(3)算数、数学 ①現行学習指導要領の成果と課題を踏まえた算数科、数学科の目標の在り方 ⅰ)現行学習指導要領の成果と課題 ○ 現行の学習指導要領により、平成24年(2012年)のPISA調査における数学 的リテラシーは、読解力、科学的リテラシーとともに、平均得点が比較可能な調査回以 降、最も高くなっているなどの成果が見られるが、学力の上位層の割合はトップレベル の国・地域よりも低い結果となっている。また、平成23年(2011年)に実施され た国際教育到達度評価学会(IEA)の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の 質問紙調査結果では、国際平均に比べて、日本の中学生は数学を学ぶ楽しさや、実社会 との関連に対して肯定的な回答をする割合が低いなど学習意欲面で課題がある。さらに、 小学校と中学校の間で算数・数学の勉強に対する意識に差があり、小学校から中学校に 移行すると、数学の学習に対し肯定的な回答をする生徒の割合が低下する傾向にある。 ○ さらに、全国学力・学習状況調査等の結果からは、小学校では、 「基準量、比較量、割 合の関係を正しく捉えること」や「事柄が成り立つことを図形の性質に関連付けること」、 中学校では、「数学的な表現を用いた理由の説明」に課題が見られた。また、高等学校 では、「数学の学習に対する意欲が高くないこと」や「事象を式で数学的に表現したり 論理的に説明したりすること」が課題として指摘されている。 ○ 今回の学習指導要領の改訂においては、これらの課題に適切に対応できるよう改善を 図っていくことが必要である。 ⅱ)課題を踏まえた算数科、数学科の目標の在り方 ○ 今回の学習指導要領の改訂に際しては、幼児期に育まれた数量・図形への関心・感覚 等の基礎の上に、小・中・高等学校教育を通じて育成を目指す資質・能力を、「知識・ 技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱に沿っ て明確化し、各学校段階を通じて、実社会との関わりを意識した数学的活動の充実等を 図っていくことが求められる。(別添4‐1を参照) ○ そのため、算数科・数学科において育成を目指す資質・能力について、学校段階ごと に別添4‐2のとおり整理した。学校段階ごとの算数科・数学科の教科目標についても、 このような資質・能力の整理に基づき示すことが求められる。 ⅲ)算数科・数学科における「見方・考え方」 ○ 算数科・数学科の学習においては、 「数学的な見方・考え方」を働かせながら、知識・ 技能を習得したり、習得した知識・技能を活用して探究したりすることにより、生きて 働く知識となり、技能の習熟・熟達にもつながるとともに、より広い領域や複雑な事象 を基に思考・判断・表現できる力が育成される。このような学習を通じて、「数学的な 見方・考え方」が更に成長していくと考えられる。 156 ○ また、算数科・数学科において育成を目指す「学びに向かう力・人間性等」について も、「数学的な見方・考え方」を通して社会や世界にどのようにかかわっていくかが大 きく作用しており、「数学的な見方・考え方」は資質・能力の三つの柱である「知識・ 技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力・人間性等」の全てに働くもの であり、かつ全てを通して育成されるものとして捉えられる。 ○ 「数学的な見方・考え方」のうち、 「数学的な見方」については、事象を数量や図形及 びそれらの関係についての概念等に着目してその特徴や本質を捉えることであると整 理することができる。 ○ また、「数学的な見方・考え方」のうち、「数学的な考え方」については、目的に応じ て数・式、図、表、グラフ等を活用し、論理的に考え、問題解決の過程を振り返るなど して既習の知識・技能等を関連付けながら統合的・発展的に考えることであると整理す ることができる。 ○ これらを踏まえると、算数科・数学科において育成される「数学的な見方・考え方」 については、「事象を数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、統合 的・発展的に考えること」として再整理することが適当である。 ②具体的な改善事項 ⅰ)教育課程の示し方の改善 ア 資質・能力を育成する学びの過程についての考え方 ○ 資質・能力を育成していくためには、学習過程の果たす役割が極めて重要である。算 数科・数学科においては、 「事象を数理的に捉え、数学の問題を見いだし、問題を自立的、 協働的に解決し、解決過程を振り返って概念を形成したり体系化したりする過程」とい った数学的に問題解決する過程が重要である。 ○ この数学的に問題解決する過程は、別添4‐3に示したとおり、日常生活や社会の事 象を数理的に捉え、数学的に表現・処理し、問題を解決し、解決過程を振り返り得られ た結果の意味を考察する、という問題解決の過程と、数学の事象について統合的・発展 的に捉えて新たな問題を設定し、数学的に処理し、問題を解決し、解決過程を振り返っ て概念を形成したり体系化したりする、という問題解決の過程の二つのサイクルが相互 にかかわり合って展開する。その際、これらの各場面で言語活動を充実し、それぞれの 過程を振り返り、評価・改善することができるようにする。また、これらの過程につい ては、自立的に、時に協働的に行い、それぞれに主体的に取り組めるようにすることが 大切である。このことにより、資質・能力が育成されるよう指導の改善を図ることが重 要である。 ○ より具体的には、これらの問題解決の過程において、よりよい解法に洗練させていく ための意見の交流や議論など対話的な学びを適宜取り入れていくことが必要であるが、 157 その際にはあらかじめ自己の考えを持ち、それを意識した上で、主体的に取り組むよう にし、深い学びを実現することが求められる。 イ 指導内容の示し方の改善 ○ 「内容」に関しては、育成を目指す「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」が より明確となり、それらを育成するための学習過程の改善が図られるよう、どのような 「数学的な見方・考え方」を働かせて数学的活動を行い、どのような「知識・技能」及 び「思考力・判断力・表現力等」を身に付けることを目指すのかを示していくことが必 要である。その上で、「内容」の系統性、「内容」と育成される資質・能力とのつながり 及びこれまでに明らかになっている課題などを意識した「内容」の構成、配列にするこ とが求められる。 ⅱ)教育内容の改善・充実 ア 科目構成の見直し ○ 高等学校の「数学活用」については、開設されている学校が少ないことや、スーパー サイエンスハイスクールなどの取組で成果をあげている課題研究と同様の趣旨の「理数 探究(仮称)」及び「理数探究基礎(仮称)」が新設されることに伴い廃止する。ただし、 「数学活用」は事象を数理的に考察する能力や数学を積極的に活用する態度などを育て る内容で構成されており、これらは今回の改訂でも重視すべきことであることから、新 たに「数学C(仮称)」を設けて高等学校数学科を「数学Ⅰ」、 「数学Ⅱ」、 「数学Ⅲ」、 「数 学A」、「数学B」、「数学C(仮称)」に再編するとともに、「数学活用」の内容をその趣 旨などに応じてそれぞれ「数学A」、 「数学B」、 「数学C(仮称)」に移行することが適当 である。なお、高等学校数学科の必履修科目は「数学Ⅰ」とする。(別添4-4を参照) ○ 「数学C(仮称)」は、高等学校の多様な履修形態に対応し、活用面において基礎的 な役割を果たす「データの活用(仮称)」その他の内容で構成することが適当と考えら れる。 ○ なお、高等学校の統計的な内容については、特に情報科などとの連携を重視すること が求められる。 イ 教育内容の見直し ○ 算数・数学を学ぶことは、問題解決の喜びを感得し、人生をより豊かに生きることに 寄与するものと考えられる。また、これからの社会を思慮深く生きる人間を育成するこ とにも大きく貢献すると考えられる。このため、数学と人間との関わりや数学の社会的 有用性についての認識が高まるよう、十分に配慮した内容としていくことが求められる。 ○ これからの時代を生き抜くため、米国等ではSTEM( Science、Technology、 Engineering and Mathematics)教育の推進が図られており、その基盤に数学が位置付け られている。数学には、諸事象に潜む数理を見いだし、それを的確に表現することへの 158 大きな期待が寄せられている。また、PISA調査の読解力の定義が、読むテキストの 形式として物語、論説などの「連続テキスト」と、表、図、ダイヤグラムなどの「非連続テ キスト」があり、両者を含めて読む対象とするとして、より広い言語観に立って規定され ているなど、言語としての数学の特質が一層重視されてきており、このことに配慮する 必要がある。 ○ また、社会生活などの様々な場面において、必要なデータを収集して分析し、その傾 向を踏まえて課題を解決したり意思決定をしたりすることが求められており、そのよう な能力を育成するため、高等学校情報科等との関連も図りつつ、小・中・高等学校教育 を通じて統計的な内容等の改善について検討していくことが必要である。 ○ さらに、プログラミング教育については、他教科においても学習機会の充実に向けた 検討がなされているところであるが、小学校の算数科においても、時代を超えて普遍的 に求められる力であるプログラミング的思考を身に付けることが重要であると考えられ る。そのため、プログラミング的思考と、算数科で身に付ける論理的な思考とを関連付 けるなどの活動を取り入れることも有効である。 ⅲ)学習・指導の改善充実や教育環境の充実等 ア 「主体的・対話的で深い学び」の実現 ○ 算数科・数学科では、児童生徒自らが、問題の解決に向けて見通しをもち、粘り強く 取り組み、問題解決の過程を振り返り、よりよく解決したり、新たな問いを見いだした りするなどの「主体的な学び」を実現することが求められる。 ○ また、算数科・数学科では、事象を数学的な表現を用いて論理的に説明したり、より よい考えや事柄の本質について話し合い、よりよい考えに高めたり事柄の本質を明らか にしたりするなどの「対話的な学び」を実現することが求められる。 ○ さらに、算数科・数学科では、数学に関わる事象や、日常生活や社会に関わる事象に ついて、「数学的な見方・考え方」を働かせ、数学的活動を通して、新しい概念を形成 したり、よりよい方法を見いだしたりするなど、新たな知識・技能を身に付けてそれら を統合し、思考、態度が変容する「深い学び」を実現することが求められる。 ○ このような活動については、現行の学習指導要領においても意図されており、既に各 学校でも取り組まれていると考えられる。今後は、このような活動を通して児童生徒の 「主体的な学び」 「対話的な学び」 「深い学び」が実現できているかどうかについて確認 しつつ一層の充実を求めて進めることが重要であり、育成を目指す資質・能力及びその 評価の観点との関係も十分に踏まえた上で指導計画等を作成することが必要である。 ○ また、 「主体的・対話的で深い学び」の過程で、ICTを活用することも効果的である。 例えば、一つの問題について複数の児童の解答を大型画面で映しどのような表現がよい かを考えたり、1時間の授業の終わりにその授業を振り返って大切だと思ったことや疑 159 問に感じたことなどをタブレット型のコンピュータに整理して記録し、一定の内容のま とまりごとに更に振り返ってどのような学習が必要かを考えたり、算数・数学の学びを 振り返り「数学的な見方・考え方」の成長を実感したりすることの指導を充実すること もできる。 イ 教材や教育環境の充実 ○ 前述のようにICTは積極的な活用が求められる一方で、ICTを活用して得られた 結果から新たな疑問や問いを発して考えを深めたり、ICTを効果的に活用して対話や 議論を進めたりすることができなければ、算数・数学の面白さなどを味わうことも、 「数 学的な見方・考え方」を成長させることも難しい。ICTの活用に当たってはこの点に 留意することが重要である。 ○ 算数科・数学科の内容は、児童生徒にとって時に抽象的で分かりにくいということも ある。例えば、式を用いて表すことはできても、表現した式を基に考えを進めることが 苦手な発達の段階や児童の存在が指摘されている。その際、おはじきや計算ブロックな どの具体物を用いた活動を行うなど、児童生徒の発達の段階や個に応じた教材、教具の 工夫も必要であることに留意することが重要である。 160 別添4-1 算数・数学科において育成を目指す資質・能力の整理 知識・技能 数学 高等学校 161 数学 中学校 算数 小学校 思考力・判断力・表現力等 学びに向かう力・人間性等 資質・能力の育成のために 重視すべき学習過程の例* 数学における基本的な概 念や原理・法則の体系的 理解 事象を数学化したり、数 学的に解釈したり、表 現・処理したりする技能 数学的な問題解決に必要 な知識 事象を数学的に考察する力 既習の内容を基にして問題を解決し、 思考の過程を振り返ってその本質や 他の事象との関係を認識し、統合 的・発展的に考察する力 数学的な表現を用いて事象を簡潔・ 明瞭・的確に表現する力 数学的に考えることのよさ、数学の用語や記号のよ さ、数学的な処理のよさ、数学の実用性などを認識 し、事象の考察や問題の解決に数学を積極的に活用 して、数学的論拠に基づいて判断する態度 問題解決などにおいて、粘り強く、柔軟に考え、そ の過程を振り返り、考察を深めたり評価・改善した りする態度 多様な考えを生かし、よりよく問題解決する態度 数量や図形などに関する 基礎的な概念や原理・法 則の理解 事象を数学化したり、数 学的に解釈したり、表 現・処理したりする技能 数学的な問題解決に必要 な知識 日常の事象を数理的に捉え、数学を 活用して論理的に考察する力 既習の内容を基にして、数量や図形 などの性質を見いだし、統合的・発 展的に考察する力 数学的な表現を用いて事象を簡潔・ 明瞭・的確に表現する力 数学的に考えることのよさ、数学的な処理のよさ、 数学の実用性などを実感し、様々な事象の考察や問 題解決に数学を活用する態度 問題解決などにおいて、粘り強く考え、その過程を 振り返り、考察を深めたり評価・改善したりする態 度 多様な考えを認め、よりよく問題解決する態度 数量や図形などについて の基礎的・基本的な概念 や性質などの理解 日常の事象を数理的に表 現・処理する技能 数学的な問題解決に必要 な知識 日常の事象を数理的に捉え、見通し をもち筋道を立てて考察する力 基礎的・基本的な数量や図形の性質 や計算の仕方を見いだし、既習の内 容と結びつけ統合的に考えたり、そ のことを基に発展的に考えたりする 力 数学的な表現を用いて事象を簡潔・ 明瞭・的確に表したり、目的に応じ て柔軟に表したりする力 数量や図形についての感覚を豊かにするとともに、 数学的に考えることや数理的な処理のよさに気付き、• 算数の学習を進んで生活や学習に活用しようとする • 態度 • 数学的に表現・処理したことを振り返り、批判的に • 検討しようとする態度 • 問題解決などにおいて、よりよいものを求め続けよ • うとし、抽象的に表現されたことを具体的に表現し • ようとしたり、表現されたことをより一般的に表現 しようとするなど、多面的に考えようとする態度 • • • • • • 疑問や問いの発生 問題の設定 問題の理解、解決の計画 計画の実行、結果の検討 解決過程や結果の振り返り 新たな疑問や問い、推測な どの発生 • • • • • • 疑問や問いの発生 問題の設定 問題の理解、解決の計画 計画の実行、結果の検討 解決過程や結果の振り返り 新たな疑問や問い、推測な どの発生 疑問や問いの気付き 問題の設定 問題の理解、解決の計画 解決の実行 解決したことの検討 解決過程や結果の振り返り 新たな疑問や問いの気付き *学習過程については、自立的に、時に協働的に行い、それぞれに主体的に取り組めるようにする。 算数・数学科における教育のイメージ 別添4-2 【高等学校】 ◎ 数学的な見方・考え方を働かせ、本質を明らかにするなどの数学的活動を通して、数学的に考える資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 ① 数学における基本的な概念や原理・法則などを体系的に理解するとともに、事象を数学化したり、数学的に解釈したり表現・処理したりする技能 を身に付ける。 ② 事象を数学を活用して論理的に考察する力、思考の過程を振り返って本質を明らかにし統合的・発展的に考察する力や、数学的な表現を用いて 事象を簡潔・明瞭・的確に表現する力を養う。 ③ 数学のよさを認識し、数学を活用して粘り強く考え、数学的論拠に基づき判断したり、問題解決の過程を振り返って評価・改善したりする態度を養 う。 学習内容を生活と関連付けたり、生徒の疑問を取り上げたりするなど生徒の数学学習に対する関心や意欲を高める活動を充実する。 学習の過程を振り返り、本質を明らかにしたり学習内容を整理し直したりして、自ら見いだした問題を解決する活動を充実する。 【中学校】 162 ◎ 数学的な見方・考え方を働かせ、数学的活動を通して、数学的に考える資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 ① 数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則などを理解するとともに、事象を数学化したり、数学的に解釈したり表現・処理したりする技 能を身に付ける。 ② 事象を数学を活用して論理的に考察する力、数量や図形などの性質を見いだし統合的・発展的に考察する力や、数学的な表現を用いて事象を 簡潔・明瞭・的確に表現する力を養う。 ③ 数学のよさを実感し、数学を活用して粘り強く考え、生活や学習に生かしたり、問題解決の過程を振り返って評価・改善したりする態度を養う。 問題解決に必要な情報を生徒自らが集めたり選択したり、帰納的に考えることなどから自らきまりを見付けたり、見いだしたきまりを既習の内容を 生かして演繹的に説明したりする活動を充実する。 既習の内容を振り返って関連を図ったり、新たに学んだ内容を用いると、どのようなことができるようになったのかなどについて明らかにしたりする 活動を充実する。 【小学校】 ◎ 数学的な見方・考え方を働かせ、算数の学習を生活や学習に活用するなどの数学的活動を通して、数学的に考える資質・能力を次のとおり育成す ることを目指す。 ① 数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解するとともに、日常の事象を数理的に表現・処理する技能を身に付ける。 ② 日常の事象を数理的にとらえ見通しをもち筋道を立てて考察する力、基礎的・基本的な数量や図形の性質などを見いだし統合的・発展的に考察 する力や、数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり柔軟に表したりする力を養う。 ③ 数学のよさに気付き、算数の学習を生活や学習に活用したり、学習を振り返ってよりよく問題解決したりする態度を養う。 事象を数理的に考察したり、自分の考えを数学的に表現し処理したりする活動を充実する。 具体物、図、数、式、表、グラフ相互の関連を図り、問題解決する活動を充実する。 友達の考えから学び合ったり、学習の過程と成果を振り返り、よりよく問題解決できたことを実感したりする活動を充実する。 【幼児教育】(※幼児期の終わりまでに育ってほしい姿のうち、特に関係のあるもの記述) ・身近な事象に積極的に関わり、物の性質や仕組み等を感じ取ったり気付いたりする中で、思い巡らし予想したり、工夫したりなど多様な関わりを楽しむようになるとと もに、友達などの様々な考えに触れる中で、自ら判断しようとしたり考え直したりなどして、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにす るようになる。 ・遊びや生活の中で、数量などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりし、必要感からこれらを活用することを通して、数量・図形、文字等への関 心・感覚が一層高まるようになる。 