機能材料組織学 第 13 回 前回: ・共晶型(Ⅱ)平衡状態図 ・固溶強化 ・析出強化 今回: ・鉄および鋼の概要 ・鉄の変態と結晶構造 ・炭素鋼の平衡状態図と組織 「機能材料組織学」第 13 回 13.1 鉄鋼材料の概要 鉄(iron): 鋼(steel): 炭素鋼: 合金鋼: 高張力鋼・・・ 13.2 鉄の変態と結晶構造 ●鉄の変態: 図 13.1 純鉄の変態による体積変化 ・α鉄→γ鉄への変態: ・鉄における格子定数: 図 13.2 α鉄とγ鉄 1 「機能材料組織学」第 13 回 13.3 炭素鋼の平衡状態図と組織 注:鉄の融点:1536℃ → ・ α鉄と他の元素との固溶体: ・問い:固溶限以上の C はどうなるか? 図 13.3 Fe-C 系状態図 ・ γ 鉄と他の元素との固溶体: ●炭素含有量による呼称の相違 ・<0.77%C の炭素鋼: ・=0.77%C の炭素鋼: ・>0.77%C の炭素鋼: 2 「機能材料組織学」第 13 回 ●共析鋼(0.77%C)をγ 領域(オーステナイト)からゆっくり冷却する ・温度 A1(727℃)直下: 組成 割合 ・ ・ ・ 図 13.4 パーライト ●亜共析鋼(<0.77%C,ここでは例として組成 Y)をオーステナイト状態からゆっく り冷却する ①GS(A3)線との交点γ 1 直下: ②A1 線との交点 a3 直上: ・組成 ・存在割合 ③a3 直下: ・ 図 13.5 初析フェライト +パーライト 3 「機能材料組織学」第 13 回 ・例題:図の Z の状態(1.12%C,γ単相)からゆっくり冷却した場合, 以下を答えよ. ①ES(Acm)線との交点γ 3 直下で生じる現象 ②C5 直上における組織の組成および割合 4 「機能材料組織学」第 13 回 13.4 第 13 回講義に関する意見・感想・質問のまとめ ●意見・感想 ・特になし:26 ・理解できた,状態図に慣れてきたこともあって照らし合わせながら聞くととても分かりやすかった,炭素鋼 の状態図は共晶型と似ていてイメージしやすかった,固相→固相の平衡状態図はよく理解できた,Fe-C 系平衡状態図も今までと同じ考え方だったのでよく分かった:5 ・エアコンが直接当たる席だったので寒かった,上に羽織るのを着ていても鳥肌が立つくらい寒かったので 風の強さをもう少し弱くしてほしい,むちゃくちゃ寒い,少し寒かったので上着を持ってくるようにする,室温 調整丁度いい:5←今日の条件(3 台とも設定温度:26℃,風量:弱,スイング)だと,「寒い:4 名」「ちょうど いい:1 名」でした.ですのでこれ以上風量は下げられないんですが,来週は 3 台中 2 台を 27℃設定にし てみましょう(3 台とも 27℃にしたときは「暑い」という意見がありましたので) ・期末試験も近いのでしっかり復習する,よく復習する:3 ・T シャツが仮面ライダー響鬼,自分も響鬼好き(PS2 のゲーム持ってた),響鬼の T シャツが気になった:3 ←まさか 3 名も響鬼を知ってる人がいるとは,そっちの方がびっくりです! ・そろそろレポート課題やらないと,レポートとテスト勉強に早めに取り掛かりたい:2←是非!むしろ出遅れ ていますよ! ・授業進行速度は丁度よかった,授業の内容もいいし進行速度もいい:2 ・例題が自分で解けなかった,割合の計算がまだ早くできない:2 ・他の元素との固溶体から新しい元素が出てきてより難しくなりそうだ,固溶体の名称がたくさん出てきて覚 えるのが大変だ:2 ・全体的に少し難しかった,過共析鋼の冷却の問題が分かりづらかった:2 ・以下一人ずつ: 状態図に文字が多くてびっくりしたが読み取り方は以前と変わらなかったので安心した, 小テストでかなり前の内容を含んでいたので対策しきれなかった←参考問題に出ているわけですから, かなり前だろうと復習は容易だと思うのですが・・・ ネットはすぐに情報が出てきて便利だけど本で調べることにも慣れておかないといけない←ネット上の情 報は,速報性は高いですが信頼性が保証されていません(Wiki だって正しいとは限りません)ので,やは り両方をうまく使うことが大事かと思います. 小テストの時間が余って暇だった←今週はサービス問題ですから.毎週そうなると良いですね! 授業も残り数無くなってきた←確かに・・・試験問題の準備をしなきゃ. オーステナイトとセメンタイトが何なのかいまいち理解できなかった←授業中に説明したと思いますが・・・ それ以上の詳しいことは,良い機会ですのでぜひ自分で調べてみて下さい! 