人間になったウルベルト様が他のナザリックに見つかったら

人間になったウルベルト様が他のナザリックに見つかったら大変な
ので保護を致します
鈴菜
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP
DF化したものです。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
合作企画メンバーで話したネタを書いてみました。
目標:これじゃないウルベルト様でなく、これだウルベルト様を書
く。
でも早くも不幸になりそうです。
以下話したネタ
レベルダウンしている︵新アカ・人間︶↓CLEAR
AR
デミウルゴスが助ける ︵デミウルゴス牧場にかくまう︶↓CLE
!
︶ ↓CLEAR
?
勘違いで追い詰められるデミウルゴス。 王都襲撃事件で保護︵捕獲
ウルベルト様王国在住 ↓CLEAR
R
創造主のためならデミウルゴス、アインズ様に背信する↓CLEA
!
アインズ様
ウルベルト様無双
アルベドも加えて三つ巴争奪戦ルート
ナザリック何故かモテモテルート↓CLEAR
ナザリックの新米使用人ルート
!
︻注意︼互いにウルベルト様を守ろうとして激突するデミウルゴスと
!
!
!
プロローグ │││││││││││││││││││││││
目 次 一話 ││││││││││││││││││││││││││
1
五話 ││││││││││││││││││││││││││
四話 ││││││││││││││││││││││││││
三話 ││││││││││││││││││││││││││
二話 ││││││││││││││││││││││││││
4
10
15
19
22
プロローグ
夢。
いけすかないたっちに、食ってかかる夢。
自覚していた。自分の中にある、醜い嫉妬心を。
それはとても抑えられる物ではなく、抑えるつもりもなかった。
いつも何かを憎んでいた。
どろどろ。どろどろと。
白銀の騎士にナイフを突き立てる夢を。肉を刺す感触まで鮮明に
夢見る時点で。
もう限界だと思った。
ぼんやりと目を覚ます。
安物のベッドから起き上がり、あくびを一つ。
﹁久しぶりに見たな⋮⋮﹂服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。
1
熱いシャワーに、意識を徐々に覚醒させていく。
タオルで体を拭きながら、ずっと心に引っかかっていたことに、さ
も今気がついたかのように呟いた。
﹄
﹁あー⋮⋮モモンガさんからメール、届いてたんだっけ﹂
﹃最後なので、皆で集まりませんか
﹂
狩られて会えませんでしたというのは、いかにも格好悪い。
まさかとは思うが、異業種狩りがまだ続いていたら。
異形にしようかどうしようか迷い、人間にした。
手早くキャラを新規作成する。もちろん魔法使い。
ごくごく短い時間の事なのだから。
たとえいたとしても、最後なのだから。
ン・オードル様のやることじゃねぇ
﹁あんな奴に気後れするなんて、悪の大魔法使い、ウルベルト・アレイ
乱暴にヘッドギアを取り、填める。
顔が交互に浮かぶ。
会いたい人︵モモンガさん︶と、会いたくない人︵たっちさん︶の
沈黙をする。行きたい気持ちと行きたくない気持ちがせめぎ合う。
?
!
あらかじめ用意していた悪人そうな顔つきの外装をインストール。
ログインをする。
﹂
ナザリックの近くまで行って、足が凍り付いたように止まる。
﹁はっふざけんな。俺はこんなに臆病者だったか
足を進めようとするが、どうしても動かない。
﹂
アップデート
まさか。
ユグドラシルのことなど知り尽くしているはずなのに。
鬱蒼とした森はやけにリアルで、見覚えがない。
サクサクサク。
﹁なんだ⋮⋮
何歩も歩かないうちに、違和感が体を襲った。
そう決心して背を向ける。
二度と、モモンガさん達とは会えまい。いや、会わない。
﹁⋮⋮くっ﹂
ルト・アレイン・オードル二世様がなんと情けない。
悪の大魔法使い。ウルベルト・アレイン・オードル、いや、ウルベ
?
殴った。
﹁ここは⋮⋮異世界トリップという奴か⋮⋮
体は⋮⋮アバターの
そして、ウルベルトは努めて状況を把握しようとした。
﹁落ち着けっ
焦れば死ぬぞ﹂
ウルベルトは、恐怖のあまり駆け出そうとしてとして、自分の足を
声。土の匂い。
肌の湿った感覚、吹き抜ける風、どこか遠くで聞こえる獣のうなり
いや、この匂いは何だ。この圧倒的なリアルは何だ。
た。
ウルベルトが引退したとき、既にユグドラシルは衰退期に入ってい
?
﹂
第一階位の魔法は使えると感覚でわかる。
グドラシル
ようだな。装備もそのままだし。信じられない⋮⋮。なら、ここはユ
?
ここは。思い出せ⋮⋮﹂
2
?
!
?
だが、そんなこと、なんの慰めにもならなかった。
﹁どこだ
?
そう言いながらも、道を探す。運良く見つけることが出来、周囲に
用心しながら歩く。
遠くに街を見つけた。
やはり、見覚えはなかった。
街に着くと、門番がいて止められる。
﹂
ここはリ・エスティーゼ王国のエ・ランテ
﹁参ったな⋮⋮。気がついたらここにいて。ここはどこだ
﹁なんだ、お前は迷子か
ない世界とはきっと違う。
二極化された、一度﹁そっち側﹂に産まれてしまえば絶対に救われ
いいや、間違いなくチャンスだ。
美しい世界。キャラクターの魔法使いとしての体。使える魔法。
これは、チャンスなのかも知れない。
俺は、ごくりと唾を飲み込む。
ホクホク顔の兵士が告げる。
﹁町中にはいないぞ﹂
﹁ゴブリンとか、いるのかな⋮⋮﹂
町中は、武装した人々が当たり前のように歩いている。
し、釣りは貰えなかった。街に入ると、心臓が高鳴った。
通行料に銀貨を要求されて戸惑う。金貨しか持ってはいなかった
﹁エ・ランテル⋮⋮知らないな﹂
ルだ﹂
?
