第 20 回 CT サミット報告 ●エキスパートによる新たな技術の展開─その 1 3.Dual Energy Imaging 大橋 一也 名古屋市立大学病院中央放射線部 dual energy imaging は,物質が X 線 いて発表している 3)。この方式は,ほぼ の被ばくとなる。 エネルギーによって線減弱係数を変化さ 同時にデータ収集できることと,完全に 付加フィルタ方式は「SOMATOM せる作用に着目し,その差を応用して物 は一致していないため補間データにはな Definition Edge」 (シーメンス社製)に搭 質の弁別,仮想非造影画像,仮想実効エ るが projection data からも解析できる 載されている“TwinBeam dual energy” ネルギー画像など,さまざまな解析を行う 利点がある。しかし,エネルギースペク がこれに相当する。この方式は,X 線管 技術である。dual energy imaging 自体は トルの重なりが比較的大きいことと,管 球の前に異なる付加フィルタを入れるこ かなり古くから研究されており ,1979 年 電流の調整ができないために一定である とで X 線エネルギースペクトルを分ける には「EMI scanner」を使用して管電圧 ことが欠点として挙げられる 4)。d u a l 方法である。1 回のスキャンでほぼ同時 90 kV と 140 kV の 2 回転方式による方法 energy imaging は,高エネルギー側と にデータが収集できる利点はあるが,エ を使用した物質弁別について発表されて 低エネルギー側のノイズが同等であるこ ネルギースペクトルの重なりが比較的大 とで被ばくが最 適 化される。図 1 は, きいことと,付加フィルタによってノイ 1) いる 。しかし,異なるエネルギーの CT 2) 画像を取得することが煩雑であるために, 「SOMATOM definition」 (シーメンス ズが同等になるように調整されてはいる 臨床で広く使用されることはなかった。 社製)を使用し,特別な付加フィルタを ものの,被写体の大きさや目的の部位に 2005 年に dual source CT が発表され, 使用しない管電圧 80 kVと140 kV におい 対して高エネルギー側と低エネルギー側 同時に異なるエネルギーの CT 画像の取得 て管電流が一定の場合と同じノイズにな の細かいノイズ調整ができないことが欠 が容易になり,さらにコンピュータの処理 るように管電流を6:1で調整した場合の 点として挙げられる。 速度も高速化したことで,臨床の現場で ヨード(造影剤)画像(contrast image) 2 層検出器方式は「IQon スペクトラ 簡単に dual energy imaging の解析が可 である。同 等の c o n t r a s t - t o - n o i s e ル CT」 (フィリップス社製)に搭載され 能となり,この10年で多くの臨床報告があ ratio(以下,CNR)となる CTDIvol た新しい方式である。2 層検出器方式は, る。本稿では,いくつかある dual energy (computed tomography dose index) 検出器の前面の 1 層目に低エネルギー用 imaging のスキャン方法に対するメリット, は,それぞれ 34 . 19 mGy と 15 . 01 mGy の検出器,2 層目に高エネルギー用の検 デメリットについて論文と実験結果から解 となり,管電流が一定の場合は 2 倍以上 出器を備えた CT である。検出器の厚さ 説して,実際に当院での臨床応用を紹介し, 今後の可能性について解説する。 Dual energy imaging の技術的なアプローチ 現在臨床で応用されている dual ener- same contrast-to-noise ratio 80kV 140kV gy imaging の方法は,高速スイッチン のがある。 高速スイッチング方式は,Kalenderら が 1987 年に X 線 CT 装置「SOMATOM DR」 (シーメンス社製)を使用したカル シウム画像や軟部組織画像の取得につ 〈0913-8919/16/¥300/ 論文 /JCOPY〉 80kV 80kV contrast image 140kV 管電流一定 グ方式,付加フィルタ方式,2 層検出器 方式,2 管球方式,2 回転方式によるも contrast image 270mAs 管電流比 6:1 (80kV:140kV) 420mAs 140kV 270mAs 70mAs CTDIvol 34.19mGy 15.01mGy CNR 5.81 5.80 図 1 管電流が一定であることの問題点 管電流が一定の dual energy imaging は,ノイズが一定になるように調整された場合 の 2 倍以上の被ばく線量となる。 INNERVISION (31・10) 2016 23
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