算数・数学の学習過程のイメージ 別添4-3 算数・数学の問題発見・解決の過程 【現実の世界】 A1 数学的に表現した 問題 数学化 【数学の世界】 A2 数学化 B 163 焦点化した 問題 日常生活や 社会の事象 C 統合・発展 /体系化 活用・意味づけ D1 結果 日常生活や社会の事象を数理的に捉え、 数学的に処理し、問題を解決することができる。 数学の事象 D2 数学の事象について統合的・発展的に考え、 問題を解決することができる。 事象を数理的に捉え、数学の問題を見いだし、問題を自立的、協働的に解決することができる。 ※各場面で、言語活動を充実 ※これらの過程は、自立的に、時に協働的に行い、それぞれに主体的に取り組めるようにする。 ※それぞれの過程を振り返り、評価・改善することができるようにする。 算数・数学の学習過程のイメージ 算数・数学における問題発見・解決の過程と育成を目指す資質・能力 事象を数理的に捉え、数学の問題を見いだし、問題を自立的、協働的に解決することができる。 日常生活や社会の事象を数理的に捉え、 数学的に処理し、問題を解決することができる。 A1 日常生活や社会の問題を数理的に捉 えることについて ○事象の数量等に着目して数学的な問題 を見いだす力 ○事象の特徴を捉えて数学的な表現を用 いて表現する力(事象を数学化する力) 数学的に表現した問題 B 数学を活用した問題解決に向けて、構想・見通しを 立てることについて ○数学的な問題の本質を見いだす力(洞察力) ○数学的な問題を解決するための見通しを立てる力 (構想力) 思164 考・判断 日常生活や 社会の事象 D1 解決過程を振り返り、得られた結果を 意味づけたり、活用したりすることについて ○得られた結果を元の事象に戻してその 意味を考える力 ○様々な事象に活用する力 数学の事象について統合的・発展的に考え、 問題を解決することができる。 焦点化した問題 C 焦点化した問題を解決することについて ○目的に応じて数・式、図、表、グラフなどを活用し、 一定の手順にしたがって数学的に処理する力 ○数学的な見方・考え方を基に、的確かつ能率的に 処理する力 ○論理的に推論する力(帰納、類推、演繹) 結果 表現 人間性 ※これらの力は必ずしも この位置のみに位置づく わけではない E 数学的な表現を用いて、人々と交流し合うことについて ○数学的な表現を用いた説明を理解したり評価したりする力 ○目的に応じて、自分の考えなどを数学的な表現を用いて説明する力 F 学習に向かう力、態度について ○過程や結果を吟味し、評価・改善する態度 ○多面的に考え、粘り強く問題の発見や解決に取り組む態度 A2 数学の事象における問題を数学的に捉えるこ とについて ○数学の事象から問題を見いだす力 ○事象の特徴を捉え、数学化する力 ○得られた結果を基に拡張・一般化する力 数学の事象 D2 解決過程を振り返るなどして概念を形成したり、 体系化したりすることについて ○数学的な見方・考え方のよさを見いだす力 ○得られた結果を基に批判的に検討し、体系的に 組み立てていく力 ○見いだした事柄を既習の知識と結びつけ、概念 を広げたり深めたりする力 ○統合的・発展的に考える力 高等学校学習指導要領における数学科目の改訂の方向性 高等学校数学科 現行科目 165 数学Ⅰ(必履修) 数学Ⅱ 数学Ⅲ 数学 A 数学 B 数学活用 改訂後 数学Ⅰ(必履修) 数学Ⅱ 数学Ⅲ 数学 A 数学 B 数学 C(仮称)(新設) 理数探究(仮称)(新設) 理数探究基礎(仮称)(新設) ※高等学校理数科として位置づけられる。 理数探究(仮称)、理数探究基礎(仮称)の新設に伴い数学活用を廃止。 数学C(仮称)を新たに設けて、数学活用の内容を数学A、数学B、数学C(仮称)に移行。 数学C(仮称)は、「データの活用(仮称)」その他の内容で構成。 統計的な内容については、特に情報科などとの連携を重視。 別添4-4 (4)理科 ①現行学習指導要領の成果と課題を踏まえた理科の目標の在り方 ⅰ)現行学習指導要領の成果と課題 ○ 理科においては、発達の段階に応じて、子供たちが知的好奇心や探究心を持って、自 然に親しみ、目的意識をもった観察・実験を行うことが重要である。これらを通じて、 「科学的な見方や考え方」を養うことができるようにするなどの観点から、その指導の 充実を図ってきたところである。 ○ 平成24年(2012年)に実施されたPISA調査では、科学的リテラシーの平均 得点が比較可能な調査回以降、最も高くなっているなどの成果が見られる一方、平成2 3年(2011年)に実施されたTIMSS調査では、理科を学ぶことに対する関心・ 意欲や意義・有用性に対する認識については、国際的にみても、肯定的な回答の割合が 低い状況にある。 ○ また、小学校、中学校ともに、 「観察・実験の結果などを整理・分析した上で、解釈・ 考察し、説明すること」などの資質・能力に課題がみられることが明らかになっている ほか、高等学校については、観察・実験や探究的な活動が十分に取り入れられておらず、 知識・理解を偏重した指導となっているなどの指摘がある。 ⅱ)課題を踏まえた理科の目標の在り方 ○ これらの課題に適切に対応できるよう、小学校、中学校、高等学校それぞれの学校段 階において、理科の学習を通じて身に付ける資質・能力の全体像を明確化するとともに、 資質・能力を育むために必要な学びの過程についての考え方を示すこと等を通じて、理 科教育の改善・充実を図っていくことが必要である。 ○ 学校段階ごとの育成を目指す資質・能力について、別添5‐1のとおり、 「知識・技能」、 「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱に沿った整理 を行った。 「知識・技能」では、自然の事物・現象に対する概念や原理・法則の理解、科 学的探究や問題解決に必要な観察・実験等の技能などが求められる。 「思考力・判断力・ 表現力等」では、科学的な探究能力や問題解決能力などが求められる。 「学びに向かう力・ 人間性等」では、主体的に探究しようとしたり、問題解決しようとしたりする態度など が求められる。 ○ 学校段階ごとの理科の教科目標について、これらの育成を目指す資質・能力の整理を 踏まえ、示すことが求められる。(別添5‐2を参照) ⅲ)理科における「見方・考え方」 ○ 理科においては、従来、 「科学的な見方や考え方」を育成することを重要な目標として 位置付け、資質・能力を包括するものとして示してきたところであるが、今回の改訂で 166 は、資質・能力をより具体的なものとして示し、 「見方・考え方」は資質・能力を育成す る「視点や思考の枠組み」として全教科等を通して整理されたことを踏まえ、 「理科の見 方・考え方」を改めて検討することが必要である。 ○ 見方(様々な事象等を捉える各教科等ならではの視点)については、理科を構成する 領域ごとの特徴を見いだすことが可能であり、別添5‐3のとおり、 「エネルギー」領域 では、自然の事物・現象を主として量的・関係的な視点で捉えることが、 「粒子」領域で は、自然の事物・現象を主として質的・実体的な視点で捉えることが、 「生命」領域では、 生命に関する自然の事物・現象を主として多様性と共通性の視点で捉えることが、 「地球」 領域では、地球や宇宙に関する自然の事物・現象を主として時間的・空間的な視点で捉 えることが、それぞれの領域における特徴的な視点として整理することができる。 ○ ただし、これらの特徴的な視点はそれぞれの領域固有のものではなく、その強弱はあ るものの他の領域において用いられる視点でもあり、また、これら以外の視点もあるこ とについて留意することが必要である。これらを踏まえれば、理科という教科全体とし ての見方を単に列挙するのではなく、科学的な視点の例示として主なものを掲げること が適当と考えられる。 ○ また、理科の学習における考え方(思考の枠組みなど)については、探究の過程を通 じた学習活動の中で、比較したり、関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用 いて、事象の中に何らかの関連性や規則性、因果関係等が見いだせるかなどについて考 えることであると思われる。この「考え方」は思考の枠組みなどであり、資質・能力と しての思考力や態度とは異なることに留意が必要である。 ○ 以上を踏まえ、「理科の見方・考え方」については、「自然の事物・現象を、質的・量 的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え、比較したり、関係付けた りするなどの科学的に探究する方法を用いて考えること」(中学校の例)と整理した。 ○ 理科の学習においては、この「理科の見方・考え方」を働かせながら、知識・技能を 習得したり、思考・判断・表現したりしていくものであると同時に、学習を通じて、 「理 科の見方・考え方」が更に広がったり深まったりし成長していくと考えられる。なお、 「見方・考え方」は、まず「見方」があって、次に「考え方」があるといった順序性の あるものではない。 ②具体的な改善事項 ⅰ)教育課程の示し方の改善 ア 資質・能力を育成する学びの過程についての考え方 ○ 理科においては、高等学校の例を示すと、課題の把握(発見)、課題の探究(追究)、 課題の解決という探究の過程を通じた学習活動を行い、それぞれの過程において、資質・ 能力が育成されるよう指導の改善を図ることが必要である。(別添5‐4を参照) 167 ○ この学習過程の例で示す資質・能力については、 「思考力・判断力・表現力等」として 掲げてある探究の過程を実施するための力を中心に、 「知識・技能」や「学びに向かう力・ 人間性等」についても加えた上で、それぞれの過程において主に必要とされる資質・能 力に細分化して示したものである。 ○ 特に、このような探究の過程全体を生徒が主体的に遂行できるようにすることを目指 すとともに、生徒が常に知的好奇心を持って身の回りの自然の事物・現象に接するよう になることや、その中で得た気付きから疑問を形成し、課題として設定することができ るようになることを重視すべきである。 ○ 学習過程については、必ずしも一方向の流れではなく、必要に応じて戻ったり、繰り 返したりする場合があること、また、授業においては全ての学習過程を実施するのでは なく、その一部を取り扱う場合があることに留意する必要がある。