加熱アスファルト混合物を用いた 高耐久表面処理工法 東亜道路工業(株) 技術研究所 松下 裕弥 はじめに 舗装は、供用後に車両の走行に伴う 交通荷重を直接かつ繰り返し受けることによる累積荷重 や、紫外線等による破損や劣化が進行 その性能と管理目標を踏まえ 再構築を含む維持と修繕という管理行為が必要 つまり、舗装は性能が低下することを前提に建設し、 その特徴を適宜把握しながら、 必要な管理行為を適切に実施していく 維持修繕の考え方 道路利用者にとってわかりやすい、透明性のある管理 最小のコストで最適な効果を調達する効率的な管理 ※図は舗装の維持修繕ガイドブック2013 p5より 舗装の調査方法 舗装の調査 ・現状の把握 効率的な補修設計・計画を ・要求性能の調査 行うためには構造物診断 路面調査 ・舗装台帳の確認 ・目視調査 目視観察 スケール測定 ・路面性状調査 調査試験機や器具による測定 測定車による測定 構造調査 ・FWDたわみ量測定 ・コア採取 ・開削 実測データに基づき 舗装の構造評価 過去の経験やデータに基づき破損の程度を推定・評価 実測データに基づき舗装の構造評価 非破壊舗装診断 FWD FallingWeightDeflectometerは非破壊でできる舗装の精密検査 1.舗装を構成する各層の健全度や支持力を知ることができる 2.測定時間が短く(2~3分/箇所)面的な強度を知ることができる 3.非破壊で舗装の精密検査ができる FWDで何がわかるか①? 載荷点直下のD0たわみと設計交通量から、要補修区間が特定可能 舗装計画交通量 (台/日・方向) 100未満 100以上 250未満 250以上 1,000未満 1,000以上 3,000未満 3,000以上 設計交通量区分 N3以下 N4 N5 N6 N7 0.6 0.4 0.3 許容たわみ量の 1.2 0.9 基準値(mm) 舗装機能の向上によるLCCの低下 表面処理工法を検討 ※舗装標準示方書 p321より抜粋 舗装の構造的破損 打換え工法の検討 FWDで何がわかるか②? D0たわみと150mm離れたD150たわみから 路床の支持力(現状CBR)、舗装の残存TAが推定 現状CBR = 1 D150 残存TA = -25.8×log (D0-D150) +11.1 残存等値換算厚(TA0)による設計 の際に参考 ※式は舗装の維持修繕ガイドブック2013 p41より FWDで何がわかるか③? D0たわみと200mm離れたD200たわみから 弾性係数Eが推定できアスコン層の残存強度が評価 弾性係数E = 2.352×(D0-D200)-1.25 h h:アスコン層の厚さ(cm) アスファルト混合物層の健全度を評価する目安 一般的なアスコンは6,000MPa程度(20℃) ※式は舗装の維持修繕ガイドブック2013 p41より 維持・修繕工法の種類 予防的維持工法 適切な時期に適切な処置 ⇒ ライフサイクルコストの低減 表面処理工法 既設舗装の上に3cm未満の薄い封かん層を構築 予防保全 路面の老朽化やひび割れ、摩耗等、破損が軽微な内に 処理することで延命効果が期待 舗装の機能回復・向上 遮水性やすべり抵抗の向上 乳剤系 フォグシール 希釈したAs乳剤(MK)を0.5~0.9L/m2散布 ひび割れや表面の空隙を充填し、舗装面を若返らせる! チップシール 乳剤を用いて骨材を単層、複層に仕上げる 微細なひび割れを埋めることで、耐水・耐久性の向上! 路面を若返らせ、耐摩耗性を向上! スラリーシール 細骨材・フィラー・アスファルト乳剤・水を混合しスラリー 状としたものを、既設舗装上に薄く(3-10mm)敷きならす 材料、施工共に加熱を必要としない常温表面処理工法 特徴 省資源・CO2排出量の抑制 老朽化した路面のリフレッシュ 軽微なわだち掘れ補修 マイクロサーフェシング工法 路面テクスチャの改善・機能回復 プレパック型常温補修材 “使いやすさ”を追求した 小規模用常温硬化型路面補修材 特徴 左官ゴテ・ゴムヘラ等で施工可能! 携帯性に優れ、材料ロスが少ない パッケージ化による簡単・確実な作製 早期交通開放可能 耐摩耗・接着性に優れる! カーペットコート 既設舗装上に加熱アスファルト混合物を厚さ1.5-2.5cmの 薄層で敷きならし、締固める工法 路面の老化やひび割れ・摩耗等、またIRIで示される走 行性改善などの舗装機能回復を目的に適用 特徴 一般的な修繕工法であるオーバーレイ工法と比較し 施工厚が薄く、比較的早期に交通解放可能 舗装厚と温度低下の推移 砕石マスチックアスファルト(5)混合物を厚さ10~20mmで 舗設した時の温度変化 アスファルト混合物温度は 敷きならし直後から、急激に低下 施工時の締固め度 切り取り供試体より算出した締固め度 締固め度は 厚さが低いほど小さくなり、 転圧時の温度低下が影響 転圧時の温度確保が難しく、所定の締固め度が得られ難い 薄層舗装の課題 混合物の温度低下が引き起こす損傷事例 既設舗装との接着不足による 流動、はく離、ポットホールの発生が懸念 高耐久表面処理工法の特徴 