春の叙勲で山中千代衛所長受章

ISSN 0914-9805
レーザー・クロス
2000,Jun.
147
No.
CONTENTS
春の叙勲で山中千代衛所長受章
レーザー核融合炉用ドライバー開発
『光と蔭』
「天皇を中心とした神の国」
について
ILT2000 平成11年度研究成果報告会
∼大阪・東京の2会場で開催∼
【写真】200-kW半導体レーザー励起の1053-nm 10J×10Hz
Nd:ガラススラブレーザーモジュール
春の叙勲で山中千代衛所長受章
当研究所、山中千代衛副理事長・研究所長は長年にわたる大阪大学レーザー核融合研究センター長として
の研究・教育上の抜群の功績、社団法人レーザー学会長、電気学会長としての学術普及活動ならびに兵庫県
立姫路工業大学長としての大学運営と財団法人レーザー技術総合研究所における活動等に関する業績により、
勲二等瑞宝章を受章した。
去る5月9日、皇居松風の間にて内閣総理大臣より勲記勲章の伝達を受け、豊明殿において天皇陛下に拝
謁、お言葉を賜った。先に紫綬褒章を受章したが、重ねての栄誉に財団としても誠に慶賀にたえない次第で
ある。なお一層の活躍が期待される。
5
財団法人レーザー技術総合研究所ニュース
TREATISE
レーザー核融合炉用ドライバー開発
共同研究員 山中正宣
■ドライバーの概念設計
設計が行われてきた。これらの概念設計では、いずれも、高速
レーザー核融合炉のドライバーには、波長200∼500nmで2
のHeガス流によりレーザー媒質を冷却するガス冷却が採用さ
∼4MJのパルス出力エネルギーを、10∼20Hzの繰り返し周波
れた。最近われわれは、ガス冷却より一桁程度大きい冷却能力
数、ならびに10%以上の効率で実現できるレーザーが必要と
を有する水冷方式のジグザグスラブ増幅器を用いた炉用ドライ
される。半導体レーザー励起固体レーザー(DPSSL)の出現に
バーを新たに概念設計した。ディスク型増幅器ではレーザー光
より、高効率、高繰り返しの固体レーザーが実現できるように
が冷却媒質中を伝搬するため、水冷方式を用いることができな
なり、DPSSLは炉用ドライバーの有力な候補として期待され
かったが、ジグザグスラブではレーザー光路がレーザー媒質中
るようになった。このようなレーザーはマルチビームの増幅シ
に閉じこめられるため、水冷方式の採用が可能となった。
ステムで構成される。1ビームあたり、あるいは一つの増幅器
増幅器モジュールは、波長350nmにおいてパルスエネルギー
モジュールあたりのパルス出力エネルギーは、1∼10kJと予測
10kJを繰り返し12Hzで発生できる。モジュールは15のビーム
される。これまで、Nd:ガラスやYb:S-FAPなどをレーザー
レットで構成され、一つのビームレットが増幅器としての単位
媒質とするディスク型増幅器を用いるレーザーシステムの概念
ユニットとなる。ユニット増幅器の出力は、波長1053nmにお
モジュール スラブ
厚さ
出力
枚数
幅
長さ
利得
ビーム
光・光変
フリューエンス
サイズ
換効率
2㎝
【1 kJ x 10 Hz モジュール】
LD
56㎝
LD
LD
1kJ
2
2㎝
50㎝ 40㎝×2
33
50×2.5㎝2
8 J/㎝2
28%
100 J
2
2㎝
5㎝ 40㎝×2
33
5×2.5㎝2
8 J/㎝2
28%
10 J
1
2㎝
1㎝
12
1×2.5㎝2
4 J/㎝2
20%
LD
励起領域
(40×50㎝2)×2
52.3㎝
1 kJ
レーザー出力
【100 J x 10 Hz モジュール】
LD
2㎝
12㎝
LD
100 J
レーザー出力
LD
励起領域
LD (40×5㎝2)×2
52.3㎝
【10 J x 10 Hz モジュール】 2㎝
LD
12㎝
10 J
レーザー出力
励起領域
40㎝
LD(40×1㎝2)
52.3㎝
【図1】
概念設計を検証するための半導体レーザ−励起Nd:ガラススラブレーザードライバーのスケイルダウンモジュール。ここで、励
、Nd:ガラススラブの厚さ
(2㎝)
と長さ
(52.3㎝)
は、10kJドライバーモジュールのものと同じ値に保たれて
起LD強度
(2.5kW/㎝2)
いる。
2
いて1kJである。スラブ増幅器は、4パスの前置増幅器と4パ
信号利得、スラブ内での温度分布などの基礎データを取得し、