また、意見交換や議 論など対話的な学びを適宜取り入れていくことが必要であるが、その際にはあらかじめ 自己の考えを形成した上で行うようにすることが求められる。 ○ 小学校及び中学校においては、それぞれの発達の段階に応じて、学習過程の一部を省 略したり統合的に取り扱ったりすることはあり得るものの、基本的には高等学校の例と 同様の流れで学習過程を捉えることが必要である。 イ 指導内容の示し方の改善 ○ 各内容項目について、どのような学習過程において、どのような「見方・考え方」を 働かせることにより、どのような「知識・技能」及び「思考力・判断力・表現力等」を 身に付けることを目指すのかを示していくことが必要である。その上で、内容の系統性 とともに、育成を目指す資質・能力のつながりを意識した構成、配列となるようにする 必要がある。 ○ 「学びに向かう力・人間性等」については、 「知識・技能」、 「思考力・判断力・表現力 等」とは異なり、内容項目ごとに大きく異なるものではないことから、内容項目ごとに 整理するのではなく、各学年や各分野の「目標」において整理されたものを、全ての内 容項目において共通的に扱うこととするのが適当である。 ○ 三つの柱に沿って整理された資質・能力を総合的に育成する観点から、実際の指導の 場面において留意すべき点等については、 「指導計画の作成と内容の取扱い」において示 していくことも必要である。 ⅱ)教育内容の改善・充実 ア 科目構成の見直し ○ 高等学校理科の科目構成に関しては、新たに共通教科として「理数(仮称)」を位置付 け「理数探究(仮称)」及び「理数探究基礎(仮称)」を科目として設けることとしてお り、「理数探究(仮称)」などが、現行の理科の「理科課題研究」、数学科の「数学活用」 168 及び専門教科「理数」の「課題研究」の内容を踏まえ、発展的に新設されるものである ことから、「理科課題研究」については廃止する。 ○ 高等学校理科における他の科目については、各高等学校における開設状況や履修状況 が望ましい方向に向かっていることから、現行どおりとすることが適当である。 イ 教育内容の見直し ○ 国際調査において、日本の生徒は理科が「役に立つ」、「楽しい」との回答が国際平均 より低く、理科の好きな子供が少ない状況を改善する必要がある。このため、生徒自身 が観察・実験を中心とした探究の過程を通じて課題を解決したり、新たな課題を発見し たりする経験を可能な限り増加させていくことが重要であり、このことが理科の面白さ を感じたり、理科の有用性を認識したりすることにつながっていくと考えられる。 ○ また、現代社会が抱える様々な課題を解決するためにイノベーションが期待されてお り、世界的にも理数教育の充実や創造性の涵養が重要視されており、米国等におけるS TEM(Science、 Technology、 Engineering and Mathematics)教育の推進はその一 例である。STEM教育においては、問題解決型の学習やプロジェクト型の学習が重視 されており、我が国における探究的な学習の重視と方向性を同じくするものである。探 究的な学習は教育課程全体を通じて充実を図るべきものであるが、観察・実験等を重視 して学習を行う教科である理科がその中核となって探究的な学習の充実を図っていくこ とが重要である。 ○ さらに、子供たちが将来どのような進路を選択したとしても、これからの時代に共通 に求められる力を育むために、小学校段階での理科で重視してきた問題解決の過程にお いて、プログラミング的思考の育成との関連が明確になるように適切に位置付けられる ようにするとともに、実施に当たっては、児童一人一人の学びが一層充実するものとな るように十分配慮することが必要である。 ⅲ)学習・指導の改善充実や教育環境の充実等 ア 「主体的・対話的で深い学び」の実現 ○ 理科においては、 「主体的な学び」 「対話的な学び」 「深い学び」の三つの視点から学習 過程を更に質的に改善していくことが必要である。なお、これら三つの視点はそれぞれ が独立しているものではなく、相互に関連し合うものであることに留意が必要である。 ・ 理科において「主体的な学び」を実現していくためには、例えば、a)自然の事物・ 現象から問題を見いだし、見通しをもって課題や仮説の設定や観察・実験の計画を立 案したりする学習場面を設けることや、b)観察・実験の結果を分析・解釈して仮説の 妥当性を検討したり、全体を振り返って改善策を考えたりする学習場面を設けること、 c)得られた知識や技能を基に、次の課題を発見したり、新たな視点で自然の事物・現 象を把握したりする学習場面を設けることなどが考えられる。 169 ・ 理科において「対話的な学び」を実現していくためには、例えば、課題の設定や検 証計画の立案、観察・実験の結果の処理、考察・推論する場面などでは、あらかじめ 個人で考え、その後、意見交換したり、議論したりして、自分の考えをより妥当なも のにする学習場面を設けることなどが考えられる。 ・ 理科においては、自然の事物・現象について、「理科の見方・考え方」を働かせて、 探究の過程を通して学ぶことにより、資質・能力を獲得するとともに、 「見方・考え方」 も成長するものであると考えられる。さらに、獲得した資質・能力や成長した「見方・ 考え方」を次の学習や日常生活などにおける問題発見・解決に活用することによって、 「深い学び」につながっていくものと考えられる。 ○ このような学習場面を通じて児童生徒の「主体的な学び」、「対話的な学び」、「深い学 び」が実現できているのかについて確認しつつ進めることが重要であり、育成を目指す 資質・能力及びその評価の観点との関係も十分に踏まえた上で指導計画等を作成するこ とが必要である。 ○ また、 「主体的な学び」や「対話的な学び」の過程でICTを活用することも効果的で あり、授業時間の効率的な活用にも資するものである。例えば、観察・実験の際に変化 の様子をタブレットPCで録画したものを何度か再生して確認することにより、結果を 根拠として自分の考えを深めることができる。 イ 教材や教育環境の充実 ○ 理科の教科書を含む教材については、学習の質を高められるよう配慮されたものであ ることが必要である。いたずらに細かなあるいは高度な知識を身に付けさせ、それを評 価するものとならないようにするとともに、生徒が問題の発見・解決に向けて主体的・ 協働的に学習を進めることができるものとすることが適当である。さらに、生徒の興味・ 関心等に応じて意欲的に学習を進め、考えを広めたり深めたりしていくこともできるよ う配慮されたものであることが望まれる。 ○ また、探究の過程の中で、観察・実験を通じて仮説を検証するために効果的な教材の 開発が重要であり、各教員の創意工夫を共有化するような取組も重要である。 ○ 理科において育成を目指す資質・能力の実現を図り、理数科目に対する子供たちの興 味・関心を高めていくためには、指導体制の強化や教員研修の充実、実験器具等の整備 充実、ICT環境の整備などの条件整備が求められる。 ○ 特に理科の特色でもある観察・実験の充実を図っていく観点からは、理科教育のため の設備整備の支援や、理科の観察・実験に使用する設備の準備・調整等を行う補助員の 配置に引き続き取り組むことが重要である。このため、国において必要な予算を引き続 き確保するとともに、各学校設置者において、各学校の実態の把握や整備のための計画 の策定等に取り組むことが求められる。 170 ○ また、児童生徒に三つの柱に沿って整理された資質・能力を育むためには、各教員が 改訂の趣旨や狙いを十分に理解して指導計画等を作成できるようにすることが必要であ る。さらに、観察・実験を中心とした探究的な学習を指導できる力が一層重要になる。 このため教員研修の充実等を通じて、教育課程をデザインする力やマネジメントする力 などを含めた指導力の向上を図るとともに、改訂の趣旨等について十分な周知を行って いくことが必要である。 171 理科において育成を目指す資質・能力の整理 理科 知識・技能 ○自然事象の中に問題を見いだして 見通しをもって課題や仮説を設定す る力 ○計画を立て,観察・実験する力 ○得られた結果を分析して解釈する など,科学的に探究する力と科学的 な根拠を基に表現する力 ○探究の過程における妥当性を検討 するなど総合的に振り返る力 ○自然を敬い,自然事象に進んで かかわる態度 ○粘り強く挑戦する態度 ○日常生活との関連,科学するこ との面白さや有用性の気付き ○科学的根拠に基づき判断する態 度 ○小学校で身に付けた問題解決の 力などを活用しようとする態度 ■自然事象に対する基本的な概念 や性質・規則性の理解 ■理科を学ぶ意義の理解 ■科学的に問題解決を行うために 必要な観察・実験等の基本的な技 能(安全への配慮,器具などの操 作,測定の方法,データの記録 等) (各学年で主に育てたい力) 6年:自然事象の変化や働きについ てその要因や規則性,関係を多 面的に分析し考察して,より妥 当な考えをつくりだす力 5年:予想や仮説などをもとに質的 変化や量的変化,時間的変化に 着目して解決の方法を発想する 力 4年:見いだした問題について既習 事項や生活経験をもとに根拠の ある予想や仮説を発想する力 3年:自然事象の差異点や共通点に 気付き問題を見いだす力 ■自然に親しみ、生命を尊重する 態度 ■失敗してもくじけずに挑戦する 態度 ■科学することの面白さ ■根拠に基づき判断する態度 ■問題解決の過程に関してその妥 当性を検討する態度 ■知識・技能を実際の自然事象や 日常生活などに適用する態度 ■多面的,総合的な視点から自分 の考えを改善する態度 仮説の設定 検証計画の立案 観察・実験の実施 結果の処理 考察・推論 表現・伝達 自然事象に対する 気付き 課題の設定 仮説の設定 検証計画の立案 観察・実験の実施 結果の処理 考察・推論 表現 自然事象に対する 気付き 問題の見いだし 予想・仮説の設定 検証計画の立案 観察・実験の実施 振り返り ○自然事象に対する概念や原理・ 法則の基本的な理解 ○科学的探究についての基本的な 理解 ○探究のために必要な観察・実験 等の基本的な技能(安全への配慮, 器具などの操作,測定の方法, データの記録・処理等) 課題の設定 振り返り ●自然事象に対する畏敬の念 ●諦めずに挑戦する態度 ●日常生活との関連,科学の必要 性や有用性の認識 ●科学的根拠に基づき,多面的, 総合的に判断する態度 ●中学校で身に付けた探究する能 力などを活用しようとする態度 見通し 小学校 ●自然事象の中から見通しをもって 課題や仮説を設定する力 ●観察・実験し、得られた結果を分 析して解釈するなど,科学的に探究 する力と科学的な根拠を基に考えを 表現する力 ●仮説の妥当性や改善策を検討する 力 自然事象に対する 気付き 見通し 172 中学校 ●果敢に挑戦する態度 ●科学的に探究する態度 ●科学に対する倫理的な態度 振り返り 高等学校 <必履修科目> ●自然事象に対する概念や原理・ 法則の理解 ●科学的探究についての理解 ●探究のために必要な観察・実験 等の技能 ●科学的な探究能力(論理的・分析 的・統合的に考察する力) ●新たなものを創造しようとする力 資質・能力の育成のために 重視すべき学習過程等の例 見通し <選択科目> ●知識・技能の深化 ●自然事象に対する概念や原理・ 法則の体系的な理解 思考力・判断力・表現力等 学びに向かう力・人間性等 別添5-1 結果の整理 考察や結論の導出 1 理科における教育のイメージ 【高等学校】 ≪発展:explore science≫ (Especially Science for Interested students:世界をリードする人材として) ○ 科学的課題に徹底的に向き合い,考え抜いて行動する態度を養う。