機能材料組織学 第 12 回 前回: ・てこの関係 ・共晶型(Ⅰ)平衡状態図

機能材料組織学 第 12 回
前回:
・てこの関係
・共晶型(Ⅰ)平衡状態図
今回:
・共晶型(Ⅱ)平衡状態図
・固溶強化
・析出強化
「機能材料組織学」第 12 回
12.1 共晶型(Ⅱ)平衡状態図
●A 金属と B 金属がある範囲内でそれぞれ固
溶体を形成し,かつそれらが混ざり合う
・α固溶体:
・β固溶体:
図 12.1 共晶型(Ⅱ)平衡状態図
・液相線:
固相線:
●図中 E’の組成を持つ合金を液相からゆっくり冷却
①温度 E 直下:
・組成
・存在割合
②室温:
・組成
・存在割合
・
●図中 q の組成の場合
①液相線との交点 Lq 直下:
1
「機能材料組織学」第 12 回
②固相線との交点 Ep 直上:
・組成
・存在割合
③Ep 直下:
・組成
・存在割合
④室温:
・組成
・存在割合
・例題:組成 y の合金を液相からゆっくり冷却した場合,以下について述べよ.
①183℃直下で生じる現象
y
②183℃直下における組成
③
〃
存在割合
2
「機能材料組織学」第 12 回
12.2 固溶強化
●
図 12.2 固溶体形成による格子ひずみ
図 12.3 固溶濃度と Al 格子定数の関係
図 12.4 固溶濃度とα-Fe 強度の関係
・問い:全ての金属において,固溶強化は適用出来るのか?
12.3 析出強化
●Al-Cu 系におけるα 固溶体:
3
「機能材料組織学」第 12 回
・ゆっくり冷却:
・急速に冷却:
・本来,室温では固溶できない程の Cu 量を含んだ固溶体:
図 12.5 Al-Cu 系
平衡状態図(一部)
●
→特定の熱処理(時効処理)により
①
②
③
を連続的に析出していく
図 12.6 析出強化の形態
●析出強化のメカニズム
1)
2)
3)
4
「機能材料組織学」第 12 回
12.4 第 12 回講義に関する意見・感想・質問のまとめ
●意見・感想
・特になし:29
・復習して速く解けるようになる,復習する,小テストの勉強をしっかりする,復習をして整理したい,しっかり
復習したい:7
・共晶型平衡状態図は分かったつもりでいたがその後の例題がいまいちだった(勘違いしていた?),存在
割合の分子についての理解に苦しんだ,存在割合についていまいち分かっていないところがある,共晶
型状態図でも違う箇所が結構多くて混乱しそう,前回分までのこととごちゃごちゃになってきた,組成と存
在割合の変化が少し複雑だった:7
・理解できた,平衡状態図の理解が深まった,共晶型平衡状態図の読み取りがようやくまともにできるように
なってきた,存在割合の計算がよく分かった:4
・ここ数時間少し難しいと感じることが多くなった,最近の内容は難しく感じる:2
・覚えることが多くてテストが心配になってきた,テストが近いのでそろそろ準備を始める:2←
・以下一人ずつ:
例題に時間がかかった,固溶強化を全ての金属に出来るわけではないことが分かった,授業進行速度は
丁度よかった,固溶濃度と強度の関係が不思議だった,小テストの問題をしっかり読んでなかった,あり
がとうございました,析出強化の仕組みがまだ理解できなかった,
固溶強化で Al の格子定数と α-Fe 強度に対する固溶濃度の関係を見たが Fe の格子定数もしくは Al 強
度の関係も見てみたい←そうなんですよね,同じ元素に対する格子定数の変化と強度の変化が見られれ
ばその効果が分かりやすいんですが,ちょうど良いデータが見当たらなくて・・・今後も探してみます.
図 12.1 が難解だった←そうですか?確かにこの図は共晶型(II)の模式図なので,むしろ分かりにくかった
かもしれませんね.
