■第 11 回 ARES マスターコンベンション 第 11 回 ARESマスターコンベンション 日 時:平成 28 年 7 月 13 日(水)16:30 ∼ 19:30 会 場:帝国ホテル 東京 孔雀東西の間、富士の間 【プログラム】 ■第Ⅰ部 セレモニー・講演(孔雀東西の間 16:30 ∼ 18:00) ■ 主催者挨拶 岩沙 弘道(フェロー) 一般社団法人不動産証券化協会 会長 三井不動産株式会社 代表取締役会長 ■ 来賓挨拶 中島 淳一氏 金融庁 総務企画局 審議官 海堀 安喜氏 国土交通省 建設流通政策審議官 September-October 2016 107 ■第 11 回 ARES マスターコンベンション ■ 成績優秀者表彰、継続教育上位者表彰 ● 成績優秀者表彰 福岡 賢紀氏(M1606687) 嘉本 明史氏 (M1606964) 鴫濱 直樹氏(M1606740) 松尾 光剛氏 (M1606695) 入野 史寛氏(M1606896) 清水 直幸氏 (M1606884) 藤村 秀雄氏(M1606765) 大久保 道雄氏(M1607011) 伊倉 健之氏(M1606645) 板倉 弘実氏 (M1606956) ● 継続教育上位者表彰 飯島 中夫氏 (M0902413) 川北 昌彦氏 (M1506219) 齊藤 洋一郎氏(M0902724) ■ 講 演 世界経済の潮流とアベノミクスの行方 熊谷 亮丸氏 株式会社大和総研 執行役員 調査本部副本部長 チーフエコノミスト ■第Ⅱ部 ネットワーキングパーティー(富士の間 18:10 ∼ 19:30) ■ 乾 杯 田邉 信之氏(フェロー) 宮城大学 事業構想学部 教授 一般社団法人不動産証券化協会 教育・資格制度委員長 (会食、歓談) ■ 閉 会 108 ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.33 主催者挨拶 岩沙 弘道 一般社団法人不動産証券化協会 会長 三井不動産株式会社 代表取締役会長 総研の熊谷亮丸チーフエコノミストより、 「 世界経済 の潮流とアベノミクスの行方」をテーマにご講演いた だきます。 本日は、お忙しいなか、金融庁の中島総務企画局 熊谷様には、講演を快くお引き受けいただきまし 審議官、国土交通省の海堀建設流通政策審議官を たことを、厚く御礼申し上げます。ご講演では、世界 はじめ、多くのご来賓の皆様にご出席をいただき、 経済とわが国経済について様々な視点から展望をし 誠にありがとうございます。 ていただきます。激動する経済全体の大局観をお話 資格創設 11年目となるARESマスター資格制度 しいただくことで、その潮流のなかにある不動産投 は、本年 、新たに594 名のマスターを迎え、資格認 資市場についても示唆に富んだものになると期待し 定者は6,500 名を超えるまでに成長いたしました。 ております。 創設以来、金融庁・国土交通省をはじめとする関 世界経済は、新興国や資源国経済の減速に加え、 係各位の多大なご支援、さらには会員各社の積極 英国のEU 離脱に関する国民投票の結果等を受け、 的な取り組みに対しまして、感謝申し上げるととも 不透明感が増しております。わが国経済は、基調と に、本日、このように盛大にコンベンションを開催で しては緩やかな回復を続けているものの、世界経済 きますことを心より嬉しく思います。 の不確実性の高まりを背景に、力強さに欠く状況が マスター資格制度は、投資家保護と不動産投資市 続いております。このような中、わが国の不動産投 場の健全な発展に寄与するという基本的な理念を 資市場は、不動産市場の良好なファンダメンタルズ等 基礎としております。その根幹にある考え方は、い を背景に、Jリートや私募リートが着実に成長を続 わゆるフィデューシャリー・デューティー、つまり、市場 け、堅調に推移しております。 に従事する専門家が受託者責任を貫徹するという精 7月10日の参議院議員選挙では、自民、公明の連 神にあります。この点は重要なことですので、後程、 立与党が改選議席の過半数を獲得いたしました。 改めてお話をさせて頂きます。 政府・与党には、アベノミクスをさらに加速させ、デフ さて、本日のコンベンションでは、株式会社大和 レからの脱却と「 名目GDP600 兆円」の実現に向け September-October 2016 109 ■第 11 回 ARES マスターコンベンション た各種の課題解決に取組み、国民の期待にしっかり 促進し、成長分野への民間資金の流れを加速する と応えていただきたいと思います。 ことが重要です。