科学的な探究能力を活用して,専門的な知識と技能の深化・統合化を図ると ともに,自発的・創造的な力を養う。 ● 科学的な探究能力の育成を主体的に図ることができる「課題研究」を充実させる。 (理数科,理数探究(仮称)) 別添5-2 ≪応用:advanced science≫ (Science for Interested students:科学技術立国としての日本を支える人材として) ○ 自然の事物・現象について,科学的に探究する能力と態度を養うとともに,論理的な思考力や創造性の基礎を養う。 ● 「観察・実験」や「探究活動」を一層充実させて,科学的な探究能力の育成を図る。また,日常生活や他教科(数学,情報,保健体育,地理など)との関連を図る。 ≪基礎:basic science≫ (Science for All students:善良な市民として) ◎ 理科の見方・考え方を働かせて,見通しをもって課題や仮説を設定し,観察・実験などを行い,根拠に基づく結論を導き出す過程を通して,事象を科学的に探究するために必要な資質・能力 を次のとおり育成することを目指す。 ○ ①自然の事物・現象に対する概念や原理・法則の理解と科学的探究についての理解や,探究のために必要な観察・実験等の技能を養う。 ②見通しをもって観察・実験などを行い,科学的に探究したり,科学的な根拠を基に表現したりする力を養う。 ③自然に対する畏敬の念を持ち,科学の必要性や有用性を認識するとともに,科学的根拠に基づき,多面的・総合的に判断する態度を養う。 ● 「観察・実験」や「探究活動」を充実させることにより,科学的な探究の過程を通じて,中学校で身に付けた資質・能力をさらに高める。観察・実験が扱えない場合も,論理的に検討を行うなど, 探究の過程を経ることが重要である。また,日常生活や他教科(数学,情報,保健体育,地理など)との関連を図る。 【中学校】 173 ◎ 理科の見方・考え方を働かせて,問題を見いだし,見通しをもって課題や仮説を設定し,観察・実験などを行い,根拠に基づく結論を導き出す過程を通して,自然の事物・現象を科学的に探 究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 ○ ①自然の事物・現象に対する概念や原理・法則の基本的な理解と科学的探究についての基本的な理解や観察・実験等の基本的な技能を養う。 ②見通しをもって観察・実験などを行い,科学的に探究したり,科学的な根拠を基に表現したりする力を養う。 ③自然を敬い,自然の事物・現象に進んでかかわり,科学することの面白さや有用性に気付くとともに,科学的根拠に基づき判断する態度を養う。 ● 小学校で身に付けた,問題解決の能力をさらに高め,自然事象の把握,課題の設定,予想・仮説の設定,検証計画の立案,観察・ 実験の実施,結果の処理,考察・推論,表現等の学習活動 を充実する。また,日常生活や他教科との関連を図る。例えば, 1年:自然の事物・現象に進んでかかわり,その中から問題を見いだす。2年:解決方法を立案して実行し,結果の妥当性を検討 する。3年:探究の過程を振り返り,その妥当性を検討する。 【小学校】 ◎ 理科の見方・考え方を働かせて,自然にかかわり,問題を見いだし,見通しをもって観察・実験などを行い,より妥当な考えを導き出す過程を通して,自然の事物・現象についての問題を科 学的に解決するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 ○ ①自然の事物・現象に対する基本的な概念や性質・規則性の理解を図り,観察・実験等の基本的な技能を養う。 ②見通しをもって観察・実験などを行い,問題を解決する力を養う。 ③自然を大切にし,学んだことを日常生活などに生かそうとするとともに,根拠に基づき判断する態度を養う。 ● 観察・実験の結果を整理し考察し表現する学習活動を充実する。また,日常生活や他教科との関連を図る。 ● 問題解決の能力,例えば,3年:差異点や共通点に気付き問題を見いだす力,4年:既習事項や生活経験を基に根拠のある予想や仮説を発想する力,5年:質的変化や量的変化,時間的変 化に着目して解決の方法を発想する力,6年:要因や規則性,関係を多面的に分析して考察し,より妥当な考えをつくりだす力を育成する学習活動を充実する。 ● 目的を設定し,計測して制御するという考え方の学習活動を充実する。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------(小学校低学年) 例えば,【生活科】 ○ 自然とのかかわりに関心をもち,自然を大切にしたり,その不思議さに気付いたりすることができる。 ○ 身近な自然を観察したり,季節や地域の行事にかかわる活動を行ったりなどして,四季の変化や季節によって生活の様子が変わることに気付き,自分たちの生活を工夫したり楽しくしたりできる。 ○ 身近にある自然を利用したり,身近にある物を使ったりなどして,遊びや遊びに使う物を工夫してつくり,その面白さや自然の不思議さに気付き,みんなで遊びを楽しむことができるようにする。 ○ 動物を飼ったり植物を育てたりして,それらの育つ場所,変化や成長の様子に関心をもち,また,それらは生命をもっていることや成長していることに気付き,生きものへの親 しみをもち,大切にすることができ るようにする。 【幼児教育】(※幼児期の終わりまでに育ってほしい姿のうち、特に関係のあるもの記述) ・身近な事象に積極的に関わり、物の性質や仕組み等を感じ取ったり気付いたりする中で、思い巡らし予想したり、工夫したりなど多様な関わりを楽しむようになるとともに、友達などの 様々な考えに触れる中で、自ら判断しようとしたり考え直したりなどして、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにするようになる。 ・自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、身近な事象への関心が高まりつつ、好奇心や探究心を持って思い巡らし言葉などで表しながら、自然への愛情や 畏敬の念を持つようになる。身近な動植物を命あるものとして心を動かし、親しみを持って接し、いたわり大切にする気持ちを持つようになる。 0 理科の各領域における特徴的な見方 別添5-3 表1 理科の各領域における特徴的な見方 領 エネルギー 見方・考え方 粒 子 域 生 命 地 球 自然の事物・現象を主として量 自然の事物・現象を主として質 生命に関する自然の事物・現象を 地球や宇宙に関する自然の事物・ 的・関係的な視点で捉える 的・実体的な視点で捉える 主として多様性と共通性の視点で 現象を主として時間的・空間的な 捉える 視点で捉える 174 *高等学校では,事象をより包括的・ *中学校から実体はあるが見えない *「分子~細胞~個体~生態系レベ 高次的に捉える (不可視)レベルの原子,分子レベル ル」の階層性があり,小・中・高と上 で事象を捉える がるにつれて扱う階層が広がる *高等学校では,事象をより包括的・ 高次的に捉える *「身のまわり~地球~宇宙レベル」 の階層性があり,小・中・高と上がる につれて扱う階層が広がる 学校段階の違い(内容の階層性の広がり) 「物レベル」 小 学 校 「見える(可視)レベル」 中 学 校 「見える(可視)~見えない(不可視) 「物~物質レベル」 レベル」 「個体~生態系レベル」 「身のまわり(見える)レベル」 「細胞~個体~生態系レベル」 「身のまわり(見える)~地球(地球 周辺)レベル」 高 等 学 校 「見える(可視)~見えない(不可視) 「物質レベル」(マクロとミクロの視 「分子~細胞~個体~生態系レベル」 「身のまわり(見える)~地球(地球 レベル」 点) 周辺)~宇宙レベル」 表2 理科の各領域における特徴的な見方の整理例 領 エネルギー 見方 小学校 【事象を分節化しな い】 粒 域 子 生 命 地 球 自然の事物・現象を主として量 的・関係的な視点で捉える 自然の事物・現象を主として質 的・実体的な視点で捉える 生命に関する自然の事物・現象を 主として多様性と共通性の視点で 捉える 地球や宇宙に関する自然の事物・ 現象を主として時間的・空間的な 視点で捉える 自然の事物・現象を「見える(可視) 自然の事物・現象を「物レベル」にお 生命に関する自然の事物・現象を「個 地球や宇宙に関する自然の事物・現象 レベル」において,主として量的・関 いて,主として質的・実体的な視点で 体~生態系レベル」において,主とし を「身のまわり(見える)レベル」に 係的な視点で捉える 捉える て多様性と共通性の視点で捉える おいて,主として時間的・空間的な視 点で捉える 175 例:豆電球の明るさについて,電池の 例:物の性質について,形が変わって 