SAR徹底解剖

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Rescue
K 3 8
J A P A N
徹底解剖
レスキューに特化した専用装備と機能が与えられた、世界初の水難救助用PWCであるSAR。
果たして、
その実力とは?
PWCレスキューのスペシャリスト、K38 JAPANにインプレッションを行ってもらった。
special thanks/
BRPジャパン
K38 JAPAN
ジェットフィールド湘南
http://www.brp-jp.com/
http://www.k38japan.com/
http://jetfieldshonan.jp/
SAR 誕生秘話
ス・ドラピュー氏。彼が開発段
BRP が世界初の水難救助用
られることをフィードバックし
PWC として開発した SAR(サ
たことが、SAR 完成の大きな
ーチ・アンド・レスキュー)
。
助けとなった。
階から実際に乗り、現場で求め
ベースモデルのGTI 155とくらべて、SAR
は全幅が約470mm広くなっている。販売
価格、販売対象などの詳細は、SEA-DOO
販売店に問い合わせを。
レスキューの現場を想定した工
夫や様々な装備が施されている
が、その開発のキーマンとなっ
たのは、カナダのシャンブリで
消防士長として活躍するニコラ
Information by Shawn Alladio
Key Feature[1]
デュアルスポンソン
SAR 最大のポイントといえ
という。PWC の特性として、
フやスウィフト(急流)におけ
るのが、船体両舷に配置された
低速でなおかつ多人数が乗船し
るホワイトウォーター(空気を
インフレータブルの大型デュア
た場合、転覆するリスクはおの
多く含む水)でも、浮力を失う
ルスポンソンだ。高い耐候性を
ずと高くなる。これは身をもっ
ことなく安定した救助ができ
発揮し、さらに耐熱、耐油、耐
て経験したことのあるひとも多
る」という。
薬品性にもすぐれる特殊ゴム・
いと思うが、レスキューの現場
ハイパロンを採用することで、
ではそうした状況が頻繁に訪れ
過酷な環境にも対応。そしてい
る。そのため、このデュアルス
ざ水上にでてみると、
「一般的
ポンソンがもたらす類い希なる
な PWC とは比較にならない
安定感が大きな助けとなるのだ。
ほどの安定感を、このデュアル
また一般的な PWC よりも浮
スポンソンがもたらしている」
力が付加されたことで、
「サー
両舷のデュアルスポンソンにより浮力が付
加されているからか、最大積載量は295kg
とGTI 155よりも約20kg増加(定員は3
名)
。水面から掴めるロープを装備。
デュアルスポンソンの船尾側には、転
覆復原時に使用するロープ
(フリップ
ライン)
も装備されている。
Key Feature[2]
016
ランニングボード
大型のデュアルスポンソンに
者が安定した ドライエリア
より広くなった船体幅を、船上
(陸上) から行う救助です。
でも活用できるようにしている
ボートレスキューのコンセプト
のがランニングボードだ。通常
は、陸地のない水上にドライエ
のデッキと同等以上のスペース
リアとなる船舶を移動して救助
が追加されるため、救助活動の
を行うこと。つまりスペースが
あらゆる場面で役立つ。
「もっ
広ければ広いほど、安定した救
とも安全な水難救助とは、救助
助が行えるというわけです」
デュアルスポンソンにより全幅が広く
なっていることは、正面から見れば一
目瞭然。片側のランニングボードに
大人2名が乗っても、
ご覧のとおりの
安定感だ。
017
船底コーティング&
強化フロントバンパー
SAR の 船 底 は、2.8mm 厚
的な PWC よりも大きく頑丈
の弾力ゴム(エラストマー)で
な強化フロントバンパーも、同
覆われている。岩礁や護岸、が
様の役割を担っている。コーテ
れきや漂流物が多い災害現場、
ィングは船体保護だけでなく、
水深の浅い洪水被災地といった
「風浪やうねり、サーフやスウ
特殊な環境での救助活動も想定
ィフトによる衝撃や振動を和ら
されており、このコーティング
げてくれるので、乗船者の疲労
が船体を保護してくれる。一般
も軽減してくれます」
﹁PWCメーカーが
レスキュー専用艇を
開発したという事実は、
PWCの歴史に
その名を刻む
大きな出来事と
いえるでしょう﹂
Key Feature[3]
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徹底解剖
Key Feature[4]
特殊インテークゲート&
高耐久ライドプレート
冷却方式はクローズド・
ループ・クーリング・シス
