神戸市業務継続計画 (地震・津波対策編) 平成 28年8月 神戸市 《目 次》 I 総則 ..................................................................................................................... 1 1 神戸市業務継続計画(地震・津波対策編)策定の基本的な考え方 ............................... 1 2 業務継続計画の発動及び運用 ........................................................................................ 7 II 被害想定............................................................................................................. 8 1 災害想定の考え方 .......................................................................................................... 8 2 内陸部直下型地震 .......................................................................................................... 9 3 海溝型地震 .................................................................................................................. 10 4 その他の被害想定 ........................................................................................................ 14 III 非常時優先業務 ............................................................................................... 15 1 大規模地震の発生に伴い対応が必要となる業務.......................................................... 15 2 非常時優先業務の考え方 ............................................................................................. 16 3 非常時優先業務 ........................................................................................................... 19 4 各局室区の非常時優先業務.......................................................................................... 21 5 非常時優先業務の実施 ................................................................................................. 21 IV 業務継続体制の現状と対応策 .......................................................................... 22 1 人的資源の確保 ........................................................................................................... 22 2 業務執行環境の確保のために ...................................................................................... 27 V 業務継続計画の定着に向けて............................................................................ 32 1 業務継続計画の継続的な改善 ...................................................................................... 32 2 教育・訓練等 ............................................................................................................... 33 3 関係機関・協力事業者へのBCPの普及 .................................................................... 34 I 総則 1 神戸市業務継続計画(地震・津波対策編)策定の基本的な考え方 (1) 業務継続計画策定の目的 平成7年1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では、本市におい て多くの人命が失われ、ライフラインも長期間にわたって停止するなど市民生活や市域 の経済活動に重大な影響が生じた。 本市では、震災の発生後災害対策本部を設置し、職員一丸となり災害対応業務に従事 したが、多くの避難者への対応をはじめ、食料品等生活物資の確保や医療救護体制、応 急仮設住宅対策、市民等への情報提供など、多岐にわたる多大な業務への対応が必要で あったうえ、災害対応業務と経常業務の配分や経常業務の再開時期が不明確であったこ とにより、業務を遂行する上で様々な混乱をきたした。 阪神・淡路大震災の経験と教訓を踏まえ、大規模な地震等の発生により本市の機能が 低下する中にあっても、市民の生命・身体及び財産を保護し、市民生活への影響を最小 限とすることができるよう、迅速に災害対応業務を開始するとともに、最低限の行政サ ービスを維持しつつ、可能なかぎり早期に本市の機能を回復させることを目的として 「神戸市業務継続計画(地震・津波対策編)」(以下、「業務継続計画」または「本計 画」という)を策定する。 (2) 対象とする危機管理事象 神戸市においては、神戸市地域防災計画(以下、「地域防災計画」という)に記載さ れているとおり、地震・津波、風水害、大規模事故等、あらゆる事象による災害の発生 を想定している。 本計画では、神戸市地域防災計画を踏まえ、内陸部直下型地震として非常に激甚な被 害を及ぼした兵庫県南部地震を、また海溝型地震として近年発生が危惧されている南海 トラフ地震の発生を想定した危機管理体制を対象とする。 (3) 業務継続計画(BCP)とは 業務継続計画(BCP)とは、災害時に行政自らも被災し、人、物、情報等利用でき る資源に制約がある状況下において、優先的に実施すべき業務(非常時優先業務)を特 定するとともに、業務の執行体制や対応手順、継続に必要な資源の確保等をあらかじめ 定め、地震等による大規模災害発生時にあっても、適切な業務執行を行うことを目的と した計画である。(「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」 平 成28年2月 内閣府(防災担当)より) なお、「BCP」は Business Continuity Plan(業務継続計画)の略称である。 1 (4) 本計画で対象とする業務の定義 ① 本計画策定の考え方 本計画は、神戸市災害受援計画(以下、「受援計画」という)と整合をとりながら策 定し、災害発生時に対応すべき業務を本市職員以外の人材を活用しながら実施できるよ うにするものとする。受援計画策定の際には、業務継続計画の要素を一部取り入れなが ら策定した。このため、本計画で対象とする業務や時間区分(後述)は受援計画に準拠 する。 ② 対象期間 本計画の対象期間は、経常業務への移行や地域の主要産業の復旧等も考慮し、また受 援計画の期間とも整合をとり、災害発生後1か月までとする。 ③ 本計画の対象業務(非常時優先業務) 本計画で対象とする業務は、緊急業務及び継続すべき経常業務とする。 ・緊急業務は、地域防災計画に記載されている応急対応業務と災害復旧業務とする。 なお、対象期間を災害発生後1か月までとすることから、緊急業務のうち発災から 1か月以降に実施する業務は対象外とする。 ・継続すべき経常業務は、全ての経常業務のうち、災害発生時にも中止することな く継続する経常業務、及び一旦中止するが1ヶ月以内に再開する必要のある優先度 の高い経常業務である。 上記の2つの業務をあわせて「非常時優先業務」と定義する。 なお、本計画の非常時優先業務の中には、各担当課で対応可能な業務と支援を要する 業務(受援計画の対象業務)の両方が含まれている。 『地域防災計画』 『受援計画』 緊急業務 支援を要する緊急業務 ・応急対応業務 ・災害復旧業務 『業務継続計画』 非常時優先業務 支援を要する経常業務 これらのうち 1か月以内に実施す る必要のあるもの (平常時) 経常業務 継続すべき 各担当課で対応可能な 経常業務 経常業務 中止する 経常業務 図表 I-1 非常時優先業務の考え方 2 (5) 業務継続計画の効果 災害発生時には、業務量が急激に増加し、極めて膨大なものとなる。被害状況の確認 など発災直後から非常に短い時間の間に、膨大な早期実施の優先度が高い応急対応業務 や災害復旧業務(緊急業務)が発生し(図表 I-2)、それらを迅速かつ的確に処理しな ければならない。業務継続計画を策定し必要な措置を講じることにより図表 I-3に示す とおり、以下のような効果を得ることができる。 ① 業務立ち上げ時間の短縮 予め、非常時に実施すべき業務について、時系列ごとの整理、指揮命令系統の明確化、 職員研修及び訓練による災害対応能力の向上等を図ることにより、業務立ち上げ時間の 短縮が図れる。 ② 発災直後の業務レベルの向上 上記に加え、庁舎の耐震性確保、執務室の書棚等の転倒防止、非常用燃料・通信手段 の確保等、業務実施にあたっての環境整備を進めることにより、実施する業務レベルの 向上が図れる。 ③ 災害対応業務のために必要なマンパワーの確保 予め時系列にあわせて、緊急業務及び継続すべき経常業務(非常時優先業務)を整理 することにより、膨大な災害対応業務の実施のためのマンパワーを確保することができ る。 業務レベル100 %超過分 は受援などにより対応 業 務 レ ベ ル ( 量 ) 【緊急業務】 発災後、市が実施する業務は、 新たに緊急業務が発生することに より急激に増加 緊急業務 非常時優先業務に 該当する経常業務 【非常時優先業務に該当する経常業務】 発災後も継続する経常業務 非常時優先業務 以外の経常業務 発災後一旦中止するものの、 1ヶ月以内に再開すべき経常業務 【非常時優先業務以外の経常業務】 発災直後は停止するものの、 1ヶ月以降に再開する 発 災 約2週間 約1ケ月 時間軸 (「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」平成28年2月を参考に神戸市版を作成) 図表 I-2 発災後に神戸市が実施する業務の推移 3 出典)「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」平成28年2月 図表 I-3 業務継続計画の策定に伴う効果の模式図 4 内閣府(防災担当) (6) 業務継続計画の位置づけ ① 地域防災計画との関係 地域防災計画は、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第42条の規定に基づ き、神戸市防災会議が作成する防災に関する計画であり、市域の災害予防、災害応急対 策及び災害復旧等についての防災活動を総合的に示すもので、本市の防災対策の骨格 (基本計画)となるものである。 これに対し、業務継続計画は、防災戦略における行政としての減災施策の1つであり、 災害発生後に取り組むべき業務(緊急業務及び継続すべき経常業務)を選定し、限られ た人員や資機材等の資源を効率的に投入することで、地域防災計画の実効性を高めると ともに、経常業務を含めた行政機能の継続と早期復旧を図るための行動計画である。 図表 I-4 区分 地域防災計画との比較 神戸市地域防災計画 神戸市業務継続計画 地域防災計画の実効性を高める 位置づけ 防災対策の基本計画 とともに、行政機能の継続と早期復 旧を図るための行動計画 作成主体 神戸市防災会議 神戸市 ・災害応急対応 対象業務 ・災害予防対応 ・優先度の高い災害復旧対応 ・災害応急対応 ・継続すべき経常業務 ・災害復旧対応 ・上記を実施するための執務環境 等の整備 期 ② 間 期間の定めなし 災害発生から1か月間 受援計画との関係 1)受援計画の概要 阪神・淡路大震災と東日本大震災時に、それぞれ受援側及び支援側として得た経験 と教訓をもとに、支援を要する業務や受入れ体制などを事前かつ具体的に定め、予め 「受援計画」としてまとめておくことで、大規模災害時に市自らの行政機能だけでは 対応できない事態に、他の自治体や機関など多方面からの支援を最大限活かすことを 目的として、平成25年3月に全国に先駆けて策定した。 受援計画では、大規模災害発生後の時間経過のなかでどの時期にどの業務のピーク が発生するかを考慮しながら、本市自らが対応すべき業務と応援の力に委ねる業務の 選別を実施している。 また、応援の力に委ねるべき業務については、その業務ごとに、応援を受ける際の ポイント(情報処理・指揮調整・現場対応環境・民間との協力関係等)についても整 5 理を行っている。 2)本計画との関係 本計画においては、本市が実施すべき業務の優先順位等を検討する必要があり、業 務の選別方法については、受援計画との整合を図っている。 (7) 業務継続計画の計画対象期間 発災後1か月間を計画対象期間とし、地震発生後の時間区分については、受援計画と の関係も考慮しつつ、発災直後の資源不足が想定される時期において優先的に実施すべ き業務等の開始時期をより詳細に検討できるよう、以下の6フェーズに分けることとす る。 