授業・協議会 まとめ H28 第12回 関西算数授業研究会 公開授業Ⅰ 1年 3つの数の計算 太田直樹(広島県 福山市立大学) 【本授業の主張の要点】 主体性を促す教材の提示方法の1つとして,文章題の演算決定に繋がる文章 を( )抜きにした条件不足の提案を行った。 【協議会での主な意見と授業者の主張】 ①演算決定の文章を( )抜きにすることで,「3人(のってきた)」「3人(おりました)」 のたし算・ひき算の場面を予想する活動に繋がった点は良かった。ただ,2つ目の ( )抜きでも,同様の提示であったため,子どもの意欲がやや低下したのではな いか。 ⇒文章題の後半部分のみ( )抜きにするという改善意見で,3つの数の式表現に より関心を持たせられることに共感する。実践で検証してほしい。 ②既習である2つの式「5+3=8,8-2=6」と1つの式「5+3-2=6」との繋がり をどのように扱う予定であったか。 ⇒前提の考えとして,「生活経験の中で,3つ以上の数計算を経験し,算数の授業 で初めて体験するのではない。あくまで経験を整理し意識させることが算数授業 である」と考えている。ただ,式表現としては,2つの式の方が,1つ1つの思考が みえて,子どもにとってわかりやすい。だから,授業では,1つの式表現と,思考過 程が同じであることを子どもの意見でまとめ,慣れていく期間が必要と考える。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 1年 ひき算~減法を統合的にとらえる~ 直海知子(大阪府 豊中市立熊野田小学校) H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 2年 かけ算(1)~仲間分けから考えよう~ 酒井道太(大阪府 追手門学院小学校) 本時は、次の2点を目指して授業を行った。 (1)「同じ大きさの数量」と捉えられる場合とそうでない場合、また、見方によってはどちらともいえる場合について「仲間分け」を していくことから,かけ算の意味をつかむ授業はどうあればよいか。 (2)自分の考えを伝え合う活動を通して「対話的な学び」を実現する授業はどうあるべきか。 【参会者からの主なご意見・ご感想】 (1)について ICTを用いた提示に工夫があり、「同じ数ずつで分かりやすい」と子ども達が気づけていて良かった。 (2)について 1時間の授業の中で発言できる場面が確保されていて、一人ひとりが最後までずっと考えていたし、解こうとしていた。 【協議会~どのように改善すればよりよい授業になるか】 ・課題の数が多かったので、厳選して数を減らすと「仲間分け」をするときの観点を絞ることができる。そうすることで、仲間にな るかならないかまで考えを深めることができるのではないか。 ・「2こずつ8つ」と2+2+…+2、まとまってないものは3+2+2+3+3のように、はじめから言葉だけでなく式で表すと、同数 累加かそうでないかの違いが見えやすくなるのではないか。 ・例えば、「5個のまとまりは、これとこれだけですね。」などとたずねることで、組み合わせれば、新しい数のまとまりをつくること ができるという気づきを引き出すこともできたのではないか。 ・ペアやグループに課題のカードを1組ずつ渡すことで、話し合いながらそれらを動かして「こんな仲間分けができるね」という自 分の考えを伝え合うことができるのでないか。 ・授業中の各場面での評価について明確な基準を持つことで、授業のねらいや目標がはっきりするのではないか。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 3年 □を使った式~問題文を式に表す授業~ 村上大介(兵庫県 伊丹市立桜台小学校) 今回の授業を通して、文と式と図(絵)は、表し方が違うが、意味は同じであること。また、□を使えば、文 章の通りに式が作られること。この2点を子どもたちが意識してくれたら嬉しいなと考えていた。授業を考 えるにあたって悩んだことは、□の中の数量を考えていく方法に数字を当てはめて考えていくことがある が、例えば□+8=17のような問題で、□の中に数字を当てはめていくだろうかということである。そこで、 グループに一つ中身の見えない袋を用意し、「袋の中にいくつシールが入っているか」を考えてもらおうと 思った。 ・参観者からの質問、意見を聞いて 自校で事前にしたときは、指導案通りに出したが、今日は問題文の通りに考えれば式ができることを意識 してもらおうと、式を自分で立てたところで目当てを出そうと思っていた。導入がかかりすぎて、さらに遅く なってしまったことが反省である。 また、めあてを子どもの意見から作らないのかと質問されたが、基本的にはめあては教師側から提示して いる。