月刊HM 現代風“組織一丸”マネジメントシリーズ

【月刊HMレポート:Vol.180】
2016 年 9 月号
【成果を出す組織を作るマネジメント】シリーズ
このレポートは経営者および経営幹部の皆様のために作成されています!
競争下での勝ち残り秘訣は専門性深化にある?
有益な専門性を発揮する組織の作り方
◇◆◇ 組織の支柱を失った経営者の気付きとは… ◇◆◇
◆本レポートの内容◆
【1】魅力ある“専門性”が競争勝ち残りのポイント
…… 1㌻
【2】“専門性”習得は容易に“教育指導”できない?
…… 2㌻
【3】
“難しく考えないこと”から始まる専門性深化
…… 3㌻
【4】“興味”と“発見”の連鎖が生み出す豊富な見識
…… 4㌻
【5】案外身近なところにある“専門性”深化指導法
…… 5㌻
激しい競争の中で、勝ち残っている企業は“特色”を持っている…、
としばしば指摘されます。しかし、その“特色”とはどのようなものな
のでしょうか。
そして、その“特色”は、どのように生み出し、どう組織に浸透させ
て行けばよいのでしょう。そんな“複雑な課題”に、
“身近な突破口”
を見出した経営者がおられます。卸売業の社長ですが、その発見は、あ
らゆる業態に“応用”可能だと考えられるのです。
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SRヒューマン・マネジメント研究会
私どもでは、人材や組
織管理に関わる業務を
通じて、広く皆様方の
マネジメントをご支援
いたしております。
そうした活動から得た
様々な考え方等を、当
事者の皆様にご了解を
頂いた上で、事例とし
てご提供しています。
【成果を出す組織を作るマネジメント】シリーズ
【1】魅力ある“専門性”が競争勝ち残りのポイント
1》
“広さ”より“深さ”が問われる今日
食材の“調味料”から、一部の“食材”までの“卸売業”を営
むA社で、最近の悩みは、
従業員の専門見識の育成
なのだそうです。これは卸売業に限らないことでしょうが、最近
では急速に、ブランド、あるいは価格や品揃えだけでは“勝負”
ができない状況が生じているようで、そのため、むしろ、
商品見識や品揃えの“深さ”が問われる
と言うのです。
現に、激しい競争の中で、A社の取引先でも、
“専門性を深めて
いる”企業が生き残っているとも言えるようです。
2》社内外で“一目”置かれる人の行動
そんな中で、新たな商品を発掘するバイヤーとして、社内外で
一目置かれていた従業員のBさんは、
“専門性”のお手本のような
存在でした。Bさんは、たとえばパンやサラダに付けて食べるオ
リーブオイルを探す時でも、まずは、
パンや野菜の選定
から始めます。そして、どの種のパンには“どのオリーブオイル
が、どの季節に、どんな飲み物や料理と組み合わせた時に、独特
の味を出すか”を、独自の感覚で研究するのです。
もちろん、朝食か夕食かでも違いますし、洋食ばかりではなく、
和食に合わせるオリーブオイルもあるそうです。
3》深い見識がなければ生き残れない?
その深い見識が、販売先の信頼を勝ち取るばかりではなく、オ
リーブオイルの生産者との“深い関係”も形成して行きます。B
さんの“指摘”や“提案”に、生産者も販売先も、いわば、
緊張感を持って耳を傾ける
ことが多くなるからです。もちろん顧客から、
“こんな料理に合う
オリーブオイルを探してくれ”と依頼されることもあります。
ところが、そんなBさんが、やや深刻な病気で、長期療養に入
りました。職場復帰の目途は立ちませんし、復帰後も、何よりB
さんの“気力”が戻るかどうか分かりません。
そんな中で、社長はある大きな悩みを抱えていました。
競争下での勝ち残り秘訣は専門性深化にある? 有益な専門性を発揮する組織の作り方:1 ㌻
【成果を出す組織を作るマネジメント】シリーズ
【2】
“専門性”習得は容易に“教育指導”できない?
