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株式会社行楽ジャパン
中国で唯一、中国語による日本紹介に特化したトラベル&ライフスタイル雑誌「行楽」を出版する上海
征西広告有限会社は 2015 年 9 月、東京に日本法人として株式会社行楽ジャパンを設立。中国人
の訪日観光ブームを背景に、SNS など様々な広報ツールを用いて日本の魅力を発信している。同社の
代表を勤める袁静氏に日本におけるビジネスについて話を聞いた。
行楽ジャパンの親会社である上海征西広告有
限会社は、2007 年に中国・上海で設立され、
日本が中国にとって身近なリゾートになれるという確
信を持ったのです」。
2013 年から中国沿岸部の富裕層の女性をター
一方、事業を立ち上げた 2009 年は、中国人の
ゲットに、中国国内初の中国語による日本紹介
に特化したトラベル&ライフスタイル雑誌「行楽」を
刊行している。1 号当たりの月発行部数は中国
訪日に対する個人観光ビザが解禁されたばかりで
あり、中国人は団体旅行で日本を訪れるのが一般
的であった。周りから「中国ではビジネスにならないの
全土で 20 万部以上に上り、中国で圧倒的な人
気を誇っている。
では」と言われることもあったという。
しかし、その後の日本政府によるビザ発給要件
誌面では、中国人にはまだ知名度の低い日本
の地方の魅力が多く取り上げられている。一般的
な観光ガイドとは異なり、「本物の日本」、「上質
の緩和、日中直行便の拡充や、円安の進行と合
わせて、多くの中国人が日本を訪れるようになった。
同社が「道中人」を創刊した 2009 年に約 8,000
な日本」を伝えるというコンセプトのもと、古民家カ
件であった個人観光ビザの発給数は、「行楽」の
フェやおしゃれな雑貨屋、地方の隠れた名所など
の記事が美しい写真とともに並ぶ。旅だけでなく、
発行を開始した 2013 年にはおよそ 20 倍である約
17 万件にまで増加。それとともに、同誌の人気も
日本のモノやライフスタイルも紹介しており、日本
高まり、大手オンライン通販サイトの雑誌売れ筋
人から「日本語版を出して欲しい」との声が出てく
るほどだという。
ランキングには常に上位にランクインするようになっ
た。また、最近の訪日中国人旅行者の興味は
「買い物」から「体験」に移っており、質の高い旅を
求める多くの中国人の読者は更に増え続けている。
「今まさにやり応えを感じているところです」と袁氏
も笑顔を見せる。
「行楽」創刊の背景
同社を立ち上げた袁氏は、もともと上海に住む一
般の専業主婦であった。ある時家族で訪れた北海
道の魅力に心を打たれ、日本紹介に特化した雑誌
を創刊しようと決意したという。事業の創設には、以
前日本の出版社で勤務していた経験を活かした。
「実は北海道に勝る美しい場所は中国にもたくさん
あります。しかし、北海道は自然や食べ物だけでなく、
中国ではまだ整備されていないサービスやおもてなし
等のソフト面が非常に充実していました。だからこそ、
観光地としての地方の魅力
中国人の個人旅行が増えるにつれ、地方自治体
や観光関連企業とのタイアップ記事に関する依頼も
増えているという。例えば、日本の大手メーカーとの
コラボレーションでは、一般読者の中から応募したカ
メラの達人をまだ知られていない日本の地方の魅力
的な「秘境」へ招待し、彼らの目線からその土地の
魅力を紹介する特集をシリーズで組んでいる。
また、今年 4 月に発生した熊本地震の影響によ
り観光客が落ち込んでいる九州では、県や自治体
と協力し、活気を取り戻しつつある九州の現状を紹
介することで、観光客の回復につなげたいと考えて
いる。「上海と九州は週何十便もフライトがあり、飛
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行時間も 90 分ほど。週末にふらっと美味しいものを
「2014 年後半あたりから、日本に窓口が必要だと
食べて、買い物をしに行くことができる。この雑誌を
読んで、ぜひ九州に行ってみたいと思う人が増えれ
強く感じるようになりました。日本は政府主導で観
光に力を入れていることもあり、日本への進出を決
ば」と、袁氏は語る。
定してからは、日本政府観光局(JNTO)やジェトロ
の力を借り、法人設立までスムーズに進めることがで
きました」と袁氏は語る。また、ジェトロのサービスを
利用したことで、同社との取引を検討している日本
企業に対し、「ジェトロから支援対象として認められ
ている企業」として印象付けることもできたという。
同社の日本法人設立に際し、ジェトロ対日投資
部は、テンポラリーオフィスの提供、登記・税務・労
務に関するコンサルテーション、サービスプロバイダ
(司法書士)紹介などを行った。「ジェトロのサービス
を受けているのは、大企業ばかりという印象があった
が、我が社のような小規模な企業に対しても、様々
な支援をしていただけて大変感謝しています」と袁
氏は述べた。
多様な日本紹介ツール
中国の人々により深く日本を知ってもらうため、雑
誌という枠にとどまらず、読者参加型のイベントや、
SNS での情報発信も行っている。同社の主催する
読者参加型のイベントは上海や北京などの沿岸部
を中心に、過去 30 回以上実施。共催・協力等も
含めた開催数は 40 回にも及ぶ。参加者は日本の
文化を体験したり、日本のお土産や商品をもらえた
りと、楽しみながら日本の魅力を知ることができる。
また、同社は中国で大きな影響力を持つ微博
(ウェイボー)や微信(ウェイシン)などの SNS を利用
した広報・PR コンテンツの受託運営にも力を入れて
いる。隔月発行の雑誌と合わせて SNS を利用する
ことで、旬の情報を迅速に届け、直接読者からの反
応をもらうことができる。今後は、オンライン上での
PR により力をいれるため、自前のオンラインプラットフ
ォームの構築も検討しているという。
日本進出とジェトロのサポート
中国人観光客の訪日ブームを引き合いに、日本
企業や自治体からの問い合わせが増加していること
が、日本に拠点を設立するきっかけの 1 つになった。
上海征西広告有限会社・株式会社行楽ジャパン
代表取締役 袁静 氏
(2016 年 6 月取材)
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同社沿革
2007 年
中国に上海征西広告有限会社を設立
2009 年
2011 年
北海道の魅力を伝える雑誌「道中人」を創刊
九州の紹介に特化した雑誌「南国風」を創刊
2013 年
2015 年 9 月
「道中人」と「南国風」を合冊し、日本全国の魅力を伝える雑誌「行楽」を創刊
東京都に株式会社行楽ジャパンを設立
株式会社行楽ジャパン
設立:
2015 年 9 月
事業概要:
広告出版業
親会社:
上海征西広告有限会社
住所:
〒107-0062 東京都港区南青山 2-4-15-209
http://www.jishixingle.cn/
URL:
ジェトロの支援
- テンポラリーオフィスの提供
- 登記・税務・労務に関するコンサルテーション
- サービスプロバイダ(司法書士)の紹介サービス
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