薄層(厚さ20mm程度)で舗設しても十分な締固め度 が得られること 既設路面と十分に接着すること 一般的な舗装と同程度の耐流動性を有し、 骨材飛散抵抗性に優れること 耐水性に優れ、局所的な剥離やポットホールが生じ にくいこと 使用材料について 混合物粒度について アスファルトについて 締固め度について 配合設計について 骨材粒度について 薄層で敷きならす ⇒ 最大粒径 5mm 耐摩耗性・耐流動性の特性 アスファルトについて プレミックスタイプの中温化技術を活用した専用の ポリマー改質アスファルト (改質Ⅱ型相当) 所定の密度を確保 中温化技術の活用 局所的な剥がれやポットホール はく離抵抗性の向上 締固め度について ホイールトラッキング試験用供試体(厚さ20mm) 120℃程度で転圧 締固め度を確保 転圧回数を増加 締固め度が上昇 配合設計について 突固め回数は両面50回とする 締固め温度は現場状況を加味し、130℃±5℃とした 項目 基準値 着き固め回数 両面50回 空隙率 % 5-7 飽和度 % 70-80 安定度 kN 5以上 フロー値 1/100cm 20-40 ホイールトラッキング試験 回/mm 1,500以上 項目 推奨温度(℃) 混合温度 175±5 締固め温度 130±5 接着性について ひび割れに浸透 荒れた路面にも浸透し、既設路面との接着 PKM-Tの散布量 0.6L/m2 防水性の評価(加圧透水試験) 薄層用アスコン 厚さ:2cm 切取り供試体 タックコート PKM-T 0~0.6L/m2 密粒(13) 厚さ:3cm タックコートの散布量 透水係数(cm/s) 散布無し 1.1×10-5 0.4L/m2 9.6×10-6 0.6L/m2 0.0 透水性が非常に 低い 不透水性 混合物性状の評価 耐流動性の評価 骨材飛散抵抗性の評価 耐水性の評価 耐流動性の評価 ホイールトラッキング試験 下層の影響を加味した ホイールトラッキング試験 薄層用アスコン 2cm タックコート 密粒(13) 3cm 骨材飛散抵抗性の評価 チェーンラベリング試験(-10℃) カンタブロ試験 耐水性の評価 水浸マーシャル安定度試験 水浸ホイールトラッキング試験 ホイールトラッキング方向 剥離率 0% トラバース方向 施工方法 温度管理 運搬距離、気温、風速、施工厚を考慮した温度管理 項目 製造時 舗設時 推奨温度(℃) 混合温度 175±10 敷きならし温度 160以上 初転圧温度 110以上 二次転圧温度 100程度 使用機械 項目 使用機械 敷きならし アスファルトフィニッシャ 初転圧 コンバインローラ タンデムローラ 2往復程度 二次転圧 タイヤローラ 2往復程度 施工 散布量が多いため、 縦横断勾配が急な箇所は留意 敷きならし 目標施工厚20mm タックコート工 0.6L/m2 舗装端部:型枠を用いず擦り付け可能 アスファルト混合物の引きづり 急速な温度低下が予想 速やかに転圧 転圧 路面性状 きめ深さ(平均プロファイル深さ) すべり抵抗の測定 • 振り子式スキッドレジスタンステスタ • DFテスターによる動的摩擦係数 きめ深さ(MeanProfileDepth) CircularTrackMeterによる きめ深さ(平均プロファイル深さ:MPD)測定 路面の粗さの目安となるきめ深さを測定した結果 MPD:0.32mm cf.密粒度アスファルト混合物 MPD:0.5程度 すべり抵抗性の評価 舗装路面のすべり抵抗を測定 振り子式スキッドレジスタンステスタによる測定 60BPN(BritishPendulumNumber) 回転式すべり抵抗測定器による測定 (DynamicFrictionTester) μ60=0.45 施工情景 ひび割れ率:57-63% 実道への適用① 一ヵ月後 施工前:ひび割れ率43% 愛知県新城市黄柳野 交通量区分:N4 六ヵ月後 実道への適用② 交通量区分N3 除 雪 を 伴 う 現 場 札幌市中央区 特 殊 な 適 様 事 例 交通量区分N4 橋 梁 上 の 舗 装 札幌市奔幌内橋 コスト 一般的な改質Ⅱ型を用いた50mmの切削オーバーレイ 工法との施工コスト比較 三割程度コスト削減 切削廃材が発生しない まとめ 高耐久表面処理工法を適用することで、 1)既設路面をリフレッシュさせ、 舗装機能(乗り心地、路面騒音等)の向上・回復 2)既設舗装上に敷きならすため、切削廃材が発生せず、 また、表面処理することで舗装の延命効果 3)加熱アスファルト混合物を薄層で敷きならすため、 比較的早期に交通解放が可能 4)一般的なアスファルト舗装と同様の機械編成で 施工可能であり、施工性に優れる おわりに 維持・修繕を行う上で、 適用箇所の要求性能や供用条件に応じて、適材適所で の材料選択を行うことが重要 使用材料の効果を最大限に発揮できるような出来高確 保を行う必要 東亜道路工業(株)は優れた材料の開発 および、確度の高い調査技術を以て、 舗装の長寿命化に貢献していきます!
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