単元の2時以降だと「昨日は~をしたね。今日は何をしたい」などでは、するときもある。他校の研究 で子どもたちが司会をし、めあても決めるものも見たことはあるが、自分ではあまり試してこなかった。今 後、探っていきたいと思う。今回、グループで学習することの良さを感じてもらいたいと思い、班机にしたが、 子どもたちが班で座っていることの必要感に迫られていなかった。ご意見にもあったが、すべて先生から 与えられて受け身になっていたと思う。 授業で一番悩んでいた□+8=17の□に数字を代入して求める考えであるが、ワークシートで「予想とい うことを学んだ」と書いてある児童がいた。時間配分が悪く、練習問題ができなかったが、苦手な子は練習 問題で当てはめていく児童がいたかもしれないと感じたので、授業で行ったように、「もし□が1だったら」 と提示して見せるのは必要だと思った。ただ、全体として教えることと、考えさせることが混同してしまった ように思う。今回の参観者の方々の真剣なご意見に感謝し、目の前の子どもたちに返していきたいと思う。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 3年 あまりのあるわり算 小谷祐二郎(和歌山県 和歌山大学教育学部附属小学校) 3年生のあまりのあるわり算において,日常生活と算数科をつなぐ授業をめざして,あまらな いようにしていることを言語化する授業を実践した。 当日の授業では問題文を「どのように分けますか。」ではなく,「どのように分けていますか。」 と問うことで,実生活を想起させようとした。しかし,一人っ子であっても「2人で4こずつ分け て1こあまる」と話している子どもがいた。そんな子どもに「2人兄弟なの?」と聞き,「いや,兄 弟はいない。」というやりとりから,子どもたちが実際の生活場面を想起して話す姿が見られ 始めた。本時の課題である「9このあめを分ける時,2人兄弟はどうしているのだろう?」につ いては,次のような反応があった。 ・私はあめを食べないから,妹に9こあげる。 ・4こずつ分けて1つは誰か(他の人)が食べる。 ・お兄ちゃんと4こずつ分けて1こをわる。 ・おなかすいている時は5つ目も食べる。 これらの言葉をもとに,「2人で分けるときはどうして色々な分け方になるのだろう?」と問い, 「2人でわけられないから」「1こあまるから」という子どもの言葉と式表現を共有し授業を終え た。本時で取り上げようと考えていた既習である「同じ数ずつ」という言葉を一度も取り上げ られなかったことが授業の大きな反省点であった。 協議会では「めあて」と「まとめ」が板書にないことや,ペアトークやかく活動の取り入れ方,大 切な言葉を引き出せない時の手立て等について質問があった。十分応えられなかった点に ついて改めて考え,今後の授業に生かしていきたい。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 4年 式と計算の順じょ~式を読む力を育むために~ 星川護(兵庫県 姫路市立御国野小学校) 小単元「式のよみ方」では、ひし形に並べられた25このおはじきがいくつあるのか表した式を読み、図を 使ってその考え方を説明し合うことで式を読む力を育むことをねらいとしている。啓林館の教科書では、い くつかのまとまりに分けて計算してからたす考えのみを扱うことになっている。しかし、実際は移動する考 えや付け足して引く考え等、多様な考え方で求めることができる。そこで、式を読む力を育むと共に、多様 な考え方を身に付けることもねらいとして実践を行った。 導入では、7×7の正方形、6×6の正方形と順に提示し、次に5×5が来るだろうと予想させた。そして、 ひし形に並べられた図形を提示し、式にできないだろうかという問いかけることで、式に表してみたいとい う児童の意欲を高めることができた。しかし、実際に式を作らせるところで多様に出すぎて自分の式の意 味を説明する場面も友達の式を読む場面も不十分なまま授業は終わってしまった。事後検討会では、多 様な考え方を持たせたいという主張は概ね受け入れられたが、式を読むことがねらいであるにも関わらず 作らせて終わったという点について多数ご指摘をいただいた。式を作るべきか作らずに提示するべきかと いう点についても議論したが、多くの先生は作らせる方が良いというご意見だった。今回の授業では、 作った式を全体で確認した後、それらの式の意味を図を使って考えさせたが、作った後にグループで説明 し合い、わかりやすい式と図のみに児童たちで絞らせるのはどうかという代案もいただいた。多様な式が できるよう工夫された図であるがために、作らせることでどうしても広がりすぎるため、作ることを前提に授 業を組み立てる場合、作らせた式をどう扱うのかは難しい問題である。