上田市立清明小学校

 上田市立清明小学校 「われらの真田幸村」
(2年)
、
「地域を守る安パト隊の皆さ
ん」
(3年)
、
「地域の福祉施設と交流しよう」
(4年)
、
「地
元の産業を探る」
(5年)
、
「我が町自慢」
(6年)などの学
習の中で、ふるさと上田を見つめ、ふるさとに愛着と誇り
を持ち、ふるさとを大切にしていく子ども達の育成を願い、
実践を重ねています。
(5) 大会テーマの受けとめと研究のねらい
本校は、
「友との学び合いを通して、自己を高めていく支
援のあり方」を全校研究テーマとして、取り組んでいる。
昨年度の全国学力・学習状況調査の結果において、本校は
(1) 学級数 14学級
(2) 児童数 男子172名 女子170名 計342名
(3) 職員数 26名
(4) 学校紹介
www.school.umic.jp/seimei/
上田市の中心市街地にある清明小学校は、上田市最古の
歴史を持つ南小学校(上田城藩主松平家の藩学「明倫堂」
が始まりとされる)と中央小学校(文化10年開塾の寺子
屋「海風堂」が始まりとされる)が昭和34年に統合され、
現在に至る歴史と伝統のある学校です。校庭には樹齢百年
を超す「神樹の木」があり、
「一心の道」の教え、
「自主の
校風」とともに、清明小学校のシンボルとなっています。
また、学区には、商業地や武家屋敷の名残を残す旧市街地
の住宅街、真田氏縁の上田城跡公園、幕末の志士「赤松小
三郎」や医学博士「山極勝三郎」の生家、小県蚕糸専門学
校跡、旧北国街道など、歴史的文化的価値の高い史跡や遺
産が残る地域で、近年「蚕都上田」の名も定着しました。
このような地域で暮らす子ども達は、そこに住む多くの
「ひと」や存在する「もの」
、そして様々な「こと」にふれ
ながら生活し成長しています。自分たちの住む地域を見つ
め、その良さやすばらしさを体感し、地域とともに歩み成
長していくことの大切さに気づかせたいと考え、清明小学
校では、生活科や総合的な学習の時間等で、
「ふるさと学習」
を展開しています。
「おかいこさんをそだてよう」
(1年)
、
全国平均を大きく上回ったが、その原因を学習状況調査と
の関連で見ると、次の点が指摘できる。
①豊かな地域性(地域が学校全体を見守っている)
②体験・実験を多くしている
③話し合い活動を多く取り入れている
④自己(または集団)肯定感が高い
⑤問題に粘り強く取り組める
これらの底に流れているものは「協働」であり、本校の
学力の基盤には「学び合い」がある。この学び合いは、大
会テーマである「広い視野を持ち、新しい文化を築く」た
めの基礎となり、心豊かな人間の育成につながると考えた。
公開を予定している生活科では、低学年でもあるので、
まずは対象に浸り込むことが大切と考え、「対象とのかか
わりの中で、一人ひとりの思いや願いを育み深める支援の
あり方」と研究テーマをすえ、次の点を支援の視点として
研究を進めている。
①興味や活動意欲に合わせた題材の選定
②一人ひとりの活動が保障される環境の設定
③その子の活動を認め、励ます言葉がけ
④振り返りの場の設定と工夫
これらの支援にとって、視覚・放送・情報教育が、有効
な手立てとして働くことは、以下で見るように言うまでも
ない。
(6) 日常的な活用
化できない低学年の子ども達の表情や様子を映像として
①デジタルカメラや写真の活用
残していくことは、一人ひとりの成長を評価基準に照らし
生活科の学習の中で最も活用されているのはデジタルカ
た「力」として見るだけでなく、その子なりの「姿」とし
メラや写真である。
て見ていく上で、重要な記録となる。
1年生の生活科「おかいこさんのえほんづくり」では、
<教師の振り返りから>
自分で育てた蚕の絵本を描きたいと願って制作する場面
「写真を撮っていて気づいたことは、目の輝きがちがうこ
があった。授業の導入で、教師と子ども達が蚕と関わった
とでした。頭を下げたり、不機嫌そうな様子で写真を撮ら
写真を読み解くことを通して、蚕の気持ちに寄り添うこと
れたりしていた今までと違い、求めて写真に写ろうとする
ができ、写真から語られる言葉を受けて、どんな絵本を描
姿が増えました。
」
こうとするのかイメージをふくらませることができた。
②子ども自身が作っていく視覚教材の活用
<授業記録から>
「かんさつにっき」で蚕の成長をまとめていく活動を始
T 写真を出す。
「どこで見たか覚えてる?」
「先生、この
めた子ども達は、新しく発見した内容を書いたり、蚕の言
写真好きなんだよ。
」
葉を想像したりして、蚕との距離を縮めていった。そして、
c「けごが写っているから?」
「小さくて、ビックリした
「おかいこさんの えほんづくり」の授業においても、写
のかな。
」
真に劣らない振り返りの手立てとなった。さらに言えば
T 「けごちゃん何て言っているかね。
」
「かんさつにっき」は、蚕という教材が、いったんその子
c 「たまごから生まれた。
」
「良かった。
」
の文脈の中で解釈された上で表現されたものである。その
ような教材は、友だちの共感を呼びやすく、友だち同士で
関わり合うきっかけとなり、それぞれの個の持つ蚕の認識
を揺さぶりやすい。個の気づきの質を高める上で、大変重
要な視覚教材であると考えている。
(7)研究を推進してきての現時点での課題
<これまでの取り組みから分かってきたこと>
・対象について語り、表現することは、対象に自分の願い
を託し、実現していこうとする姿である。それを振り返る
ことは、自分の良さに気づくことにつながっている。
・対象と深く関わろうとすることは、自己との対話を深め
写真をきっかけとして、学級全体を包む共感の世界が生
まれた。その後の展開の中でも、子ども達は写真を見に行
き、蚕が孵化する瞬間、桑の葉を食べている姿、大きくな
った蚕など、今までの関わりを写真で振り返ることで蚕と
の距離を縮め、思いのこもった絵本を作ることとなった。
また、教師にとっても、写真は子ども達の気づきの質の
高まりを具体的に見返し、評価していくために有効な手立
てとなった。個の育ちを追う教師にとって、すぐには言語
る姿であり、自分にない文脈を取り入れようとする姿であ
り、それが自然に友との関わりを紡ぎ出していく。
・直接対象に関わることに困難さを示す個であっても、対
象と深く関わろうとする友から、夢中になる楽しさ、願い、
先を見越す力、責任感などを豊かに学ぶことが出来る。
<今後さらに研究を深めたいこと>
・対象に深く関わることが、対象の命をうばうことにつな
がる場合、対象の価値をどうとらえるべきなのか。
(蚕)