要 旨 南シナ海の領土問題に関する戦略的分析

要
旨
戦略的分析
南シナ海の領土問題に関する戦略的分析
本稿は、南シナ海における論争(territorial issue)に関して、戦略的分析手法を用いて分析
したものである。分析では中国及び米国の戦略に焦点を当てている。
中国やインドをはじめとする経済成長を背景に、アジアは世界経済の成長センターといわれ
ている。そのような中、アジア太平洋地域とインド洋を結ぶ南シナ海は、地政学上、重要な海
域といえる。一方、中国が同海域に設定した九段線(nine-dash line)は関係国間で緊張を生起
させており、地域の安定(stability)、安全(security)、繁栄(prosperity)にとって喫緊な課題
となっている。
中国は南シナ海の主権を強く主張している。戦略目的(Ends)は、経済、軍事の二つのカテゴ
リーによって分析できる。経済上の目的は資源の獲得であり、軍事上の目的は、南シナ海への
接近阻止、紛争の抑止と考える。そして、これらの目的を達成するための方法(Ways)として、
地域における経済ネットワークの強化、二国間交渉を重視した外交、軍事力の強化と近代化及
び独自の歴史的主張等があり、戦略目的を達成するため、外交、軍事及び経済上の手段(Means)
を組み合わせている。
米国は第2次世界大戦後、西太平洋、インド洋の安定に寄与してきた。南シナ海における緊
張が継続する中、アジアに対するリバランス戦略を打ち出した。その目的(Ends)は、地域の安
定と国際ルール・規範を通じた国益の促進にあると考える。同目的を達成するための方法
(Ways)及び手段(Means)としては、同盟国やパートナーとの連携強化、軍事的プレゼンス、地域
における中国経済への依存低下や国際的な規範遵守に対するサポート等、ハードとソフトな方
法、手段(Hard and Soft Levers of Power)を用いていると考える。
国際社会の目的(Ends)は、中国による一方的な歴史的主張を黙認することなく、平和的に解
決することにある。そのためには、封じ込めや軍事的な方法等によるものではなく、多国間外
交や経済的手段、ストラテジック・コミュニケーション(Strategic Communications)といった
方法(Ways)によるべきであり、手段(Means)としては、ASEAN や EU といった地域の枠組みを通じ
た解決や南シナ海の活動を可視化できるメカニズムの構築、国際的な海洋課題に対する連携等
が考えられる。
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