これからの推薦・AO入試指導

載
連
高校生活で養う課題意識・コミュニケーション力
これからの推薦・AO入試指導
藤岡慎二
株式会社
Prima pinguino
代表取締役
生徒の志望理由書が似通っていると悩むことはないでしょうか。オリジナリティ
のある志望理由は、特別な経験がなければできないわけではありません。その
生徒らしい志望理由のテーマを設定する力は、学校生活の中で問題を発見
し、解決に向けて考える経験を重ねることで育まれます。
第8回
ことが求められます 。大 学で 学ぶう
題・課 題つまりマイテーマを 発 見 する
推 薦・AO入 試では特に志 望 理 由
書 において 、自 らが 取 り 組 むべき 問
題 の 解 決に活 躍 す る 事 を 期 待 しま
スを 主 体 的に体 験し 、社 会で 現 実 問
解 決の処 方 箋 を 作り実 行 するプロセ
生を求めます。問 題を発 見・分 析し、
念 とし 、
﹁ 問 題 発 見・解 決 ﹂に拘 る 学
できます。しかし、
取り組むべき問 題・
れば気になることが変 わるのは理 解
ている生 徒たちにとって、時 代が変わ
題となっていました。時 代の中を生き
2011年の震 災の年はメディアが問
唱です。その前は自 己 肯 定 感 、
さらに
高校生活でつける
﹁マイテーマ﹂を設定する力
えで 、目 的 意 識や問 題 意 識 を 明 確に
す。︵以下 、略 ︶﹂
たり、明らかにしながら 、その過 程で
つ問 題 意 識 を 、学 問 を 通じて 探 求し
方に問 題・課 題からマイテーマを設 定
下 げて追 究 するための深い洞 察 力 を
東 京 大 学のアドミッションポリシー
にも﹁︵ 前 略 ︶自らの問 題 意 識 を 掘り
課 題から 進 路 先 まで 似 通 るのはいか
学ぶ場が大 学だからです。
マイテーマの設 定は特 別 なこと 、つ
まりは特 別 な 活 動 をしていなければ、
する 力が重 視 されていると 言 えるで
ある問 題・課 題をあたかも自らのモノ
原因は問題・課題を
発見する力の欠如
問 題・課 題 を 設 定 するときに陥り
がちなことは、生 徒が安 易に、周 囲に
として捉えることと言えるでしょう。
慶 應 義 塾 大 学 総 合 政 策 学 部の入
学 者 受 入 基 準︵アドミッションポリシ
由 書のテーマを 見ると 、貧 困が多 く 、
す。昨 年 度と今 年 度の生 徒の志 望 理
て 生 徒の 問 題・課 題 が似 通ってきま
してき なさい﹂と 言 う と 、大 体におい
推薦・AO入試の中で求められる
﹁ あなたなりのテーマを設 定
生 徒に
マイテーマの設定
ある﹁マイテーマ﹂の設 定なのです。
その生 徒にとって 取り 組 む 必 然 性の
めるとは思えませんよね。必 要なのは、
問 題だ ﹂と主 張 する能 力 を 大 学が求
聞 を 読み、記 事 を 指 差して 、
﹁これが
大 学が望 む 能 力ではありません。新
大 学は歓 迎します ﹂とあるように、双
がなものでしょう。
できない行 為と思われがちですが、そ
しょう。
真 剣 に 獲 得 しよ う と す る 人 を 東 京
うではありません。高 校 生 活から 発
これは問 題・課 題の発 見ではなく 、単
ー︶
には、以 下のよう な 記 述がありま
猫 も 杓 子 も﹁ 貧 困が問 題 だ ﹂の大 合
な る 問 題・課 題 の 選 択 能 力 であり 、
す。
﹁ 総 合 政 策 学 部は﹁ 実 践 知 ﹂を理
こともできます。
見できますし、問 題 発 見 能 力 を 磨 く
単なる﹁選択﹂に陥りがちな
問題・課題設定
選 択できません。なぜなら、学 生がも
し なければ 学 部 はおろか、大 学 す ら
ふじおか・しんじ● 1975 年生まれ
慶應義塾大学大学院修了。数学や
生物の大学受験対策を教える塾講
師を経て、大学院でキャリア教育の
重要性に気付き、研究を開始。小学
生から社会人までを対象とした現場
指導経験を有し、推薦・AO 入試対
策、社会人基礎力の指導や教材・プ
ログラム開発を大手大学受験予備
校や高校・大学で行う。島根県立隠
岐島前高校をはじめとし、
行政と協業
し教 育を通じた地 方 創 生に取り組
み、現在、北海道から沖縄までの高
校魅力化プロジェクトに参画、高校
連携型の公営塾を運営。
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2016 OCT. Vol.414
貧 困 という 状 態が解 消 されたあるべ
状 態によって 引 き 起こされる 現 状 と 、
り、問 題ではありません。貧 困 という
問 題 とはあるべき 姿 と 現 状のギャ
ップです 。例 え ば 貧 困
“ は 状 態であ
法について考えましょう。
う 。まずは問 題・課 題 を 発 見 する方
発 見 方 法 を 学ぶ機 会の少 なさでしょ
している理 由は、生 徒が問 題・課 題の
する 力が不 足しているのです 。不 足
整 理したうえで 、問 題や課 題 を 発 見