例:昆虫や植物の成長や体のつくりに 例:土地のつくりや変化について,侵 数(量)や直列・並列つなぎの関 も重さは変わらないことから実体 ついて,多様性と共通性の視点で 食・運搬・堆積の関係を時間的・ 係で捉える として存在することを捉える 捉える 空間的な視点で捉える 自然の事物・現象を「見える(可視) 自然の事物・現象を「物~物質レベ 生命に関する自然の事物・現象を「細 地球や宇宙に関する自然の事物・現象 中学校 レベル~見えない(不可視レベル)」 ル」において,主として質的・実体的 胞~個体~生態系レベル」において, を「身のまわり(見える)~地球(地 【事象を主に再現性が 高いもの(エネルギー, 粒子)と,主に再現性 が低いもの(生命,地 球)に分節化する】 において,主として量的・関係的な視 な視点で捉える 主として多様性と共通性の視点で捉え 球周辺)レベル」において,主として 点で捉える る 時間的・空間的な視点で捉える 例:電気に関する現象について,電流, 例:物質やその変化について,原子や 例:植物や動物の体のつくりと働きに 例:地層の重なりについて,時間的・ 電圧,抵抗(量)の関係をオーム 分子を化学変化で実体的に捉える の法則の関係で捉える ついて,多様性と共通性の視点で 空間的な視点で捉える 捉える 自然の事物・現象を「見える(可視) 自然の事物・現象を「物質レベル」に 生命に関する自然の事物・現象を「分 地球や宇宙に関する自然の事物・現象 高等学校 レベル~見えない(不可視レベル)」 おいて,主として質的・実体的な視点 子~細胞~個体~生態系レベル」にお を「身のまわり(見える)~地球(地 【事象をエネルギー, 粒子,生命,地球に 分節化する】 において,主として量的・関係的な視 で捉えるとともに,より包括的・高次 いて,主として多様性と共通性の視点 球周辺)~宇宙レベル」において,主 点で捉えるとともに,より包括的・高 的に捉える で捉える として時間的・空間的な視点で捉える 例:電気抵抗に関する現象について, 例:物質の構成粒子について,原子の 例:生物と遺伝子について,多様性と 例:プレートの運動や火山活動と地震 物質の違いから包括的・高次的に 構造や電子配置から包括的・高次 捉える 的に捉える 次的に捉える 共通性の視点で捉える について,時間的・空間的な視点 で捉える 資質・能力を育成するために重視すべき学習過程のイメージ(高等学校基礎科目の例*7) 学習過程例(探究の過程)*1 見通しと振り返りの例*2 課題の把握 発(見 ) 自然事象に対する気付き 理科における資質・能力の例*3 ●主体的に自然事象*6とかかわり,それらを科学的に探究しようとする態度 (以後全ての過程に共通) ●自然事象を観察し,必要な情報を抽出・整理する力 ●抽出・整理した情報について,それらの関係性(共通点や相違点など)や傾 向を見いだす力 別添5-4 対話的な学びの例*4 意見交換・議論 176 課題の探究 追(究 ) 課題の設定 ●見いだした関係性や傾向から,課題を設定する力 意見交換・議論 仮説の設定 ●見通しを持ち,検証できる仮説を設定する力 意見交換・議論 ●仮説を確かめるための観察・実験の計画を立案する力 ●観察・実験の計画を評価・選択・決定する力 意見交換・議論 見通し*2 検証計画の立案 観察・実験の実施*5 ●観察・実験を実行する力 調査 課題の解決 結果の処理 ●観察・実験の結果を処理する力 意見交換・議論 考察・推論 ●観察・実験の結果を分析・解釈する力 ●情報収集して仮説の妥当性を検討したり,考察したりする力 ●全体を振り返って推論したり,改善策を考えたりする力 ●新たな知識やモデル等を創造したり,次の課題を発見したりする力 ●事象や概念等に対する新たな知識を再構築したり,獲得したりする力 ●学んだことを次の課題や,日常生活や社会に活用しようとする態度 意見交換・議論 振り返り*2 表現・伝達 ●考察・推論したことや結論を発表したり,レポートにまとめたりする力 研究発表 相互評価 次の探究の過程 *1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 探究の過程は,必ずしも一方向の流れではない。また,授業では,その過程の一部を扱ってもよい。 「見通し」と「振り返り」は,学習過程全体を通してのみならず,必要に応じて,それぞれの学習過程で行うことも重要である。 全ての学習過程において,今までに身に付けた資質・能力や既習の知識・技能を活用する力が求められる。 意見交換や議論の際には,あらかじめ個人で考えることが重要である。また,他者とのかかわりの中で自分の考えをより妥当なものにする力が求められる。 単元内容や題材の関係で観察・実験が扱えない場合も,調査して論理的に検討を行うなど,探究の過程を経ることが重要である。 自然事象には,日常生活に見られる事象も含まれる。 小学校及び中学校においても,基本的には高等学校の例と同様の流れで学習過程を捉えることが必要である。 (5)高等学校における数学・理科にわたる探究的科目 ①現行学習指導要領の成果と課題を踏まえた教科等目標の在り方 ⅰ)新科目の設置の背景 ○ 平成24年(2012年)に実施されたPISA調査においては、数学的リテラシー、 科学的リテラシー、読解力の3分野全てにおいて成果が見られる一方、平成23年(2 011年)に実施されたTIMSS調査においては、数学及び理科を学ぶ楽しさやこれ らの学習する意義等に対する意識については、諸外国と比べ肯定的な回答の割合が少な く、更に学校段階が上がることに低下していく傾向にあり、憂慮される状況にある。 ○ また、探究的な学習は、学習に対する興味・関心・意欲の向上をはじめ、知識・技能 の着実な習得や思考力・判断力・表現力等の育成に有効であると考えられ、高等学校の 数学及び理科の分野における探究的な学習を中核に据えた科目として、 「数学活用」及び 「理科課題研究」が設定されているが、大学入学者選抜における評価がほとんど行われ ないことや、指導のノウハウが教員間に共有されていないことなどもあって、高等学校 における科目の開設率が極めて低くなっている。 ○ このような背景から、数理横断的なテーマに徹底的に向き合い考え抜く力を育成する ため、大学入学者選抜の改革や「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に向けた動き も踏まえつつ、数学と理科の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動を行う新 たな選択科目の設置を検討した。 ○ 数学・理科にわたる探究的科目については、スーパーサイエンスハイスクール(SS H)で行われている「課題研究」等と同様、将来、学術研究を通じた知の創出をもたら すことができる人材の育成を目指し、そのための基礎的な資質・能力を身に付けること ができる科目となることが期待されている。このため、今後の学術研究に求められる方 向性を十分に踏まえたものとすることが重要である。 ○ 現在、我が国は様々な課題に直面しており、これらの解決手段としてイノベーション に大きな期待が寄せられているが、研究者には、深い知的好奇心や自発的な研究態度、 自ら課題を発見したり未知のものに挑戦したりする態度が求められている。また、革新 的な価値は、多様な学問分野の知の統合により生まれることが多く、従来の慣習や常識 にとらわれない柔軟な思考と斬新な発想によってもたらされるものである。 ⅱ)新科目の基本原理 ○ このような方向性を踏まえつつ、アイディアの創発、挑戦性、総合性や融合性等の視 点を重視しつつ新科目の基本原理については、以下のとおり整理したところである。 ①様々な事象に対して知的好奇心を持つとともに、教科・科目の枠にとらわれない多角 的、複合的な視点で事象を捉え、 177 ②「数学的な見方・考え方」や「理科の見方・考え方」を豊かな発想で活用したり、組 み合わせたりしながら、 ③探究的な学習を行うことを通じて、 ④新たな価値の創造に向けて粘り強く挑戦する力の基礎を培う。 ⅲ)教育課程上の位置付け ○ また、現在、数学と理科にまたがる内容の教科としては「理数」が設定されているが、 「数学・理科にわたる探究的科目」である新科目については、教科「理数」に位置付け た上で、「主として専門学科において開設される科目」ではなく、「各学科に共通する科 目」の選択科目として設定することが適当である。 ○ 名称については、教科「理数」の科目であること、 「数理」は通常数学を意味する用語 であること、結果よりも探究の過程を重視する科目であることから、 「理数」及び「探究」 の用語を用いたものとすることが適当と考えられる。 ②新科目の概要 ⅰ)基本的な構成 ○ SSHにおける実践の状況等も踏まえ、新科目においては、生徒が探究の過程全体を 自ら遂行できるようになることを目指し、その基礎を学ぶ段階(「理数探究基礎(仮称)」) と、それを活用しつつ実際に探究を進める段階(「理数探究(仮称)」)の2段階で構成す ることが適当である(別添6‐1を参照)。 ○ 「基礎を学ぶ段階」では、探究の過程全体を自ら遂行するための進め方等に関する基 礎的な知識・技能、新たな価値の創造に向けて挑戦することについての意義の理解、主 体的に探究に取り組む態度等を育成することが重要である。 ○ 「探究を進める段階」においては、基礎で身に付けた資質・能力を活用して探究の過 程全体を自ら遂行し、結果を取りまとめ、発表するものとする。(別添6‐2を参照) その際、探究の成果としての新たな知見の有無や価値よりむしろ、探究の過程におけ る生徒の思考や態度を重視し、主体的に探究の過程全体をやり遂げることに指導の重点 を置くべきである。 ○ また、 「理数探究(仮称)」及び「理数探究基礎(仮称)」は、現行の数学科における「数 学活用」、理科における「理科課題研究」及び専門教科「理数」における「課題研究」の 内容を踏まえ、発展的に新設されるものであることから、専門教科「理数」における「課 題研究」については廃止するものとする。 ⅱ)指導に当たって留意すべき点 ○ 常に知的好奇心を持って様々な視点から自然事象や社会事象を観察し、その中で得た 様々な気付きから疑問を形成させるようにすることが必要である。 