﹂
﹁ならば、俺はなってやる⋮⋮。ウルベルト・アレイン・オードル二世
に
3
?
咆哮を上げて、俺は足を踏み出した。
!
一話
ウルベルトは、ソロで冒険者を始めた。
そして、秘密裏にPKも始めるつもりだ。
この世界でも、やはり恵まれた者とそうではない者は別れていた。
ウルベルトには、憎しみを抑えることが出来なかったのだ。
下世話な話だが、PKは良い経験値にもなるはずだ。無論、危険度
は格段に跳ね上がるが。最も、それはもう少しレベルが上がってから
の話。
野望を語るには、力が必要だ。今はその力を蓄える時期だ。
今のウルベルトは、第二階位まで使える魔術師に過ぎない。
今のままで誰かを襲っても返り討ちに遭うのが関の山だろう。
ユグドラシルプレイヤーがいる可能性も吟遊詩人の話から把握し、
とりあえず名前は封印することとした。今のウルベルト・アレイン・
オードル二世は、ウルである。
今日は討伐が上手く行き、食堂で肉を頼むこととした。ささやかな
贅沢だ。
冒険者達があるいは明るい顔で、あるいは暗い顔で思い思いに酒を
飲んでいる。
この雰囲気が、ウルベルトは嫌いではなかった。
この世界の料理は、なんでも美味しい。
チューブ式の物しか食べたことがないが、それっぽいキャラ作りの
ためにゲーム内でマナーの真似事を練習した経験が役に立った。
今もまだぎこちないが、どうにかナイフとフォークを操れている。
幸福な食事の時間を、無粋な言い争いが邪魔をした。
漆黒の鎧の男と美貌の女が、絡まれている。
ウルベルトは、美貌の女をぼーっと見つめた。
何か覚えがあるような気がしたからだ。
だが、気のせいだと結論を出すと、肉料理に舌鼓を打つ。
漆黒の鎧の男は、どこかたっち・みーを思い出す。
可 愛 い 女 の 子。高 価 そ う な 鎧。リ ア 充 は 敵 で あ る。絡 ま れ よ う が
4
どうでも良い。
食事中に、嫌なことを思い出してしまったとウルベルトは首を振
る。
ひたすら幸せそうに食事をしていると、視線を感じた。
美女からだ。
﹂
﹂
それに、漆黒の鎧の男も気づいたらしい。
﹁どうした、ナーベ
﹁⋮⋮どこかで会いましたか
﹁初対面だが﹂
きっぱりとウルベルトは言う。何せ、異世界であり、アバターを変
えている。
億が一、知り合いの可能性があろうと、顔見知りである可能性は絶
対にない。
﹁どこかで会ったって⋮⋮それはないだろう、ナーベよ。この町には
着いたばかりだ﹂
﹁でも、貴方からはどことなく懐かしい感じを受けます⋮⋮﹂
ざわざわと周囲にいた人々がざわめく。
﹂
相手はプレイヤーかも知れない。ウルベルトは、しばらくは潜伏す
る方針である。
﹁私の名はモモン。失礼だが、貴方の名は
同士として。
そして、何らかの癖か何かで見破られたとか
でもまあ、今日の所は肉汁たっぷりのこの肉料理を食べることに専
くつも存在する。
一応、避けた方が良いのかも知れない。幸い、冒険者の宿は他にい
?
もしかして、本当にあったことがあるのかも知れない。プレイヤー
部屋に戻るナーベは、何度もウルを振り返っていた。
ウルベルトはモモンと握手をする。
﹁ウルか。よろしく﹂
ない﹂
﹁俺の名はウル。なりたての冒険者だよ。すまないが、本当に覚えが
?
5
?
?
念しよう。
食事が終わり、口元を拭く。明日は講義に出る予定なので、早く眠
らなくてはならない。
冒険者ギルドが主催する私塾がやっており、金貨を払うことでそれ
に潜り込むことに成功したのだ。
文字を学ぶことは重要である。
言葉は不思議な効果で翻訳されるが、文字は違う。
文字が読めないと言うことは、契約書が読めないと言うこと。
それはウルベルトには到底容認出来なかった。
リュンシーという冒険者崩れがやっている私塾で、教え方が上手い
らしく沢山の大人が通っている。
つい店などを見て回り、投げ売られていたり、配っていたりした物
をついつい買ったり受け取ったりしてしまったが、運が良かったと思
う。
しっかりするのだ﹂
6
それでなければ羊皮紙など紙が高価なため、到底準備出来なかった
だろう。
スキルとしてある行動で、スキルを持っていないと行動出来ないの
も痛かった。
宿の粗末なベッドでぐっすりと眠り、翌朝冒険者ギルドへと向か
う。
そこでまた、漆黒の冒険者モモンにあった。
モモンはまた問題を起こしていた。
一応、そこそこ実力のある冒険者パーティが拾い上げたようだが
⋮⋮。
﹂
やはり、たっち・みーを思い起こし、不快になりながら通り過ぎよ
うとする。
﹁ウル。奇遇だな。依頼探しか
﹁関係ないだろ﹂
切って捨てると、隣にいた美女がガクガクぶるぶるとしだした。
?