4 ページ目の図 12.5 の縦軸は[℃]ではなく[K]では?←ご指摘の通りです,済みません.該当箇所を青字
で修正しておきました.
前回寝坊して休んでしまったのでショック←今後はそのようなことが無いように~
●質問
・ワンピース好きなのか?←最近ついていけてないです,私の中では魚人島で止まっています・・・
・2 ページの例題で存在割合は Sn のことか?←この質問は,「2 ページの例題で求める存在割合は Sn のこ
とか?」という質問か,「2 ページの例題で存在割合を出すのに Sn の値を使うのか?」という質問なのか,
はっきりしないので念のため両方に答えます.まず前者ですが,ここで問うてるのは「y 組成の 183℃直下
で存在する相の存在割合」であり,その条件下で Sn 単相では存在していませんので,Sn の存在割合を
求めるという問いはありえません.次に後者ですが,この図で示されてる横軸の値,および 183℃のライ
ンで示されている値は全て Sn のものですので,その通りです.ちなみに,もし仮に全ての値を対応する
Pb のものに入れ替えて計算しても,下記の通り同じ結果が得られます.
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「機能材料組織学」第 12 回
・1 ページ目の図 12.1 で縦軸の下端が室温というのはどのようにしてわかるのか?(他 1 人)←上にも書い
たように,これは模式図なので具体的な温度は示されていません.ただ,一般的に状態図の縦軸の下端
は 0℃(例:2 ページ目例題図),もしくは室温レベル(例:図 12.5)です.
・固溶強化の強化具合はどのようにして決まるのか?←授業でも説明したように,格子ひずみの導入具合
により決まります.
・共晶は状態名なのか現象名なのか?←確かに,いずれの解釈も成り立つと思います.ですので状態(組
織)を表す場合は「共晶状態(組織)」,現象を表す場合は「共晶」と表記するのが良いです.
・今回の小テストの計算問題は有効数字必要か?←この場合,目盛りも粗いですので厳密な読み取りは困
難ですから,有効数字は実質考慮しなくていいです.
・今日は七夕だが何か願い事はしたか?←し忘れました・・・
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「機能材料組織学」第 12 回
第 11 回小テスト解答
12.5
Q.1
右図の X の状態(組成:A 90%−B10%)からゆっくり冷却した場合,以下の問いに答えよ.[各 2 点]
X
a) 温度 T2 直上での組織の状態
b)
〃
で存在する各相の組成
c)
〃
各相の存在割合
d) 温度 T2 直下で生じる現象
e)
〃
での組織の状態
e
A.1
a) 初晶 A 金属と液相の混合状態(「A+L」,「固相と液相の混合状態」でも可)
b) 固相の組成:A100%−B0%
液相の組成:E 点が該当→ A40%−B60%
eE 50
= 0.833… → 83.3%
=
T2 E 60
液相の存在割合:1 - 0.833… = 0.166… → 16.7%
c) 固相の存在割合:
d) 共晶
e) 初晶 A 金属と共晶の固相混合状態(「A+B」でも可,ただの「固相」は減点)
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「機能材料組織学」第 12 回
参考問題
Q. 金属材料の強化機構について述べた以下の文章において,空欄[ ① ]〜[ ⑤ ]に
当てはまる語句を答えよ.[各 2 点]
金属材料の塑性変形は主に,すべり面上の転位の運動に伴う原子の移動によって
生じるため,転位の運動を[ ① ]する事が金属材料強化の本質的メカニズムである.
主な強化手法として加工硬化(強化),[ ② ]の微細化,[ ③ ],析出強化がある.
以下にその強化メカニズムを記す.
・加工硬化(強化):塑性変形進行に伴う転位の増殖・[ ④ ]増加
・[ ② ]の微細化:結晶粒界自体が転位運動の障壁として作用
・[ ③ ]:固溶体形成による[ ⑤ ]導入
・析出強化:GP ゾーン形成による[ ⑤ ]導入,析出粒子切断,転位の線張力
解答欄
①
③
⑤
②
④
8