図表 I-5 フェーズ 本計画の計画対象期間と時間区分 時間区分 区分 第1フェーズ 地震発生から6時間後まで 第2フェーズ 6時間後から24時間後まで 第3フェーズ 24時間後から72時間後まで 第4フェーズ 72時間後から1週間後まで 第5フェーズ 1週間後から2週間後まで 第6フェーズ 2週間後から1カ月後まで 6 初動期 応急期 復旧期 2 業務継続計画の発動及び運用 (1) 発動の決定 本計画を発動する時期について次のように設定する。 ①「市内で震度6弱以上の地震発生」においては、業務継続計画を自動的に発動する。 ②「市内で震度5(強・弱)の地震発生」においては、自動的に防災指令第3号が発 令されて災害対策本部を立ち上げることから、被害規模によって業務継続計画の発 動について災害対策本部本部員会議で検討する。 ③その他災害対策本部長が必要と認めたときに発動する。災害対策本部長が発動する ことが困難な場合には、地域防災計画で定める職務代理者が発動する。 (2) 発動時の対応 災害対策本部長が業務継続計画を発動した場合には、緊急業務及び市民生活の維持に 必要な優先度の高い経常業務を継続するとともに、不急の業務の休止を行う。 (3) 発動の解除 災害対策本部長は、業務継続計画の発動の必要がなくなったと判断したときは、業務 継続計画の発動を解除する。 7 II 被害想定 1 災害想定の考え方 地震・津波災害は、活断層の食い違いにより都市の直下で局地的な激震を引き起こす 「内陸部直下型地震」と、海洋プレートの跳ね返りにより広範囲に渡る揺れや津波を引 き起こす「海溝型地震」に大別される。 本計画では、地域防災計画をふまえ、これら2種類の地震・津波災害について想定す る。 内陸部直下型地震の想定は、兵庫県南部地震の被害状況と兵庫県地域防災計画の被害 想定との比較により決定する。 また、海溝型地震の想定は、1000年に1度かそれよりも低い頻度で起こりうると考 えられている南海トラフ巨大地震を想定する。 図表 II-1 地震の種類 地震の種類と被害特性 被害特性 ・エネルギーの減衰が少なく、直上の都市構造物に水平方向に加え 内陸部直下型地震 (短周期) 垂直方向にも大きな速度、加速度が加わり、激甚な被害を与える。 ・局地的に被害が集中する。 ・震源域によっては津波を発生させる可能性がある。 ・地盤の液状化現象が発生する可能性がある。 ・被害は広範に及び、周辺都市からの応援が困難な状況が考えられ る。 海溝型地震 (長周期) ・津波を伴うことがあり、浸水被害等が発生する可能性が高い ・超高層建築物等、固有周期の長い構造物との共振現象による被害 が発生する可能性がある。 ・液状化の可能性のある場所では、地下埋設物等の浮き上がり現象 を発生させる可能性がある。 8 2 内陸部直下型地震 (1) 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)による被害の概要 兵庫県南部地震は、神戸市を含む阪神地域で発生した大都市直下型地震(マグニチュ ード7.3)であった。また、地震の継続時間が短い反面、揺れの振幅が18㎝と観測史上 最大になるという強い地震であり、過去に経験したことのない大災害となった。 図表 II-2 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)による主な被害(神戸市) ①市内震度の最大値 震度7 ②人的被害 死者 4,571人 不明 2人 負傷者 14,678人 避難者数(ピーク時) ③建物被害 揺れによる建物倒壊数 236,899人 全壊 67,421棟 半壊 55,145棟 出典)神戸市地域防災計画(共通編)平成27年9月 (2) 災害想定 兵庫県地域防災計画では、県内において震度5強以上の揺れを生じさせる県内外の地 震を対象とし、内陸型地震の想定を行っており、注意すべき代表的な地震として、山崎 断層帯地震、上町断層帯地震、中央構造線断層帯地震、養父断層帯地震について詳細な 地震被害想定を実施している。神戸市地域防災計画では、そのうち、本市の被害が限定 的である養父断層帯地震を除く3地震と、兵庫県南部地震を比較し、被害が最も大きい 兵庫県南部地震を想定地震としていることから、本計画においても、兵庫県南部地震を 内陸部直下型地震の想定とする。 図表 II-3 対象地震による被害想定(神戸市) 想定地震 山崎 上町 中央構造線 兵庫県 断層帯地震 断層帯地震 断層帯地震 南部地震 (M8.0) (M7.5) (M7.7) (M7.3) ①市内震度の最大値 ② 人 的 被 害 建物倒壊による死傷 死者 者数(冬5時) 負傷者 避難者数(震災直後) 6強 6強 6強 7 約260人 約120人 約40人 4,571人 約4,900人 約3,400人 約1,500人 14,678人 約161,300人 約132,800人 約132,800人 236,899人 ③建物被害(揺れによる建 全壊 約4,200棟 約2,100棟 約550棟 67,421棟 物倒壊数) 半壊 約19,900棟 約15,500棟 約7,000棟 55,145棟 出典)神戸市地域防災計画(共通編)平成27年9月 9 凡 例:震度 【震度7の分布】 (山崎断層地震) (上町断層帯地震) (中央構造線断層帯地震)(兵庫県南部地震) 出典)兵庫県地域防災計画(地震災害対策計画) 図表 II-4 対象地震による震度分布 3 海溝型地震 (1) 想定される南海トラフ地震・津波 海溝型の巨大地震は、歴史的にもかなり規則正しく概ね一定の間隔で発生している。 駿河湾から土佐湾までの南海トラフのプレート境界では、歴史的に見て、概ね100~ 150年の間隔で海溝型の巨大地震が発生している。昭和東南海地震及び昭和南海地震が 起きてから70年が経過しており、南海トラフにおける次の大地震発生の可能性は高ま っている。 本計画では、地域防災計画をふまえ、南海トラフ地震を海溝型地震の想定とする。 南海トラフを震源とする地震については、国において、最新の科学的知見に基づく最 大クラスの地震・津波の検討が行われ、平成24年3月に震度分布・津波高が、8月に浸 水想定図が示された。また、平成24年8月と平成25年3月には、国による被害想定が公 表された(以下、「国想定」という)。 また、国の検討結果を踏まえ、兵庫県では、地震動による防潮堤等の沈下などを考慮 した県独自の津波浸水シミュレーションが実施され、平成25年12月、平成26年2月に 浸水想定図が公表された(以下、「県想定」という)。 防災対策で対象とする地震・津波の考え方として、あらゆる可能性を考慮した最大ク ラスの巨大な地震・津波を検討すること、また、津波対策を構築するにあたってのこれ からの想定津波の考え方として、以下に示す「レベル1」「レベル2」の2つのレベルの 津波が想定されている。 1)レベル1: 発生頻度は高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす地震・津波。 概ね100年に一度程度発生してきた地震・津波。従来、内閣府の2003年想定や兵 庫県津波被害想定調査(2000年)等で想定されてきた、M8クラス。 