Ⅳ 学習指導案 1 単元名 「マイ蚕の繭で糸取りをしよう」 (全5時間) 2 単元設定の理由 (1) 単元が生まれるまで 出会い 蚕の学習が始まった5月。孵化に立ち会い、 「お おきくなぁれ」と蚕の成長を願う。 飼育① 桑の葉をあげる子どもたちは、日々成長する蚕 に親しみをもってかかわっていった。 一 飼育② 夏休み明け、2代目となる蚕を再び飼うことになった子どもたち。 「また、育てるの?」と目を輝かせた M 児は、ガッツポーズをした。 年 R 児は朝教室に入った瞬間「先生、今日も葉っぱを採 りに行ってくる」と言った。 生 2回目の飼育は、500頭の蚕をクラス全員で育てる のではなく、子どもたちがお父さん・お母さんとなり、 一人10頭の蚕を自分の力で育てることに挑戦した。 絵 本 マイ蚕の気持ちに寄り添った絵本を作製した。 絵本を通して、蚕への思いがより深まっていった。 二 飼育③ → 冬を越した卵が孵化した。3代目の蚕をマイ蚕とし て育てる喜びを再び抱く。 年 飼育にも慣れ、発育状態に応じて 生 蚕の様子をデジタルカメラで撮れるように環境を整えると、ズームやワ 部屋を区別するようになった。 糸取り 蚕 の 一 生 の 学 習 蚕 の 糸 イド等の技法を覚え、工夫した角度で写真を撮るようになった。 以上のように、一年半にわたって蚕とふれあう中で、感動体験をもって蚕の命が継がれていくこと(命 のサイクル)を学んだ。お父さん・お母さんになってお蚕さんの命を預かり、育てることを繰り返し行 ったことで、決して他人事にせず、いつも目の届く範囲にマイ蚕を置き、かかわる姿が目立った。3回 の飼育を通して、自信をもって蚕と接するからこそ、蚕の新たな一面に気付き、それを素直に喜び、次 の活動への原動力となり、前向きにかかわることができた。 そこで、本単元では「マイ蚕の繭で糸取り」をテーマに構想した。卵から孵化した蚕が成長していく 先には蚕蛾としての道があり、蚕蛾はまた卵を産んで新しい命が宿ることを知っている子どもたちの中 には、 「繭は糸になるんだよ」と、もう一つの道を知識として持っている子がいる。それを受け、繭の 糸から作られた高級な着物にふれ、糸から物が生み出されることも学んできている。しかし、それがど のようにして姿を変えていくのかは知らないでいる。だからこそ、繭はお蚕さんが蛾として成長するた めに必要なお部屋として捉えている意識を広げ、新しい蚕の魅力に出合わせたいと考えた。 子どもたちは、手元にあるマイビーカーを使って、独自に糸取りを工夫し、意欲的に取り組むだろう。 その中で、何度引っ張っても出てくる長い糸に驚いたり、真っ白できれいな糸の美しさを感じたりする 感動体験をもって、蚕のもつ魅力に気付き、 「あなたはすごいね」と蚕を称える姿を期待したい。 1 本単元を通して、自分で育てた蚕の繭を使い、糸取り体験することで、蚕のもつ新たな魅力を感じて ほしい。そして、その発見や驚きをこれまでの蚕の歩みと重ねて考えることで、より蚕の営みにふれる ことができる。蚕のもつ素材の可能性に限界を感じることなく、蚕のもつ神秘さ、奥深さを感じ、これ からも蚕とともにあり続けてほしいと考え、本単元を設定した。 (2) 子どもの実態 ○行間休みのわずかな時間でも、飼育ケースから蚕を取り出し、手に乗せたり顔に近づけて観察し たりしている。毎日マイ蚕の面倒を見る中で、家族の一員のような存在として位置付いている。 ○学級文庫にある蚕の本や、図書館で借りてくる蚕の本を読み、知識を蓄えるだけでなく、実物の 蚕と比較しようとする気持ちをもって蚕と向き合える。 ○「桑の葉をあげたい」 「もっと触りたい」 「家に持ち帰りたい」等と前向きに蚕とかかわっている。 ○日々成長する蚕の長さ、桑の葉を食べる量、脱皮のあと等、変化を見逃さない。 ○繭1つで約 1500m の糸が取れることを知識として持っているが、どのように糸になるのか、どれ くらいの長さなのかは具体的に知らない。 (3) 素材のよさや可能性と教師の願い ①自分で育てたマイ蚕の繭を使って学習できる。 →マイ蚕の繭を用いることにより、進んで糸取りの活動に入ってほしい。 ②マイビーカーを手元に置いて糸取りをすることで、思うままに活動できる。 →一番近い距離で繭とかかわれるため、糸取りに没頭してほしい。 ③過去3回にわたって育てた蚕の繭の新たな一面である、長さと美しさによる驚きを味わえる。 →繭は蚕蛾になるための準備の袋と捉えている子どもに、繭の新たな一面を感じてほしい。 ④何度引っ張っても出てくる長い糸。 (繭1つで約 1500m の糸が取れる) →どれだけ引っ張っても終わることがない長い糸の存在を、驚きをもって感じてほしい。 ⑤糸取りを繰り返し行う中で、糸の取り方に変化が見られる。 →どのような加減で糸を取ればいいのか、一人ひとり工夫しながら糸取りをしてほしい。 (4) 素材の教材化 糸取りを繰り返し行う中で、蚕の魅 素材のよさや可能性 力である糸の長さや美しさに気付 糸の長さと美しさに魅了され、繭 き、過去の飼育を振り返る私 の新たな一面にふれられる 内容(7) 動植物の飼育・栽培 学習指導要領 気付きの質の高まりの具体 自分で育てたマイ蚕 の糸を取りたい子ども 子どもの実態 2 3 単元の目標 (1) 主目標 今まで大切に育ててきたマイ蚕の繭を使って、糸を取ってみたいと願った子どもたちが、マイビー カーを使って糸取りをする中で、蚕が作り出した糸の長さや美しさに気付き、蚕のもつ魅力にふれる ことができる。 (2) 具体目標(評価規準) 本 単 元 の 評 価 規 準 に 盛 り 込 む べ き 事 項 単 元 の 評 価 規 準 学 習 活 動 に お け る 具 体 の 評 価 規 準 4 【生活科の内容(7) 具体的な視点 キ】 A 生活への関心・意欲・態度 B 活動や体験についての思考・表現 C 身近な環境や自分についての気付き ○動植物やそれらの育つ場 ○動物を飼ったり植物を育て ○生き物は命をもっているこ 所、変化や成長の様子に関 たりすることについて、自 とや成長していること、生 心をもち、生き物に親しん 分なりに考えたり、工夫し き物と自分とのかかわりに だり、大切にしたりしよう たり、振り返ったりして、 気付いている。 としている。 そ れ を 素 直 に 表現 し てい る。 ○蚕との今までのかかわりを ○自分なりに考え、工夫して 振り返ろうとしている。 糸 取 り を し よ うと し てい ○蚕の新たな一面に関心をも ちながら、糸取りをしよう る。 に気付いている。 ○糸取りを繰り返す中で、過 ○蚕の新たな一面を表現しよ としている。 ○蚕がもっている新しい魅力 うとしている。 去の飼育での自分の姿に気 付いている。 ○写真や映像を見ながら、今 ○手を使ったり、道具を使っ ○繰り返し、自分で糸をひい ま で の か か わ りを 思 い出 たりして、どのように糸を た こ と に 喜 び を感 じ てい し、振り返ろうとしている。 ひけば、思った通りにひけ る。 ○糸の長さや美しさに驚き、 るのか考えている。 今まで大切に育てたマイ蚕 ○糸の長さや美しさに驚いた の繭を使って糸取りをしよ こ と を 伝 え よ うと し てい うとしている。 る。 ○今までマイ蚕を大切に飼育 してきた自分のよさに気付 いている。 単元展開の大要(全5時間) 学習活動 ○学習内容 ◇支援 ☆評価 時 ◇担任や子どもたちが撮影した写真 1 【第1次】 ○過去3回の飼育を写真で振り返る。 過去の活動 ・お蚕さん、やっぱりかわいい。 を、時系列に沿って見る際、蚕の を振り返ろ ・もうあんなに大きくなっているよ。 一生や繭の使われ方に着目する。 う。 ○マイ蚕の繭を使って何ができるかな。 ◇9月に行った、蚕の糸からできた ・きれいな着物は繭からできていたよね。 着物を想起させ、今回の活動への ・今回は、糸取りをしてみたい。 意欲を高める。 【第2次】 ○糸取りの準備をする。 ◇火気を用いる初めての授業のた マイ蚕の繭 ・繭を煮てから、糸取りをするんだ。 め、安全に配慮して行う。また、 で糸取りを ・お蚕さん熱くないのかな。 ビーカーを確実に手渡す。 しよう。 ・びっくり水を入れたら、繭が浮かないね。 ◇早く糸を取りたい気持ちに共感 ・早く糸を取ってみたいな。 し、次時への意欲を高める。 3 2 ○糸取りをしよう。 ◇糸を取っている時の子どもたちの ・どんどん糸が出てくるよ。 気付きや驚きに共感する。 ・まだ繭から糸が出ているよ。 ◇すぐ糸が切れてしまう繭の場合 ・わー、きれい。糸がキラキラしている。 ・あっ!糸が切れちゃった。 は、予備の繭を渡す。 3 ( 本 時 ) ◇各自の糸取りの工夫を認める。 ・この糸はどれくらい長いのだろう。 ・糸を巻きつけていってもいいのかな。 ☆感じたり、驚いたりしながら糸 取りができる。 ・お蚕さんはこんなに糸を出していたのか。 ○座繰り器を使って、糸取りをしよう。 ・どうやって使うのかな。 かったのに、座繰り器を使うと早い。 ・座繰り器を使うと、糸が絡まらなくて、早 く糸が取れるね。 ◇座繰り器を体験した子どもの気持 ちに共感する。 ◇全員に座繰り器を体験してもら い、前時との比較に着目させて、 ・便利な道具があるんだね。 発言を促す。 【第3次】 ○糸取りをして感じたことを伝え合おう。 糸取りの活 ・こんなに糸が取れるなんて思わなかった。 動 を 振 り 返 ・糸の色が、真っ白でキラキラ光っていてき れいだった。 ◇最初に班の中で感じたことを伝え 5 合い、その後、全体で感じたこと を伝え合うようにする。 ◇糸取り時の工夫についても伝え合 ・1つの繭を作る時に、お蚕さんがあれだけ 長い糸を出しているなんて思わなかった から、お蚕さんはすごいと思った。 ・お蚕さんがあれだけの糸を出せるのは、私 たちがたくさん桑の葉をあげたからだ。 5 4 起させ、座繰り器を紹介する。 ・自分の手で引っ張ると、たくさん時間がか ろう。 ◇手で糸を取る難しさ、大変さを想 うようにする。 ◇糸を出す蚕の姿から、蚕の頑張り に気付いたことを称え、共感する。 ◇糸取りを体験して、今後どんな活 動が考えられるか話し合う。 本時案 (1) 本時の主眼 大切に育てたマイ蚕の繭で糸を取ってみたいと願った子どもたちが、マイビーカーを使い、思い のままに糸取りすることを通して、何度引っ張っても出てくる長い糸に驚いたり、真っ白できれい な糸の美しさを感じたりすることができる。 (2) 本時の位置(全5時間中の第3時間目) 前時:糸取りの準備をした。 次時:座繰り器を使って、糸取りをする。 (3) 指導上の留意点 ・自分たちの飼育によって、蚕が糸を出し、繭を作れることに気付きやすいよう、蚕が糸を出して いる映像を流し続ける。 ・糸取りのやり方を見せる際には、繭の数を増やしたり、背景を暗くしたりして、糸の美しさをよ り感じられるようにする。 ・糸取りをする際、困った時に頼れる「おたすけボード」を用意しておく。 ・糸取りの工夫を認め、体育館器具庫にある道具が使えるように環境を整えておく。 4 (4) 展開 段階 ○活動内容 ・予想される子どもの意識 ◇支援 ○糸を出している蚕の姿を映像で確認する。 導 ◇糸を出している様子が想起しやすいよ ・確かに、ああやって糸をはいていたなぁ。 を出していて、大変だよね。 ○糸取りのやり方を見せる。 ることが大事なんだな。 5 ◇全体の場で、歯ブラシの使い方や糸取 りの方法を確認する。 ○各自、糸取りをする。 ◇糸の長さや美しさに気付いたり、驚い ・すごい!どんどん糸が出てくるよ。この糸って どこまで続くんだろう。 22 たりする姿に共感する。 ◇活動が進まない子には、糸を取り出す ・わー、きれい。糸がキラキラ光っているみたい。 ・腕に巻きつけてみようかな。 ところまで一緒に行う。 ◇糸取りの工夫を認め、自信をもって活 ・体育館の端から端まで行ってみよう。 動に取り組めるようにする。 ・最初はどれだけ長いかわからなかったけど、椅 ◇糸の長さや美しさに気付きにくい活動 子に糸を巻きつけていったら、何周もできてビ をしている子には、糸を巻く等道具を ックリした。 使った活動があることを伝える。 ・お蚕さんって、繭を作る時、こんなに糸を出し ていだんだ。 ◇導入で見た映像と結びつけて糸を取っ ている姿をとらえ、共感したり、賞賛 ・繭の時は白かったのに、糸を取ると光っている。 ・お蚕さんって、あんなに体が小さいのに、こん なに長く糸を出すなんて、すごい。 したりする声がけをする。 ☆感じたり、驚いたりしながら糸取り ができる。 ○片付けをする。 ◇使用した道具は、自分の引き出しに返 ・ビーカーは、引き出しに片付ければいいんだな。 ○学習カードに、活動のふり返りをする。 こんなに糸が出てくるなんて、びっくりした。 ・昔の人は、こんなに大変なことをして着物を作 っていたのかと思うとすごいと思った。 いく気付きや感想をとらえて、共感す る。 ◇体験した糸取りの気持ちを受け止め、 次時につなげていく。 5 2 せるように環境を整えておく。 ◇糸の長さや美しさに着目して書かれて ・お蚕さんの糸はとってもきれいでした。繭から 末 全体に広げていく。 共感し、活動意欲を高める。 ・歯ブラシを使って、全部の繭から糸を持ってく 終 ◇繭を形づくるまでの蚕の頑張りに着目 ◇初めて見る糸取りに驚く子どもの姿に ・わー!すごい!!すごい!きれいだなぁ。 開 4 した発言を受け、気付きのよさを認め、 ・大切に育てたお蚕さんの繭から糸を取るんだ。 展 時間 う、大型スクリーンを用いる。 ・蚕は何も食べないで、何も飲まないでずっと糸 入 ☆評価 12
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