている。 と乾季が顕著な となる。南半球なので高日季となる1 問6 土地の起伏が激しい日本列島を走る新幹線は,トン 月に多雨,低日季となる7月に乾燥する。JとKは中緯 ネル区間が多くなる。これに対し,構造平野で起伏の小 度の大陸西岸に位置することからともに温帯で,Jは西 さい地域の多いヨーロッパでは,トンネルは少なく, 岸海洋性気候区(Cfb) ,より低緯度に位置するKは地 TGV のパリ−リヨン間にはトンネルはみられない。 中海性気候区(Cs)である。夏季である1月に亜熱帯 パリ盆地周辺ではわずかな地層の傾きから,緩斜面と 高圧帯の影響を強く受けて少雨となる がKで,亜熱帯 急崖からなる非対称な丘陵地形であるケスタ地形を形成 高圧帯の影響をあまり受けないため年中平均して降水の しているところがみられる。ケスタは,硬軟の互層がゆ みられる るく傾斜している地域で,軟層と硬層の差別侵食が進ん 低温となる寒帯気候で,降水量の少ない で形成された地形である。 雨月の降水量が 30 mm を下回るのは通常乾燥気候が考 がJである。残るHは最も高緯度に位置して である。最多 えられるが,低温で蒸発量が少ないため乾燥気候とはな らない。なお,Hはバロー,Iはブラジリア,Jはロン 3 世界の気候(20 点) ドン,Kはケープタウンである。 解答・配点 基本 問3 図中のXは大陸西岸に位置する。同じく大陸西岸の 問1 2点 中緯度付近には砂漠気候区(BW)とそれを取り巻くよ 問2 2点 うにステップ気候区(BS)がみられる。Xは,その高緯 問3 2点 度側に位置しているので夏季にのみ乾燥する地中海性気 問4 年間を通じて亜熱帯 〔中緯度〕 3点 高圧帯の影響を受けるため。 候区(Cs)と判断する。植生・産業は であり,夏の厳 しい高温乾燥に耐える小さくて硬い葉の構造を持つ硬葉 (22 字) 樹が分布し,農業では樹木作物であるオリーブやかんき 問5 プレーリー土 2点 つ類,ブドウが栽培される。また,南フランスのコート 問6 サイクロン 2点 ダジュールなど,有名な保養地や観光地で,宿泊設備の 問7 貿易風が強まり冷水の上昇が 3点 強くなる。 (18 字) 整っている地域もみられる。 は夏は冷涼,冬は温暖で 年中平均した降水がみられる西岸海洋性気候区(Cfb, 問8 2点 Cfc) , 問9 2点 寒冷な亜寒帯(冷帯)湿潤気候区(Df)や亜寒帯(冷帯) − − 81 は降水量の少ないステップ気候区(BS) , は 冬季少雨気候区(Dw)に属する高緯度地域でみられる。 問8 Sはユーラシア大陸西岸の中高緯度地域であり,亜 問4 Yは大インド(タール)砂漠周辺,Zはグレートサ 熱帯(中緯度)高圧帯から亜寒帯(高緯度)低圧帯に向 ンディー砂漠周辺でありそれぞれ北回帰線,南回帰線付 かって偏西風が吹くので①である。Tは南半球の低緯度 近に位置している。一帯は,年間を通じて亜熱帯(中緯 地域であり,亜熱帯(中緯度)高圧帯から熱帯収束帯に 度)高圧帯の影響下にある砂漠気候区(BW)である。 向かって吹く,恒常風の南東貿易風がみられるため②で 乾燥気候となるほかの原因には,「内陸に位置するなど ある。マダガスカル島の気候が貿易風の影響を受けるこ 隔海度が大きい」 ,「年中卓越風の風下に位置する」, 「沖 とは,大学入試でもしばしば出題されている。Uは大陸 合を寒流が流れる」などがある。このうちZは内陸に位 と海洋の比熱の違いから,季節風(モンスーン)がみら 置する影響もあると考えられるが,沿岸部に位置するY れる。1月は北半球では冬季となるので,低温の大陸か と共通する理由は亜熱帯高圧帯の影響である。乾燥気候 ら高温の海洋に向かって北東モンスーンが吹くため③で はこのように複数の要因が重なって生じる場合が少なく ある。