スの主増幅器の両方の役割を果たす。マルチパス増幅の導入に
設計値通りの動作を確認した。これまでの実験で1パルスあた
より、発振器と2台のスラブ増幅器だけの単純な構成で高出力
り8.5Jの出力が得られており、回折限界の2倍程度の集光特
が実現できる。レーザー媒質にはNd:ガラスを用いる。
性が得られることを確認した。また、主増幅部での透過率を改
善することにより、設計目標値の10J出力を繰り返し10Hzで
■増幅器モジュールの開発
実現できる見通しが得られた。
ユニット増幅器の出力エネルギーは1kJ、繰り返し10Hz
で、平均出力は10kWである。平均出力の点では、現在フォト
■今後の計画
ン計測・加工プロジェクトで開発が進められているDPSSLと
これまで、図1の最下段に示す10Jモジュールを開発し、
同じであるが、1パルスあたりの出力が1kJと大きく、大きな
設計値通りの特性が得られることを実証した。今後、100J、
レーザー媒質を必要とする。増幅モジュール開発の第一ステッ
1kJと増幅器を大きくしながら開発を続けていく予定である。
プとして、出力10Jの小型モジュールの開発を進めている。
これらの高出力レーザーは、レーザー核融合炉用ドライバーの
10Jモジュールの目的は、ドライバー開発の主要な課題を研
みならず、レーザー誘雷、レーザーロケット推進、宇宙デブリ
究し、概念設計を確認することである。このため、Nd:ガラ
除去などへの応用も可能であり、関連研究者との協力体制の構
ススラブの厚さ、スラブ中での光路長、LDの励起強度を10kJ
築をも視野に入れて研究を進めたい。
モジュールの設計値と等しくしてある。励起用のLDアレイは
なお、本研究開発は、大阪大学レーザー核融合研究センター
25層のLDバーを厚さ1㎝に積層したもので、必要な出力強度
と
(財)
レーザー技術総合研究所、ならびに浜松ホトニクス㈱と
2.5kW/㎝2を達成した。これを横方向に40個並べ、ピーク出力
の共同研究として実施している。
100kWを得ている。10Jモジュールを表紙写真に示す。スラ
(大阪大学レーザー核融合研究センター 助教授)
ブ内の蓄積エネルギー密度、前置増幅器および主増幅器での小
『光と蔭』
……49
いささか軽はずみな森喜朗総理の失言で、内閣の支持率が急降下したと新聞は報
じている。憲法問題に関しても長年神学論争を好んだジャーナリズムのことだから、またもやなすべき政策論議は
棚上げにして、天皇と神との関連をあげつらって大喜びのはしゃぎ振りだ。中西輝政京大教授も言うように、天皇
は日本国の統合の象徴と憲法が定めている通り、いわば国旗のような存在である。米国人には星条旗を国家統合の
シンボルとして、折にふれ深い敬意を表す習慣がある。昭和天皇は昭和21年自ら人間宣言を発し、戦前の神格的存
在を否定した。現在、天皇を神と思う人はおそらく一人もおるまい。戦前でも一般知識人は天皇を現人神とは認め
なかった。明治以降一部の権力者が天皇の権威を高め、これを利用したことは事実である。徳川時代以前は全く様
子が違っていた。東洋人の一般的宗教感覚として、自然の摂理への畏敬とか、山川草木に至るまで神が宿っている
とする汎神論的感情がある。これは唯一神エホバを信じる、西洋の一神教的思想とは対立するものである。前者の
方がわれわれにとってより身近に感じられるのではなかろうか。
閑話休題。ここでは宗教論議をしようとするものではない。21世紀を前にしてモラルハザードと経済的危機に直
面しているわが国にとって、ジャーナリズムは世相に正面から取り組み、自ら正論と信ずる主張を掲げ、世論を導
く責任があろう。占領時代以来の自虐的、幼児性の言行を卒業し、情緒的な筆調に流れることなく香り高い思想哲
学を展開してほしいものだ。
【(財)
レーザー技術総合研究所 研究所長】
3
NEWS
ILT200
0 平成11年度研究成果報告会
∼大阪・東京の2会場で開催∼
【大阪会場】
7月4日
(火)10:00∼
千里ライフサイエンスセンター5階 サイエンスホール
大阪府豊中市新千里東町1-4-2 TEL(06)6873-2010
◆プログラム
10:00∼ あいさつ
研究所長 山中千代衛
10:05∼ 特別講演
「自由電子レーザーのバイオメディカル分野への応用」
大阪大学大学院工学研究科 電子情報エネルギー工学専攻 教授 粟津邦男氏
