低温技術夏合宿 77K 小型冷凍機を作ろう

冷凍部会だより(案)
低温技術夏合宿
77K 小型冷凍機を作ろう
冷凍部会の夏合宿は、今年で 5 年目を迎えましたが、「77K 冷凍機を作ろう」を実施しました。この
事業は 2013 年度から特定事業「低温技術講習会」の一環として低温工学・超電導学会の公式な事業と
して実施しています。低温に関わる人のみならず、超電導機器を開発している人も、冷凍機の動作原理
を実際に冷凍機を作りながら理解することは、今後の展開に対して貴重な経験となるはずです。
今年で 5 年目となるため必要な機材は概ね揃っていましたが、昨年度故障したロータリーバルブの修
理を明星大学の星野先生のご協力を得て行ったり、冷凍機のリーク修理の事前準備を行いました(実際
にはロータリバルブの入出力端子のハーメに大漏れがあり、合宿中に修理)
。今年の合宿会場も4年連続
で物質・材料研究機構に提供していただきました。清水禎強磁場ステーション長、染谷昭子氏、野口隆志氏に、本事
業へのご理解・ご支援いただいたことをこの場をお借りして、御礼申し上げます。
今年の生徒さんたちは、一般の公募による 4 名(学生 2 名、大学教員 1 名、企業 1 名)と KEK の木
村さんからの依頼で、JST の日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)から
10 名(タイの大学生 5 名、秋田高専 4 名、東大大学院 1 名)を受入れ、都合 14 名という大所帯だった
ため、実験室のレイアウトから始まり、受入れ体制の整備にも労力を費やしました。また、今年から講師を
お願いした佐藤明男氏による計測に関する講義を含め、講義はすべて英語で行いましたので、講師の方には負担をお
掛けしました。実験も全体を 3 班に分けて、都合3セットの実験(電磁弁 1 セットとロータリーバルブ 2
セット)を行いましたが、ロータリーバルブの実験装置は1つしかないため、例年とは異なり、空き時
間には上田運営委員からお借りした熱音響の実験装置を弄ったり、松原先生作成のシミュレーションプ
ログラムの実習等を行いました。
冷凍機は、今年も G-M 冷凍機に比べて各段に簡単な構造を持つパルス管冷凍機を作りました。目標最
低到達温度は 77K で、今年の主な実習は昨年に引き続き、冷凍機の心臓部である蓄冷器の自作でした。
蓄冷材の構成も含めて実際に作製を体験するため、300 メッシュのステンレス網のみを詰め直した。製
作後、2 個の電磁弁によるダブルインレット法、4 個の電磁弁による 4 バルブ法およびロータリーバル
ブによるダブルインレット法のそれぞれについて、ニードル弁の開度により圧力波形や位相がどのよう
に変化し、到達温度や冷凍能力にどのように影響するかを体験することにより、パルス管冷凍機の理論
的な理解を深めました。今年は生徒さんたちが優秀だったか、はたまた許運営委員が作製された SUS
メッシュを蓄冷器に押し込む治具のお陰かわかりませんが、今回得られた最低到達温度としては電磁弁
で 63K、ロータリーバルブで 52K とこれまでの到達温度を大幅に更新することができました。空冷圧縮
機の排熱による高温室内の中、極低温を実感できた合宿でなかったかと思います。
詳しくは、金沢での秋季低温工学・超電導学会で講演がありますので、そちらをご覧ください。
(冷凍部会夏合宿担当 淵野修一郎)
図1.実験装置の説明風景
図2.集合写真