2)レベル2: 発生頻度は極めて低いものの、甚大な被害をもたらす最大クラスの地震・津波。 あらゆる可能性を考慮した最大クラスとして、内閣府が想定した南海トラフにおけ 10 るM9クラスの想定。1,000年に一度かそれより低い頻度。 本計画では、より被害の大きいレベル2の地震・津波が発生した場合を想定する。ま た、兵庫県が独自に実施した津波浸水シミュレーションに基づく被害が生じるものと想 定する。 (2) 災害想定(レベル2) ① 市内の震度分布 国想定によると、神戸市域では最大震度6強(垂水区、西区)、全域で5強以上の揺 れが発生する。 出典)神戸市地域防災計画(共通編)平成27年9月 図表 II-5 本市域における南海トラフ地震の想定地表震度分布図(レベル2) 11 ② 市域の津波浸水想定 県想定によると、津波の最短到達時間※は、地震発生後、最も早い垂水区で約80分、 最も遅い東灘区では約110分である。(※最短到達時間は、津波が初期水位より1m上 昇する時間) 神戸市域沿岸で発生する津波高さの最大は、最も高い中央区でT.P.+3.9m、最も低い 垂水区でT.P.+2.6mに達する。 【神戸市 【神戸市 図表 II-6 東部】 西部】 本市域における南海トラフ巨大地震に伴う津波浸水想定図(レベル2) 12 (3) 被害の想定 県想定によると、市内の各所で地震・津波に伴う被害が発生する。その概要は、以下 のとおり。 図表 II-7 地震発生時刻別被害想定 冬5時 夏12時 冬18時 建物全壊棟数(棟) 2,798 2,716 3,109 建物半壊棟数(棟) 25,026 25,040 24,980 死者数(人) 3,334 9,344 7,209 負傷者数(人) 4,711 5,902 5,782 重傷者数(人) 766 1,331 1,133 24,490 44,115 37,744 - 239,579 166,797 30,705 30,705 30,705 743,245 743,245 743,245 8,242 8,242 8,242 11,932 11,932 11,932 0 0 0 940~1,278 934~1,281 960~1,307 避難者数(当日)(人) 帰宅困難者数(当日)(人) 断水人口(人) 下水道支障人口(人)※ 停電(軒) 通信支障回線(回線) 復旧対象となる ガス供給停止(戸) 災害廃棄物棟(千トン) ※下水道支障人口は津波により、東灘処理場・西部処理場が浸水し、機能停止した場合を想定 出典)兵庫県 南海トラフ巨大地震津波被害想定 13 平成26年6月 (兵庫県) 4 その他の被害想定 (1) 地震の発生条件 本計画では、非常時優先業務の遂行に必要な職員の参集が最も困難であると予想され る勤務時間外に発生した場合を想定する。 (2) 市有施設等の被害想定 本庁舎機能の被害想定は、以下のとおりとする。 図表 II-8 項目 建物 地震被害想定(本庁舎) 被害状況 ・一部の耐震性が低い建物では、被害が発生し、全部又は一部の使用が不 可能になり、大きな被害を受けた庁舎は、利用できなくなる可能性があ る。 ・エレベーターが余震により停止し、継続的な利用に支障を来す可能性が ある。 ・屋内については、固定されていない什器が転倒する。 電力 ・発災直後に断線等による外部からの電力供給が中断した場合でも、自家 用発電機により最低限の電力は確保されている。 ・通常電力は1日後に復旧し、住民記録システム等の特に重要な本市の業 務システムは遅くとも36時間以内に復旧するものとする。 電話 ・地震発生直後、大量アクセスにより輻輳が発生し、災害時優先電話以外 はほとんど不通となる。2日目以降から、繋がりやすくなる。 上下水道 ・断水や下水道支障は1週間程度継続する。 14 III 非常時優先業務 1 大規模地震の発生に伴い対応が必要となる業務 大規模地震による被害が発生した際に、本市として対応が必要な業務は、地域防災計 画で定められた緊急業務及び継続すべき経常業務である。 図表 III-1 対応すべき主な業務(非常時優先業務) 活動 対象となる主な業務(例) 緊急業務 人命救助 ○火災、救急、救助活動 被災者緊急支援 ○避難所の開設、緊急支援活動の実施 被災者支援 ○生活基本要件を満たすための各施策の実施 緊急修繕 ○ライフライン等重要な機能の早期回復 ○二次災害防止のための各施策の実施 復旧 ○復旧工事 ○被災者生活再建支援事業 継続すべき経常業務 ○上記業務と合わせて実施する経常業務 ○災害発生時においても優先的に実施する経常業務 これらの活動に必要な業務量は時間とともに変化すると考えられるため、優先的に対 応すべき業務を決める際には、各業務を開始する時期も検討する必要がある。 各活動の業務量に関する時系列に応じた推移のイメージは、以下のとおりである。 業 務 割 合 緊急修繕・復旧 被災者支援 人命救助・被災者緊急支援 時 図表 III-2 、継続すべき経常業務 間 軸 非常時優先業務各活動の業務の割合と時間との関係イメージ 15 2 非常時優先業務の考え方 (1) 非常時優先業務設定の必要性 本計画の策定にあたり、大規模地震発生後に対応が必要となる緊急業務をふまえ、こ れらの業務量と市職員の人員数を比較する。 平常時においては業務量に応じた必要な職員数を確保しているため、この2つは均衡 している。 大規模地震が発生した場合、経常業務に加えて緊急業務が追加され、必要な業務量は 大幅に増大する。その一方、地震により被災する職員もいるため、職員数は平常時より も少なくなる。このため、業務量と職員数の均衡は大きく崩れることが想定される。 本計画では、災害発生により職員数が限られる状況下にあっても、対応が必要な業務 については、非常時優先業務としての位置付けを行い、迅速な災害対応を実施し、早期 の本市の機能回復を図る。 非常時優先業務を選定していない場合 平常時 職 員 数 経 常 業 務 非常時優先業務を選定している場合 災害時(勤務時間内) 職 員 数 割ど りこ 当に て職 る員 かを ? 優先する経常業務 経 常 業 務 職 員 数 緊 急 業 務 緊 急 業 務 (勤務時間外) 職 員 数 非常時優先業務 優先する経常業務 緊 急 業 務 職被 員災 図表 III-3 平常時及び災害時における業務量と職員数の比較 16 (2) 非常時優先業務の抽出 本計画では、市としての災害対応全般に対する影響の大きさ等を勘案し、緊急業務及 び継続すべき経常業務から、非常時優先業務を抽出する。 非常時優先業務以外の業務については、積極的に休止するか、抽出した業務の実施に 支障のない範囲で実施するものとする。 なお、この非常時優先業務の抽出は、局室区ごとに実施する。 (3) 非常時優先業務を抽出する際の基本的な考え方 ① 基本姿勢 阪神・淡路大震災等の被災の経験・教訓を踏まえ、大規模地震が発生した場合の神戸 市の対策の基本姿勢、すなわち非常時優先業務を抽出する際の基本的な考え方は、次の とおりとする。 ◎発災後3日までは人命救助に関する業務を最優先する ◎職員の安全を確保しつつ、災害対策本部機能を早期に確保する ◎災害発生後、本計画を発動した時は、あらかじめ特定した業務を優先 的に実施し、それ以外の業務は休止するか、特定した業務の実施に支 障のない範囲で実施する ② 時間区分ごとの非常時優先業務の選定基準 大規模地震が発生した場合、実施すべき緊急業務の量は多く、被災していない職員だ けでこれらの業務を遂行することは困難であることが想定される。 