ショックを受けたようで、尋常な様子ではない。
﹁な、ナーベ
?
俺が学が
あんたらには関係ない
﹂
ああ、いや、ほら。字を習いに来ただけだって
﹁お、おい⋮⋮。俺はただ、だって事実だろ
だろ
ないって事、知られたくなかっただけだよ
﹁そんな講座もやっているのか﹂
モモンはうんうんと頷いた。
変なのに絡まれてしまったな。
内心舌打ちをして、急いで講義へと向かう。
だが、どうもナーベの顔が引っかかって離れない。
どこかで会ったことがあるだろうか⋮⋮。
考え事をしていたせいだろうか。
講義の次の日のゴブリン退治で失敗してしまった。
第三階位まで上がった物の、思い切り左目に傷を負う。
自分の未熟さに腹が立つばかりだ。
ポーションはあるのだが、自分への戒めとして、しばらくこのまま
でいようと思った。
﹂
痛みに耐えながら、不機嫌に依頼の達成報告をしていると、小さな
どうなされたのですか
悲鳴が上がった。
﹁ウル様
!
⋮⋮まあ、仕方あるまい。ちょうど絵を描いて貰ってい
﹁やはり、君もか
﹂
﹁あんた、ユグドラシルの関係か
!
﹂
仕方なく空き部屋に行くと、手早く済ませることとした。
がしがしと頭を掻く。また泣かれては溜まらない。
話したくない、といおうとして、ナーベと目が合う。
﹁俺は⋮⋮﹂
るところだ。話す時間はたっぷりある。開いている部屋があるかな﹂
﹁ナーベ
そのポーションの色と威力に、驚きの声が上がった。
る。
その間にナーベが駆け寄り、止めるまもなくポーションを使用す
モモンはしばしあごに手を当てて﹁少し話したい﹂と告げた。
ナーベだ。またか、とうんざりとする。
!
!
?
7
!
?
!
?
モモンは嬉しくてたまらないというように声を上げる。
﹁悪いけど、俺も来たばっかりでたいした情報は持ってない。その上、
作ったばかりのアカウントでな。弱いし良いアイテムも持ってない。
群れるつもりもない﹂
﹁それでも、同郷の者同士、助け合えないだろうか。ナーベはこの通
﹂
り、君のことが気に入ったようだ。君一人受け入れる事なら可能だ。
先ほども怪我をして困っていたのだろう
まり、目立ちたくもない﹂
?
もあるな﹂
﹂
困ったと
安心材料でもあるが、懸念材料で
﹁いらない。俺は自分一人の力で生きていく﹂
きがあれば助けよう﹂
﹁誰も見ていないときなら、たまに会話しても良いだろ
﹁じゃあ、これでいいだろ
じゃあな﹂
ボット三原則とでも言うのかな
﹁し か し、そ う か。⋮⋮ は 基 本 的 に プ レ イ ヤ ー に ⋮⋮ な る ほ ど。ロ
落ち着くとこちらの装備をじろじろと見てくるのも気にくわない。
正直に言ってかなり惜しいが、纏わり付かれるのも面倒だった。
ばさっと羊皮紙の束を渡す。
あんたは、英雄を目指すんだろ
﹁やるよ。ポーションの礼だ。その代わり、距離を取って貰えないか。
﹁そうか⋮⋮。ならば、せめて字について教えてくれないか
﹂
だ。さ す が に ポ ー シ ョ ン く ら い は も っ て た さ。⋮⋮ 礼 は 言 う が。あ
﹁断る。俺は自分のミスが許せなかったから傷をあのままにしてたん
?
だが、モモンはきびすを返して去って行った。
ふぅ、とため息をつく。
今日は大変な一日だった。早めに寝よう。
ベッドでうとうとしていると、騒音にたたき起こされる。
墓地で、アンデッドが暴れ出したという。
結局、その日はろくに眠れることはなかった。
予想通り、モモンは英雄の道を駆け上がる。あの憎たらしい、たっ
8
?
?
じりじりと下がる。危険な雰囲気だ。第六感が逃げろと囁く。
?
?
ち・みーのように。
⋮⋮いつか、敵対することがあるかも知れないな。
自分の計画を諦める気はないが、警戒はいくらしてもしたりない。
モモンガさんの顔が思い浮かんだ。⋮⋮素直に行けば、今頃二人で
冒険出来てたかもしれないのにな。
9
二話
しばらく、平和な日々が続いた。
階位は順調に上がって、なんと第四階位
だが、多分モモンは100レベル⋮⋮だと思う。敵対することを考
えたら、鼻で笑うぐらいの実力差だ。
ウルベルトが犯罪をしたら、追ってくるだろうか。
いけ好かないたっち・みーのような英雄願望の強そうな男だ。恐ら
く追ってくるだろう。
やはり、せめて、せめて90レベルに達するまでは大人しくしてい
た方が無難か。
そこまではレベルが上がるのも早いし、一般的に使われるのは第八
階位だ。
もっとも、それだけでこの世界では英雄にまで駆け上がってしまい
そうだな⋮⋮。
一人で位階を上げた祝杯を挙げる。
高価なワイン。ゲームの中でしか縁がなかった物を、ゆっくりと飲
み干す。
ほんのりと酔いに顔を赤らめながら、思案する。
⋮⋮モモンは、胡散臭い。
なんというか、事件が起こりすぎるのだ。まるで、物語の主人公の
よう。
そう、それほどにできすぎている。そして、ユグドラシルにはモン
スターの召喚の術がごまんとある⋮⋮。
﹁︵たっちさんの奴より質が悪いかも知れんな⋮⋮。実は俺好みの奴
なのかも︶﹂
思わずクスリと笑う。だとしたら、最大級に危険で食えない奴だ。
ずば抜けた力と悪辣さを持った者。それは魔王という。
受け入れる準備があると言った。これは一人では言えない言葉だ。
人数さえもそろえている可能性を考えると、逃げた方が良いのかも知
れない。
10
!