しかし、児童が意欲的に多様な考 えで式を作ったり、友だちの新しい考えに触れ、驚きと感動を味わうことができたりするのもこの教材の魅 力の一つである。そのため、作らせたものをしっかりと扱えるだけの授業の工夫と指導力を身に付けて、 今後授業提案をしていきたい。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 4年 広さを比べよう ~子どもの感覚に根ざす面積の導入~ 有吉克哲(兵庫県 兵庫教育大学附属小学校) 「平面の広がりとして面積をとらえ,単位とする図形のいくつ分かで面積を数値化し比べら れることを理解する。」ことを目標とした。 多くの子どもが「面積」という言葉を既に知っており,「縦の長さ×横の長さ」によって面積 が計算できることを知っている状況での授業となった。計算によって面積を出そうとする子ど もたちからは任意単位の考えは出にくく,任意単位での比較をねらった教材と,子どもの思 考にはズレがあった。 直接比較を繰り返して大きさを比べるアイデアは,多くの子どもが活動の中で見せた。その 2つの図形の差として任意単位となる正方形が見える教材を用いたが,その正方形のいくつ 分かで比べられるということは見えにくかった。 結果,「単位とする図形のいくつ分か」で比べるアイデアは子どもから出るのではなく,教師 が提示する形となった。子どもたちの現状からすると,「直接比較から任意単位による比較」 のアイデアに目標を設定するのではなく,「縦×横とは何を計算しているのか?」を問うこと に目標を設定するべきであったと考える。 授業の主張点は,子どもの感覚を引き出すことから学習に入ることで確かな面積の認識に つなげることであった。授業の前半で子どもの感覚を引き出すことができた。特に,家を外か ら見ると「大きい」,中に入ると「広い」と表現するという意見は面積の本質にせまるもので あった。しかし,中盤以降では,その感覚ではなく知識が全面に出てきて,意図した議論は 生み出せなかった。その結果,引き出した子どもの感覚と学習内容とのつながりは見えにく いものとなってしまった。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 5年 偶数と奇数 福井輝明(大阪府 四條畷市立岡部小学校) 【授業にあたり大切にしたこと】 第1に、観点を決めて整数を分けることのよさを感じられる活動であること。 第2に、子どもたちがもっている整数の概念を一度崩し、再構成し、新たな整数の見方を獲得すること ができる活動であること。 【授業を振り返って】 本時では、問題場面を「整理券を持った人が2列にならぶとき」とし、整理券を持った人が間違えてなら ぶことのないような2列の説明を子どもたちが考え、比較・検討し、それぞれの数の集まりを偶数と奇数と いうと定義した。 本時の展開で、子どもたちは多様に2つの列の説明を考え、互いに交流することを通し知識を再構成し、 新しい数の見方を発見したり、獲得したりすることができたと感じることができた。学習後に児童ノートの 振り返りを観察しても新しい知識を獲得したり、見方が変わったと記述したりしている児童が多かった。 しかし、観点を決めて整数を分けることのよさ(2で割ることで0以上の全ての整数を2つに類別できる ということ)を子どもたちが実感できるような展開にはならなかったことが課題として残った。 【協議会を振り返って】 導入の場面設定について。①「前の人から順に入口に入っていく」という条件提示を明確にした方が良 く、②実際に子どもたちに配った整理券をもとに自分がどちらの列に並ぶのか考えさせる活動の方が子ど もたちにとって思考する必然性があった、と授業の改善点が明確になった。 また、「子どもたちは列の数のならびに着目し、数列のように考えていたのでベン図のようなものが必 要だったのでは」「観点を決めて整数を分けることのよさを実感できるような授業にするには」など、改善 案を話し合いの中で見いだせなかったものもあったが、今後研究を進め、より良い授業づくりができるよう に活かしていきたい。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 5年 面積~求積公式の「中央線×高さ」への集約~ 奈良真行(大阪府 大阪教育大学附属池田小学校) 【本授業の主張の要点】 面積の求め方のくふうとして「中央線×高さ」というものがある。(中央線とは図 形の高さの2分の1のところに、底辺に平行に引いた直線のこととする。) 中央線×高さで求められたことを既習の三角形や台形など様々な図形で使うこと ができるかを議論し、どんな図形も中央線×高さで求められるところに帰着する。 