緊急業務については、15ページの図表 III-2で整理した時系列に応じて推移していく ことを考慮しながら、それぞれの時期に応じた業務の優先順位を決定する必要がある。 また、経常業務についても、継続すべき業務を最小限とし、可能な限り緊急業務に職 員を配置できるようにすることが必要である。 上記のとおり本市全体で職員数が不足することが想定されるため、本市各局室区で実 施する非常時優先業務の選定の際には、極力職員配置にロスが生じないよう、局室区に 関係なく市全体として統一した非常時優先業務の選定基準が必要となる。 本計画では、上記①で定めた基本姿勢に基づいて、時間区分ごとに非常時優先業務の 選定基準を以下のように定め、この選定基準に基づき、フェーズごとに実施すべき非常 時優先業務を選定する。 17 図表 III-4 優先区分(時間区分) 第1フェーズ 地震発生から 6時間後まで 第2フェーズ 6時間後から 24時間後まで 第3フェーズ 24時間後から 72時間後まで 第4フェーズ 72時間後から 1週間後まで 第5フェーズ 1週間後から 2週間後まで 2週間後から 第6フェーズ 1カ月後まで 非常時優先業務の選定基準 選定基準(対応すべき主な業務) ・市としての初動体制を確立するための業務(災害 対策本部の確立) ・人命救助や被災者の支援に係る業務(避難所等の 開設・運営) ・人命救助や被災者の支援に係る業務(継続) ・発災後24時間以内に着手しなければ、被災者及 び社会経済活動の維持に重大な影響を及ぼすた め、優先して実施する業務 ・人命救助や被災者の支援に係る業務(人命は、72 時間が経過すると生存率が急激に低下するため、 このフェーズまでの間は人命救助に資する業務を 最優先する。) ・発災後72時間以内に着手しなければ、被災者及 び社会経済活動の維持に重大な影響を及ぼすた め、優先して実施する業務 ・遅くとも7日以内に着手しなければ、被災者及び 社会経済活動の維持に重大な影響を及ぼすため、 優先して実施する業務 ・発災後、1週間を超え1か月以内に、被災者及び 社会経済活動の維持のために実施する業務(特に 優先度の高いものは、2週間までの間に開始す る。) 18 3 非常時優先業務 設定した6つのフェーズごとに非常時優先業務の基本方針と主要開始業務の考え方を整 理する。 ◎:緊急業務 ○:継続すべき経常業務 《第1フェーズ(地震発生~6時間まで)》 〈基本方針〉中心業務は「地震災害から市民、職員を守る」と「火災から市民を守る」 〈主要開始業務〉 ◎被害状況、被害全体状況を確認する ◎被害全体状況、生命確保に関する情報等を市民へ発信する ◎消火活動を実施する/人命救助活動を開始する/救護所を設置する ◎初動体制を確立する ◎避難誘導を行う/緊急避難場所及び避難所を開設する ◎要配慮者の安否確認、緊急介護を開始する ◎広域応援の要請、受入れを実施する ◎各ライフライン被害状況を把握、応急対応を開始する ◎緊急交通路の状況の把握、交通規制の実施 ◎職員の安否を確認する ○経常業務は原則全て一旦停止する 《第2フェーズ(発災後6~24時間まで)》 〈基本方針〉中心業務は「人の生命を救う」 〈主要開始業務〉 ◎飲料水・食料・生活物資を確保、供給する ◎行方不明者を把握する/棺やドライアイスを確保する ◎公共ヘリポートの被害状況の把握、及び臨時ヘリポートを設置する ◎ボランティア活動に関する支援を開始する ◎避難所等へ仮設トイレを設置する ◎ごみ処理場や終末処理場等施設被害状況を把握する ◎廃棄物処理計画の立案と仮置き場の選定を行う ◎二次災害の防止活動 ◎緊急交通路の確保作業 ○着手することで緊急的な応急対応業務に資する経常業務の実施 19 《第3フェーズ(発災後24時間から72時間まで)》 〈基本方針〉中心業務は「人の生命を救う」と「被災者の生活を支援する」 〈主要開始業務〉 ◎広域応援を受入れ、広域連携による活動を実施する ◎被災者の生活情報を収集、伝達する ◎高次医療機関への搬送を開始する/メンタルケアを実施する ◎避難所の運営/医薬品等の供給/避難者数等の実態を把握する ◎重症、要介護者を施設へ収容する ◎し尿や災害廃棄物の処理を行う ◎行方不明者の把握、捜索を行う/遺体を埋葬する ◎被害家屋調査を開始する/応急仮設住宅建設の準備を行う ◎被害状況をふまえた二次災害防止対策を実施する ◎応急教育等を開始する ○着手することで被災者生活支援に資する業務の実施(例:国民健康保険関連事務等) 《第4フェーズ(発災後72時間から1週間まで)》 〈基本方針〉中心業務は「被災者の生活を支援する」 〈主要開始業務〉 ◎市外避難者へ情報提供を行う ◎避難所での健康診断、検疫調査を実施する/避難所へ仮設風呂を設置する ◎要配慮者に対する組織的な応急福祉サービスを実施する ◎各ライフラインの復旧作業、災害廃棄物の処理を行う ◎り災証明発行の準備を開始する ○生活支援のための業務の本格化 ○他の業務の前提となる行政機能の回復に向けた準備の実施 《第5フェーズ(発災後1週間から2週間まで)》 〈基本方針〉中心業務は「被災者の生活を改善する」と「まちを復旧するための準備をする」 〈主要開始業務〉 ◎避難所の適切な管理運営を継続する(地域各団体の連携による運営) ○復旧のための準備(例:文化財の保護等) ○窓口行政機能の段階的な回復 《第6フェーズ(発災後2週間から1カ月まで)》 〈基本方針〉中心業務は「まちを復旧する」 〈主要開始業務〉 ◎応急仮設住宅の建設を開始する ○経常業務の段階的な回復 20 4 各局室区の非常時優先業務 各局室区の非常時優先業務は、別冊のとおりである。 非常時優先業務は、組織改正のほか、各局室区で必要な資源の確保等の対策の進捗状 況や、他都市での災害の教訓等をふまえながら、継続して頻繁に見直すものであるため、 別冊としてとりまとめた。 5 非常時優先業務の実施 (1) 市民への広報の実施 非常時優先業務体制への移行は、市民サービスにも制約が生じることになるため、市 長部は、速やかに市民に対して、窓口等の業務停止の範囲や業務再開目標等について広 報する。 (2) 非常時優先業務体制における必要資源の配分調整 災害発生時においては、膨大なマンパワーが必要となり、事前に非常時優先業務を選 定していても、災害の様態によっては、マンパワー不足が常態化する恐れがある。また 公用車等の資機材や燃料等の物資についても、適時適切な配分が必要になると想定され る。このため、災害応急対応を中心とした業務を継続するための適切な資源配分を実施 する。 《必要資源の配分調整の考え方》 各部内で調整 各局内(部間)で調整 局を越えた市役所全体での調整 局を越えた人員調整を行う際には、人員のアンバランスの是正、職員の健康管理、 業務の専門性といった視点に留意し、適正に実施する。 21 業務継続体制の現状と対応策 IV 1 人的資源の確保 (1) 参集可能人数の現状 参集可能人数については、阪神・淡路大震災時の参集率をもとに算出した。 