雑木の力で里山を創生する「鹿野の風」プロジェクト

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周南市
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雑木の力で里山を創生する「鹿野の風」プロジェクト
周南市鹿野地区(旧鹿野町)は、山口県の北
ことになりました。その後も、トマトやお茶な
東部、島根県境に位置する農山村地域で、中国
ど季節ごとの食材をテーマに10回を超えるイベ
山地に囲まれた県下有数の積雪地域です。人
ントを開催。この過疎地に毎回多くの人が押し
口は昭和30年の8,949人をピークに減少を続け、
寄せ、企画は大成功を収めました。
現在は3,000人強。市の推計によると、平成42
年までに約1,000人減少し、2,000人強になると
●雑木の力で心地よい空間を作る
見込まれています。
ところが最初の企画から2年が経った頃、も
そんな過疎化が進む地域ですが、町の中心部
ともとの常連客から「鹿野に来るのは静かな時
に中国自動車道の鹿野インターチェンジ(IC)
間を過ごすため。こういう一挙に人を呼ぶため
を擁していることが、ひとつの強みになってい
のイベントはいかがなものか」という苦言が寄
ます。瀬戸内海側の周南市市街地と日本海側の
せられるようになりました。グループで話し合
萩市を結ぶ国道315号が、この鹿野ICで中国
いを重ねた結果、鹿野の武器は里山のゆっくり
道と交差するという地理的好条件を背景に、県
した時間の流れや、むしろ不便さだと気付き、
内はもちろん福岡県や広島県などからのドライ
目先の交流人口を増やすより、たとえ時間がか
ブ客が多く町を訪れます。そのため7∼8年前
かろうとも、
「心地よい空間」を都会の人に提
から、ドライブ客向けにカフェや農家レストラ
供することで鹿野の魅力を高めようと、思い切
ンなどの店舗が次々にオープンしました。
って方針を転換しました。
●地元食材を使ったスイ―ツの販売を企画
そうした店舗の店主が集まり、地域を元気に
しようと平成22年に立ち上げたのが、地域づく
りグループ「鹿野の風」プロジェクトです。手
始めに地元の夏イチゴを使って期間限定のスイ
―ツを売り出したところ、なかなか好評でマス
コミにも取り上げられるなど一躍脚光を浴びる
▲ Café マルタ
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やまぐち経済月報2016.7
▲雑木(コナラ)の植栽風景
まちづくりの先進地である大分の湯布院や熊
にも協力を仰ぎながら、鹿野に出店する人を応
本の黒川温泉などを何度も視察し、メンバーが
援するキャンペーンを展開したところ、反響は
出した結論は雑木の力を借りて「心地よい空間」
上々。人が人を、店が店を呼び、行ってみたい、
を作ること。まずは、グループ全ての店舗周辺
住んでみたい、そんな魅力的な里山になること
に統一感を持って雑木(コナラ)を植えること
がプロジェクトの目標です。
から始めました。同時に、地域の皆さんの理解
を得るため、活動の意図を説明するチラシを作
●雑木の力で里山を創生
って配布。折よく新聞に活動の記事が掲載され
7店舗で始めた「鹿野の風」プロジェクトは、
たこともあって、雑木の植えてある景観に好感
今では14店舗にまで増えました。雑木がつくる
を持ってもらえるようになりました。現在はグ
「心地よい空間」に呼び寄せられて都会から人
ループの店舗だけでなく、他の施設にも少しず
が集まり、非日常のひと時を鹿野で過ごす。
「鹿
つ植栽を広げています。
野の風」プロジェクトは、深刻な過疎化にたじ
ろぐことなく、里山なりの風景やむしろ不便さ
●雑木の力で里山にお店を増やす
を売りに、ヒト・モノ・カネ・情報をうまく循
こうして雑木を植える活動が地域に受け入れ
環させて、未来に希望が持てる地域に変えてい
られ始めましたが、店の経営者としては売上の
「里山創生」という
こうと取り組んでいます。
確保もおろそかにはできません。そこで、「鹿
名の地方創生。しっかり見守っていきたい。
野のお店マップ」を作成し、県内の道の駅やカ
(松本 敏明)
フェ、美容院などに置いてもらうなどしてPR
活動を展開しています。
問合わせ先
そんなPR活動が波及したのか、今年の3月、
「鹿野の風」プロジェクト
県外の若い夫婦が革靴のオーダー店を新規開店。
代表者 福田 清治
続いて、6月には手作り洋装ギャラリーもオー
TEL 0834-68-4079
プンしました。これら2店の開店を機に、行政
▲ Café 911
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