2016 年 8 月配信 【第 56 号】 名銀「アジアビジネスクラブ」 アジアクラブ通信 ― CONTENTS (第 56 号) ― ○ トピックス ベトナム南部における日系小売業の展開拡大 について ○ 次号のトピックス予告 次回は、中国からの現地情報をご紹介する予定です 1 ベトナム南部ホーチミン市では、7 月に入り相次いで日系大型商業施設がオープンしました。7 月 1 日にはイオングループがホーチミン市で 2 店舗目となる「イオンモール・ビンタン」を、7 月 30 日に は髙島屋がホーチミン店を開業しました。新イオンモールは市中心部から約 10 キロ(車で約 40 分)に 立地し周辺住民を主なターゲットとする一方、ホーチミン髙島屋は市中心部に立地しており富裕層、中 間所得層をターゲットとしています。コンセプトの異なる両者ですが、同じ日系小売企業として注目が 集まっています。 新イオンモールは、2014 年 1 月開業のベトナム 1 号店(ホーチミン市)、同年 11 月開業の 2 号店(南 部ビンズオン省) 、2015 年 10 月開業の 3 号店(ハノイ市)に次いで、国内 4 店舗目となります。地上 4 階建ての建物には約 160 店舗の専門店が入居し、既存店と同じく自社営業のスーパー、専門店、フー ドコート、映画館やゲームセンターも入るなど、南部の嗜好に合わせたエンターテイメント性の高いも のとなっています。 日系テナントとしてはコーナン商事が海外第 1 号店となるホームセンター「コーナン」を出店しまし た。牛丼店の「すき家」、讃岐うどん店の「たも屋」もベトナム初出店となり、当地で既に展開してい る丸亀製麺や大阪王将も出店しています。その他に、公文ベトナムは国内 17 カ所目の教室を開設し、 SG 佐川ベトナムは保冷宅配サービスを提供しています。 店舗外観 店内の様子 ベトナム初出店のすき家 日本でおなじみの PB(プライベートブランド)も展開 2 新モールは出店にあたりエコノミック・ニーズ・テスト(ENT)をクリアしています。ENT とは、 外資小売業の多店舗展開において、2 店舗目以降の開設では店舗面積 500 ㎡以上の場合、開設地域の小 売店舗数、人口規模や都市計画との整合性を考慮した上で、地方機関、商工省の許可を得なければ出店 できないというものです。今回出店したホーチミン市ビンタン区は市の南西にあり、2014 年の人口が 67 万人と市内最大の居住区域となっています。2010 年からの 4 年間で人口が約 8 万人増加しており、 モール周辺は、主要交通手段であるバイクで 15 分の範囲に 101 万人が住むとされる有望な地域です。 各イオンモールでは日本産食品の販売イベントなどが開催されることもあり、同モールは多くの人々に 対して日本を PR する場にもなっています。 一方、ホーチミン髙島屋は、外資系企業のオフィスワーカーや外国人が多い市中心部で、シンガポー ル系企業が保有する商業施設内に出店しました。地下 2 階~地上 3 階、売場面積約 15,000 ㎡の店舗で は約 210 のブランドが取り扱われており、食料品からファッション、玩具まで幅広い品揃えとなってい ます。ベトナム初のブランドが 58、日系ブランドは 31 となっています。 特徴的なのは地下 2 階の「デパ地下」です。日本同様、和洋菓子を中心としたギフト商品が並んでお り、チョコレートの「ROYCE’ 」 、ベトナム初出店となる源吉兆庵、ユーハイムが入っており、試食・ 小分け販売を行っています。そうした中で日本と異なるのは、イートインが充実している点です。小規 模スペースの飲食店が 8 店舗あり、サガミチェーンが水山(うどん)と JinJin(生パスタ)の 2 店舗を ベトナム初出店、その他にハンバーグ、カレー、ラーメン、ベトナム料理などの店舗が出店しています。 また、イオンモールにも出店しており寿司を販売している中島水産、初出店となる山崎製パンや日本 橋屋大判焼きなどは、席は無いですが買ったものを多くの人が店舗前のフリースペースですぐに食べて います。