図表 IV-1 フェーズ ~6時間 参集率 フェーズ別参集率 ~24時間 ~72時間 40% 70% 40% ~1週間 ~2週間 90% ~1か月 90% 90% 神戸市では、時間外に大規模地震が発生した場合、平時の所属に参集する所属動員の ほか、指定された場所に参集する指定動員、最寄りの区役所に参集する直近動員の3種 類の参集で、職員が災害対応できる体制をとっている。 この参集のもと、災害発生時から概ね6時間で全職員数21,202名のうち、8,467名 の職員の参集が見込まれ、24時間までこの参集人数とする。72時間までには14,826 名の参集となり、発災後3日間をこの人数で対応していく必要がある。1週間以降は 19,067名であり、残りの1割は被災により長期間出務できないものとする。(平成27 年5月現在推計値) 図表 IV-2 全庁参集人数 25,000 20,000 15,000 10,000 19,067 19,067 19,067 ~1週間 ~2週間 ~1か月 14,826 5,000 8,467 8,467 ~6時間 ~24時間 0 ~72時間 22 (2) 対応策 ① 平常時からの備え 1)職員の平常時からの取組 災害時における職員自身及び家族の安全確保の方策(安全な避難場所,避難ルー ト)をあらかじめ定めておく。 自宅からの参集手段、参集ルートについて確認するとともに、参集時に必要なも のを袋に入れるなどの準備を行う。 2)職員調整に関する平常時からの取組 a)各部主管課での取組 応援の要否をすみやかに判断できるよう、職員の安否確認や参集状況の確認方 法・手順を確立しておく。 b)特に職員数の不足が想定される部局での取組 他部署や他都市等からの応援職員を円滑に受け入れるための業務マニュアルを作 成しておくことが望ましい。 3)応援職員受入れの事前準備 他都市からの応援職員を円滑に受け入れるための対策として、受援計画の見直し や拡充を適宜実施しておくことが望ましい。 ② 初動体制の確立 1)勤務時間内に大規模地震が発生した場合 職員は、予め定められた場所で緊急業務を実施する。 2)勤務時間外に大規模地震が発生した場合 全市防災指令第3号の自動発令時には、防災指令の伝達を待つことなく、自らや 家族の安全を確保した後、直ちに予め指定された場所へ出動する。 ③ 職員の安否確認 安否確認は、職員及びその家族の被災状況を確認するとともに、特に初動段階で投入 できる職員の概数を把握することを目的に行う。 1)職員の安否確認手順 災害が発生した場合に、職員の安否確認を行う。 職員の居住地、被害状況等から勘案し、参集が見込まれる時間を超過した職員を 対象に安否確認を行い、各局室区の安否情報を集約・整理したものを、定期的に 行財政局厚生課へ報告する。(地域防災計画防災対応マニュアル「職員応援マニ ュアル」による) 2)職員の家族の安否確認 職員は、家族の安否確認を「災害用伝言ダイヤル(171)」や「災害用伝言板 (web171)」等で行う。 23 3)安否確認のとりまとめ 行財政部は、職員の出勤・出務状況及び被災状況の結果をとりまとめ、定期的に 災害対策本部に連絡する。 ④ 調整 1)災害対策本部体制 初動活動期には、災害対策本部は地震直後に参集できた職員によって災害対策本 部機能を維持するが、その後参集した職員の配備をもって機能の強化を図る。 2)時系列に応じて事務分掌を変更 発災後概ね72時間以内は生命の安全確保を第一に対策を講じる時期であるため に、定められている事務分掌と異なる部門に応援配置することが考えられる。 3)指揮命令系統の確立 a)指揮命令系統 迅速かつ的確に業務を遂行するために、各部の長をトップとする指揮命令系統を 確立する。 b)参集職員 地域防災計画に定める所属動員、指定動員以外の職員は、直近動員とし、交通機 関が途絶しているか否かに関わらず、住所地を勘案して事前に各局区で指定され た区役所に出動する。出勤後は、当該区の区本部長の指揮命令に従う。 4)職員の再配置 a)庁内に対する応援の要請 各局室区内の人員の不足により非常時優先業務が実施できない場合(実施できな くなる可能性のある場合を含む)には、行財政部に対し応援要請を行う。 b)具体的調整・応援内容の決定 行財政部は応援可能な人員による職員の配置案を策定し、その配置案に基づき、 応援可能な部局に対して要請する。 c)応援の実施 応援を行う部は、行財政部の要請に対して職員の応援を実施する。 d)市長部局以外からの応援 市長部局と任命権者が異なる部局間で職員の応援を行う際には、上記の手順に準 じて実施するものとする。 e)受援 局室区内での再配置だけでは職員数が不足し、対応が困難となった場合又は困難 となることが予想される場合には、受援計画に定める応援受入本部に職員応援の 要請を行う。 ⑤ 応援要請 応援受入の総合的窓口として「応援受入本部」を災害対策本部情報連絡室内(市役所 4号館2階オペレーションセンター)に設置し、そこから必要な部署に引き継ぐという 役割を担うことによって、外部からの問合せ先を明確にし、一元化する。 24 1)応援受入本部の構成 危機管理部からの応援要請に基づき、下記職員により構成する。 a) 指揮者 行財政部(課長級職員1名) b) 事務局 危機管理部(係長級職員1名・担当職員2名) 行財政部(係長級職員1名・担当職員2名) なお、各部・区本部の連絡調整責任者は各総務担当係長とする。 図表 IV-3 応援受入本部の位置づけ 25 2)応援要請・受入の種類 a)協定に基づかない場合又は複数の部及び区本部にまたがるような場合 各部・区本部において、応援が必要と判断した場合には、災害対策本部に連絡す るとともに、応援要請シートを提出する。これらの情報により行財政部は、「職 員応援マニュアル」に基づいて応援要請する。 b)災害時の対応に関する協定を締結している場合 担当する各部・区本部の当事者間で連絡調整を行い、応援要請状況を災害対策本 部に報告する。 c)全国規模のルールに基づく既定の応援制度がある場合 上記b)の中でも特に消防局や水道局のように専門性の高い業務については、その 制度に従って既に作成されている受援計画を基に対応し、応援要請状況を災害対 策本部に報告する。 d)応援を要請する前に自主的に応援に来た場合や先遣隊が情報収集に来た場合 応援受入本部で対応し、必要とされる部・区本部への派遣や情報提供等の調整を 行う。 3)その他職員確保のための措置 a)OB職員の活用 災害時には、人手が不足することから、業務に精通し、阪神・淡路大震災や東日 本大震災の経験者でもある、本市のOB職員を積極的に活用する。 b)ボランティア、NPO等との連携 災害発生後、神戸市社会福祉協議会に「神戸市災害ボランティア情報センター」 を設置し、被害状況やボランティアニーズなどに関する情報の提供を行うが、こ れらの情報の収集と提供については、災害対策本部と十分に連携して行う。 c)緊急業務の外部委託 応急対策の実施において、民間事業者のノウハウ等の活用が有効と考えられる業 務については、積極的に業務委託を行うことにより、効率的な業務遂行と限られ た人的資源の有効活用を図る。 ⑥ 人的資源の有効活用のために(健康管理、安全管理、二次災害の防止) 長期間に及ぶ緊急業務遂行時の職員の健康を維持するために、健康管理及び安全 管理の統括を行う。 1)健康管理 災害対策が長期化する大規模災害の場合、職員の健康管理に留意し、災害対策要 員のローテーションについて、行財政部が基本方針を示し、職務内容を考慮して 各部長が決める。 