授業の最後のふりかえり場面では、タブレットを用いて掲示板に書き込むように、 個々の学びを書きこませ、即時交流・即時相互評価をさせて授業を終わる。 【協議会での主な意見と授業者の主張】 ①中央線を扱う授業を行ったことがある参会者はほとんどいなかったので,授業 の提案性という意味では,十分にあったと考える。中央線を厳密に理解する上で は「中点連結定理」を中学校で学んだ時にさらに理解が進むだろう。今回のように, 実際に図をかいて,実測で中央線の長さをとらえる手立ては一定の評価を得た。 しかし,扱った図形の提示の順番を工夫することで,中央線の価値に迫れたので はないかという意見をいただいた。児童たちにそれぞれ図形を書かせて,中央線 ×高さになるのかを帰納的にとらえさせることも代案として意見があった。 ②タブレットの掲示板を利用したデジタルふりかえりも即時交流の面で評価された。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 6年 和算~和算の教材化~ 草地貴幸(NPO法人和算問題教材化研究会) 【提案と授業の概要】 本授業の提案は,和算を小学生用に教材化することで,算数・数学に興味を湧き立たせる とともに,将来の学習を展望できるようにすることである。和算とは,江戸の数学と言われる もので明治以降に導入された西洋数学以前の日本の数学のことである。本授業では,小学 生において岡山県矢掛町の貴船神社に納められている算額にある図形の美しさを感じ取り, 定規やコンパスなどを使用して同じ大きさの図を作図する授業を試みた。 【授業の実際と協議内容】 和算という日本文化の歴史に触れることで児童の興味喚起はできたが,次のような改善点 が明らかになった。導入では算額の原文に触れることで,和算というものがあった時代を感 じられるようにしたかったが,算額を知ることに時間がかかり,算額と同じ図を作図すること も児童には唐突な感が否めなかったことから,算額は最後に提示してもよかったのではない かと考えられる。また,上下にある4つの小さな円の中心を見付けるために,中くらいの円と 小さな円の半径を合わせた長さという円の位置関係に気付くことが難しかったことから,てい ねいに扱いすぎてしまい児童主体の活動となりにくかった。図がぴったりと収まるように正方 形で切り取った紙を扱えば,対称の軸にあわせて折ることなどができるので,主体的な活動 になり得たのではないかという意見をいただいた。小学生が興味を持ち,数学的な見方・考 え方を駆使しながら解決できるような教材を開発していくことが今後の課題となった。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 公開授業Ⅱ 1年 おおきさくらべ 早川仁美(兵庫県 川西市立緑台小学校) 【授業の主張・展開について】 「あんごうをとこう」をテーマに、児童が意欲的に任意単位による測定をできる授業を目指し た。児童は、「あんごう」という言葉に興味を持ち、意欲的に長さくらべに取りかかることがで きていたとのご意見を多数いただいた。ワークシートには、黄色の2つ分がピンクの長さにな るというヒントがあり、そのことに早々に気付けている児童もいた。一方、手の大きさを使って の間接比較や、おおまかな予想のみで答えを導いている児童もいた。さらに、大小のマス目 の数を、大きさに関係なく数えた児童もいたため、そこから全体交流に広げ、同じ基準量で 数えることへと展開したい思いがあった。子どもの様子から、基準量に繋がる発言が出ると 思っていたのだが、こちらがうまく引き出せず、教師主導の流れになった部分があった。 【「基準量のいくつ分で測定して比較する」という点について】 黄色のいくつ分という基準でそろえて数えることで長さが比べられることを児童は理解でき ていた。また、手元のワークシートで数図ブロックを使って数える活動について評価のお声を いただいたが、黄色がブロック1つ分になることを最初に確認する必要があった。授業のまと めの際は、7つのテープの端をそろえて掲示することで、より理解が深まったのではないかと のご意見もいただいた。 参会者の方の多くが1年生の担任をされていて、2学期最初の単元なので是非実践したい とワークシートの問い合わせを多数いただけたことが嬉しかった。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 2年 三角形と四角形 指熊衛(兵庫県 兵庫教育大学附属小学校) 本実践の主張は,図形の概念を形成するために有効な指導の在り方を探ることであった。 協議会では主に①定義と②角の扱い方の2点を中心にご意見をいただいた。 【①定義について】 今回の授業では,各三角形の共通する特徴を,子どもの言葉で言語化し,まず仮の定義 をつくらせる。