地域医療連携 岐阜地区における薬薬連携の取り組み ―都市型薬薬連携の推進 岐阜県総合医療センター薬剤部長 岐阜県病院薬剤師会薬薬連携推進委員長 岐阜市薬薬連携連絡会委員 遠藤秀治 先生 進展しませんでした。 はじめに 2009年4月に、私は下呂温泉病院から当院に転勤と 薬薬連携は文字どおり薬剤師同士が連携すれば始 なり、岐阜地区の薬薬連携に直接関わることになりまし められ、何らかの知り合いなど特定の間柄で実施する た。そこで、2009年4∼8月に発行された情報連絡書の 場合には、連携の特別なルールも必要なく簡単に始め 動向調査と地域の薬局薬剤師の薬薬連携に対する認 ることができます。 しかし、 こうした特定の薬薬連携は範 識把握のアンケート調査を行い、その要因分析の結果 囲が狭く、対象が少ないこともあるので、やはり患者さん から都市部での広域病院を中心とした薬薬連携(都市 の利便性などを考えると、ある程度の範囲と対象が多い 型)への対応を図り、2010年2月から当院のほかに、岐阜 ことが必要だと考えています(表1)。 市内の岐阜大学医学部附属病院、岐阜市民病院を加 全県下での均質な薬薬連携の実施を目指す岐阜県 え、600床規模の3病院で薬薬連携を開始しました。 薬剤師会(県薬)は、下呂地区での成果をもとに、 「地域 都市型薬薬連携の問題点 薬薬連携連絡会立ち上げ・運用の指針」を定め、 また、 県薬、岐阜県病院薬剤師会(病薬)双方の委員による 調査の結果から、次の2つの点が明らかになりました。 薬薬連携ワーキンググループを立ち上げ、全地域で薬 ①薬剤師会員への薬薬連携の周知不足⇒ 多くの人 薬連携が手掛けられる体制を整備し、一定の成果をあ が携わる都市部の薬薬連携など広範囲の薬薬連携で げました。 は、情報連絡書が届いたことのある薬局とまったく届いた 一方、岐阜地区は下呂地区と同様に、岐阜県の薬薬 ことのない薬局が生じ、両者間で薬薬連携に対する認識 連携推進モデル事業地区に指定され、2007年から岐阜 に差があること。 また、 まったく届いたことのない薬局で 県 総 合 医 療センターと岐 阜 市 薬 剤 師 会( 市 薬 ) との間 は、薬薬連携の運用などを一定のレベルで意識し続ける で薬薬連携のモデル事業を手掛けてきましたが、下呂 ことが難しいこと。 地区の約13倍(約260施設)の薬局がある岐阜地区で ②医師会・歯科医師会への啓発不足⇒我々の想像に は、下呂地区のような1病院を中心とした限られた範囲 反して、薬薬連携に対する認識がないこと。 また、お薬手 での薬薬連携(地域型) とはやや勝手が違い、 なかなか 帳の認識も低いこと。 表1.薬薬連携の種類と岐阜県が目指す薬薬連携 表2. 「薬薬連携の手引き」の内容 連携の単位 連携の 対象疾患 連携の しやすさ 連携の 対象患者 連携ルール の必要性 特定 非常に しやすい 限定 × しやすい 少ない 特定の薬局 特定しない 複数の門前薬局 特定しない × しやすい やや少ない △ 特定しない しやすい 中 ○ 地域の複数の薬剤師会 特定しない しにくい やや多い ◎ 特定しない 非常に しにくい 地域の薬剤師会 都道府県単位の薬剤師会 ×:申し合わせ程度でほとんど必要ない ○:基本的運用+特定の事柄 5 多い △:基本的運用程度 ◎:基本的運用+詳細な事柄 ◎ 内容 1. はじめに 4-2-1 入院の際の運用 2. 薬薬連携のイメージ 4-2-2 退院の際の運用 ・薬薬連携の解説 4-3 3. 心がけること 4-3-1 記録用紙 4. 各論 4-3-2 保険薬局側での運用 記録 4-1 薬薬連携に利用されるツール 4-3-3 病院側での運用 4-2 薬薬連携の場面と運用 4-4 運用の評価 「薬剤適正使用のための施設間情報連絡書」 (別紙3) 「薬剤適正使用のための施設間情報連絡書」記録要領 (別紙4) 資料 「薬薬連携情報交換記録用紙 (薬局用) 」 「薬薬連携情報交換記録用紙 (薬局用) 」記入方法 「薬薬連携情報交換記録用紙 (病院用) 」 「薬薬連携情報交換記録用紙 (病院用) 」記入方法 図1. 