帝国までの行商の馬車を護衛すればなんとかなるだろう。
そうと決まれば、さっさと移動してしまおう。
翌日、行商隊の所へと向かう。
そこで、影から声がした。
﹃ウル様、お待ちください﹄
﹂
思わず立ち止まり、この状況に当てはまるモンスターを上げてい
く。
﹁シャドウデーモンか
利用価値もないし﹂
聞くと、言いよどむ気配。⋮⋮なるほど。どうやら、モモンは相当
にイイ性格をしているようだった。
﹃ウル様、この町から離れるのは困ります﹄
﹄
﹁どこへ行こうと俺の自由のはずなんだがな
﹃ウル様はそれだけで価値があるのです
きっぱりと言われ、どん引きする。
?
ルのファン
まさか。それは些か妄想が過ぎるというものだろう。
熱烈なアインズ・ウール・ゴウンのウルベルト・アレイン・オード
れに、正体に気づかれた、という可能性も。
いや、でもモモンは普通だったから、ナーベの意向かも知れない。そ
こ ん な 美 形 の ア バ タ ー な ん ぞ 選 ば な け れ ば 良 か っ た と 後 悔 す る。
じゃないだろうな﹂
﹁それだけで価値があるって何だよ⋮⋮。なんか変な趣味でもあるん
!
頭の中で、どうやったら逃げ出せるか方法を考える。
プラン1。どうにか雲隠れする。
プラン2。ナーベと直接話を付ける。
どちらの方がいいだろうか。
相手の実力が最低でも100レベルであろう以上、雲隠れというの
は厳しい。
しかし、ナーベの説得⋮⋮女性の説得か。
女性は時に、理屈よりも感情を選ぶ。やはり、説得も難しいかも知
れない。
11
?
﹁どちらにしろ、面白くないな﹂
?
﹁まあいい。ナーベと会話させろ﹂
﹃ナーベはただいま任務に就いております﹄
﹁どうしろっていうんだよ⋮⋮﹂
せめて、レベルを上げるか。
100レベルを敵に回すより、交渉の方がまだ余地がある。
﹂
﹁任務﹂が終わるまで、討伐依頼をこなしながら待つとしよう。
﹁どうせ監視しているんだ。壁役ぐらいはやってくれるんだろ
﹃は﹄
そうして、俺は討伐依頼を受け続けた。
シャドウデーモンは、びっくりするほど従順だった。
まるで自分の配下のように錯覚してしまう。恐らく、それほど召喚
主が凄いのだろう。
NPCのはずなのに、まるで人間の方に話す。
そこもまた面白い。
こちらの言う事に唯々諾々と従っていたシャドウデーモンが、急に
命じてきた。
とある屋敷でもてなすので待っていろと言う。こちらに拒否権は
ない。
﹂
あまりにもレベル差が大きすぎるのだから。
﹁⋮⋮何かあるのか
までお待ちください﹂
アルベド⋮⋮どこかで聞いたような
げ、ソファーにどっかと座る。
違和感をさっさと放り投
やっぱり英雄ってのは嘘っぱ
倉庫街の方が、炎に包まれていた。
窓に駆け寄る。
突如、爆音が聞こえてきた。
を待つ。
美味しいジュースと果物というもてなしを受け、けだるげにその時
?
知っている俺もただじゃすまなそうだな﹂
!
12
?
﹁それを話すことは許されておりません。アルベド様がおいでになる
?
﹁く、はは⋮⋮いかれてるなぁ、おい
ちか
!
これはもう、話し合いだとか言っている場合ではない。
﹂
そのままシューティングスターを使う。
﹁I WiSH
シャドウデーモン達の動きを一瞬止めて、テレポーテーションで逃
げる。
﹁逃げないでくださいよ、貴方には色々と聞きたいことがあるのです﹂
更に見張っている者がいた。振り向いて、絶句する。
仮面を被っているが、見間違えようもない。
頭を捻って選んだスーツ。
すらりとした長身。設定した声。
﹁モモンガ様は、プレイヤーを見ると無条件に従ってしまうのかも知
れないと仰られた。ですが、私達の忠誠心は、そのような薄っぺらい
ものでは⋮⋮ものでは⋮⋮﹂
体が固まる。そのまま、15秒は互いを見続けていただろう。
そうだ。なんで気がつかなかった。
﹂
ギルド拠点ごと、ナザリック大地下墳墓ごと転移した
N P C が い る の な ら ⋮⋮ ギ ル ド N P C だ っ て い る か も し れ な い
じゃないか
起こしたのは、アインズ・ウール・ゴウンか
﹁一つ、お聞きします。貴方様は、41人の至高のお方ですか
﹁至高のお方がまず誰か教えて欲しい﹂
よ﹂
俺は戦慄した。
ル シ ☆ フ ァ ー か
!
いや。いや。可能性が一番高い奴は誰だ。
モモンって名乗ってた漆黒の騎士がいたじゃないか。
ペ ロ ロ ン
?
神とか至高のお方って呼ばせてんのか⋮⋮
そ し て こ の 暴 挙 の 数 々。あ れ か
チーノか
?
