オートファジー性細胞死を 誘導する新規ペプチド 熊本大学 大学院医学薬学研究部 准教授 國安 明彦 1 研究背景 オートファジー(細胞の自食機構)の制御による 新規がん治療戦略が考えられている。 新たな細胞死「オートファジー性細胞死」を誘導 する薬剤は、アポトーシス耐性化した腫瘍細胞 に有効である。 ヒト白血病細胞株と、一部の上皮系腫瘍細胞株 に対してオートファジー性細胞死を誘導する新規 ペプチドの同定 2 オートファジー性細胞死を誘導する 新規ペプチド 膜透過性ドメイン (8〜13mer) リンカー -GG- 転写制御因子X由来断片 (13mer) X1X2X3 Tat : GGRKKRRQRRR Arg8 : RRRRRRRR Penetratin: RQIKIWFQNRRMKWKK オートファジー性細胞死誘導配列 ACDIP アラニン置換不活性配列 ACDIP (AAA) ・急速なオートファジー誘導能 ・白血病細胞株に細胞死を惹起 ・腫瘍細胞特異的 3 白血病細胞株に対する細胞死誘導 慢性骨髄性 白血病株 急性Tリンパ性白血病細胞株 細胞生存率 (%) CCRF-CEM Jurkat-T K562 120 120 120 100 100 100 80 80 80 60 60 60 40 40 40 20 20 20 0 0 0 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 ペプチド濃度(µM) Tat-ACDIP Tat-ACDIP(AAA) 4 腫瘍選択的な細胞死誘導 ヒト末梢リンパ球 Tat-ACDIP(AAA) 120 100 80 Tat-ACDIP 60 40 20 0 Tat-ACDIP(AAA) 120 細胞生存率 (%) 細胞生存率 (%) ヒトマクロファージ 100 80 Tat-ACDIP 60 40 20 0 20 40 60 80 ペプチド濃度 (µM) 100 0 0 20 40 60 80 100 ペプチド濃度 (µM) 5 誘導される細胞死はアポトーシスではない (CCRF-CEM細胞株) 明視野観察 核染色 (Hoechst 33342) Control Tat-ACDIP (100 µM) Etoposide (2 µM) 核の凝集 アポトーシス小 胞の出現 6 細胞死に伴うオートファジー誘導 (CCRF-CEM細胞株) Tat-ACDIP (hr) 0 0.5 1 3 6 12 24 LC3-II/Iの比率増大 とLC3-II量の減少 LC3-I LC3-II β-actin Tat-ACDIP(AAA) (hr) LC3-I LC3-II 0 0.5 1 3 6 12 24 LC3-II/Iの比率に 変化なし β-actin 7 既存のオートファジー誘導剤 Verapamil Rapamycin 野田、大隅 (J. Biol. Chem., 1998) Clonidine Williams, A.ら (Nature Chem. Biol., 2008) 8 従来物質とその問題点 Rapamycin ・免疫抑制作用 → 感染症の危険性 ・単独で細胞死を誘導しない(併用使用) Verapamil ・血圧低下作用 Clonidine ・細胞死誘導はしない 近年、オートファジー性細胞死を誘導する化合物 の報告が相次いでいるが、その作用機序について は不明な点が多い。 9 新物質の特徴・従来物質との比較 • 単独でオートファジー性細胞死を誘導可能 • 腫瘍特異性が高く、副作用の低い抗腫瘍薬 の開発が可能 • ペプチドミメティックへの変換が容易 • Rapamycinとは異なるシグナル経路故に 新規性が高い 10 想定される用途 • 特長を活用したペプチドミメティックに よる白血病治療薬の開発 • オートファジーは細胞内に侵入した病原 性細菌の分解や消化にも寄与 → 感染症の予防・改善薬の開発 • アルツハイマー病やハンチントン病など 細胞内凝集性蛋白質由来の神経変性疾患 の治療薬開発への展開 11 想定される業界 • ユーザー 製薬メーカー・新薬開発研究所 • 市場規模(白血病治療薬として想定) (例)グリベック 世界売上高3000億円超(2006) 12 実用化に向けた課題 解決した事柄 ・活性に必須のアミノ酸の特定 課題 ・シグナル経路の解析と標的分子同定 ・in vivo実験データの蓄積 ・低分子化 13 企業への期待 • シグナル経路と標的分子の同定 我々の持つ生物有機化学的技術によりク リアできると考えている。 • ペプチドミメティック創製と低分子化 当該技術を持つ企業との共同研究希望。 14 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :オートファジー性細胞死を • 出願番号 • 出願人 • 発明者 誘導するペプチド :特願2008-081350 :熊本大学 :國安明彦、西村真平 15 お問い合わせ先 熊本大学 イノベーション推進機構 知的財産マネージャー 荒木 寛幸 〒860-8555 熊本市黒髪2丁目39番1号 TEL 096-342-3209 FAX 096-342-3239 e-mail [email protected] 16
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