テム( C L C S )だが 、
SARはエンジンルーム
内に配置されたヒート
エクスチェンジャーで熱
交換を行っている。
電子制御デバイス&
ユニバーサルキー
SAR はモードの切り替えとい
った余分な操作をスキップでき
るため、迅速な救助と搬送が可
ベ ー ス モ デ ル で あ る GTI
スポーツモードでの始動となっ
能になります」
155 の電子制御機能はそのま
ている。
「サーフやスウィフト
また SAR は、登録したキー
ま継承されているが、唯一異な
といった外力の影響が強い水域
のみで始動可能な D.E.S.S. キ
るのはエンジン始動時の走行モ
では、クイックなスロットルレ
ーではなく、同一形状ならいか
ード。通常であればツーリング
スポンスと低回転域での推力が
なるキーでも始動可能なユニバ
モ ー ド で の 始 動 と な る が、
求められるため、スポーツモー
ーサルキーを採用。
「同一組織
SAR はフルパワーを発揮する
ド で の 走 行 が 必 要 不 可 欠。
で複数の SAR を運用している
ハル以外にも特殊環境を想定
ョンの発生により推進力の低下
ポンプウェアリングを採用する
ルーム内に熱交換器を配置して
した装備が施されており、イン
を招きます。しかし SAR の特
など、考えられた仕様となって
いるのも特徴。水深の浅い水域
場合や、操船者が入れ替わる場
テークゲートもそのひとつ。通
殊インテークゲートは、推進力
いる。
や岩礁などで船底やライドプレ
合、操船者の落水や緊急エンジ
常モデルよりもバーの本数を多
の低下を最小限に抑えながら、
そして他の SEA-DOO 全モ
ートが破損しても、エンジンの
ン停止コードの紛失など、互換
くすることで、ポンプ内への異
異物の侵入を防いでいます」
。
デルと同じくエンジンや排気系
冷却には影響が出ない仕組みと
性があることで迅速な対応がと
物の侵入を防止。
「インテーク
また、このインテークゲートを
の冷却には間接冷却方式が採用
なっている。もちろんライドプ
れる場面も多々あるでしょう」
ゲートを不用意に改造すると、
通過するような小石を吸い込ん
されているが、ライドプレート
レートにも、耐衝撃加工が施さ
ポンプ圧の低下やキャビテーシ
だ時のために、ステンレス製の
による熱交換ではなくエンジン
れている。
海外での実情と反響
018
Key Feature[5]
Information by Shawn Alladio
Key Feature[6]
special thanks
K38 & K38 JAPAN
K38はアメリカを中心に、世界中で
活躍するPWCレスキューのプロフェ
ッショナル集団。K38 JAPANは
2008年に発足し、各種イベントでの
水上安全管理や講習会などによる
安全啓発・普及活動を行っている。
両色・航海灯&大容量バッテリー
水難救助を前提として開発され
あります。救助中に日没を迎え
た SAR には、船首に両色灯、
ることもあるでしょう。東日本
米国では公的機関で小型船舶
ン氏は 1 艇をみずから使用し、
限まで酷使したうえでの耐久テ
船尾のカーボンファイバーマス
大震災でも、多くの救助が日没
を 利 用 す る 場 合、 事 前 に
2 艇をカリフォルニアの軍事施
ストも行い(実際に破壊したそ
トに航海灯が装備されている。
後に行われたことを考えれば、
USCG(米国沿岸警備隊)の
設に搬送。基本的な性能や転覆
うだ)
、様々なデータを集めて
定める安全運航基準にもとづい
復原をはじめ、狭小スペースで
いったという。
の国々では、政府が遭難救助用
航行は禁止されています。その
た検証が必要となる。そこで
の運航、他の小型船舶との協働
そして現在、米国内では公的
に数 10 台単位で導入を決めた
ため両色灯と航海灯は不要な装
BRP は、販売に先駆けて K38
運航、夜間の偵察訓練など、海
機関への導入が 50 艇ほど決定。 そうだ。日本国内でも、有事に
備といえるかもしれません。し
代表のショーン・アラディオ氏
軍や海兵隊の兵士による実戦さ
また、津波により大きな被害が
備えて公的機関への導入が増え
かし有事の際は、いついかなる
に SAR の検証を依頼。ショー
ながらのテストも行われた。極
でたペルーやチリといった南米
ていくことを期待したい。
場所でも救助活動を行う必要が
「日本国内では、基本的に夜間
SAR が灯火を装備しているこ
ともうなずけます」
船首には緑と赤の両色灯、船尾には白色の航海
灯を装備。
それにともないバッテリーは大容量、
メン
テナンスフリーのものが採用されている。
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