モモンガさんがいないことは間違いない。
!?
13
!
数々の事件と、あの倉庫街の炎。
!
﹁ギルドアインズ・ウール・ゴウンを支配される41人の神のことです
?
!?
?
まさか⋮⋮まさか⋮⋮まさかっっっ
やりやがったな
﹂
!?
!!
﹁お前達にこんな事を命じたのは、たっちさんか
あいつ
!
俺が憎むに相応しい相手でなくてはならなかった
﹂
﹁やはり貴方様は⋮⋮いえ、モモンガ様です﹂
﹁モモンガさん⋮⋮が
﹂
お逃げになるなどと。ナザリックには戻られないのです
オリーだ﹂
﹁そのような⋮⋮
いえ﹂
てた俺に今更居場所なんてあるわけないだろ。裏切り者は殺せがセ
﹁ナザリックは異形種ギルドで、俺は人間だ。それに、ナザリックを捨
か
﹁そんな
﹁今は逃げるのが先だな﹂
嫌な予感を振り払うように首を振る。
信じがたいことを聞いた。一番信じられない名前だ。
?
!
たっちさんは、誰よりも正義でなくてはならなかった。
が俺を襲う。
憎い者が自分の所まで堕ちてきた昏い喜びと、それ以上のむかむか
!
!
デミウルゴスが言いよどんだ。やっぱりか やっぱりなんだな
!
!
︼﹂﹂
あの人もあの人で結構﹁やる﹂人だったが、実際にこんな真似をす
まさか。
るような人じゃあ断じてなかった。
力を手に入れて狂った
﹁とにかく、俺は戻れない。I Wi﹁︻口を閉じろ
支配の呪言が俺を支配する。まずい
﹁︻手を差し出して動くな︼﹂
体が勝手に言うとおりにする。やばいやばいやばい
て浚った。
デミウルゴスは俺を武装解除して縛り上げ、ご丁寧に猿ぐつわをし
!
!
!
?
14
?
モモンガさんに一体何があったのか聞くのが怖い。
!
三話
耳をつんざく悲鳴で目を覚ます。
寝台がゴツゴツしている。骨だった。骨が複雑に絡まり合って寝
台を作っているのだ。
起き上がると、骨で出来た家具の部屋が合った。
アインズ・ウール・ゴウンは積極的に殺しをしている。その事実が
突きつけられる。
もはや手足は縛られてはいないが、武装解除はされていた。
服はアインズ・ウール・ゴウンのクローゼットに置いてあった物に
着替えられていた。
イベント用の、なんの効果もなく、何かを隠すのにも適していない
服だ。
シンプルな長袖とズボンだが、だが、布の品は良い。
そして、横には当然のようにデミウルゴスが控えていた。
﹁お目覚めはいかがですか。ウルベルト様﹂
﹁最悪だよ⋮⋮﹂
骨で出来た寝台、悲鳴のオーケストラ。枕元には自作の悪魔。
リアルでなければ、多分に好みの状況だ。もう一度言う。リアルで
なければ。
気がついたら異世界に転移して、優しくて尊敬出来ると思っていた
ギルド長が魔王に化けていました。どんな状況なのだろう。
自分が獲物的立ち位置で捕まっていなければ笑ったかも知れない。
特に骨の寝台は、贈られれば手を打って喜んだはずだ。
ウルベルトと名乗った覚えはないが、デミウルゴスは確信している
ようだった。
もはやギルドメンバーでもないし、アカウントも違っている。なの
に、不思議なことだ。
扉がノックされる。
﹁朝食をお持ちしました﹂
﹁馬鹿なのかね、君は。人肉のミンチではない、最高級のステーキを
15
持ってきなさい﹂
悪魔が人肉のミンチを持ってきて追い返される。
ミンチに人の指が交じっていた。吐いてもおかしくのない光景だ
が、何故か正気は保てていた。
そういえば、ゴブリン退治の荒事でも結構大丈夫だったな。
俺 は そ れ ほ ど 図 太 か っ た か。何 に せ よ、創 造 し た、N P C の 前 で
みっともなく取り乱したくはない。
﹂
﹁ウルベルト様。ウルベルト様は、何故ナザリックを去られたのです
か﹂
﹁喧嘩したからだよ﹂
﹁け、喧嘩⋮⋮ですか
﹂
﹁け、喧嘩で そんな、喧嘩などで、ウルベルト様は私を捨てて⋮⋮
ザリックへは戻れない﹂
﹁ああ、許せないことを言われたし、酷い事を言った。だからもう、ナ
?
だって、ゲームだったし。誰が俺を責められる
子供なのは事実である。NPCの設定を子供と解釈するのならば。
産ませた覚えのない子供の認知を迫られるような感覚だ。しかも、
う。
親に捨てられた子供のような悲痛な声を出されると、困ってしま
なかった。さすがにこの一言は飲み込む。
それに、デミウルゴスが意志を持つことがあるなんて、思ってもみ
?
﹂
?
﹁ウルベルト様。何故、人間になられているのか、私にはわかりませ
うに。
デミウルゴスは沈黙した。難題を突きつけられた迷子の子供のよ
ことだった。⋮⋮で、デミウルゴス。これから俺はどうなる
﹁⋮⋮譲れないことだったんだ。それこそ、互いの存在意義に関わる
としても。
とえ、人知を超えたわけのわからない事に巻き込まれてしまったのだ
利点だけ受け入れて、デメリットを受け入れないのは見苦しい。た
くどくどと続きそうな言い訳をすっぱり切り捨てる。
?
