金型設計/加工

特集
最新のシミュレーション/CAE を活用した
短納期・高品質な金型づくり
金型設計/加工
製品事例
1
金型加工における
「VERICUT」の活用術
㈱CGTech 茨木
保彦*
「VERICUT(ベリカット)
」は CAD/CAM システ
がある。実機による検証作業は、長時間マシンオペレ
ムの CL(Cutter Location)データのシミュレーショ
ーターが付きっきりとなり、生産効率が上がらないば
ンとは異なり、工作機械で実行される G コード NC
かりか、高価な工作機械の衝突リスクも含んだ作業と
プログラムのシミュレーションを行い、エラーや衝突
なるため、マシンオペレーターや CAD/CAM オペレ
の危険防止、加工効率の向上を実現するシミュレーシ
ーターにとっては大変な心労となる。
ョンソフトである。VERICUT はエラーや衝突の検
出だけでなく、加工された切削モデルと設計モデルの
それらを改善するために、VERICUT マシンシミ
ュレータの活用を提案する。
比較による削りすぎ/削り残しの事前検査「オートデ
2.CAD/CAM シミュレーションとの違い
ィフ」
、さらに加工負荷を考慮した NC プログラムの
マシンシミュレーションには大きく分けて 2 種類
最適化「オプティパス」など、多彩な機能を提供する。 ある。CAD/CAM システム固有の CL データをもと
近年、付加価値の高い機械加工が求められ、工作機
に動作を行う方法と、工作機械に動作を指令する NC
械の段取り効率アップや自動化、統合化の傾向が強ま
プログラムをもとに再現する方法である。前者は近年
り、工作機械の複雑化・高性能化が進んでいる。これ
の CAD/CAM システムに多く見られるアドオンによ
に伴い、機械加工シミュレーションの需要はこれまで
る機能で、後者は単独のソフトウェアとなっている。
以上に高まってきている。
マシンシミュレーション
1.必要性
VERICUT は後者に分類され、工作機械で実行さ
れる NC プログラムを CAD/CAM システムの種類
に関係なく、実際の工作機械と同じ仕様の「仮想マシ
ン」によってシミュレーションを行う。一般的に、市
近年、増加してきている多軸加工機や複合加工機は、 販の PC を用いて NC プログラムに含まれるすべて
従来の 3 軸マシニングセンタの X 軸・Y 軸・Z 軸の
の動作を忠実に再現しなければならないことで、デー
動きに加え、A 軸・C 軸などの旋回軸が追加され、
タ容量はときとして数百 MB にも達するため、PC ス
高度な加工が可能となった。反面、干渉懸念部位も増
ペックに大きく左右される。しかし、VERICUT に
え、プログラムも複雑化する傾向にある。
おいては数 GB に及ぶ NC プログラムでも、当社が
マシンシミュレーションを行わない場合、被削材を
セットしない状態でのテスト運転や安価な代替被削材
によるテスト加工で、NC プログラムを検証する必要
長年にわたり改良を重ねてきた独自のアルゴリズムに
よって、高精度と高速の両立を実現している。
金型加工とシミュレーション
*
Yasuhiko Ibaraki:マーケティング
〒171−0021 東京都豊島区西池袋 1−5−3
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近年の動向として、国内における金型製作は複雑形
状・薄肉軽量化・高精度や、小型工作機械での生産を
型技術
第 31 巻 第 10 号 2016 年 9 月号
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