恒常風は緯度によって,季節風(モンスーン)は ない。なお,回帰線付近が乾燥気候となるのは一般に西 季節によって風向きが異なるので注意したい。 基本 岸であり,ユーラシア大陸においては概ねデカン高原よ 問9 問題文から,海や地形といった自然条件に差がない り西側となっている。季節により風向きが変化する季節 とすれば,気温の分布に差があることには人間活動の影 風(モンスーン)が卓越し,比較的降水量の多い東側で 響が考えられる。都市では人工排熱が増大したり,地表 も内陸部には隔海度の大きさから乾燥気候がみられるの 面が熱を蓄えやすい人工構造物で覆われたりした結果, で注意したい。 気温が上昇するヒートアイランド現象がみられるのが一 般的だが,網かけ部分の気温は低下しており,ヒートア 解答のポイント * 「年間を通じて亜熱帯(中緯度)高圧帯の影響を受 ける」ことが書けている イランド現象を緩和する土地利用があると考えられる。 正解は都市化以前の土地利用である である。 は,宅 地開発が進むと発熱量が増えて周囲より高温となるはず 問5 Pは年降水量が 500 mm 程度の草原地域であり,西 なので誤り。 と は等温線の読み取りが不適切である。 側が短草草原,東側が長草草原となっている。厚い腐植 また, 層を持つことから肥沃となるプレーリー土で,北アメリ はヒートアイランド現象の説明としては正しいが,気温 では一般に樹木は気温低下の役割を果たす。 カ大陸に分布する。小麦の企業的栽培などに利用され は低くなっているため誤り。 (図10 は『内陸都市はなぜ る。同様の例として,ブエノスアイレス周辺にはパンパ 暑いか』による。) 土,ウクライナ周辺にはチェルノーゼムがみられる。 問6 熱帯周辺の地域ではしばしば移動性の熱帯低気圧が 4 世界と日本の小地形(20 点) 発生し,大災害をもたらす。このうちインド洋・南太平 洋に発生するものをサイクロン,北西太平洋に発生する 解答・配点 ものを台風,北東太平洋および大西洋に発生するものを 問1 記号:Y ハリケーンとよぶ。熱帯低気圧は大雨による洪水や土砂 語句:自然堤防 災害,強風による家屋や農作物への被害,高潮による浸 問2 2点 水被害などをもたらす。地球温暖化に伴う海水温の上昇 問3 3点 により,被害が拡大すると懸念されている。 問4 入江の周りにある平野〔後背 2点 2点(完解) 地〕が狭いため。 問7 ラニーニャ現象は,太平洋赤道域の西部において海 面水温が平年よりも高く,東部において海面水温が平年 問5 2点 よりも低い状態が数か月間続く現象をさす。ラニーニャ 問6 語句:カルスト地形 3点(完解) 現象が発生している時には,図に示した3つの矢印の全 記号: てが強くなる。南東貿易風 (A)が平常時よりも強くな 問7 埋立地で地盤が軟弱であり, 3点 液状化現象が発生したため。 り,インドネシア周辺の暖水 ( )がより厚く蓄積する一 (26 字) 方,南アメリカ周辺では冷水の湧きあがり ( )が強くな 問8 る。ラニーニャ現象が発生すると世界中で異常気象が起 3点 こりやすくなり,たとえばインドネシア近海では積乱雲 がいっそう盛んに発生し,降水量が増加する。 解答のポイント *卓越風の名称として「貿易風」が書けている * 「冷水の上昇が強くなる」ことが書けている 重要 ●出題のねらい 小地形を中心に出題した。小地形には平野の地形,海岸 地形をはじめ,カルスト地形,氷河地形,乾燥地形など 様々なものがあるが,これら小地形の特徴や成因について, 代表例とともによく理解しておきたい。 − − 82 近年,地形図の問題に関連して,自然災害と防災がよく 解答のポイント とりあげられるようになった。