我々にとって、不動産投資市場の 6月に閣議決定されました「 経済財政運営と改革 成長は、単なるビジネスチャンスの拡大にとどまら の基本方針 2016 」をはじめとする政府の重要方針 ず、より高い社会的使命を果たさなければならない では、わが国が構造的に抱える少子高齢化や人口 ことを意味します。その実践のためには、資産運用 減少への対応 、経済社会の革新などに向けた包括 の高度化と、それを規範面で支えるフィデューシャ 的な政策が取りまとめられました。 リー・デューティーという理念が極めて重要となりま 不動産証券化の関連で申し上げますと、 「 日本再 す。この理念は、受託者が、委託者の期待や信任に 興戦略2016 」では、インバウンド観光やヘルスケア 応えるため、一般の法規制を越えて自らの役割と責 等の成長が見込まれる分野での不動産の供給促進 任を担うべき、という考えかたで、マスター資格制度 や、リート等の資産総額を約30 兆円に倍増する目標 の理念にも通じる基本的な精神といえるものです。 が明示されております。このことは、当協会が掲げ 冒頭で申し上げました通り、マスターの皆様には、こ るJリート・私募リート等の資産総額30 兆円を目指す のフィデューシャリー・デューティーの精神が常に求 という中期目標とも共通するものであり、Jリート等 められていることを心に留めて行動していただきたい の活用による社会資本の充実と市場拡大の目標に と思います。 ついて官民で共有することができましたことを、大変 心強く思っております。 とプレゼンスの向上に向け、継続教育の充実に取り 当協会としても、市場の拡大を通じて、わが国の 組んでまいりますので、積極的に活用し専門家とし 成長と各種課題の解決に貢献できるよう、使命感を ての自己研鑽に努めていただきたいと思います。本 持って諸活動に取り組んでまいります。 日お集まりの皆様が、大いにご活躍されますことを 政府が描く経済成長の実現に向けては、不動産 投資市場を活用した資金の好循環をこれまで以上に 110 当協会としても、マスター資格制度の一層の普及 ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.33 祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。 来賓挨拶 機関の双方に対して働きかけを行っていく必要があ る」ということが盛り込まれております。 家計に対しましては、これまでもNISA、ジュニア NISA等の導入あるいは新たな確定拠出年金制度の 活用などを進めており、また金融経済教育といった環 境整備にも引き続き取り組んでまいりたいと考えてお ります。 金融機関あるいは関係する事業者に対しましては、 岩沙会長からもお話のありました、いわゆるフィデュー シャリー・デューティー、これは非常にやはり難しいで すけれど、我々はよく顧客本位の業務運営と呼んでお 中島 淳一氏 ります。家計からいわゆるインベンストメントチェーン 金融庁 に携わる全ての人、最後の投資先に至るそこにかかわ 総務企画局 審議官 るすべての人が顧客本位の業務運営に取り組んでい ただくということを、いかに定着させるか 、これが非常 本日は第 11回ARES マスターコンベンションがかく に重要な課題だと認識しておりまして、現在、金融審 も盛大に開催されますことを心よりお喜び申し上げま 議会でそのためにどうすればいいのかと議論をしてい す。また、このような場でご挨拶させていただく機会 るところであります。 を頂戴し 、誠にありがとうございます。 ARES の会員の皆様をはじめ、ご来場の皆様にお かれましては、平素より我が国金融資本市場、不動産 投資市場の健全な発展にご尽力しており深く敬意を 表する次第であります。 不動産投資市場の活性化は、活力ある金融資本市 場の実現の中でも非常に重要な課題であり、金融庁と しても必要な施策に取り組んでおります。 例えば、ヘルスケアリートについては貴協会と国土 交通省、東京証券取引所、金融庁が共同しまして昨 本日はこの場をお借りして、金融庁が現在取り組ん 年11月以降 、全国 4カ所でセミナーを実施してまいり でおります活力ある金融市場の発展に向けて申し上 ました。今後とも貴協会とも協力してこうした活動に げたいと思います。先ほど岩沙会長からアベノミクス 取り組んでまいりたいと考えております。 のお話がございましたが、従来、金融庁はややもする その他にも広く市場関係者のご意見を聞きながら、 と金融処分庁と言われ 、法律を振りかざすそんなとこ 金融庁としてJリート市場の育成に積極的に取り組ん ろもありましたけれども、アベノミクスのなかで、今は でいきたいと考えております。