次に,仮の定義した集合に似て非なるものを新たに提示することで,仮の定義 では不十分であることを気づかせ,子どもたちに集合の再定義をする状況を生み出すことで あった。子どもたちが再定義をしながら定義をつくっていく授業展開の提案は,多くの参観者 から賛同を得られた。しかし,子どもたちの声を多様に引き出す点においては課題が残った。 例えば,辺を具体物でつくっておき,子どもに操作させることで自然と子どもの声を引き出せ たのではないかというご意見をいただいた。 【②角の扱い方について】 三角形の定義は,「3本の直線でかこまれている形」である。子どもたちは,“3つのかど”を 定義に入れたがっていた。協議会では,この角の扱い方について2点ご意見をいただいた。 一つ目は,単元の導入を多角形の弁別から入ることである。そうすることで,直線(辺)の数 に目がいくのではないかというご意見である。二つ目は,“3つのかど”を定義に必要でない と子どもに気づかせる手立てである。それは,3本の直線でかこまれている形で3つのかど がない形を考えさせる活動である。そうすることで,子どもたちは,3つのかどが必要でない ことに気づいていくのではないかというご意見である。 以上のように,協議会では参観者の方から,今後の実践を深めていける新たな視点をい ただくことができた。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 2年 かけ算~○倍ってなに~ 小林秀訓(大阪府 豊中市立大池小学校) H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 3年 三角形~コンパスマスターになろう~ 吉田崇之(大阪府 大阪教育大学附属池田小学校) 『二等辺三角形と正三角形の作図について、その時間では描けても定着しない。なぜか。』 【仮説①】 コンパスが上手に使えないから、いやになって練習しない。 【仮説②】 線分(底辺)を定規で引き、その両端を中心としてコンパスで円弧の一部を描き交点 とする(以下、X)のだが、Xにする意味が分からず定着しない。 【手立て①】 円の描き始めを確認し、大きい厚紙(四つ切画用紙)にとにかく円をたくさん描かせる。開き具合 (半径)によって描きやすかったり、描きにくかったりすることを経験させ円の美しさや重なり のおもしろさを実感させる。 【振り返り】 →大小さまざまな円を描き、組み合わせたりずらしたりしてどんどん描いていった。厚紙にした ので針が刺しやすく、すべることなく描くことができた。次の「円を重ねて三角形を見出す」活 動につながった。活動時間を十分にとったが、のちの学習時間を圧迫する結果に。 【手立て②】 同じ半径の円を二つ重ね、中心と中心と交点(X)を直線で結ぶと三角形ができる。さらにその 三角形は二等辺三角形と正三角形になりうることを共有する。 【振り返り】 →円を描くことから三角形の作図に移行したので、Xの意味が児童に浸透した。一方、「半径が 同じなのでこれは二等辺三角形になる。」と表現させるためのさらなる手立てが必要であっ た。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 3年 計算の順序 ~考え方を比べる活動を通して、練り上げ場面を充実させる授業~ 内村衛(大阪府 池田市立池田小学校) 【本時の主張】 問題解決型の算数の授業で複数の考え方がでる場面がある。そんなときに、どうやって練 り上げていくのがベストなのか?たくさん考え方を出させておいて、指導者の都合のいい一 通りの考え方をピックアップし、その考え方だけを吟味して練り上げていく授業も多いのでは ないか?そんなとき、取り上げられなかった考え方を出した児童はどんな思いでいるのだろ うか。複数の考え方を比べる問いが子どもたち同士で練り上げながら算数のよさを味わって いくのではないかと考え、本時では『おすすめはどれですか?』と考え方を比べる発問を提 案した。 【授業の実際】 本時では計算の順序で、4×2×5と4×(2×5)の結合法則を扱った。かけ算で順番を変 えても計算が成り立つことを確認し、この場合どちらを先にやる方がおすすめかをたずねた。 前者を支持する子は、問題の順番どおりというこれまでの学習を基に理由を述べていた。後 者を支持する子は、10のまとまりのよさや5の段を先にやる利点をのべていた。 【協議会】 協議会では、おすすめを聞くことで、子どもの思考はアクティブになっていたが、まとめがぼ やけてしまったという反省点があきらかになった。また、量から数への移行の問題、図との関 連などが話題に上がり、それを参観者みんなで話し合い、共有することで学びにつなげるこ とができた。