本問では地震について問う *「平野〔後背地〕が狭い」ことが書けている たが,他にも様々な災害が日本,世界各地で発生している。 災害による被害を小さくするために,災害と防災について 問5 海岸平野が隆起して波の侵食を受けると海食崖が 形成され,その後,陸地の隆起または海面の低下と侵食 関心を持ち,きちんと学んでほしい。 が繰り返されると,数段におよぶ階段状の海岸段丘が形 ●設問解説 成される。室戸岬付近には数段におよぶ海岸段丘が発達 問1 氾濫原とは,洪水時に河川からあふれた水が土砂を 堆積させてつくった地形であり,一般には河川の中∼下 しているが,内陸側に位置する高い段丘面ほど形成時期 は古い。 流域にみられる。河川の近くには洪水時に水と一緒にあ 約2万年前の最終氷期に日本で氷河が発達していたの ふれた土砂が堆積し,自然堤防とよばれる微高地が形成 は,日本アルプスや日高山脈(北海道)の頂上付近など される。自然堤防上には集落や畑がみられることが多 に限られていた。根釧台地がやせている理由は火山灰地 い。なお,堤防の堤は土へんなので注意しておきたい。 や泥炭地が広がることがあげられる。夏に寒流の親潮 自然堤防の背後には低湿な後背湿地が分布する。後背湿 (千島海流)の影響で濃霧に覆われ,日照量が少ないこ 地は,日本では水田として利用されることが多い。 基本 ともあり,この地域では畑作が発達しにくい。 問2 P氷河の大部分は,南極大陸やグリーンランドに分 日本で最も深い田沢湖は,火山によってできたくぼ地に 布する大陸氷河(氷床)であり,地球全体の氷河面積の 水が溜まってできたカルデラ湖である。火山活動が盛ん 95%以上を占める。山岳氷河(谷氷河)はアルプス山 な北海道や東北地方にはカルデラ湖が多く,他には摩周 ま しゅう くっ しゃ ろ 脈やヒマラヤ山脈,アンデス山脈などの山地の谷間を し こつ とう や と 湖,屈斜路湖,支笏湖,洞但湖(いずれも北海道),十 わ だ ゆっくりと流れ下るものであり,地球温暖化に伴いその 和田湖(青森県∼秋田県)などがある。カルデラ湖は一 面積は縮小しつつある。 般に水深が深い。なお,世界最深のバイカル湖(シベリ Q砂漠には,砂でおおわれた砂砂漠,基盤岩石が露出した ア),水深第2位のタンガニーカ湖(東アフリカ)は, れき 岩石砂漠,礫におおわれた礫砂漠がある。このうち砂砂 いずれも断層湖であることもおさえておこう。 漠が占めているのは,全砂漠の 20%ほどである。 頻出 海岸平野は,海面の低下や陸地の隆起で形成された離水 問3 サンゴ礁の形態は,裾礁,堡礁(バリアリーフ) , 海岸であり,平野面はもともと海底であった。九十九里 環礁に分類できる。まず,島(陸地)をふちどる裾礁が 浜は数回の陸地の相対的隆起により平野が拡大してきた 発達する。沖縄県などのサンゴ礁はこの形態である。島 ため,海岸線に沿って浜堤という微高地が数列みられる。 (陸地)が海水面に対して相対的に沈降するとサンゴ礁 問6 山口県の秋吉台は,石灰岩が溶食されてできたカル は上方に発達し,島(陸地)とサンゴ礁との間に礁湖 スト地形の代表例である。石灰岩は二酸化炭素を含んだ (ラグーン)を持つ堡礁(バリアリーフ)になる。さら 水に溶けやすいため,雨水や地下水により溶かされて特 に島が沈降して水没すると環状にサンゴ礁が発達する。 徴的な地形がみられる。地表部にみられるくぼ地は小さ これを環礁といい,ツバルやモルディブなど低緯度地域 いものから順にドリーネ,ウバーレ,ポリエ(溶食盆 にみられ観光地として人気が高い。しかし,地球温暖化 地)とよばれる。また,地下には鍾乳洞がみられる。石 による海面上昇で水没することが懸念されている。 