平成28年度 優良地方公営企業総務大臣表彰 表彰団体概要 岩手中部

平成28年度 優良地方公営企業総務大臣表彰 表彰団体概要
(団体名) 岩手中部水道企業団
(事業名) 水道事業
Ⅰ.公営企業の概要
岩手中部水道企業団は岩手県の中部に位置す
る北上市、花巻市及び紫波町の2市1町(以下、
「構成市町」)を構成団体とする一部事務組合
である。用水供給事業の岩手中部広域水道企業
団と構成市町の水道事業の4団体が事業統合し、
平成26年度から水道事業を経営している。
用水供給事業と末端給水事業の垂直・水平
統合により、経営基盤と技術基盤の強化が図
られ、経年施設の計画的な更新と人口減少社
会に対応した水道施設のダウンサイジング
が可能となり、持続可能な水道
事業経営を行っている。
【業務の状況】
給水区域面積
(平成27年度決算)
657.90㎢
給水区域内人口
223,863人
給水人口
216,707人
普及率
施設能力
一日最大給水量
96.8%
99,370㎥
78,176㎥
総配水量
25,605,278㎥
有収水量
20,429,263㎥
【主要施設】
Ⅱ.他の公営企業等の模範となる経営及び運営
1.垂直・水平統合による供給単価の低減
【供給単価の予測】
用水供給事業と末端給水事業が統合したことによ
り、市町村による単独経営よりも効率的な施設整備
が可能となっている。
用水供給事業として整備された岩手中部浄水場の
施設利用率を向上させ、脆弱な浄水施設の統廃合を
進めることにより更新投資額を抑制することができ、
事業統合せずに単独で経営するよりも供給単価を長
期的に低廉に抑えることができる。
2.将来を見据えた統一料金の設定
計画的な施設更新をした上で、施設の耐震化等の
機能向上及び施設実態の維持のために料金算定時に
資産維持費を計上し、水道料金を統一。料金を長期
的に安定した水準に維持することができ、給水区域
内の料金格差の解消と世代間で著しい料金格差が生
じないよう配慮している。
3.民間的経営手法の導入による経営の効率化
紫波地区の基幹浄水場の更新事業と浄配水施設の
運転管理業務の第三者委託をDBO方式により施行
している。また、広域化を契機に構成市町の料金業
務を一括して包括委託。水道の利用開始届出から、
検針、料金調定・収納、滞納整理、システムの管理
運営までの一連の業務を一本化して発注することに
より、利用者サービスの向上と経費の削減に寄与し
ている。
DBO方式で整備された古館浄水場
4.広域化に伴う施設再編
(1) 取水・導水・浄水施設の再編(集中と分散)
広大な給水区域と起伏に富んだ地形の中で水道
システムを構築しなければならないため、位置エ
ネルギーを有効に活用できる施設を中心に再編を
行うこととしている。
平成23年度の広域化事業計画策定時に34あった
浄水施設を現在までに4施設廃止し、将来的には
21にまで減少させることを目指している。
(2) 岩手中部浄水場の機能増強
標高が高い場所に位置する岩手中部浄水場は、
自然流下方式で配水できる優れた浄水場であるた
め、年間を通じて安定した浄水処理が可能となる
よう機能を増強し稼働率を向上させることで、圏
域全体で取水から配水にかかるエネルギーを削減
し、効率的な水運用と環境負荷の低減を目指して
いる。
(3) 配水系統の再編による送配水システムの強化
構成市町ごとに分断されていた既存配水区を再
編し、行政区域にとらわれない効率的な配水系統
の再構築を行い、送配水システムの強化を進めて
いる。
5.財務基盤の強化によるファイナンスの効率化
4団体が事業統合したことにより財務基盤が大
幅に強化されたことからファイナンス(資金調
達・資金運用)の効率化に取り組んでいる。
(1) 資金調達の効率化
財政規模が大きくなったことで資金収支が安定
したことから、企業債の調達方法を見直し、元金
償還据置期間の廃止と元金均等償還方式を採用し、
将来にわたる支払利息を大幅に減少させている。
(2) 資金運用の効率化
将来の施設更新財源となる留保資金を効率的に
運用するため安全性・流動性を最優先しながら公
共債による債券運用を行っている。
資金のボトムラインの把握、現金預金・有価証
券の保有割合の見直し、債券ポートフォリオの最
適化により、給水収益の1%~2%程の運用益を
毎年計上している。
6.プロパー職員の確保及び技術の継承
一定規模の職員を確保することにより財務会計、
アセットマネジメント、水質管理、施設管理、漏
水調査等の専門部署を設置することが可能となっ
た。また、企業団内の人事異動により事務・経営
能力まで含めた総合的な水道技術が醸成され、水
道事業全般を俯瞰する人材の育成が期待できる。
構成市町からの職員派遣に頼らず、水道専属の
プロパー職員を確保することにより、水道技術及
び財務マネジメント等の技術の継承が図られてい
る。