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仕様書
1
件名
平成28年度流域山地災害等対策調査(保安林配備状況調査)委託事業
2 目的
地球温暖化の影響と考えられる近年の降雨強度の強まりや集中豪雨の発生頻度の増加
等に起因して、山地災害等の発生リスクの増加が懸念されており、国土強靭化の観点か
ら、森林による山地災害等への対応の一層の強化が求められている。
過去の調査においては、こうした観点からの保安林の適正配備について検討してきた
が、山地災害等の対応を強化するためには、人間の経済活動に起因する開発行為など、
自然環境の改変等への対応についても併せて検討していく必要がある。
特に、近年は再生可能エネルギー施設の設置にかかる森林への開発圧が急激に高まっ
ており、防災上や環境保全上の観点から、その適正なあり方について検討する必要が生
じている。また、既に森林化し再生利用が困難な荒廃農地等について適切に整備し保安
林等のグリーンインフラとして防災や環境保全等に役立てていくことや放棄された開発
跡地の森林への復旧についても検討していく必要がある。
本事業では、これらの状況に応じた保安林制度や林地開発許可制度の適切なあり方や
運用等について実例を元に調査・検討を行い、もって山地災害の未然防止等に向けた治
山対策の重点的な実施に資することを目的とする。
3 事業内容
(1 )再 生 利 用 が 困 難 な 荒 廃 農 地 の 森 林 と し て の 活 用 に つ い て
平 成 28年 5 月 に 閣 議 決 定 さ れ た 森 林 ・ 林 業 基 本 計 画 に お い て 、 再 生 利
用が困難な荒廃農地を森林として計画的に管理・活用し、さらに、住宅
地等の周辺にあり、既に森林化した荒廃農地については、保安林に指定
して保全・整備する等の考え方が示された(別添参考)ことから、今後
の取組の推進に向けて、農地から転用又は非農地証明手続きを経て森林
となっているもののうち、防災機能や生活環境保全機能等の多面的機能
を良好に発揮している事例を収集し、その具体的活用や保安林としての
指定・管理の考え方を以下の点を中心に整理する。これらの事例の収集
に際しては、予め都道府県に照会し、全国の概況を把握するとともに、
その概況を踏まえ、対象とする森林が発揮している多面的機能の種類や
地域のバランス等に配慮しつつ、全国で5箇所以上の現地調査を行うこ
と。また、今後、農地から森林化を検討している箇所がある場合は、そ
の目的、保安林指定の意向及びその理由も併せて聴取する。
ア 農地を森林化した際の農地法及び森林法上の手続き
イ 転用後の森林の状況
ウ 転用後の森林の管理・活用状況、主に期待される機能
エ 保安林指定の有無、指定目的、保全対象等
オ 都道府県担当者等の意見、ニーズの把握
(2)小面積林地開発についての検討
森林法第10条の2の都道府県知事の許可(林地開発許可制度)の対象となる面積を超
えない森林の土地の開発については、森林法上は市町村長への伐採届の提出を要する
のみで、特段の規制対象とはなっていない。
しかし、林地開発許可制度における違法開発の中には許可対象に満たない規模の面
積の林地開発から区域を拡大して行われるものが多く、また、小規模な開発であって
も不適切な施工がされた場合には、土砂災害等が懸念されるほか、緑地が少ない都市
周辺においては、その影響は相対的に大きなものとなり、都道府県においては、条例
等に基づく届出や勧告制度等により、小面積の林地開発を一定の監督下におく取組も
行われている。
こうした状況を踏まえ、小面積林地開発における防災又は環境面における適切な配
慮のあり方について検討の必要があることから、アンケート等を通じて、全国の都道
府県を対象に、以下の点について調査を行うとともに、全国で5箇所以上の事例調査
(可能な場合は現地調査とする。)を行うこと。
ア 市町村長に提出される伐採届のうち、開発を伴うものについて、都道府県庁との
共有状況(共有方法やそれによって得た情報の活用方法・事例等)
イ 小面積林地開発地における災害等の発生事例
ウ 条例等に基づく小面積林地開発の規制の取組の有無と内容(制度的枠組、実施体
制、運用、課題等)
エ 林地開発許可制度の対象面積の引き下げ等についての都道府県の意向(賛成・反
対とその理由、引き下げを必要と考える場合は引き下げ後の対象面積及び理由、他
の規制方法の場合は内容、対象面積及び理由等)
(3)太陽光発電施設の実態にかかる各種検討
平成24年の再生可能エネルギーの固定買取の実施後、森林を開発して太陽光発電施
設を設置する事例が増加しているが、その中には、景観や環境の悪化、災害発生の懸