16
!?
ん。ナザリックには帰ってきてくれないのでしょうか﹂
﹁今の俺は人間なんだけど﹂
その言葉に、デミウルゴスはまたも沈黙する。
守護者達は、意外に互いを信頼していない所がある。いや、それは
語弊という物だろう。何よりもまずナザリックの忠義がある。
その忠義において、喧嘩によりナザリックを捨て、今また人間とな
り、戻らないと豪語するウルベルトをどう判断するか。
一つ、絶対な事がある。
⋮⋮ウルベルト様をそのまま解放する、ということは絶対にあり得
ない⋮⋮。
ナザリックにおいて、死は慈悲である。
そして、ウルベルト様がその慈悲を賜れる可能性もまた、0である。
一番良い可能性は、賓客として軟禁。その次が、封印状態で身動き
出来ないようにされて、囚われの身。
﹂
ため息を吐きながら、ステーキを引き寄せる。ウルベルト・アレイ
17
それもシャルティアなどに眷属にさせられるなどの処置を十分に
された後での話だ。
デミウルゴスは、覚悟を決めた。
﹂
﹁私がお守りします。ウルベルト様。たとえ何があろうとも、私がお
守りします⋮⋮
様に従います
﹁わ、私もデミウルゴス様と同じく、ウルベルト・アレイン・オードル
つい先日まで、彼にとっては全てゲームだったのだから⋮⋮。
ウルベルトが取り乱して吐いてないだけ、立派なものなのだ。
う。いたとしたら、一周回ってそいつは英雄だ。
らないが、この状況でのほほんとステーキを食べる馬鹿はいないだろ
骨で出来たテーブルの上に載せられたステーキが何の肉かはわか
ルトを見つめた。
入れ替わるようにステーキを持ってきた悪魔は、あわあわとウルベ
早速、デミウルゴスはいくつか手を打つべく、部屋を出て行く。
!
﹁従うって言うなら、逃がしてくれないかな﹂
!
ン・オードルは英雄の器である。繰り返す。ウルベルト・アレイン・
オードルは英雄の器である。
とにかく力を付けなくてはと、口に含んだ肉は驚くほど柔らかく、
美味しかった。
準備がないと、捕まってしまいま
ワインを飲んで酔ってしまいたいが、それはやめておいた方が良い
だろう。
﹁そ、それはお許しください⋮⋮
無聊を慰めるのに、皮をおはぎになります
ウルベルト様の皮でしたら、赤子の物でなくても最高級の魔法
﹁そ、それは⋮⋮そうだ
﹁じゃあ、状況を聞かせてくれ﹂
す。もうしばらくお待ちください﹂
!
皮を剥ぐのがお好きですよね
﹂
!
一体、どれほどの人間が助かるのか⋮⋮。
﹁そうですよね
僭越ながら私が⋮⋮﹂
﹁いらん。服を脱ぐな﹂
﹁それでは、余興として拷問を⋮⋮﹂
﹁いらない﹂
﹁では、街から浚った人々を殺されますか
わかりました。
いや、英雄を演出するからには、選ばれた観客が生き残るだろう。
だろう。
アインズ・ウール・ゴウンが主催する宴は、一人も帰すことはない
生活する街が。
男、女、老人、子供、赤ちゃん、貴族、貧民、冒険者、沢山の者が
立った今、こうしている間にも街は襲撃されている。
知りたくなかった事実にウルベルトの眉間にしわが寄る。
剥いでるのか、皮。この悲鳴はそれか。そして赤子か。
﹁断る﹂
のスクロールになりそうですし、その悲鳴もきっと甘美で⋮⋮﹂
か
!
誰か助けて。ウルベルトはいつまでも続く問答に遠い目をした。
自業自得にしては、あまりにも罰が過ぎるのではないか。
?
!
18
?
四話
﹁今度はデミウルゴスが裏切っただと
アインズの胸中を苦い物が包む。
﹁今、デミウルゴスはどうしている
﹂
﹂
またもや、子殺しをしなくてはならないのか。
﹁私はすぐ近くにいたのに楽観視していた⋮⋮。私の責任だ﹂
﹁無自覚なのかも知れません﹂
応に困惑していたようだが﹂
﹁ナーベからの好意もその力だというのか⋮⋮その割にはナーベの反
﹁はい。ウルというプレイヤーに操られているようです﹂
?
﹂
﹂
?
全くの無自覚なら、許す事は
だが、全てのプレイヤーに対してこのような態度なら、大変な事だ。
タレントならば良い。あるいはワールドアイテムでも。
を。
アインズは考える。これがロボット三原則的な何かなのかどうか
﹃申し訳ございません、アインズ様。それは出来かねます﹄
﹃では、デミウルゴスよ。そのプレイヤーを殺すことが出来るか﹄
この者、必ずやナザリックの役に立ちましょう﹄
﹃アインズ様。私は見込みのある青年の成長をさせているだけです。
はあるか﹄
﹃デミウルゴスよ。アルベドに裏切りの報告を受けたが⋮⋮申し開き
その辺りを心に刻み、まずはデミウルゴスにメッセージを送る。
自分の時は気をつけよう。
忠義ってやはりこういう形になったりするのか。
出来ないが、ウルにも同情すべき点はある。そうか、デミウルゴスの
これはどう判断すべきなのだろう
﹁はい。プレイヤーのレベルアップを図っているようです﹂
﹁逆ではなくて、か
﹁支配の呪言を使って、ウルに殺しをさせております﹂
﹁なんと
﹁支配の呪言を使って、ウルに殺しをさせております﹂
?