「お薬手帳を見せてください」ポスター 図2.抗癌剤(TS-1)処方についての疑義照会の強化 処方箋に記載されない外来癌化学療法の情報の活用を考える ●相互作用の確認 ●投与後の副作用の確認 薬局 外来での注射剤投与情報 薬局薬剤師 投薬情報 病院薬剤師 疑義照会 医師 対象になることもあるので、当然医師・歯科医師には薬 薬連携のツール(お薬手帳、情報連絡書) と運用を理解 ●お薬手帳普及の推進 ・ 岐阜県医師会、岐阜県歯科医師会とも協同で実施 岐阜県下全ての診療所、病院、薬局などの医療施設の「待合室」、 「 受付 け」 などにポスターを掲示する 「お薬手帳を見せてください」の呼びかけを行う ・ 患者さんに しておいてもらう必要があります。 しかし、 これまで直接 医師会員・歯科医師会員への協力要請をしてこなかっ たので、お薬手帳の活用のほかに、情報連絡書自体の 紹介、その運用などを文書にまとめ、県薬会長名で協力 をお願いしました。 問題克服のための対応―薬薬連携の周知徹底 その他、岐阜市全域をカバーするため、新たなメンバ ーで岐阜市薬薬連携連絡会を編成しました。 また、2010 ①薬剤師会員への薬薬連携の周知不足⇒判明した 年4月からは、そこに地元の医師会・歯科医師会の先生 問題点などをもとに、市薬と改善の協議を行い、 これま 方に加わっていただき、医療連携も視野に入れた協議を で定められた薬薬連携の運用ルールとその周知徹底が 開始しました。すぐに、お薬手帳の活用で意見が一致し、 必要と感じました。そこで、 これまでの薬薬連携の取り組 医院、病院、薬局など岐阜県下全ての医療施設に「お薬 み、連携構築のために心がけること、薬薬連携に利用さ 手帳を見せてください」のポスターを掲示し、県民へのお れるツール、薬薬連携の場面ごとの具体的な運用をまと 薬手帳活用の啓発活動を展開しています(図1)。 めた「薬薬連携の手引き」 (表2) を作成し、岐阜地区の 会員施設に配布することにしました。 今後の展望 また、薬薬連携対象病院は県下でも有数の病院で、 最近、癌化学療法が外来で実施されることが多くな 岐阜市以外からの紹介患者さんも多く、岐阜地区以外 り、病院で投与された薬剤と処方薬との相互作用の確 の薬局が薬薬連携の対象となることもあるので、岐阜地 認、投与後の副作用の確認など、薬局薬剤師に要求さ 区 以 外の会員が岐 阜 地 区の薬 薬 連 携を把 握できるよ れる業務内容が刻々拡大し、変化しています。 これまで う、県薬会誌に薬薬連携の状況などを頻繁に掲載する 外来で投与される注射剤は、情報伝達の対象から漏れ とともに、県 薬・市 薬ホームページに「 薬 薬 連 携の手引 て薬薬連携の盲点となっていましたので、その対応とし き」など関係文書を掲載することにしました。 この関係文 て、①薬局薬剤師による抗癌剤(TS-1)処方についての 書は現在、市薬ホームページで会員・非会員を問わず、 疑義照会の強化と、それを支援する、②病院薬剤師に 誰でも閲覧可能です。 よる病 院で投 与された抗 癌 剤の注 射 剤の情 報 提 供を (市薬ホームページ http://www.gifu-shiyaku.net/yakuyaku/) 推進しています(図2)。 また、隣接する地域との合同研 ②医師会・歯科医師会への啓発不足⇒ 院外処方箋 修会も計画しています。今後も引き続き、連携範囲の拡 を発 行していない医 療 機 関の患 者さんが薬 薬 連 携の 大と連携内容の向上に努めていきたいと考えています。 6
© Copyright 2024 ExpyDoc