鉄や鋼を加工強化することは古来より重要な技術だったのかなと思った←そうですね,昔から様々な方 法で鋼の強化が図られてきています. 図が少し見にくくてどの文字がどの点か線を表すのか分からないことがある←スクリーン上の図の話でし ょうか,それともプリントの図でしょうか(少なくともプリントの図は読み取れるように作ってあるつもりです が・・・)?手元のプリントの図と説明を聞きながら対照していけば,どの点・線か分かるのでは? 講義の進行方式が鮮やかでいつも楽しい←そう言ってもらえるとこちらも嬉しいです! ●質問 ・「13.2 鉄の変態と結晶構造」で示された温度が A3・A4 だったのは,その前に A1・A2 があるということか? 5 「機能材料組織学」第 13 回 ←A1・A2 線とも図 13.3 の平衡状態図に出ていますね,A1 線(727℃)は共析変態を生じる温度で,A2 線 (768℃)はフェライトが磁気を失う温度(磁気変態点)です. ・パーライトのような層状構造だと強度はどの程度になるのか(初析フェライト+パーライトだとどうか)?← セメンタイトは金属間化合物の通例にもれず,非常に硬い(=強度が高い)代わりにもろい(じん性が低い) です.一方,フェライトは強度は低いですがじん性は高いです.よって,パーライトはその 2 つが複合化す るわけですから強度とのじん性のバランスが取れた組織といえます.初析フェライト+パーライトであれば パーライト 100%の組織より低強度・高じん性となります. ・参考図書によって単語や表現が講義でのものと少し違ったりするが項目から外れていなければレポートに 採用してもいいのか?←もちろん良いです. ・講義では習っていない内容も項目から外れていなければレポートにしてよいのか?←これも良いです. ・パーライトの拡大図が白黒で載っていたが実際のものは何色に見えるのだろうか?←パーライトの組織写 真ですが,これも組織を観察しやすいようにフェライトのみを腐食させているのでこのような模様が見えま す.腐食をしなければ,前段階で観察面をピカピカに磨き上げていますから全面真っ白(光の全反射)に 見えます. ・オーステナイトの組成限界値の 6.67%C 以上になると C 単体が析出するのか?←そうです,グラファイト (黒鉛)の形で析出します. ・3 ページ目の 727℃直下のフェライト(0.022%),セメンタイト(6.67%)というのはα+Fe3C のうちの固溶体部 分の組成ということか?またそのまま温度を下げていくと組成はどう変化するか?←いいえ,α固溶体で あるフェライトのその時点(727℃)における組成が 0.022%C であり,存在するもう一方のセメンタイトの組 成が 6.67%C である,ということです.またそのまま温度を下げていくと,フェライトの組成は溶解度曲線(P →Q)に従い炭素含有量が減少していきます(0.022%→0.00004%)が,セメンタイトは構造が変わりませ んのでそのまま(6.67%)です. 6 「機能材料組織学」第 13 回 13.5 第 12 回小テスト解答 Q. 金属材料の強化機構について述べた以下の文章において,空欄[ ① ]〜[ ⑤ ]に当てはまる語句を 答えよ.[各 2 点] 金属材料の塑性変形は主に,すべり面上の転位の運動に伴う原子の移動によって生じるため,転位の 運動を[ ① ]する事が金属材料強化の本質的メカニズムである. 主な強化手法として加工硬化(強化),[ ② ]の微細化,[ ③ ],析出強化がある.以下にその強化 メカニズムを記す. ・加工硬化(強化):塑性変形進行に伴う転位の増殖・[ ④ ]増加 ・[ ② ]の微細化:結晶粒界自体が転位運動の障壁として作用 ・[ ③ ]:固溶体形成による[ ⑤ ]導入 ・析出強化:GP ゾーン形成による[ ⑤ ]導入,析出粒子切断,転位の線張力 解答欄 ① 抑制 or 妨害 or 防ぐ 等 ③ 固溶強化 ② 結晶粒 ④ 転位密度(「伸張」は減点) ⑤ 格子ひずみ 7 「機能材料組織学」第 13 回 参考問題 図に示す Fe-C 系平衡状態図において,X 組成(共析鋼,0.77%C)をオーステナイト領域から ゆっくり冷却した場合を考える. Q.1 温度 A1 直下で生じる現象,およびその現象で得られる組織の名称を答えよ.[6 点] Q.2 Q.1 で示した温度 A1 直下で得られる組織の状態は,フェライトとセメンタイトの混合組織 である.A1 直下時のフェライトとセメンタイトの割合を求めよ.[4 点] 8
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