1》改めて痛感する“人材育成”の難しさ
Bさんが職場にいなくなって、
『改めて“従業員育成”の難しさ
を痛感させられる』と、社長は言われます。それまでは、Bさん
が社内の“空気”のようなものを作っていました。
“風土”とでも
言うのでしょうか。
それは、社長の指示や教育ではなく、
Bさんの仕事への姿勢や生き様が“伝承”して行く
ようなイメージでした。そして、若手従業員は“Bさんの仕事ぶ
りを真似る”形で、
商材と顧客の開拓に没頭できた
のです。その働きぶりは各人に浸透しているはずでした。
2》中心人物の不在で浮足立つ組織
ところが、Bさんの不在が始まって間もなく、組織全体が“浮
足立つ”かのような雰囲気に陥り始めたのです。組織的な“自信”
が薄れると言うのでしょうか。あるいは、
確たる目標や心の支えのようなものを失ってしまった
と言った方が良いのかも知れません。
Bさんを真似て、実践的な“研究”で見識を深めようとしても、
どうしても“迷い”が先行してしまいます。そんな状況では、
『B
さんと同じように話しているつもりでも、顧客の信頼が得られな
い』のです。
つまり、いったい『何が違っているのだろう』という不可解さ
と、
『Bさんのような従業員を育成できるのだろうか』という不安
が、社長を悩ませているのです。
3》
“託したいこと”を聞いてみた…
療養中のBさんを心配させないため、社長は仕事の話を控えて
いたのですが、ある日、Bさんを見舞いながら、
“一つの話”を切
り出したのだそうです。それは、
『Bさん、私たちに“託したい”ことはないか?』
という質問です。
始めのうちは、ただ笑っていたBさんも、ふと思い出したかの
ように『ああ、コリアンダー(タイ料理で有名なパクチーを香辛
料にしたもの)の可能性を試したかった』と言い出しました。
競争下での勝ち残り秘訣は専門性深化にある? 有益な専門性を発揮する組織の作り方:2 ㌻
【成果を出す組織を作るマネジメント】シリーズ
【3】“難しく考えないこと”から始まる専門性深化
1》自分にできることから挑戦
Bさんの言う“可能性”とは、たとえば、
“卵ご飯”にかけてみる
という、非常に“身近な使い方”の探索です。もちろん、料理研
究家に依頼して、様々なレシピを研究することもありますが、
普通のものを手軽に、従来とは違う感覚でおいしく食べる方法
の試行が重要だと、Bさんは言うのです。
そんな“分かりやすさ”が、料理人や一般家庭人を刺激して、
顧客自らが料理しながら試してみる“創造姿勢”を生み出す
からなのだそうです。
2》まずは“難しく考えないこと”から専門性が始まる
『難しいなあ』と思う社長の心境を感じ取ったかのように、B
さんは『難しく考えず、ただ、思い付いたままに、自分や身近な
人の“舌”で試してみるだけで始められる』と言うのです。
意気込んで、最初から“創造的な行動”や“企画提案”を考え
るのではなく、
自分や身近な人の“興味”チェックから始める
と、その結果として、多くの人がウキウキ、ワクワクするような
“情報交流”が始まり、それが“企画”に結実すると言うのです。
特に、生産者は“ユーザーが自社製品をどう使っているか”を
知らないことが多いため、
生産者への“お試し”結果のフィードバックは喜ばれる
ことが多いそうです。
3》新しい企画の“種”が生まれるまでの“4ステップ”
つまり、まず“①身近な興味”を持ち、
“②それを自他で試し”、
“③対象を広げてテスト”し、その結果を“④生産者にフィード
バック”するだけでも、
新しい企画の“種”が生まれる
と、Bさんは言いたいわけです。
しかし、残された従業員は、Bさんのようにできるのでしょう
か。そもそも、Bさんが“コリアンダー”に抱いたような“興味”
を、他の従業員にも持てるのでしょうか。そう考えた時、社長に
は『“一つのアイデア”が生まれた』と言われるのです。
競争下での勝ち残り秘訣は専門性深化にある? 有益な専門性を発揮する組織の作り方:3 ㌻
【成果を出す組織を作るマネジメント】シリーズ
【4】