2)職員のメンタルヘルスケア 職員のメンタルヘルスに係る問題等の予防、早期発見、治療及びフォローアップ に係る対策を講じる。 26 2 業務執行環境の確保のために (1) 庁舎 ① 現状 昭和56年(1981年)以前のいわゆる「旧耐震基準建築物」の耐震安全性確保を推進 するため、「神戸市耐震改修促進計画」にもとづき、庁舎等の市有建築物の耐震化の促 進に取り組んでいる。 本庁舎及び区役所の耐震性能の状況は次の通りである。なお、北区総合庁舎について は、平成30年に新築移転予定となっている。 図表 IV-4 各庁舎の耐震性能の状況(本庁舎、区役所) 耐震補強 建築年度 構造 耐震基準 実施状況 等 本庁舎 地上部 階数 1号館 1989 年 SRC造 新耐震基準 - 2号館 1957 年 SRC造 旧耐震基準 補強済み 3号館 1966 年 RC造 旧耐震基準 4号館 2011 年 SRC造 新耐震基準 - 9階 EM棟 1989 年 RC造 新耐震基準 - 1階 東灘区総合庁舎 2000 年 RC造 新耐震基準 - 6階 灘区総合庁舎 2006 年 SRC造 新耐震基準 - 7階 中央区総合庁舎 1980 年 SRC造 旧耐震基準 兵庫区総合庁舎 1974 年 RC造 旧耐震基準 北区総合庁舎 1973 年 RC造 旧耐震基準 長田区総合庁舎 1993 年 SRC造 新耐震基準 - 7階 須磨区総合庁舎 2012 年 S造 新耐震基準 - 5階 垂水区役所 1991 年 RC造 新耐震基準 - 3階 西区総合庁舎 1982 年 RC造 新耐震基準 - 4階 耐震性有 ※ 耐震性有 ※ 補強済み 新築移転 予定 30 階 5階 9階 9階 4階 5階 ※耐震診断の結果、耐震改修の必要がない庁舎である (平成28年3月現在) ② 対策 1)代替施設の確保 各庁舎が使用できなくなった場合の代替施設としては、下表を想定している。ただ し、施設として確保されていても、利用可能なスペースについては課題がある。 本庁舎(1~4号館、EM(Electric Machine)棟(電気機械室棟))については、 まず各施設が被災等で使用できなくなった場合は本庁舎の他の棟を代替施設として 活用することとする。本庁舎全てが被災等で使用できなくなった場合は、市有施設の 27 みでは多数の職員の活動場所を確保することが困難な状況である。 区災害対策本部が設置される各区役所の施設の代替施設としては、多くが区民セン ターや区民ホール、勤労市民センターが候補となっている。 実災害時には、これらを参考にしながら施設の被災状況等を勘案し、代替施設を選 定したうえで、各局室区と各施設の所管課で利用に関する調整を実施する必要があ る。また、今後は市有施設以外の公共施設、更には民間施設の利用も含めて代替施設 を検討する必要がある。 図表 IV-5 対象施設 本庁舎 代替施設の候補(市有施設のみを選定) 代替施設の候補 本庁舎の別の棟 又は葺合文化センター、神戸市男女共同参 画センター、生田文化会館 東灘区総合庁舎 灘区総合庁舎 東灘区民センター 灘区民ホール 又は六甲道勤労市民センター 中央区総合庁舎 本庁舎 又は生田文化会館 兵庫区総合庁舎 神戸アートビレッジセンター 又は神戸市総合教育センター 北区総合庁舎 北区民センター 又は北区民ホール 長田区総合庁舎 ピフレホール 須磨区総合庁舎 須磨区民センター 垂水区役所 西区総合庁舎 垂水勤労市民センター 西区民センター 2)代替施設における活動方法の検討 代替施設として検討している施設においては、現時点では全職員が移転するほどの スペースがない施設も含まれている。そのような状況下にあっても、優先度の高い非 常時優先業務を実施できるよう、必要な資源(資器材、通信機器、電力等)の確保に ついて事前準備を進めておく必要がある。 3)耐震安全性の確保 「神戸市耐震改修促進計画(計画期間:平成19年度~27年度)」において、市有 建築物については、主要な「防災の中枢拠点」や「避難所」のほか、「多数の者が利 用する建築物」を対象に、対象となる建築物(1,179棟)について平成27年度まで に耐震化率100%とすることをめざして取り組んできた。平成28年3月末時点で は、対象となる建築物の耐震化率98%を達成しており、残りの2%にあたる建築物に ついても、改築や耐震改修等が予定されおり、早期の完了をめざす。 28 (2) 通信手段 ① 現状 災害発生時の円滑な情報連絡のため、各拠点施設に災害時優先電話等を設置してい る。 また、本市における庁内ネットワーク環境は、主に住民情報など個人情報やセンシテ ィブ情報を取り扱うシステム群を配置した「基幹系ネットワーク」と、電子自治体のバ ックオフィス基盤としての役割を担うシステム群を配置した「情報系ネットワーク」の 2つのネットワークで構成されている。基幹系ネットワークでは、区役所等の主要拠点 においてバックアップを構成している。また、災害発生時にシステムに障害が生じた場 合には、内部のマニュアルに基づき優先順位を定めて復旧を行うこととしている。 ② 対策 災害発生時における通信手段が少ないと思われる施設について、災害時優先電話等の 設置を検討するとともに、特に外部機関との情報連絡が重要な拠点施設については、災 害時優先電話回線の増強や他の通信手段の導入を検討する。また、被災状況によっては 断線等によりインターネットが利用できなくなる可能性があるため、情報系ネットワー クの複数回線化等の対策による通信環境の確保を検討する必要がある。 (3) 重要道路 ① 現状 関係機関、協定業者及び他の道路管理者との協力・連携を図りながら、消火・救急・ 輸送等の災害救助活動を最優先に、道路の点検、規制、啓開活動を行うこととし、必要 な路線を緊急輸送道路ネットワークとして指定している。 ② 対策 平時から災害発生時における道路規制や啓開活動について、関係機関との連携強化を 図る。 (4) 搬送 ① 現状 緊急輸送拠点の運営業務(支援物資等の集積・管理・仕分け・配送)は、被災者の生 活支援の根幹となる業務であるが、迅速に被災者のもとへ物資を配送するのは行政のみ の力では容易ではない。 ② 対策 緊急輸送拠点運営の各業務について、民間運送事業者等との協定締結や官民連携によ る具体的な運営方法等の協力体制の確立を推進する。 29 (5) 資機材・用品等の確保 ① 現状 全庁的に、通常の業務に応じた消耗品等(コピー用紙やトナー等の事務用品及び簡易 修繕等に備えた資機材)が確保されている状況である。 ② 対策 非常時優先業務の実施には、消耗品等の確保が必要になるが、災害発生時は消耗品の 補充が困難な場合もあるため、常に一定の在庫を確保していく必要がある。また、緊急 業務の遂行のための資器材(ヘルメットや手袋など)についても、定期的にメンテナン スを実施し、使用に支障のないように準備しておくことが必要である。 (6) 非常用電力 ① 現状 神戸市の災害対策の中枢拠点となる本庁舎では、危機管理室のある4号館で66時間、 EM棟で8時間と、停電が発生した場合でも3日程度の発電に必要な機器と燃料が確保 されている。 各区の対策拠点である区災害対策本部が設置される各区総合庁舎では、一部の区の総 合庁舎以外では72時間の発電が可能である。 