もちろん市場の担い手 金融育成庁ということで経済の成長に寄与するという である皆様方におかれましても、創意工夫あふれる取 ことを大きな政策の柱に掲げております。 り組みを推進して、ますます魅力ある不動産証券化市 先般取りまとめられました政府の成長戦略において 場が実現されることを大いに期待をいたしております。 は、アベノミクスの一環として「より良い資金の流れを 最後になりますけれども、本日ご出席の皆様方のご 実現し 、国民の安定的な資産形成につながるポート 健勝と不動産証券化市場のますますの発展を心より フォリオ・リバランスを促進するためには、家計と金融 祈念いたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。 September-October 2016 111 ■第 11 回 ARES マスターコンベンション 来賓挨拶 不動産投資市場は、我が国の国民生活と経済成 長を支える不動産ストックの質的・量的向上のため に欠かせない存在となっております。この不動産投 資市場の発展を、不動産証券化協会と歩調を合わ せて進めるため 、 「 2020 年頃までにリート等の資産 海堀 安喜氏 国土交通省 建設流通政策審議官 規模を約 30 兆円に倍増することを目指す」という目 標を政府の成長戦略で掲げました。 この目標の達成に向けて、関係省庁とも連携し 、 観光やヘルスケアなどの成長分野の不動産供給の 本日ここに、不動産証券化 協会の主催により 促進 、志ある資金による空き家等の再生、公的不 ARES マスターコンベンションが開催されるに当た 動産の有効活用などを通じて、都市力の向上、地 りまして、一言お祝いを申し上げます。 方創生を実現し 、2020 年頃までの名目GDP600 兆 はじめに、このコンベンションの主催者である不 動産証券化協会の岩沙会長を始め 、関係の皆様 、 ております。 また本日ご来場の皆様には、平素より我が国にお 既に現在、不動産特定共同事業法の充実に向け ける不動産証券化の推進にご尽力をいただき、深 たワーキンググループを設置して、関係の皆様のご く御礼を申し上げます。 協力もいただきながら、制度の検討を進めておりま また、今年 4月の熊本地震において被災された す。 方々に対しまして心からお見舞い申し上げます。国 また、本年度はJリート等による不動産取得の際 土交通省におきましては、被災地域の復旧復興と の流通税の軽減措置や、事業用資産の買換特例な 被災者の生活の安定に向けて引き続き全力で取り どが適用期限を迎えることから、これらの措置の 組んでいるところでございます。本日お集まりの不 継続・拡充に向けて、不動産証券化協会とも緊密に 動産・金融の関係者の皆様におかれましても、ご協 連携しつつ、取り組んで参る所存です。ご来場の 力のほどをよろしくお願いできればと存じます。 皆様におかれましても、一層のご支援とご尽力を賜 さて、我が国の不動産投資市場の中核的存在で 112 円という政府の目標達成に貢献して参りたいと考え りますよう、重ねてお願い申し上げます。 あるJリートの運用資産は総額約15 兆円に及ぼう 最後に、不動産証券化の進展と不動産証券化協 としており、運用資産もホテル、物流施設、ヘルス 会の更なるご発展 、またお集まりの皆様のますます ケア施設、海外不動産など、多様化が進んでいま のご活躍を心より祈念いたしまして、私の挨拶とさ す。 せていただきます。 ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.33 乾杯挨拶 ことも期待されるところです。 田邉 信之氏(フェロー) 宮城大学 事業構想学部 教授 一般社団法人不動産証券化協会 教育・資格制度委員長 折角の機会ですので、私が各方面の有識者の 方々とお話しする中で、最近 、感じている市場の見方 のポイントを2つほどご紹介したいと思います。 一つは、インカム目的の投資対象としての不動産に 諸先輩のいらっしゃる中で大変僣越ではございま すけれども、乾杯のご挨拶をさせていただきます。 関するものです。ご承知のとおり、世界的に低金利 が続いていることから、投資家のインカム志向が強くな まず、今回マスターに合格された皆さま、本当にお り、不動産投資に多額の資金が向かうようになってい めでとうございます。あの難しい試験を通ってこられ ます。そこで、日本の不動産の利回り(インカム) は中 たのですから、大変な熱意とご努力があったものとご 長期的にはどれくらいなのかなと思い調べたところ、 推察致します。