?
19
?
﹃とりあえず、支配の呪言を解くがいい﹄
﹃⋮⋮わかりました。ちょうど殺し終えたところです﹄
リモート・ビューイングを使い、ウルの様子を見る。
彼は崩れ落ち、荒く息を吐いていた。その顔は青ざめている。
﹁うーん、やはり望んだ形ではなさそうなんだよなぁ﹂
﹁不確定要素は危険です。すぐに殺してしまいましょう、アインズ様﹂
﹁そうだな、アルベド。しかし、やはりまずは話すことにしよう。私に
﹂
は魅了というべき力は発動しなかったようだしな﹂
﹁そんな、危険です、アインズ様
アルベドを宥めつつ、アインズはウルの所へと転移した。
デミウルゴスがウルのやや前に控えており、その意図することは明
らかだ。
ウルの非難の感情のこもった呟きに、アインズは戦慄した。
﹁モモンガさん⋮⋮﹂
﹂
その時、電流のようにモモンガの頭を次の単語が走った。
﹁新アカ
好意的すぎるナザリックのメンバー。裏切ったデミウルゴス。
英雄嫌い。
レベルが低い⋮⋮。
ツンツン。
ウル。
ウルベルト・アレイン・オードル。
まずい。
そういえば、アインズ・ウール・ゴウンと名乗ってなかった。
信じてくれるのか
?
そ
そして、慎重なアインズは、どうやって説明した物か困ってしまう。
至高の41人が人間に転生しました
して、その場合扱いはどうなるのか
?
?
﹁デ ミ ウ ル ゴ ス よ。⋮⋮ わ か っ た。お 前 の 忠 義 は 受 け 取 っ た。ウ ル
よ、こちらへ来るのだ﹂
とにかく保護しなくては
!
20
!
そして、今までのことが走馬燈のように過ぎ去った。
!
そして上手いことごまかすのだ
始まる。
!
アルベドは驚愕した。
るウル。
アルベドの判断は速かった。
﹂
!
しいような、慕わしいような、憎いような複雑な感覚を思い起こさせ
アインズ様まで不可思議な魅了に支配されている
その上、恐ろ
疲労と筋肉痛、精神的負担でぼろぼろのウルベルトを挟んで舌戦が
﹁では、その褒美はウル様として頂きたく思います﹂
る﹂
﹁ウ ル は 私 の 直 属 の 部 下 と し よ う。デ ミ ウ ル ゴ ス に は 直 接 褒 美 を や
カーンとゴングが鳴った。
ンズ様︶から救わなくては
なんとか、なんとか、ウルベルトさん︵様︶をデミウルゴス︵アイ
これは困った。
﹁ええー⋮⋮﹂
﹁⋮⋮恐れながら、ウル様は私の下に付けたく思います﹂
!
ルを庇って転移をする。
﹁アインズ様、一体⋮⋮﹂
﹁やはり彼はウルベルトさんか。デミウルゴス⋮⋮ウルベルトさんに
一体何を。すぐに助けなくては﹂
﹂
その捜査によって両脚羊の真相が明らかになり、アインズは激しく
点滅した。
﹁ウ、ウルベルトさんが危ない
そうして、アインズは急ぎ追っ手を出すこととするのだった⋮⋮。
!
21
!
消えなさい
!
﹂
﹁アインズ様に徒なす者
﹂
アルベド
﹁ウルベルト様
﹁いかん
!
!
アインズが体を張ってアルベドを止め、デミウルゴスがとっさにウ
!
五話
﹁めちゃくちゃだよな、本当に﹂
レベルが急激に上がって、体が上手く動かせない。
手を何度も握っては開き、体の感覚を確かめる。
人を刺した感触が体に染みついていた。
逃亡先の宿で、ウルベルトは世話をされていた。
何をしてくれやがるんだ、と思ったがデミウルゴスは甲斐甲斐しく
世話をしてくれる。
信じがたいが、デミウルゴスは本当にウルベルトに忠誠を誓ってい
るようだった。
モモンガさんの真意がわからない。
以前のモモンガさんでは無いように感じたが⋮⋮。デミウルゴス
がこれほどまでに恐れるほどなのだろうか
嬉々として人の皮を剥いでいたデミウルゴスの恐れる凶行という
のが、ちょっと想像が出来ない。
でも、自分の意志を貫くには、力が必要な事は確かだろう。
つっけんどんに扱えば、この世の終わりのような顔をして。
笑いかければ、こんな状況なのに幸せそうな顔をする。
デミウルゴスは自分をどうとでも出来て、実際そうしたくせに、こ
んなにも手の内で転がせる。
﹁なんだかなぁ⋮⋮﹂
創造した、という意識すらない、それでも確かにウルベルトが想像
した者。
デミウルゴスが用意した紅茶を飲みながら、ため息を吐く。
﹁メッセージは⋮⋮駄目だ。補足されるな﹂
真意を確かめたい、のだが⋮⋮。
アインズ様を惑わす、ウルベルト様の偽者⋮⋮殺
22
?
そこで、扉が吹き飛んだ。アルベドである。
﹁デミウルゴス
させて貰うわよ﹂
!
﹁アルベド
﹂
﹂
私ではアルベドに勝てません
﹂
ウルベルト様と
ウルベルト様は偽者などではありません
﹂
﹁ウルベルト様は、人間だったとでも言うつもり
﹁ウルベルト様
﹁その必要は無い﹂
﹁お逃げください、ウルベルト様
そう言って、武器を振るうアルベド。迎え撃つデミウルゴス。
そこの人間は、似ても似つかないわ
!