灰岩はセメントの原料として用いられるためセメント工 しょうにゅうどう 問4 フィヨルドとエスチュアリ(三角江)はともに陸地 場が立地することが多く,山口県は,国内でも有数のセ の沈降や海面の上昇によってできた沈水海岸地形である メント生産量を誇る。なお,ラグーンは砂州などによっ が,その様子は大きく異なる。フィヨルドは氷河による て海と隔てられた潟湖やサンゴ礁と島の間にできた礁 侵食でできたU字谷に海水が浸入してできた地形であ 湖,モレーンは氷河が運んできた岩 り,U字谷の谷壁は急斜面からなるので背後の陸地に平 高まり,ビュートは侵食平野にみられる侵食から取り残 野が少ない。一方,エスチュアリは大きな河川の河口部 が沈水してできたラッパ状の入江であり,その周辺には されてできた塔状の地形である。 が堆積してできた 頻出 問7 液状化現象とは,地震の際に水分が多く含まれたゆ 平野が広がり大貿易港や大都市が発達しやすい。なお, るい砂層の地盤が揺さぶられて,砂粒の摩擦で固まって 都市や港湾の経済活動の影響がおよぶ範囲を後背地とい いた地盤が軟弱になり,泥水が地表面に出てきたり,地 い,一般的に,フィヨルドの場合は後背地が狭く,エス 表付近の地層が泥状になったりする現象のことをいう。 チュアリの場合は広いといえる。 埋立地の地盤は液状化現象が起こりやすい。この現象が 地形の形態がイメージできていれば解答はしやすい。 普段から様々な地形の写真をよくみておこう。 重要 発生すると,建物や構造物が傾いたり,道路が陥没した り,地中の水道管やガス管が破損したりする。阪神・淡 路大震災の際,埋立地でこれらの被害が生じたが,埋立 地であっても地盤の改良が行われた地域では被害が小さ − − 83 かった。 注意 分野にしておきたい。問5では地形,気候の応用力を試し たが,「水資源」は近年関心が高まっているテーマとして 解答のポイント 注意が求められる。 * 「埋立地である」ことが書けている * 「地盤が軟弱である」ことが書けている ●設問解説 * 「液状化現象が発生しやすい」ことが書けている 問1 Cの湖(バイカル湖)は,断層運動で生じた断層 問8 「南田切」の集落と天竜川との間には4本の等高 湖であるうえ,南西端付近からアンガラ川(エニセイ川 線(主曲線)がみられるので,40 m 以上の標高差があ 支流)が流れ出す淡水湖であり,誤り。また,蒸発が盛 ることが読み取れる。よって,「南田切」は河岸段丘面 んな乾燥帯にも位置していない。最終氷期の北ヨーロッ に位置しているので天竜川の増水による洪水の心配はほ パ周辺には,大規模な大陸氷河が分布したものの,冬季 とんどないと判断できる。 の降雪量が少ないユーラシア大陸東部では氷河はあまり 「いいじま」駅の標高は,等高線や,駅の南側にある三 発達しなかった。 角点の標高から,約 645 m であることが読み取れる。ま Aの河川(レナ川)は冬季に大部分が凍結し,初夏にな た,天竜川の標高は,天竜川付近にある 550 m の等高線 ると低緯度側に位置する上流域から雪融けや融氷が進む から判断し,520 ∼ 540 m あたりであることが読み取れ という特徴がある。この時期には急激に増水するが,下 る。よって,標高差は 120 m ほどであるとわかる。 流が凍結したままだと河道から水が 段丘崖には針葉樹林や広葉樹林が広がっていることが読 生しやすくなる。 れ出して洪水が発 み取れる。その周辺では,一部に水田や住宅がみられる Bの半島(カムチャツカ半島)は新期造山帯である環太 ものの,段丘崖の開発が進んでいる様子はみられない。 平洋造山帯に属し,活動的な火山が数多く分布する。 