皆さまが私達の仲間となりますこと、 今は4%から6%程度ですけれども、かなり以前から同 心から歓迎申し上げます。 程度の利回りが続いています。ところが日本の事業 また、本日いらしていただいているご来賓の方々、 フェローの方々、そして既にもうマスターになっておら 会社全体の総資本利益率は、高度成長期には6%か ら8%ありましたが、今や2,3%まで落ちてきています。 れる方々、ご多忙のところご参加いただき誠にありがと ですから、多くの事業会社が不動産というものに目を うございます。おかげさまで、本日は約 1,000 名の方々 つけ始めた、あるいは不動産投資を始めたいと思うの にご参加いただいているとうかがっております。 は、合理的な判断であり、ある意味では時代の潮流と 今やマスターの数は6,500 名を超え、なおも毎年 も言えるかもしれません。ただし、総資本利益率の2% 1,000 名以上の方々が受験しております。これも、日 とか3%というのはあくまで平均であり、利益率の高い 頃からの皆様のご支援 、ご協力の賜物であると感謝 企業は2桁を超えているところもあります。そういった しております。 企業にとっては、逆に不動産は外に売って、本業に特 不動産証券化市場も投資対象や投資家層がます ます広がり、着実に成長してきております。先ほど大 和総研の熊谷様からお話がありましたとおり、マイナ ス金利がさらにまた不動産市場にプラスに働いてくる 化していく方が有利ですから、そうした動きがもっと出て きてもおかしくありません。 その意味では、こうした潮流は、不動産の流動化 を促進することにつながってくると考えられます。 September-October 2016 113 ■第 11 回 ARES マスターコンベンション もう一つは、資産としての不動産に関するものです。 トマ・ピケティの『 21 世紀の資本 』という本は、格差 今、申し上げました二つのポイントを組み合わせます 拡大についての実証的な分析で知られていますが、 と、不動産の利回りは安定的であり、かつ資産として その分析の前提として「資産 」というものについてか の不動産の重要性が高まってくるということになります。 なり深く考察しています。そこでは、国の資産価格が そうした観点からしますと、多くの方々に不動産に投資 国民所得の何倍になっているか、その比率を、世界 していただくことは、国民の資産形成から見ても、国 の主要国について長期間にわたって推計しています。 の政策から見ても大変有意義なことではないかと思い それによれば、この比率は戦前には高い水準を維持 ます。その商品の代表がJリートですから、Jリートは していたのですが、戦争の影響による資産の滅失や 国民を幸せにするすばらしい金融商品ではないかと 戦後の資産規制の強化などによって、大きく低下する 改めて思う次第です。 こととなりました。この立場からは、戦後に不動産や その意味で、国土交通省や不動産証券化協会が 株式などの資産価格が世界的に上昇したのは、資 掲げる目標 、すなわち2020 年ごろまでにJリート等の 産価格の回復過程にあったからということになります。 資産規模を30 兆円程度にするというのは、まさに時 ピケティは、2010 年頃にはほぼ適正水準にまで戻って 宜に即したものと言えるのではないでしょうか。ただ、 きていると分析しています。 その目標を達成するためには、マスターを中心に市場 同時に、 ピケティは貯蓄率の水準に大きな変化がな く、低成長経済が続けば、資産の所得倍率 、すなわ 114 ていくか、今後の大きな課題となってくるでしょう。 で活躍される方々が一致団結して市場の育成を図っ ていく必要があるように思います。 ち資産の重要性は、これからさらに高まってくるだろう 本日のコンベンションも、意見交換の場としてあるい と予測しています。だからこそ資産を持つ者と持たざ はネットワーキングの場として、大いに活用していただ る者の格差が広がってくるのです。資産のうちの約 ければと存じます。 半分が不動産です。ということは、これから資産とし それでは、不動産証券化市場のますますの成長 ての不動産の位置付けが、より重要性を増してくる可 と、皆様方のますますのご健勝とご活躍を祈念いたし 能性があるということです。これを、どのように生かし まして、乾杯をいたしたいと思います。 ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.33
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