﹁ウルベルト様⋮⋮
﹂
に、決して劣るような物ではない
﹂
﹁デ ミ ウ ル ゴ ス ⋮⋮ 俺 は お 前 を 最 高 の 悪 魔 と し て 作 っ た。ア ル ベ ド
!
!
らない。これで戻るとか⋮⋮無理だろ⋮⋮
﹂
捨 て る の か
その言葉に、アルベドは叫んだ。
﹁お お お お お お お お お お お お お お
ま た
ま た、
!
!
﹂
愛 し の、私 の 超 愛 し て い る ア イ ン ズ 様 を、ア イ ン ズ
!
た。
とっさにデミウルゴスと位置を入れ替えて、デミウルゴスを庇っ
アルベドを追い詰めたと思ったときに、反撃された。
激しい戦闘。
たとえ、相手がワールドアイテム持ちであろうとも。
るわけにはいかない。
それでも、ウルベルトのプライドとして、デミウルゴスを負けさせ
いうと指示に従う側だ。
それが出来る優秀な仲間達が何人もいて、ウルベルトはどちらかと
指揮は殆どやったことがない。
入った。
投げ売りされていたいくつかのアイテムを取り出し、戦闘状態に
激高したアルベドと、それを迎え撃つデミウルゴス。
﹁どうしろって言うんだよ⋮⋮﹂
様ぉぉぉぉ
お前は
!
﹁それに、何を心配しているのかは知らないが、俺はナザリックには戻
!
結構な傷を負ってポーションを使っていると、デミウルゴスとアル
23
!?
!
!
?
!
!
!
ベドは震えていた。
﹁何故⋮⋮何故、今更庇う
﹂
﹁ウルベルト様、どうして⋮⋮
﹂
信じられないような事をされた、と喚く二人に困惑する。
﹁子供を庇うのは当たり前だろうが⋮⋮﹂
﹁捨てたくせにっ 捨てたくせにっ 捨てたくせにっ﹂
泣くアルベドに、こちらが悪いことをした気になる。
まるで、幼い子供を相手にしたような。
﹁悪かったよ⋮⋮﹂
まだ痛い。口から流れ出る血を拭いながら、アルベドの頭を撫で
る。
デミウルゴス、
﹁約束する。モモンガさんの邪魔をしたりしないよ。行くぞ、デミウ
ルゴス﹂
﹁はーいっ ウルベルト様、お迎えに上がりました
どうやら、俺はここまでらしい。
一方でアインズは、落ち込んでいた。
先ほどの戦闘、アインズも見ていたのである。
!
﹁デミウルゴスとアルベドの処分はいかが為されますか
﹂
ぶつぶつというアインズを心配そうにセバスが見つめる。
ら、そりゃ引いちゃうよな⋮⋮﹂
⋮⋮。でも、あんなことやこんなこと全部俺の指示ですって言われた
です⋮⋮最低だよな。やっぱり、俺の指示でやったことにしないと
んて話すんだよ⋮⋮部下が全部やりました、その部下とは貴方の息子
﹁戻るのが無理と言われた⋮⋮。いや、でも、話を聞いて貰えば
な
アウラとマーレ、コキュートスに囲まれ、俺はため息をついた。
なんかしたらウルベルト様のお立場が困ったことになるよっ﹂
!
う。その罰はこちらで考えておく﹂
を狙ったりしているからな。無罪放免というわけにはいかないだろ
﹁忠義故のこと⋮⋮多分⋮⋮とはいえ、ウルベルトさんを操ったり命
?
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!
!
﹁ウルベルト様は⋮⋮
﹂
﹁ウルベルトさんには、謝らなくてはな。かなり迷惑を掛けてしまっ
た⋮⋮﹂
時間が掛からないうちに、控えめに言って軽装のウルベルトが目隠
しと猿ぐつわをされて縛られて連れてこられた。アインズが点滅を
繰り返す。
﹁これ以上私の評価を下げるような事はするな﹂
そういって、アインズは自分の手で戒めを解いていく。
﹁モモンガさん⋮⋮﹂
﹁ウルベルトさん、その⋮⋮色々、すみませんでした﹂
アインズは頭を深々と下げる。
誰か、お茶と軽食を持ってこい。
その様子に、ウルベルトの緊張が僅かに解けた。
﹁お疲れになっているでしょう
さんを自室へ﹂
ると胃が痛い。
責められるかも知れない。罵倒されるかも知れない。それを考え
頭を抱えるアインズ。
﹁ああ、失点が増えていく⋮⋮。どうやって説得すれば良いんだ⋮⋮﹂
そうして一人になると、アインズはピカピカ光った。
ただし、脱出に手を貸さないように。そして、しばし一人にしてくれ﹂
の 部 屋 に 入 れ な い よ う に。エ イ ト エ ッ ジ ア サ シ ン の 護 衛 の み 許 す。
﹁私はウルベルトさんを信頼している。ただし、誰もウルベルトさん
﹁しかし、アインズ様
﹂
﹁ウルベルトさん⋮⋮先に休んだ方がいいですね。誰か、ウルベルト
純 粋 に 疲 れ て い た か ら だ。 美味しい。眠気が押し寄せてくる。薬を入れられたわけではない。
ウルベルトは紅茶をぐっと飲む。
﹁⋮⋮そうだな。疲れている。ご馳走になろう﹂
ウルベルトさんをもてなすんだ﹂
?
それでも。それでも、沸き立つ喜びは抑えきれなかった。
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?
!