一般に河岸段丘面は水を得にくいため畑や果樹園が分布 D(朝鮮半島南西部)の沿岸には,山地・丘陵地が沈水 することが多いが,この地域の河岸段丘面は等高線から したために多くの岬や入江が連続するリアス海岸が発達 わかるように天竜川に向けて緩やかに傾斜しているた しているほか,沖合には取り残された地形が多くの島と め,山沿いから自然と水が段丘面を流下する。そのた め,水田が広く分布している。 なった多島海が広がる。 問2 世界の大地形は,安定陸塊,古期造山帯,新期造山 帯などに大別され,このうち安定陸塊と古期造山帯は, 5 ユーラシア大陸東部の自然環境(25 点) 先カンブリア時代,古生代にそれぞれ造陸運動,造山運 動を受けた後,激しい地殻変動に見舞われなかった地域 解答・配点 にあたる。これに対し,新期造山帯は中生代後期以降に 問1 2点 造山運動が起こった地域で,アルプス = ヒマラヤ造山帯 問2 3点 と環太平洋造山帯からなる。原則として,長期間侵食を 問3 3点 受けた安定陸塊では起伏の小さな平野や高原が,古期造 問4 住居からの排熱で,地中に分 4点 山帯ではなだらかな山地が分布するのに対し,新期造山 布する永久凍土を融解させない 帯では高峻な山地や高原,弧状列島が分布する。ただ ため。 (30 字) し,古期造山帯に含まれるクンルン山脈やテンシャン山 問5 3点 脈は,ヒマラヤ山脈やチベット高原を形成したインド亜 問6⑴ ゴビ砂漠 2点 大陸の衝突によって再隆起した山脈であり,標高は高く 2点 5000 m 以上ともなる。よって,チベット高原やテンシャ 問7 2点 ン山脈を通過するⅡにはGが該当する。モンゴル高原 問8 親潮〔千島海流〕 2点 問9 カール〔圏谷〕 2点 ⑵ ( ) と平坦なシベリア卓状地( )とを結ぶⅠにはHが該 当する。長江中下流平原付近( モンゴル高原付近 ( )から華北平原を経て ) に達するⅢにはFが該当する。 ●出題のねらい 頻出 本問では,日本を含むユーラシア大陸東部の地形・気候 問3 一般に気温の年較差は,高緯度地域や内陸部で大き を中心に,自然環境について多面的に問うた。さまざまな くなり,低緯度地域や臨海部で小さくなる。また,年降 地形の特徴や成因は,基礎知識としてきわめて重要である。 水量は臨海部で多く,内陸部で少なくなる。よって,気 特に大地形の分布は,地形断面図の判定に欠かせないほか, 温の年較差が大きく,年降水量の少ない 鉱産資源の分布の把握などにも役立つので,しっかりとお 陸部にあるウルムチ,気温の年較差が小さく,年降水量 さえておこう。気候については,住居様式や農業など人間 の多い 生活との関わりも大変深いので,成因を理解した上で得意 る。残った2都市について,高緯度の臨海部に位置する − − 84 が高緯度で内 が低緯度で臨海部にあるフーチョウと考えられ ウラジオストクは年較差が大きく,年降水量も比較的多 い ,低緯度の内陸部に位置するラサは と判断する。 基本 問4 L地点を含む高温多湿な低緯度地域では,写真1の 図4より,5∼6月の黄砂の観測のべ日数は,3∼4月 に次いで多いことが読み取れるので,「ほとんど観測さ れない」は誤りである。また,台風や梅雨前線が,内陸 に位置する黄砂の発生地域にまで影響を及ぼすことはほ ような高床式の住居がみられる。住居を高床式とするお とんどない。 もな目的は,床下の風通しを良くすることで防湿を図る 1990 年代後半より黄砂の発生地域では,牧畜民の定住 ことに加え,雨季の浸水や害獣の侵入に対する備えと考 化や農地の開発・利用規制などを行ったり,植生の回復 えられる。これに対しM地点のような高緯度地域で高床 (植林・植草)などの砂漠化対策が進められてきた。し 式の住居や建物がみられるのは,一帯に永久凍土が分布 かし,図4をみると 1990 年代以降に「黄砂の観測のべ することと関係している。