“興味”と“発見”の連鎖が生み出す豊富な見識
1》興味を持てる対象(テーマ)特定からスタート
Bさんを見舞った翌日、早速社長は“社内会議”を開き、Bさ
んの“コリアンダー”と“4ステップ”の話をして、
『Bさんの“4ステップ”を皆で研究してみよう』
と持ち掛けたのです。
Bさんのように、調味料等に“深い興味”を持つことができな
い従業員にも、
Bさんの仕事のし方には興味が持てる
はずだからです。案の定、会議では『Bさんは、具体的にはどん
な活動をしていたのですか?』という質問まで飛び出しました。
そして、
“顧客の笑顔の前に生産者の笑顔をとれ”という、ユニ
ークなプロジェクトが始まったのです。
2》必要な見識を持つ人との繋がりを強化
商品知識を深めるには、何より生産者の見識が不可欠ですが、
生産者は多くの場合、あまり語りません。しかし、その製品を好
きになり、自他で試してみて、その結果をフィードバックすると、
生産者は喜んで色々なことを語り始める
そうなのです。
その“歓喜を秘めた生産者の話”は、今度は“ユーザー”の心
の深い部分を刺激します。ユーザーが刺激されて、更に自分流に
製品を試し始めると、そこに
『興味と発見の壮大なキャッチボールが始まる』
と、社長には感じられると言うのです。
3》専門性を深めるための“指導法”が見えた!
専門性や専門分野の“深掘り”のイメージを、なかなか鮮明に
持てなかった社長も、
専門性は“興味”と“試行”の相乗効果で深くなる
と、今は確信されています。まず、好感を持って興味を抱き、そ
れを自分なりに試してみると、また新たな興味が膨らみ、新たな
試行が生まれて、そのキャッチボールで、
その人独特の“専門性”が醸成される
とも考え始めておられます。
ただ“興味”には、一つの配慮が必要だとも言われるのです。
競争下での勝ち残り秘訣は専門性深化にある? 有益な専門性を発揮する組織の作り方:4 ㌻
【成果を出す組織を作るマネジメント】シリーズ
【5】案外身近なところにある“専門性”深化指導法
1》まずは“身近な興味”を探せ!
その“配慮”とは、持つべき興味を目標のように“押し付けて
しまう”のではなく、従業員自身の興味分野を発見し、
それを必要な興味につなぐ道を探して示唆する
ことなのだそうです。
その際の従業員の“興味”も難しく考えず、たとえば、
コリアンダーに興味がない人もBさんには興味がある
というような感覚で捉えれば、Bさんから興味を膨らませて、
コリアンダーに“興味を連鎖的に発展”させて行く
こともできます。まさに、興味は連鎖するのです。
2》組織力強化につながる“各人の能力”の引き上げ方
組織力を高めるには、個々の従業員の専門性の深化ばかりでは
なく、様々な“能力強化”は欠かせません。しかし、それは“上”
から“下”への教育ではなく、むしろ、
“下”の興味を“上”が吸い上げる形で“起点”を作る
ことが大事になると、社長は考えておられます。
たとえば、あるサプリメント販売店では、漫然とした商品教育
より、
『このサプリは、どんな人が買うか』というクイズに答えさ
せ、実際の販売で確かめる等という方法をとった方が、
従業員の商品知識や顧客観察は深まって行った
という例もあるのです。
それは“答え合わせ”という、ある種のワクワク感が、商品や
顧客への興味を刺激するとともに、
“自分が回答した顧客層”には、
自然に“販売が熱心になる”からなのだそうです。
3》専門性を深める指導ポイント
一般知識の教育なら、確かに“教える”ことが一番かも知れま
せん。しかし“専門性を深める”という、従業員サイドの積極性
が求められる“育成”では、確かに、
身近な興味という“起点”、あるいは“起爆剤”が欠かせない
のかも知れません。
そのため、専門性の教育ポイントは、
“当人の興味”を見つけ、
それを“必要な興味”とつなぐための“架け橋”形成から始まる
という考え方は、大変“興味”深いと言えそうです。 以上
競争下での勝ち残り秘訣は専門性深化にある? 有益な専門性を発揮する組織の作り方:5 ㌻