11:05∼ 「財団の研究活動展開について」
技術コーディネーター 井澤靖和
11:30∼ 「レーザーを用いた環境問題への取り組み」
藤田雅之
−昼食休憩−
13:00∼ 「レーザーを用いた避雷技術の開発」
−強電離、弱電離プラズマを用いた放電誘導実験− 島田義則
13:30∼ 「光の揺らぎを補償する位相共役光の研究」
内田成明、オレグ コチャエフ
14:00∼ 「第二高調波発生用KTiOPO4結晶の劣化に関する研究」
本越伸二
14:30∼ 「レーザー超音波法による金属材料の
疲労劣化検出の基礎研究」
田中崇雄
※
>
15:00∼ <ポスター発表 (全員)
15:45∼ 「レーザーアブレーションによる表面物質除去」
今崎一夫、周 香林
16:15∼ 「レーザーによる表面除染のシミュレーション」
古河裕之
16:45∼ 「タンパク質ナノスペースにおけるフラビンの
超高速蛍光消光反応」 コスロビアン ハイク
17:30∼ 懇親会 千里クラブ(千里ライフサイエンスセンター20階)
◆と き
◆ところ
<※ポスター発表>
・白色光ライダーの技術開発
・LD直接励起超短パルスレーザー
(Yb:YAG)
の開発
・光パラメトリック超短パルスレーザー増幅
(OPCPA)
の研究
・レーザーロケット推進に関する研究
・揺らぎの中を直進する位相共役光の研究
・レーザーを用いた避雷技術の開発
・第二高調波発生用KTiOPO4結晶の劣化に関する研究
・レーザー超音波法による金属材料の疲労劣化検出の基礎研究
・レーザーによる表面除染のシミュレーション
・フェムト秒レーザーアブレーションのシミュレーション
・レーザーアブレーションによる表面物質除去
・タンパク質ナノスペースにおけるフラビンの超高速蛍光消光反応
・ロドプシンの蛍光の実時間測定:視覚の初期過程研究の新展開
【東京会場】
7月18日
(火)10:00∼
虎ノ門パストラル4階 桜の間
東京都港区虎ノ門4-1-1 TEL(03)3432-7261
◆プログラム
10:00∼ あいさつ
研究所長 山中千代衛
10:05∼ 特別講演
「高強度レーザーが拓く新しい化学応用
(クーロン爆発、ダイオキシン類の計測等)」
大阪市立大学大学院理学研究科 教授 中島信昭氏
11:05∼ 「財団の研究活動展開について」
技術コーディネーター 井澤靖和
11:30∼ 「レーザーを用いた環境問題への取り組み」
藤田雅之
−昼食休憩−
13:00∼ 「レーザーを用いた避雷技術の開発」
−強電離、弱電離プラズマを用いた放電誘導実験− 島田義則
13:30∼ 「レーザーロケット推進に関する研究」
−宇宙に衛星を運ぶ−
内田成明
14:00∼ 「レーザーアブレーションによる表面物質除去」
今崎 一夫、周 香林
14:30∼ 「レーザーによる表面除染のシミュレーション」
古河裕之
※
>
15:00∼ <ポスター発表 (全員)
15:45∼ 「第二高調波発生用KTiOPO4結晶の劣化に関する研究」
本越伸二
16:15∼ 「レーザー超音波法による金属材料の
疲労劣化検出の基礎研究」
田中崇雄
16:45∼ 「ロドプシンの蛍光の実時間測定:
視覚の初期過程研究の新展開」
柴田 穣
17:30∼ 懇親会 6階 桃の間
◆と き
◆ところ
◆定 員
◆参加費
◆懇親会
両会場ともに80名
理事、賛助会員会社、官界、学界関係者/無料
一般会社/3,000円
(資料代含む)
無料
■問い合わせ、申し込み先■
(財)レーザー技術総合研究所
(小野田、澤坂)
〒550-0004 大阪市西区靱本町1-8-4
TEL(06)6443-6311 FAX(06)6443-6313
E-mail:[email protected] URL:http://www.ilt.or.jp/
掲載記事の内容に関するお問い合わせは、編集者代表 藤田雅之(TEL&FAX:(06)6879-8732,E-mail:mfujita@
ile.osaka-u.ac.jp)
までお願いいたします。
Laser Cross No.147 2000,Jun.
発行/財団法人レーザー技術総合研究所 編集者代表/藤田雅之 〒 550-0004 大阪市西区靱本町1-8-4 大阪科学技術センタービル 3F TEL(06)6443-6311 FAX(06)6443-6313
この機関誌は、
競輪の補助金を受けて製作しました。
4