このフロアで特に人気を博しているのが麻布茶房です。様々な甘味を提供していますが、特に 抹茶味のソフトクリームが人気で、常に行列ができています。ギフト品は当地の一般的な人々にとって は高額ですが、1 年で最も消費が活発になるテト(旧正月)商戦を視野に認知度を高めようと各社が取 り組んでいます。 オープン当日の店舗正面の様子 オープン当日の様子 3 イートインのフリースペース 抹茶ソフトの行列 髙島屋は海外店舗としてシンガポールで成功を収めており、その成功モデルをベトナムにも持ち込ん でいるとのことです。同系統の商品を集めた見やすいフロア構成、販売員の丁寧な挨拶や説明、授乳室 の設置など日本ならではのサービスに取り組んでいます。現状、当地の人々にとっては最新のデパート に来ること自体がオシャレであり、店内では至る所でセルフィー(自撮り)をしている姿が見られます。 一過性の部分が落ち着いた 3~6 ヶ月後の状況が一つのバロメーターとなりますが、いずれにしても日 本の高品質を発信するスポットとして今後も注目が集まります。 ベトナムのリテール売上は右肩上がりで推移しています。市場・露店・個人商店などで購入する旧来 の購買スタイルをトラディショナルトレード、コンビニ・スーパー・デパートなどで購入する現代的な 購買スタイルをモダントレードと言いますが、日用消費財売上に占めるモダントレードの割合は、ベト ナム全体で 14%(2015 年速報値)となっています。特にベトナム南部でこの比率は高く、今回取り上 げた大規模商業施設の他に日系小売企業としては既にファミリーマートとミニストップが進出し、それ ぞれ 7 月末時点で 106 店舗、50 店舗と急速に店舗網を拡大しており、南部小売業の発展を牽引してい ます。TPP 発効後 5 年が経過すれば ENT が撤廃され小売業の店舗展開がしやすくなることから、今後 も日本を含む外資系の小売業が進出し、ベトナムの消費に大きな影響力を持つことが見込まれます。 名古屋銀行 法人営業部 ベトナム駐在 奥村 和生 4 注 1:写真は筆者撮影 注 2:モダントレード比率の情報は Nielsen Retail Measurement Service 提供 5 名古屋銀行の中国拠点 ■ 南通支店 中国江蘇省南通市経済技術開発区 通盛大道 188 号 創業外包服務中心C楼 2F TEL:<86>513-8919-2280 FAX:<86>513-8919-2281 ■ 上海駐在員事務所 中国上海市長寧区延安西路 2201 号 上海国際貿易中心 1809 号室(18階) TEL:<86>21-6275-4207 FAX:<86>21-6275-9461 <ご注意> ■ 法律上、会計上の助言:本誌記載の情報は、法律上、会計上、税務上の助言を含むものではありませ ■ ■ ■ ■ ん。 法律上、会計上、税務上の助言を必要とされる場合は、それぞれの専門家にご相談ください。 秘密保持:本誌記載の情報の貴社への開示は貴社の守秘義務を前提とするものです。当該情報につ いては貴社内部の利用に限定され、その内容の第三者への開示は禁止されています。 免責:本誌記載の情報は、弊行が信頼できると考える各方面から取得しておりますが、その内容の正確 性、信頼性、完全性を保証するものではありません。弊行は当該情報に起因して発生した損害について は、その内容如何にかかわらず一切責任を負いません。 著作権:本誌記載の情報の著作権は原則として弊行に帰属します。いかなる目的であれ本誌の一 部または全部について無断で、いかなる方法においても複写、複製。引用、転載、翻訳、貸与等 を行うことを禁止します。 【事務局】 名古屋銀行 法人営業部 国際ビジネス推進室 TEL:052-962-9522 FAX:052-962-6043 6
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