念等から各地で地域社会との軋轢が生じているものが散見されるほか、森林法に違反
する事例も増加している。
これらの状況を踏まえ、林地開発許可制度の適切な運用の観点から、森林における
開発行為を経て設置された太陽光発電施設について、予め都道府県に照会し、全国の
概況を把握するとともに、そのうち、当該施設の設置後、上述した事例など、森林の
適正な利用に支障が生じている(又は将来的なおそれが懸念される)箇所について、
その内容(種類)や地域のバランス等に配慮しつつ、全国で5箇所以上事例調査(可
能な場合は現地調査とする。)を行い、以下の点について整理すること。
ア 地域社会の反応(地元紙の引用等も可)
イ 災害発生のおそれ
ウ 景観への影響
エ 自然環境への影響
オ 生活環境への影響
カ 現行の制度下で、事業区域内において残置し、若しくは造成する森林又は緑地の
割合やその配置等について、太陽光発電施設の設置の分類を「工場、事業場の設
置」に含めていることの課題及び妥当性の検討
キ 土工量の上限値設定に向けた検討
ク 都道府県担当者の意見
(4)転用完了後の土地の管理問題
転用完了後の土地の管理問題について、廃止したスキー場及びゴルフ場やそれらが
さらに転用された施設の防災施設の設置状況について、予め都道府県に照会し、全国
の概況を把握するとともに、全国で5箇所程度、以下の点につき事例調査(可能な場
合は現地調査とする。)する。
ア 現況(放置、転用等)
イ 災害発生のおそれ
ウ
エ
オ
自然環境への影響
生活環境への影響
都道府県担当者の意見
(5)取りまとめ
(2)~(4)の取りまとめに当たっては、防災及び環境保全の有識者(全体制度
・災害防止・水害防止・水の確保・環境の保全(景観含む)の観点から5名程度)の
意見を聴取すること。その上で、事業で得られた成果について、調査報告書に取りま
とめる。
4 履行期間
本契約締結日から平成29年3月21日(火)まで
5 成果品
(1)納入する成果品
ア 最終報告書 10部
イ 電磁記録媒体2部(DVD-R等)
(2)納入場所
林野庁森林整備部治山課企画班(別館7階ドアNo.本779)
(3)検査
受託者は(1)の成果品を納入するときは、遅滞なく、当該成果品の内容が本仕様
書に適合するものであるかどうかの検査を受けなければならない。
6 その他
(1)受託者は、事業の進行状況等を定期的に報告するほか、別に定める監督職員の求
めに応じて報告を行うものとする。また、①契約直後の事業実施の方向性に関する
報告、②現地調査実施前の調査計画に関する報告、③現地調査後の取りまとめ方針
に関する報告、④有識者の選定に関する報告、⑤最終報告書の取りまとめ方針に関
する報告、を必須の報告とする。
(2)監督職員は、業務の目的を達成するために、業務状況・進行状況に関して、打合
せ・調整を行うものとする。特に、現地調査地及び有識者の選定については、事前
に林野庁の了承を得ることとする。
(3)受託者は、本事業の実施に当たって、再委託を行う場合は、事前に監督職員と協
議を行い、支出負担行為担当官林野庁長官の承認を得るものとする。
(4)受託者は、業務により知り得た情報(個人情報を含む。以下同じ。)について、
本業務の目的以外の使用及びその情報の契約期間中はもとより契約期間終了後にお
ける外部への漏洩をしてはならない。
(5)業務の目的を達成するために、本仕様書に明示されていない事項で必要な作業が
生じたときは、監督職員と受託者が協議を行うものとする。
(6)著作権等
①受託者は、成果物に関する一切の著作権に関する権利(著作権法第21条から第28
条までの権利を含む。)を林野庁に無償で譲渡するものとし、林野庁の行為につい
て著作者人格権を行使しないものとする。
②受託者は、林野庁が成果物を活用する場合及び林野庁が認めた場合において二次
利用する場合に、肖像権等による新たな費用が発生しないよう措置すること。それ
以外の使用に当たっては、受託者と協議の上、その利用の取り決めをする。
( 別
添
)
森林・林業基本計画
平成28年5月
( 抜 粋 )
第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策
(5)多様で健全な森林への誘導
③ 再生利用が困難な荒廃農地の森林としての活用
農地として再生利用が困難な荒廃農地であって、森林として管
理・活用を図ることが適当なものについては、多面的機能を発揮
させる観点から、地域森林計画への編入に向けた現況等調査、早
生樹種等の実証的な植栽等に取り組む。また、住宅等の周辺にあ
り、既に森林化した荒廃農地については、保安林に指定して整備
・保全するなど、自然環境の有する防災・減災等の多様な機能を
発揮させる「グリーンインフラ」としての活用を図る。