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 4年 変わり方~式の向こう側をのぞいてみよう~ 早川健治(大阪府 寝屋川市立堀溝小学校) 『数式の向こう側を見る』という本時の学習のねらいについて,協議会 に参加していただいた方々には一定の評価をいただけたと感じました。ま た,“ユニバーサルデザインの授業づくり”という観点で取り組んだ板書の あり方やチョークの色の使い方等についても評価と励ましをいただき嬉し かったです。ただ,板書の色使いについては,色覚に課題のある児童に とって適切だったのかというご指摘もいただき,今後の指導に生かしたい と勉強になりました。 協議会を通して,特に私の胸に残ったのは,「このような発展的な課題 に取り組みたいが,必ず取り組まなければならないものなのか?」という 質問でした。比例定数の意味を考えるという本時の狙いは教科書では取 り扱っていない内容でした。学力的な課題の大きい学年では,なかなか取 り組みにくい内容だったと言えます。本来であれば,子どもたちが習得す べき学習内容で授業を提案すべきだったかもしれません。次に授業を参 会者の方々に見ていただける時は,直球勝負で臨みたいと思います。あ りがとうございました。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 4年 9の段の答えのきまりをつかって計算する~発見し たことを使って計算の規則性を考える授業~ 服部真一(三重県 三重大学教育学部附属小学校) 9の段の答えのきまりをつかって計算する -発見したことを使って計算の規則 性を考える授業- とし,授業を行った。本授業の主張としては,発見,活用,探 究という一連の流れを1時限に取り入れた授業を行うことであった。そのねらいは 次の3つとした。1つは,きまりを発見できることで,数の不思議さを感じ,興味・関 心を高めることができる。2つは,自ら発見したこと(知識)を活用できることで,問 題と出合ったとき,既習の知識を活用してみようとする態度を育てることができる。 3つは,自ら発見したこと(知識)を活用させて身の周りの問題を解決しようと,自 ら探究しようとする態度を育てる。 成果としては,当初の想定の通り指導案のように授業を進めることができ,発 見・活用・探究という一連の学習を行うことができた。課題としては,探究の扱い方 をどうするかということが挙げられた。98765432×9の答えが888888888となる 理由を考えさせる問題を探究としたが,これは見方を変えると,その前に考えさせ た問題の復習とも捉えることができる。探究として,この問題を扱うかそうでない他 の問題を扱うかについて,事後検討会で話し合われたが様々な考え方があった。 授業中における探究活動の在り方について,引き続き考えていく必要を感じた。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 5年 正多角形~ICTと具体物のハイブリット型授業~ 盛田恭平(大阪府 大阪市立阪南小学校) 【授業の主張】 ICTを使わなければいけないような感にとらわれICTありきで授業を考えてはいないだろう か。具体物のよさを見直したい。そこでICTと具体物をここぞという箇所で用いた授業を提案 した。この提案については、授業の導入場面でパワーポイントを用いて正五角形が円に内 接するところを子どもたちと確認することができ適切であった。ただ、子どもが「正五角形が 円に内接することをヒントに考えることができていない」場面があった。そこは適宜パワーポ イントを見せたり、正五角形が円に内接しているところから正五角形の辺を消し、頂点のみ が円周上に残っているなど工夫されたパワーポイントを見せるべきだった。 【授業の実際】 正五角形と正六角形の作図の仕方を学ぶ授業であったのだが、本時のように円を用いな くても、定義に基づけば正五角形や正六角形を作図することができる。本時のように円を用 いて作図することを教えたいのであれば、課題に『円を使って』という言葉が必要なのではな いかという意見が出た。 また、サッカーボールのが正五角形12枚と正六角形20枚で構成されていることが分かり、 正五角形を子どもらなりに書くことができそうなのであれば、その時点で作図をさせるべき だったとの意見が出た。確かにその方が子どもたちがつまずき、そのつまずきをもとに授業 を進めることができた。ただ、今回はサッカーボールの作成まで行き着きたかったという思い があり、急いでしまった。