【別紙】

【別紙】
1
当事者の概要
⑴
被 申 立 人 株 式 会 社 藤 商 会 ( 以 下 「 藤 商 会 」 と い う 。) は 、 昭 和 3 8 年 に 設
立され、建 物総合 保守管理、いわゆ るビルメンテ ナン スを営んでい る会 社
である。
⑵
被 申 立 人 学 校 法 人 国 際 基 督 教 大 学 ( 以 下 「 I C U 」 と い う 。) は 、 昭 和
28年 に 設 立 さ れ た 学 校 法 人 で あ り 、 大 学 を 設 置 し て い る 。
⑶
申 立 人 ユ ニ オ ン く つ ろ 木 ・ 北 多 摩 支 部 ( 以 下 「 く つ ろ 木 」 と い う 。) は 、
個 人 加 盟 の い わ ゆ る 合 同 労 組 で あ り 、 平 成 20年 11月 1 日 に 結 成 さ れ た 。 本
件 申 立 時 の 組 合 員 数 は 、 約 10名 で あ る 。
2
事件の概要
⑴
被 申 立 人 藤 商 会 ( 以 下 「 藤 商 会 」 と い う 。) の 従 業 員 で あ っ た X は 、 藤 商
会 が 被 申 立 人 国 際 基 督 教 大 学 ( 以 下 「 I C U 」 と い う 。) か ら 請 け 負 っ て い
た 大 学 構 内 の 保 安 警 備 業 務 に 従 事 し て い た と こ ろ 、 平 成 13年 11月 、 大 学 構
内においてICUに勤務する女性に対して性的いやがらせ行為を働いたこ
と等を理由に解雇された。
そこで、Xが加入していた申立外三多摩合同労働組合(以下「三合労」
と い う 。) は 、 藤 商 会 と X の 解 雇 撤 回 や 謝 罪 等 に 関 す る 団 体 交 渉 を 行 い 、 ま
た 、 X は 、 藤 商 会 を 相 手 と し た 解 雇 の 無 効 確 認 訴 訟 も 提 起 し た と こ ろ 、 18
年3月、藤商会はXの解雇を撤回した。その後も、三合労と藤商会とは、
Xの就労場所や賃金等の復職条件をめぐって団体交渉が行われたが合意に
い た ら ず 、 藤 商 会 は 、 22年 8 月 以 降 、 団 体 交 渉 に 応 じ な か っ た 。
2 4 年 8 月 、X は 、三 合 労 に 脱 退 届 を 提 出 し て 、申 立 人 ユ ニ オ ン く つ ろ 木 ・
北 多 摩 支 部 ( 以 下 「 く つ ろ 木 」 と い う 。) に 加 入 し 、 く つ ろ 木 は 、 藤 商 会 に
対し、解雇の謝罪や紛争の金銭解決等の可能性等について団体交渉を要求
した。ところが、三合労は、Xの脱退を認めず、藤商会とくつろ木との団
体 交 渉 等 は 三 合 労 に 対 す る 不 当 労 働 行 為 に な る 等 、藤 商 会 に 主 張 し た た め 、
藤商会は、くつろ木と三合労との間で交渉権限が調整・統一されるまで団
体交渉には応じられない旨をくつろ木に回答した。
⑵
ICUに対しても、三合労からは数度にわたり本件解雇に関する事実関
係 等 に つ い て 団 体 交 渉 の 申 し 入 れ が あ り 、 ま た 、 く つ ろ 木 か ら も 24年 9 月
以降、数度にわたり解雇の謝罪や金銭解決等について団体交渉の申し入れ
があったが、ICUは、Xと藤商会との間の労使紛争に関しては当事者で
ないとして、団体交渉に応じなかった。
⑶
本件は、①藤商会が、くつろ木からのXに関する団体交渉申入れに応じ
なかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か、②IC
Uは、Xとの関係で、労働組合法上の使用者に当たるか否か、ICUが労
働組合法上の使用者に当たる場合、ICUが、くつろ木の団体交渉申入れ
に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが
争われた事案である。
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3
主文
⑴
藤商会は、くつろ木がXに係る未解決の問題について団体交渉を申し入
れたときは、二重交渉のおそれがあることを理由にこれを拒否してはなら
ず、これに誠実に応じなければならない。
⑵
その余の申立ては棄却する。
4
判断の要旨
⑴
藤商会の団体交渉拒否について
労働組合の組合員には所属組合からの脱退の自由が認められ、Xは、三
合労に脱退届を提出し、三合労もXから脱退届が提出されている事実を自
認 し て い る の で あ る か ら 、 24年 8 月 23日 以 降 、 X は 、 三 合 労 を 脱 退 し 、 同
組合に所属していないことが認められる。
そうすると、Xは、二重在籍状態にあるとはいえず、Xの労働条件等に
かかる団体交渉について、三合労とくつろ木とで二重交渉を生じるおそれ
がある状態にはなかったといわざるを得ない。
X の 脱 退 を 認 め な い と い う 三 合 労 の 主 張 は 、法 的 根 拠 を 欠 く も の で あ り 、
藤商会としては、たとえ三合労から抗議等を受ける可能性があったとして
も、Xの脱退届の提出の事実を認識した以上、くつろ木との団体交渉に応
ずべきであったといわざるを得ない。
したがって、藤商会が、Xの労働条件等に係る問題について、二重交渉
のおそれ等を理由として、くつろ木との団体交渉に応じなかったことは、
正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。
⑵
ICUの使用者性と団体交渉拒否について
Xの解雇について、ICUの意思及び指示に基づくものであるとの疎明
はなく、ICUがXの解雇の決定に関与したと認めることはできない。
また、Xの従事していた保安警備業務において、ICUが警備員の具体
的配置を決定したり、直接、藤商会の従業員が従事する業務に対し、指揮
命令をしていたとの疎明はない。
さらに、ICUが、藤商会の従業員である警備員の出退勤管理、休暇の
取得、賃金の決定等について関与していたとの疎明はない。
したがって、ICUは、Xの労働条件等について雇用主である藤商会と
同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位に
あったとは認めがたく、ICUがXの労働組合法上の使用者に当たるとは
いえないから、ICUが、くつろ木の申し入れたXに関する雇用問題の団
体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たらな
い。
5
命令交付の経過
⑴申立年月日
⑵公益委員会議の合議
⑶命令交付日
平 成 26年 8 月 25日
平 成 28年 8 月 2 日 、 9 月 6 日
平 成 28年 9 月 28日
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