すなわち地盤が緩むと建物が 日数は目立って減少した」とは言えず,誤り。 損壊する可能性が高まるため,床を高く上げて暖房など 問7 元来,低緯度側に位置し,比較的温暖な西日本を中 に伴う住居からの排熱を地中に伝わりにくくして,永久 心に分布するRには,カシ,サカキを含む常緑広葉樹林 凍土の融解を防いでいるのである。 (照葉樹林)が広がっている。これよりも気温が低下す る本州の山地や東北地方に分布するQには,おもにブナ 解答のポイント やミズナラなどからなる落葉広葉樹林が広がっている。 * 「住居から排熱が出る」ことが書けている 世界有数の規模のブナの原生林が残る白神山地(青森 * 「永久凍土を融解させない」ことが書けている 県・秋田県)が,1993 年に世界遺産(自然遺産)に登 問5 「森林面積割合」が最も低く, 「水資源量」も乏しい は,乾燥した気候が広がるモンゴルであるが,高原状 の内陸国であるために標高 20 m 以下の低地が存在しな い。 「森林面積割合」がモンゴルに次いで低い 録されたことも知っておきたい。大部分が亜寒帯(冷 帯)に属する北海道を中心に分布するPには,トドマ ツ,シラビソなどからなる針葉樹林が広がっている。 が,北 問8 千島列島から北海道の沖合を通過し,東北地方の太 西部に砂漠気候区(BW)やステップ気候区(BS) ,南 平洋岸に至る寒流は親潮(千島海流)とよばれる。夏季 西部のチベット高原付近にツンドラ気候区(ET)が広 に太平洋上に発達する小笠原気団から吹きだす湿潤な季 がる中国である。ただし,国土面積がきわめて広いため 節風は,しばしば寒冷な親潮の冷却効果により発生した に, 「水資源量」は4か国中で最大となっている。日本 霧を伴いながら北海道南東岸に達する。なお,初夏に東 と韓国の大部分には,温暖で湿潤な気候が広がるために 北地方の太平洋側を中心に霧に伴う日照不足や気温低下 「森林面積割合」はともに高い。ただし,韓国は国土面 を引き起こして冷害を促すやませは,寒冷で湿潤なオ 積が約 10 万 km2 と小さい(日本は約 38 万 km2)ことか ホーツク海気団から吹き込む局地風であり,北海道東部 ら,韓国の「水資源量」は少ない。よって が韓国, に海霧をもたらす季節風(モンスーン)とは異なる。 が日本となる。中国や韓国と比較して,新期造山帯に位 問9 氷河の侵食により,山稜直下や谷頭の山腹斜面に形 置する日本の国土は山がちである一方,沖積平野が発達 成された半椀状のくぼ地をカール(圏谷)とよぶ。比較 しており,特に河口付近の三角州(デルタ)や沿岸部の 的緩やかなカールの底を,急斜面の谷壁が馬蹄形に囲ん けんこく ば てい でいる様子が図7からも確認できる。 「低地に居住する人口割合」が高い点にも注意する。 重要 問6⑴ 中国・内モンゴル自治区とモンゴルにまたがって 分布する砂漠を,ゴビ砂漠とよぶ。隔海度が大きく,水 蒸気の供給量が乏しいことから形成された,内陸砂漠の 例である。 ⑵ 黄砂は,中国の黄土高原やタクラマカン砂漠,ゴビ 砂漠などで発生した砂嵐により上空にまで巻き上げられ た微細な砂塵が,偏西風によって朝鮮半島,日本などに 運ばれてくる現象である。冬季には,発生源の表土が広 く積雪で覆われるうえ,勢力の強い高気圧に支配される ために黄砂は発生しにくいが,3∼4月になって雪融け により表土が露出して乾燥すると,低気圧や前線の通過 により砂嵐が発生しやすくなる。 1∼2月,シベリア気団からの季節風が日本に黄砂をも たらすことはあるが,図4より例年「観測のべ日数が一 年のうちで最も多くなる」とは言えず,誤り。 − − 85
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