その他の市有施設で非常用電源を設置しているところもあるが、その多くは1日未満 である。 図表 IV-6 庁舎 ② 非常用電源の状況(本庁舎) 設置 継続利用 階数 可能時間 燃料 1号館 - 2号館 - 3号館 - 4号館 9階 66 時間 重油 EM棟 B1階 8時間 重油 備考 各非常用電源の供 給先は次の通り EM 棟:本庁舎全体 4 号館:4 号館のみ 対策 1)電力供給の優先順位を事前に明確化 非常用電源が稼働した場合は、通常よりも電力の供給に制限がかかるため、被災情 報の収集・集約等の業務に必要となるサーバーやOA機器、災害対応に必要な部屋に 電力が供給されるよう事前に優先順位を明確にしておく。 2)燃料の確保 非常用電源の定期的な試運転の実施と燃料の備蓄方法を検討する。また、非常用電 力の確保ができていない市有施設について、その対策を検討する。 30 (7) 執務環境 ① 現状 本市では、各局において書棚、ロッカー等の固定を取り組むこととしており、災害発 生後も速やかに非常時優先業務に従事可能な執務環境の確保に取り組んでいる。 災害発生時において庁舎等が被災し施設が使用できない場合の代替施設や代替スペ ースについても検討を進めているが、平時と同規模の執務面積を確保することは困難で ある。 ② 対策 書棚、ロッカー、コピー機・機械類等の固定について、対応できていない所属は早急 に実施を検討する。 また、災害発生時における代替施設や代替スペースの面積は、現時点では不足してお り、周辺の本市施設や県、国等の公共施設、さらには民間施設の利用の可能性について 検討する。 (8) 食料・飲料水等の備蓄 ① 現状 災害発生時における、各業務に従事する市職員の食料、飲料水及び仮設トイレ等の備 蓄については十分とはいえない。 ② 対策 災害発生時において各業務に従事する市職員の食料・飲料水等や、断水や下水道支障 が生じた場合に備えた仮設トイレ等の備蓄について対策を検討し、全庁的な対応として 職員用の備蓄を推進するとともに、職員個人の備蓄(時間外に発生した場合に自宅から 持参できる備蓄等)についても普及啓発を実施する。 31 V 業務継続計画の定着に向けて 1 業務継続計画の継続的な改善 本計画は、一定の前提を踏まえて検討・策定したものである。今後、前提条件の変 化にも対応しつつ、訓練や実際の災害対応の経験等を通して、計画の点検・是正を行 う業務継続マネジメント(BCM)を推進し、計画の実効性を高めていく。 本市では、地震対策の迅速かつ的確な推進を図るため、危機管理室を中心に全庁的 な取り組みとして、PDCAサイクルに基づく継続的改善を推進することにより、業 務継続力の向上を図ることとする。 Plan(計画) Do(実行) 計画の策定 訓練等の実施 計画の 実効性を高め る Act(改善) Check(評価) 計画の改定・見直し 点検・検証 出典)「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」平成28年2月 図表 V-1 内閣府(防災担当) 業務継続計画における継続的な改善のイメージ 業務継続計画におけるPDCAのポイントは次のとおりである。 図表 V-2 業務継続計画におけるPDCAの内容 BCPの策定のみならず、計画の進行管理、庁内への定着・ PDCA導入の目的 習熟や継続的な改善が目的 BCPの基本方針の決定、非常時優先業務の選定、個別対策 Plan(計画) の立案、BCPの策定、BCM体制の構築 等 BCPで定められている対策事項(事前準備)の実施、BC Do(実行) Pの実行力を高めるための教育・訓練 等 訓練等をふまえた改善点の抽出、定期的継続的な進行管理、 関連計画・上位計画の改訂との整合性点検、施設・設備更新 Check(評価) との整合性点検 CHECKの結果をふまえ、計画内容の改訂、必要に応じて 基本方針の見直し、非常時優先業務の実施方策手順の見直し Act(改善) 等 32 2 教育・訓練等 PDCAサイクルのDOのステップでは、災害発生時に備えたハード面の事前対策 を推進するとともに、市職員に対する教育・研修を実施していくことが重要である。 業務継続計画の実効性を確保し高めていくためには、教育や訓練を繰り返して実施し ていくことが重要であり、例えば図表V-3に示すような内容について、計画的に実施 することが求められる。 本市では、既に阪神・淡路大震災の経験・教訓を継承するための職員研修を計画的 に実施している。これらの研修プログラムをふまえ、今後業務継続計画の実効性を高 めるために必要な研修や訓練を検討し、新たに追加・実施していくことが必要である。 訓練形式 【実動訓練】 職員の安否確認訓練及 び参集訓練 避難訓練 消防訓練 災害対策本部の設置・運 営等訓練 代替庁舎への移転訓練 非常用発電機の稼働訓 練、通信・情報システム のバックアップ切替訓 練 庁舎の安全確認訓練 【図上訓練】 広報の訓練(広報内容、 表現、発表の仕方等) 非常時優先業務等の実 施訓練 防災関係機関との連絡 訓練 図表 V-3 業務継続に関する訓練の例 業務継続に資する観点 ・安否確認や参集に係る課題を把握するため、開催する曜日や 時間帯を様々な条件で実施する。 ・緊急連絡(安否確認)で災害伝言ダイヤル171やweb171 を利用する(毎月1日、15日や防災週間等に体験が可能)。 ・徒歩等による参集訓練 ・徒歩帰宅訓練 ・地震・津波を想定し、施設外等への職員の避難や来客等の避 難誘導を実施する。 ・火災の発生を想定し、初期消火活動や119番通報を実施する。 (特に、消火器の操作、放水等は実体験が大切。) ・本来の要員が一定割合しか参集できない状況を想定し、限ら れた要員のみで本部設置・運営を行う。 ・第一順位に指定された指揮命令権者が参集できない状況を想 定し、代行者が指揮を執る。 ・代替庁舎において対策本部を設置する。 ・非常時に予想される手段で代替庁舎へ移転する。 ・代替庁舎の稼働開始に関わる手順を確認する。 ・代行者が対応する。 ・単純な稼働訓練に止まらず、外部関係者(設備メーカー、シ ステムベンダ等)と実際に連絡が必要となる状況を取り入れ る。 ・専門知識を有する職員が不在の状況を想定する。 ・代行者が広報対応を行う。 ・代替拠点での広報対応を想定する。 ・参集評価に基づく参集状況を想定した要員で対応する。 ・防災関係機関の被災や連絡の途絶を想定する。 ・本来の要員が一定割合しか参集できない状況を想定し、限ら れた要員のみで対応する。 ・拠点や設備等に関して、代替手段を利用する。 ・目標時間に対応できるか等を検証 ・通常利用しない手段(災害時優先電話や衛星携帯電話等)を 利用して連絡する。 ・防災関係機関の代替拠点に連絡する。 ・共通した被害想定、タイムラインを基に行う。 出典)「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」平成28年2月 33 内閣府(防災担当) 3 関係機関・協力事業者へのBCPの普及 大規模災害時に本市の業務を円滑に実施するためには、本市だけではなく関係機関、 民間事業者もBCPを策定していることが望ましく、関係機関へのBCPの普及の促進・ 啓発を行う必要がある。 34
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