私の見た日本賈暁鵬

COLUMN
● シリーズ 私 の 見 た 日本 Vol.159
京都のまちなみと日本の住宅について
賈暁鵬
私 の 日本に対 する印象 はすべて 京都 からは
じまります。
だけでなく、観光客 へ の 案内板 や 注意警告
都 の 姿 でいられます。日本 のこのような 伝統
板 なども 木材を使用して 古 い 様式 で 作られて
への 重視 は 非常に感心 するところです。
日本語学校 に 入学 するため、最初 に 訪 れ
おり、 まるで 伝統建物と一体化したように 見
日本 に 5 年間住 んでみて 、感じたことがた
た 日本 の 町 は 京都 でした 。 昔 からの 伝統的
えました 。 これは 中国 の 観光地 でよく見る違
くさん あります。 その 中 で 最 も 感心したこと
な 町に憧 れていた 私 は 、 バスから降りて 川 や
和感 を 強く感じる金属製 の 看板とは 全く違 い
は 、日本 は 空間利用 がとても 優 れているとい
邸宅 などが 目に入ってきたとき、漫画作品 の
ます。中国 もこの 点 を 見習 えば 、 もっと伝統
うことです。 賃貸住宅 の 平均的 な 専有面積
中 の 景色 がそのまま目 の 前に現 れたような 感
的 な 雰囲気を保 つことができるのではないか
を 見ると、日本 は 中国と比 べて 狭 いという印
覚になり感動したことを覚 えています。
と思 いました 。
象を受 けます。例 えば 、一人暮らしする部屋
京都 には 2 年間滞在しました 。 当時 は 、休
看板といえば 、京都 で 非常にありがたい 制
日 に 自転車 でゆっくり京都 を 回 るのが 1 つ の
度 が あります。 そ れは お 店 の 看板 の 様式 や
中国 では 40 ㎡前後 で 、20 ㎡以下 の 物件 は 極
楽しみでした 。京都 は 寺 や 神社 などの 歴史的・
色 などを古都 の 雰囲気に合 わせるように制限
めて 少 ないです。 中国 の 2LDK は 平均 で 80
伝統的 な 建物 が 非常 に 多く、普通 に 歩 い て
する 屋外広告物条例 です。 セブンイレブン、
㎡前後 ありますが 、日本 ではな んと 50 ㎡ に
いるだけでいつの 間にか 寺 が 見 つかるくらい
ローソン、 マクドナ ルドなどの チェーン 店 も
収まります。日本 の 賃貸住宅 は 中国と比 べて
に多 いです 。
で 比 べ ると 日本 で は 大 体 20 ㎡前後 で す が 、
看板 を 落 ち 着 い た 色 に 抑 えて 、様式 も 伝統
面積 は 半分くらい ですが 、 キッチン、浴室、
京都 を 回るうちに感じたのは 、日本 の 伝統
的 な 感じにデザインされています。京都 では
ベランダ 、洗濯機置き場 などすべて 揃ってい
建物 は 非常 によく保存 されているということ
高 い 建物 もほとんど 見 かけませ ん 。 唯一 の
て 、住宅としての 機能 をきちんと果 たしてい
です。 どの 寺や 神社に行っても 、清潔 できれ
現代的建造物 で ある 京都駅 も 、建設当時 に
ます。 面積的 に 見 るとスペースが 足りなくて
いに 掃除 されており、神 の 領域 の 神々しさ、
は 反対 の 声 が 多 かったと聞 きます。 こういっ
狭 い 家 を 想像しますが 、実際 は 動線 が 簡潔
崇高 さが 強く感じられます。 そして 伝統建物
た 様々 な 努力 があってこそ 、京都 は 今 でも 古
で 工夫 された 間取りで 、 そして 日本 で 流行っ
46
COLUMN
ている収納術 で 空間 を 効率よく利用し、温 も
い つ も 見 て 関心 するも の が あります。 そ れ
このような 遮音性 でしたら、軽量鉄骨 や 木造
りの ある 家庭 の 雰囲気 と 空間利用 の 知恵 を
は 、 1 軒 1 軒 の 家 の 玄関前 に 飾っている 観葉
などはなおさらではないかと思 います。
感じます。
植物 と盆栽 です。 日本 の 伝統的 な 一戸建 て
住宅 だけではなく、公共施設 でもこの 点 が
インターネットで 検索してみると、騒音 に
で 、 何 十 年 も 経 つ 古 い 家 が ほとん どで す。
悩 む 人 が 多くいることが 分 かります。 中国 の
よく見られます。建築面積 が 小 さいにも 関 わ
長年 の 浸食を受 けて 、 かなり老朽化した 家 が
住宅 では 、大きな 声 で 話さない 限り隣に聞こ
らず 、豊 かでかつ 機能 をきちんと果 たした 空
少 なくありません 。しかし、 その 古 い 住宅 の
えることはまずありません 。蛇口を回 す音や 、
間を創り出します。
集 まった 町 を 歩くときに 感じたのは 、 ぼろぼ
コンセントを 抜 き 差しする 音 などももちろん
ろで 殺風景 の 町 ではなく、家 への 愛 が 溢 れる
ありませ ん 。 そ れはレンガ 造りだからかもし
例として 挙 げたいのは 、今住 んでいる地域
にある 眼科 です。 延床面積 は 30 ㎡ ほどしか
温 かくて 活気 のある町 なのです。
れないと思 います。しかし、近年鉄筋コンク
ない 小 さな 眼科 ですが 、入り口 でスリッパに
しかし、日本建築 で 比較的 に 弱 いところも
リート造 の 住宅 も 増 えてきていますが 、騒音
履 き 替 える 場所、待合室、受診 する 場所 と
感じています。 1 つは 遮音性 が 悪 いところで
はそれほど問題になっていません 。日本建築
薬をもらう場所 など、これらがすべて 30 ㎡ も
す。今まで 何回 も 引っ越ししてみて 、騒音 が
は 耐震性能 が 非常 に 高 い ので 、遮音性 を 上
ない 部屋に収まっています。小 さいにも 関 わ
気 になるので 借りた 部屋 はほとんど鉄筋コン
げる技術 ももちろん 持っていると思うのでと
らず 、機能 ごとにスペ ー スを 分 けたことで 、
クリート造 を 選 びましたが 、どの 部屋 も 隣 の
ても 不思議 です。 でも 、遮音性 が 低 いため 、
受診 がとてもスムーズにできたのがとても 不
音 が 気になります。最初 の 家 は 、隣 からコン
日本人 は 常に隣 の 迷惑にならないように気 を
思議 で 、関心しました 。
セントを 抜 き 差しする 音 までしてきて 、非常
つけながら生活 する性格となったと推測 でき
もう1 つ 感じたのは 、建物 に 対 する日本人
に 驚 きました 。 そしてもしかしたら自分 の 生
ると考 えられます。
の 愛着というものです。学校 の 近くの 住宅地
活音 も 隣 に 聞こえているかもしれないという
に 住 んでいる私 は 、学校 までの 道 を 歩 いて 、
不安 に 陥ります。 鉄筋 コンクリート 造 でさえ
47