態 に 関 して 、状 況 を 把 握 し 、情 報 を
ます。生 徒 自 身が違 和 感を覚えた事
問 題・課 題が似 通ってしまう 原 因
は、生 徒の問 題・課 題 発 見 能 力にあり
え る ものにまででき るかの 違いと な
題 を 選んだだけか、﹁マイテーマ﹂と言
え 、明 確にできるか。それが、単に問
くるかもしれません。どこまで深 く 考
考 えるう ちに、必 要 な 学 問が見 えて
また、解 決にいたるアプローチ方 法 を
違 う 問 題に気 付 くかもしれません。
のは何か。情 報 を 集めていくうちに、
の課 題なのか、具 体 的に取り組みたい
が考える理 想 状 態とは何か、何が一番
取り組む理 由があるはずです 。自 分
同じ貧 困であっても、生 徒それぞれに
るというプロセスが大 切なのです。
掘りし 、そこにある 課 題 を 明 確にす
てから 、問 題 が起 きている 原 因 を 深
き 問 題が存 在します 。問 題 を 把 握し
うするかなど、問 題・課 題を発 見する
の登 下 校のマナーを 良 く するにはど
てもらうにはどうすればよいか、生 徒
会 活 動でも 、文 化 祭に多 くの人に来
部 員が主 体 的にならないのか。委 員
の宝庫です。なぜ試合で勝てないのか、
目しましょう。課 外 活 動は問 題・課 題
次に、部 活や委 員 会 活 動 などの課
外 活 動で 身に付けるタイミングに注
だけでも意 味があります。
させ、大 人からフィードバックを 得 る
いかに解 決するのかを考えさせ、発 表
徒に仕 事における問 題・課 題は何か、
徒に突きつけてはどうでしょうか。生
終 わらせず 、仕 事における 課 題 を 生
夫 次 第では有 効ですが、体 験 だけで
条から 志 望 理 由 のテーマが導かれた
している言 葉です。価 値 観・信 念・信
価 値 観・信 念・信 条 とは座 右の銘
など生 徒が信じている、心の拠り所に
信 条に基づいた行 動や思 考です。
からです。大 切なのは価 値 観・信 念・
望 理 由のテーマとなるのは不 自 然 だ
﹁たまたま ﹂出 会った経 験や体 験が志
ドを捏 造する場 合もあります。
するなどのアリバイ 作りや 、
エピソー
験 を 作 るために 高 校 生 団 体 を 結 成
たいからでしょう 。場 合によっては体
行 き 着いたように、志 望 理 由 で 書 き
こでの 体 験 から 貧 困 という テーマに
志望理由
思考や行動が志望理由の根拠の
場合は「自分なりのテーマ」
として、
価値観・信念・信条が根拠の場合
と比較すると弱い。
行動特性
問 題・課 題 を 発 見し 、深 く 掘り 下
げる能 力は高 校 生 活で十 分に身につ
きます 。身に付けるタイミングは、授
業 と 課 外 活 動 。授 業においては課 題
とは認められないようです。なぜなら、
先 生 方が問 題を解 決するのではな
く 、生 徒たちに問 題・課 題を明 確にさ
ことを考えたり、
行 動したりできます
ると 信じています 。人は思っていない
時にこそ 、生 徒 なりのマイテーマにな
せ、解 決に向かわせるナビゲーターと
︵ も ち ろ ん 葛 藤 を 感 じ な がら 、で す
からです。
う 。自 身のアイデンティティに関わる
条に嘘 をつくことは至 難の 技でしょ
が︶。しかし、自らの価 値 観・信 念・信
なることが重 要です。
生徒なりの価値観・信念・信条
からマイテーマを見つける
最 近 の 生 徒 のマイテーマの 探 し 方
を 見ていて、気になることがあります 。
つまり、価 値 観・信 念・信 条 、それらに
適な機 会です。解 決に向けた探 究 活
験や体 験 、
エピソードを強 引に作る方
基づいた思 考や行 動 、経 験・体 験から
生 徒の価 値 観・信 念・信 条は、生 徒
の 思 考 や 行 動により 証 明 されます 。
を 集 め 、原 因 を 追 究 し 、段 階 を 踏 ん
法です 。例えば、受かりそうなテーマ
こそ 、生 徒 なりのテーマが生まれると
大 学に受かりそうなテーマを挙 げ、経
だ 試 行のプロセスを 体 験できるから
が貧 困 だと 決めた 生 徒は、貧 困に関
動 のなかで 、理 想 状 態 を 考 え 、情 報
です。
思います。
インターンシップや 就 業 体 験 も 工
係 ある体 験 を 自 分から作ります 。そ
を 発 見し 、解 決 するよう な 学 習は最
その行 動の動 機に信 念が感じられ
ない場 合 、大 学に
﹁ 生 徒なりのテーマ﹂
き 姿︵ビジョン︶
の間にこそ 、解 決 すべ
能 力を鍛える機 会は多 分にあります。
(テーマ・問題
やりたいこと)
思考特性
問題・課題を深める能力は
授業や課外活動で身に付ける
るでしょう。
価値観・信念
信条
人となり個性
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生徒の価値観・信念・信条が志望
理由の根拠の場合は、
「自分なり
のテーマ」
として認識されやすい。