試験研究は今 No.816 釧 路 沿 岸 に お け る 降 海 後 の サ ケの 餌 生 物 に つ い て はじめに 近年、北海道太平洋側の秋サケ来遊数が減少しており、特にえりも以東の釧路地区にお いて、その傾向が顕著に見られています。 秋サケの来遊不振の原因究明と資源の回復を目的として行われた水産庁委託事業「太平 洋 サ ケ 資 源 回 復 調 査 事 業 」の 一 環 と し て 、さ け ま す・内 水 面 水 産 試 験 場 で は 、一 般 社 団 法 人 十勝釧路管内さけ・ます増殖事業協会と共同で、死亡率が高いと考えられているサケが降 海し沿岸に分布する幼稚魚期に、釧路沿岸において調査を行いました。ここでは釧路沿岸 で採集したサケの餌生物についての調査結果をご紹介します。 降海後のサケ幼稚魚の採集と出現時期 平 成 24 ~ 27 年 の 4 月 下 旬 ~ 7 月 下 旬 に 調 査 を 行 い ま し た 。 新 釧 路 川 を 挟 ん だ 西 港 と 東 港 の 港 湾 内 に お い て 、 た も 網 を 用 い て 海 面 付 近 を 遊 泳 す る サ ケ を 採 集 し ま し た ( 図 1)。 ま た 、釧 路 港 の 港 湾 外( 1km 沖 )の A2、B2 の 定 点 で は 、表 層 で 網 を 水 平 曳 き す る こ と に より採集しました。 港 湾 内 で 採 集 さ れ た サ ケ の 体 サ イ ズ は 3~ 5cm の 個 体 が ほ と ん ど で し た が 、港 湾 外 で は 港 湾 内 よ り サ イ ズ が 大 き く 、時 期 に よ っ て は 様 々 な 大 き さ の サ ケ が 採 集 さ れ ま し た( 図 2 )。 年による違いはありますが、サケが多く採集された時期は、港湾内では4月下旬から6月 下旬位までであり、港湾外では5月中旬から 7 月上旬位まででした。 図 1 サケの採集風景 図 2 港湾外の定点で採集されたサケの体 サ イ ズ ( H27 年 6 月 下 旬 に 定 点 B2 で 採 集 ) サケの胃内容物 採 集 し た サ ケ の 胃 内 容 物 を 調 べ ま し た ( 図 3、 図 4 )。 港 湾 内 に お い て サ ケ は 魚 類 仔 魚 、 ア ミ 類 、十 脚 類( エ ビ や カ ニ )、端 脚 類( ヨ コ エ ビ )等 を 捕 食 し 、サ ケ の 出 現 数 が 減 少 す る 6 月中~下旬以降は、前述の餌生物と比べると小型で遊泳力の弱いカイアシ類の占める割 合が大きくなりました。港湾外においては、魚類仔魚を主に捕食していましたが、6 月中 ~下旬以降は港湾内と同様に、カイアシ類の占める割合が大きくなりました。また、毎年 6 月下旬頃、港湾外で大型の幼魚が採集されましたが、幼魚はサイズの大きい餌生物であ る十脚類を選択的に捕食していました。 図 3 定 点 、 調 査 旬 、 体 サ イ ズ (cm)別 の サ ケ 胃 内 容 物 の 容 積 組 成 ( 平 成 2 4 年 ) おわりに 降海後のサケはカイアシ類を中心とし たプランクトン(浮遊生物)を利用して いるイメージがあるかと思いますが、釧 路沿岸では餌生物量の増減や自身の成長 に伴い、多様な餌料環境を利用している と考えられます。 一 般 的 に 、 サ ケ の 放 流 は 海 水 温 が 5℃ 以上となる時期に合わせて行うことが良 いとされていますが、北海道は海域によ 図4 サケの胃内容物 (左から魚類、十脚類、カイアシ類) り海洋環境や餌料環境が大きく異なるた め、各海域の環境に合わせた放流が必要であると考えられます。 (さ け ま す ・ 内 水 面 水 産 試 験 場 さけます資源部 飯嶋亜内)
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