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 5年 単位量あたりの大きさ ~「解釈・表現する活動」を通して、数学的に考える力を育む~ 植田悦司(兵庫県 加東市立福田小学校) 公開した授業について,協議会とアンケート(協議会終了後に記入)で頂いた意見を集約 すると,主に次の3点に絞られた。 1 教材・学習課題・授業の主張について 「導入の部分で,生活の様々な場面での『混んでいる』『すいている』様子を見せることで, 全員に同じ認識を持たせることはやはり大切だと思った」と,導入での活動について多 くの賛同を得られた。また,「差で比べたがる子が確かに多い」「これまで商で求める展 開しか意識していなかった。子どもの見方を大切にした展開を心がけたい」「数値設定 から工夫して実践してみたい」とのご意見も多く頂いたことから,授業の主張点につい ても賛同を得たものと解釈している。 2 授業コーディネート・場の力(相互作用)について 「写真をもとに意見交流された場面で,『人数』と『広さ』という2種の量によって決まるとい う押さえがあってもよかったのではないか」「1あたりの考えが出たときに,どちらが混 んでいるのか,もう少し話し合いをさせても良かったのではないか」といったご意見を頂 いた。これは話し合いを焦点化し,より理解を深めていく上では重要なコーディネートで ある。子どもの声をつなぎつつ,そのような押さえを目に見える形でどのようにしていく か,今後の課題である。また今回のアンケートの中で,際だって多かった意見が,「子 どもたちとの距離感の縮め方がすごく上手だなぁと感じた」「雰囲気がとても温かく,意 見を自由に言うことができる環境だった」といった場の力を生み出すコーディネート力に 関するものだった。算数授業力の一つとして,今後も授業を通して提案していきたい。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 6年 資料の調べ方 古本温久(大阪府 関西大学初等部) ○ シンキングツール(ベン図)を用いて,既習の棒グラフと未習の柱状グラフを比較する活動を通し,柱状グ ラフの特徴を自ら見いだすとともに,その構造を主体的に理解しようとする態度を育成することが、本実践 の主張であった。 ○ 参観者からは、比較する思考スキルを活用するシンキングツールとしてのベン図の活用に良さを感じると いう意見が多くあった反面、シンキングツールに対する記述が少なかったように思う、という意見も出され た。 ○ このことに対して、授業者は「初出のグラフなので、教える部分が多くあるが、シンキングツールを活用し て棒グラフと比較する活動を十分に行うことで、主張の通り、柱状グラフの特徴を子どもたち自ら発見して いく姿が見られた。記述量が少なかったのではないかと言われるが、普段からこの学年に関わる先生に よると、普段に比べると比較的子どもたちは進んで自分の意見を書いていたということなので、初めてシ ンキングツールに出会った子どもたちにとっても効果があったということができると考える。 ○ また、本時においては,授業の序盤に「ふきだし法」を用いて,子どもの思考内容から本時の学習のめあ てを設定する場面について提案した。 ○ 学習のめあては,教師から一方的に与えるのではなく,ふきだしに書いた子どもたちの思考内容を用いて 設定することが,内発的動機づけの点から見ても重要である。 ○ 本時は「棒グラフと似ている」「違いはあるのか」という子どもの内発的な問いを自然と生じさせ、それをめ あてとして設定できた。 ○ 参観者からは、「ふきだし法」を用いて自力解決時や集団解決時に思考内容を表出する様子を見てみた いという意見が聞かれた。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ 6年 速さ~どの子どもも笑顔になれる授業を目指して~ 樋口万太郎(京都府 京都教育大学附属桃山小学校) 前半は、「速さ」という用語を既有体験や既習や先行知識や 教科書をもとに読みといていった。用語を読み解いていく活 動には難しさがあった。 後半は、実際に歩いて1秒で○m歩けるのかを体験を通し て考えていく展開で授業を行った。 ・1mあたり何秒という考え方を基本的には扱わず、公式につな がる「1秒あたり○m」という考え方に限定して授業を進めた ・「5mを何秒で歩けますか」とあらかじめ距離を指定した流れで はなく、「1秒では正確に測れない」→「時間をのばして測って みよう」→「ストップウォッチでは正確に時間をとめることがで きない」→「距離をのばそう」といったように子どもたちの思考 の意識の流れや疑問点や活動してうまくいかなかったことを もとに、授業を進めていった。 H28 第12回関西算数授業研究会 授業まとめ
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