178 ○ 探究の課題の設定に当たっては、生徒の主体性を尊重しつつ、数学や理科における手 法により探究が可能な課題となるよう適切な示唆を与えることが必要である。その際、 生徒が既に身に付けている手法を前提に、これを適用できる課題を探すような順序とな らないよう留意しつつ指導することが求められる。 ⅲ)新科目の評価の在り方について ○ 「理数探究(仮称)」の評価に当たっては、探究の成果における新たな知見の有無や価 値よりも、探究の過程において資質・能力をどの程度身に付けることができたかや、探 ふかん 究の過程全体を俯瞰的に捉え、自らがどの位置にいるか、どこで間違ったのかなどが説 明できるようになっているかという点を重視すべきである。 ○ 探究の過程における観察・実験の内容やその中で生じた疑問、それに対する自らの思 考の過程などを「探究ノート」等に記録させ、自己の成長の過程を認識できるようにす るとともに、評価の場面でも用いることが重要である。また、 「探究ノート」等を通じて 生徒の独創的な思考や探究の過程における態度を評価するほか、報告書や発表の内容、 発表会における生徒による相互評価や自己評価を取り入れるなど、多様な評価方法を用 いるとともに、複数の教員による複合的な視点で評価することが必要である。 ⅳ)教育環境の充実等 (校内体制) ○ 新科目の実施に当たっては、数学及び理科の教員を中心に全校的な指導体制を整える ことが必要である。特に「理数探究(仮称)」の指導に当たっては、1クラスの生徒に対 して複数の教員が協働して指導に当たることが不可欠である。 (教材の提供等) ○ 探究の進め方等に関する基礎的な知識・技能、新たな価値の創造に向けて挑戦するこ とについての意義の理解、研究倫理に関する基本的な理解など、 「理数探究基礎(仮称)」 における学習内容を適切に指導できるよう、教科書等適切な教材が作成されることが求 められる。その際、数学及び理科の各科目(物理、化学、生物、地学)それぞれにつな がりがあることやそれらが有機的に組み合わさることによって理解が深まったり、新た な発想が生まれたりする場合があることが理解できるよう、適切な事例を紹介すること が望まれる。 ○ 新科目の指導のノウハウについては、SSH等における実践を通じて好事例が蓄積さ れていることから、これを全国で共有化できるよう国等において指導事例集の作成等、 事例の収集・紹介を行うことが必要である。 179 (教員の養成・採用) ○ 新科目を指導する教員に、教員研修等を通じて必要な指導方法等を修得させることが 必要である。その際、SSHにおける知見を十分に活用することが重要である。また、 教員養成段階においては、新科目に限らず教育課程全体を通じて探究的な学習が一層重 視される方向性であることも踏まえ、探究的な学習を実施するための指導力の育成に向 けた取組の充実が求められる。さらに、教員採用において、理学や工学、農学等の博士 号を有する者など大学で自然科学に関する研究を行った経験を有する者を積極的に採用 することや、これらの大学院に在籍する学生等を講師や補助者として活用することも考 えられる。 (施設・設備等の充実) ○ 新科目を実施する学校においては、観察・実験を行うための施設・設備や、調査やデ ータ分析を行うためのICT環境の整備等の条件整備が適切になされる必要がある。ま た、生徒が探究を行うために必要な物品等(書籍、試料、実験器具等)の購入に関する 経費を用意することも必要である。 (大学、研究機関、企業等との連携) ○ 生徒が探究を進めるに当たって、可能な限り大学や研究機関、企業等から助言が得ら れるような体制を設けることが望ましい。その際、各学校が個別に大学等と連携を構築 する方法のみならず、例えば、地域ごとに各学校や教育委員会、大学、企業等が円滑に 連携を行うための協議会等を設けるような取組も考えられる。また、大学において、特 定の教員に負担が集中しないよう組織的な協力体制を構築することが期待される。さら に、近隣に適当な大学等が所在しない場合でも遠隔での支援が得られるような仕組みづ くりについても、国等において検討すべきである。 180 高等学校の数学・理科にわたる探究的科目の教育のイメージ ※以下の2科目で構成 実施段階 181 「理数探究 (仮称)」 探究を深める段階 • 基礎で身に付けた資質・能力を活用して自ら課題を 設定し、探究の過程全体を行う。 • それぞれの課題に応じた探究を行うために必要な 個別の知識や技能を主体的に身に付けさせ、より深 い探究を志向させる。 • 探究に当たっては、質を高めるため大学・企業等の 外部機関を積極的に活用する。 • 実験や分析自体の成否より、試行錯誤し、失敗のリ スクも引き受けながら主体的にやり遂げる過程を重 視する。 別添6-1 大学・企業等 からの支援 基礎で学んだ ことを用いて、 自ら課題を設 定し、探究の 過程全体を実 施する。 校内・校外 において探 究の成果を 発表する。 学習過程の例 基礎の習得段階 「理数探究基礎 (仮称)」 教員の指導のもと、実 験・観察の進め方や分 析の手法を考え、選択 した課題等の探究を 実施する 研究倫理についての 基本的な理解のため の学習 校内等で成果を発表する 基礎段階 • 探究の過程全体を自ら遂行するために基礎となる 資質・能力をあらかじめ身に付けておくことが必要。 • 新たな価値の創造に向けて挑戦することの意義等 について理解を深めさせることで、主体的に探究に 取り組む態度を身に付けさせることが必要。 • 研究倫理等についての基本的な理解を身に付けさ せることが必要。 探究の手法に ついて学ぶ 高等学校の数学・理科にわたる探究的科目 の学習過程(探究の過程)のイメージ 別添6-2 様々な事象を知的好奇心を持って観察する 多角的・多面的、複合的な視点で事象をとらえ問題を見出す 数学的な 見方・考え方 「数学的な見方・考え方」や「理科 の見方・考え方」を豊かな発想で活 用したり、組み合わせたりする。 182 情報収集と分類 理科の 見方・考え方 発想の拡大、思考の深化 数学や理科に関する課題として設定(課題化) 表現・伝達(報告書作成、発表等) 、 分析・考察・推論 振り返り 見通し 課題解決の過程 仮説の設定→検証計画の立案→観察・実験→結果の処理 次 の 課 題 の 発 見 次 の 探 究 の 過 程 へ 目指す生徒像及び卒業後の生徒の進路のイメージ (参考資料) 目指す生徒のイメージ ○ 探究の過程全体を自ら遂行できる能力を身に付けるとともに、自らの探究の過程 をメタ認知できる生徒。 183 進路先のイメージ ○ 高等学校卒業後に、大学・大学院等に進学し、主として数学や理科の分野におけ る研究に向けた学習や研究を継続する意思を有する生徒。 ※ カリキュラムの設定に際してのイメージであり、学校や生徒の状況に応じ て、科目を開設し、履修を認めることを制限するものではない。 ※ 特に分野を限定することなく、探究的な学習等を行うものとして「総合的な 学習の時間」が設定されていることにも留意。 (6)生活 ①現行学習指導要領の成果と課題を踏まえた生活科の目標の在り方 ⅰ)現行学習指導要領の成果と課題 ○ 生活科は、児童の生活圏を学習の対象や場とし、それらと直接関わる活動や体験を重 視し、具体的な活動や体験の中で様々な気付きを得て、自立への基礎を養うことをねら いにしてきた。現行学習指導要領では、活動や体験を一層重視するとともに、気付きの 質を高めること、幼児教育との連携を図ることなどについて充実を図った。 ○ 各小学校においては、身近な人々、社会及び自然等と直接関わることや気付いたこと・ 楽しかったことなどを表現する活動を大切にする学習活動が行われており、言葉と体験 を重視した改訂の趣旨が概ね反映されているものと考えることができる。 ○ 一方で、以下のような点については、更なる充実を図ることが期待される。 ① 活動や体験を行うことで低学年らしい思考や認識を確かに育成し、次の活動へつな げる学習活動を重視すること。 「活動あって学びなし」との批判があるように、具体的 な活動を通して、どのような思考力等が発揮されるか十分に検討する必要がある。 ② 幼児教育において育成された資質・能力を存分に発揮し、各教科等で期待される資 質・能力を育成する低学年教育としてなめらかに連続、発展させること。幼児期に育 成する資質・能力と小学校低学年で育成する資質・能力とのつながりを明確にし、そ こでの生活科の役割を考える必要がある。 ③ 幼児教育との連携や接続を意識したスタートカリキュラムについて、生活科固有の 課題としてではなく、教育課程全体を視野に入れた取り組みとすること。スタートカ リキュラムの具体的な姿を明らかにするとともに、国語、音楽、図画工作などの他教 科等との関連についてもカリキュラム・マネジメントの視点から検討し、学校全体で 取り組むスタートカリキュラムとする必要がある。 ④ 社会科や理科、総合的な学習の時間をはじめとする中学年の各教科等への接続が明 確ではないこと。単に中学年の学習内容の前倒しにならないよう留意しつつ、育成を 目指す資質・能力や「見方・考え方」のつながりを検討することが必要である。 ⅱ)課題を踏まえた生活科の目標の在り方 (生活科の目標のイメージ) ○ 生活科において、対象に直接関わる具体的な活動や体験を通して育成を目指す資質・ 能力を、資質・能力の三つの柱や生活科の特質を踏まえつつ、幼児教育において育みた い資質・能力とのつながりや、小学校低学年における他教科及び中学年以降の理科、社 会、総合的な学習の時間を含めた各教科等における学習との関係性も踏まえた上で整理 すると、概ね以下のように考えることができる。(別添7‐1を参照) 184 ・知識や技能の基礎(生活の中で、豊かな体験を通じて、何を感じたり、何に気付いた り、何が分かったり、何ができるようになるのか)としては、具体的な活動や体験を 通して獲得する自分自身、社会事象、自然事象に関する個別的な気付きや関係的な気 付き、具体的な活動や体験を通して身に付ける習慣や技能などが考えられる。 ・思考力・判断力・表現力等の基礎(生活の中で、気付いたこと、できるようになった ことなどを使って、どう考えたり、試したり、工夫したり、表現したりするか)とし て、身体を通して関わり、対象に直接働きかける力や、比較したり、分類したり、関 連付けたり、視点を変えたりして対象を捉える力などが考えられる。 ・学びに向かう力・人間性等(どのような心情、意欲、態度などを育み、よりよい生活 を営むか)としては、身近な人々や地域に関わり、集団や社会の一員として適切に行 動しようとする態度、身近な自然と関わり、自然を大切にしたり、遊びや生活を豊か にしたりしようとする態度、自分のよさや可能性を生かして、意欲と自信を持って学 んだり生活しようとする態度などが考えられる。 ○ こうした資質・能力を育むために、生活科の目標としては、具体的な活動や体験を通 して、 「身近な生活に関わる見方・考え方」を生かし、自立し生活を豊かにしていくため の資質・能力を育成することを示す。(別添7‐2を参照) (教育課程全体における生活科の役割とカリキュラム・マネジメント) ○ 生活科を中心としたスタートカリキュラムの工夫により、小学校に入学した児童が安 心して自信を持って成長し自立への基礎の形成につながることが期待される。体験的・ 総合的な学びから徐々に意図的・系統的な学びへと移行していくことを促しながら、そ の中で学校や家庭、地域での生活に必要な技能等も学んでいく。その過程においては、 合科的・関連的な指導を行ったり、児童の生活の流れを大切にした指導を行ったりして、 幼児期の終わりまでに育った姿が発揮できるような教育課程の編成、実施上の工夫を行 うことが考えられる。小学校内における組織的な取組はもとより、校区内の幼稚園、保 育所等と連携し、子供の育ちの現状、育成を目指す資質・能力等についてのイメージを 共有し、共に考えていくことが必要である。 ○ 中学年は、生活科の学習が終わり理科や社会科の学習が始まるなど、具体的な活動や 体験を通じて低学年で身に付けたことを、より各教科の特質に応じた学びにつなげてい く時期である。指導事項も次第に抽象的な内容に近づいていく段階であり、そうした学 習に円滑に移行できるような指導上の配慮が課題となる。生活科においては、低学年の 未分化で一体的な学びの特性を生かし、幼児期に育成された資質・能力を発揮するとと もに、学びを自覚し自ら学習に向かうこと、学級の友達と学び合うこと、体験と言葉を 使って学ぶことなどを意識していくことが大切になる。 ◯ また、生活科の体験を通した一体的な学びは、総合的な学習の時間における各教科等 の「見方・考え方」を生かした学習につながっていく。幼児期、小学校低学年、中学年 185 だけでなく、さらにその先につながっている生活科であるということを改めて示してく ことが必要である。 ⅲ)生活科における「見方・考え方」 ○ 生活科では、具体的な活動や体験を通して、児童の生活圏に存在する身近な人々、社 会及び自然を学習の対象として扱う。その際、対象を自分との関わりで捉えることとも に、人々、社会、自然を一体として捉えることが特徴である。 ○ 具体的な活動や体験を通して捉えた対象については、比較したり、分類したり、関連 付けたりなどして解釈し把握するとともに、試行したり、予測したり、工夫したりなど して新たな活動や行動を創り出していくことを通して、自分自身や自分の生活について 考え、そこに新たな気付きを生み出すことを期待している。こうして児童はそれぞれの 対象のよさや特徴、自分との関係や、対象同士の関わりに気付いていく。 ○ これらを踏まえ、生活科の特質に応じた「身近な生活に関わる見方・考え方」として は「身近な人々、社会及び自然を自分との関わりで捉え、比較、分類、関連付け、試行、 予測、工夫することなどを通して、自分自身や自分の生活について考えること」とする。 ②具体的な改善事項 ⅰ)教育課程の示し方の改善 ア 資質・能力を育成する学びの過程についての考え方 ○ 生活科における資質・能力を育む学習過程は、やってみたい、してみたいと自分の思 いや願いを持ち、具体的な活動や体験を行い、直接対象と関わる中で感じたり考えたり したことを表現し、行為していくプロセスと考えることができる。 (別添7‐3を参照) 一人一人の思いや願いを実現していく一連の学習活動を行うことにより、児童の自発 性が発揮され、一人一人の児童が能動的に活動するようになること、体験活動と表現活 動とが繰り返されることで児童の学びの質を高めていくことが重要である。 ○ 具体的な活動や体験を通して、比較したり、分類したり、関連付けたりなどして解釈 し把握するとともに、試行したり、予測したり、工夫したりなどして新たな活動や行動 を創り出すことを通して、自分自身や自分の生活について考え、個別的な気付きが関係 的な気付きへと質的に高まるなど、新たな気付きを生み出すことが期待される。 ○ 熱中し没頭したこと、発見や成功したときの喜びなどは表現への意欲となり、他者に 伝えたり、交流したり、振り返って捉え直したりして表現する活動を行うことにつなが る。小学校に入学したばかりの時期においては、伝え合い表現する学習活動を行うこと が学びの振り返りになる。活動や体験したことを言葉などによって振り返ることで、無 自覚な気付きが自覚的になったり、一つ一つの気付きが関連付いたりするという意義を 持つ。表現することを通じて振り返るという学習を重視する必要がある。 186 イ 指導内容の示し方の改善 ○ 生活科では、内容構成の基本的な視点として、「自分と人や社会とのかかわり」「自分 と自然とのかかわり」 「自分自身」の三つを示しつつ、九つの内容項目と11の視点を示 すとともに、それを育む学習活動が実現するよう15の学習対象を示してきた。 (別添7 ‐4を参照) こうした生活科の内容について、育成を目指す資質・能力の三つの柱を踏まえつつ、 生活科の三つの基本的な視点を踏まえて、その構成を見直す必要がある。 ○ 具体的には、各内容項目について、学習対象を基に内容を構成するのではなく、①伸 ばしたい思考力・判断力・表現力等が発揮され、認識を広げ、期待する態度を育成して いくという点を重視して整理し、②そうした資質・能力を育成するためにふさわしく、 児童の身の回りにある学習対象を、児童の実態や学習環境の変化、社会的要請等を踏ま えて示すことで、内容を整理することが適当である。 ○ 特に、思考力等については、これまでの目標の中で必ずしも明確に示されていないこ とから、できるだけ具体的に示すようにすること、認識を広げることについては、個別 の気付きを関係的な気付きとして質が高まるようにすること、11の視点で示してきた 児童の姿(態度)については、幼児期の終わりまでに育てたい幼児の姿との関連や、中 学年以降の各教科等における学習との関連を考慮しながら見直す。 ○ 目標や内容の示し方は、現行の2年間を通した設定を前提としつつ、第1学年、第2 学年の発達の違い、経験の違いなどを考慮した示し方を工夫する。 ⅱ)教育内容の改善・充実 ○ 生活科においては、身近な幼児や高齢者、障害のある児童生徒などの多様な人々と触 れ合うことを大切にすることとしてきた。多様性を尊重する社会づくりという視点から、 この視点を今後、更に重視していく必要がある。 ○ 健康で安全な生活を営むことについての内容は、生活科の指導の全般にわたっている。 教育課程全体で防災を含む安全教育を通じて育成を目指す資質・能力を明確化し、その 育成に必要な各教科等における指導内容を系統的に示す中で、生活科の教育内容につい て健康・安全の視点からの充実を図る。 ⅲ)学習・指導の改善充実や教育環境の充実等 ア 「主体的・対話的で深い学び」の実現 ○ アクティブ・ラーニングの視点による生活科の授業改善は、これまでと同様に、児童 の思いや願いを実現する体験活動を充実させるとともに、表現活動を工夫し、体験活動 と表現活動とが豊かに行きつ戻りつする相互作用を意識することが重要である。 187 ①「主体的な学び」の視点 ・生活科では、子供の生活圏である学校、家庭、地域を学習の対象や場とし、対象と直 接関わる活動を行うことで、興味や関心を喚起し、自発的な取組を促してきた。こう した点に加えて、表現を行い伝え合う活動の充実を図ることが必要である。 ・小学校低学年は、自らの学びを直接的に振り返ることは難しく、相手意識や目的意識 に支えられた表現活動を行う中で、自らの学習活動を振り返る。振り返ることで自分 自身の成長や変容について考え、自分自身についてのイメージを深め、自分のよさや 可能性に気付いていく。自分自身への気付きや、自分自身の成長に気付くことが、自 分は更に成長していけるという期待や意欲を高めることにつながる。 ・学習活動の成果や過程を表現し、振り返ることで得られた手応えや自信は、自らの学 びを新たな活動に生かし挑戦していこうとする子供の姿を生み出す。こうしたサイク ルが「学びに向かう力」を育成するものとして期待することができる。 ②「対話的な学び」の視点 ・生活科では、身の回りの様々な人々と関わりながら活動に取り組むことや、伝え合っ たり交流したりすることが大切である。伝え合い交流する中で、一人一人の発見が共 有され、そのことをきっかけとして新たな気付きが生まれたり、関係が明らかになっ たりすることが考えられる。他者との協働や伝え合い交流する活動は、一人一人の子 供の学びを質的に高めることにもつながる。 ・また、双方性のある活動が行われ、対象と直接関わり、対象とのやりとりをする中で、 感じ、考え、気付くなどして「対話的な学び」が豊かに展開されることが求められる。 ③「深い学び」の視点 ・生活科では、思いや願いを実現していく過程で、一人一人の子供が自分との関わりで 対象を捉えていくことが生活科の特質であると言える。 ・ 「身近な生活に関わる見方・考え方」を生かした学習活動が充実することで、気付いた ことを基に考え、新たな気付きを生み出し関係的な気付きを獲得するなどの「深い学 び」を実現することが求められる。低学年らしいみずみずしい感性により感じ取られ たことを、自分自身の実感の伴った言葉にして表したり、様々な事象と関連付けて捉 えようとしたりすることを助けるような教員の関わりが求められる。 イ 教材や教育環境の充実 ○ 地域は、児童にとって生活の場であり学習の場である。地域の文化的・社会的な素材 や活動の場などを見いだす観点から地域の環境を繰り返し調査し、それらの素材を教材 化して最大限に生かすことが重要である。 188 ○ 飼育動物や栽培植物といった生きた教材は、児童にとって直接的な体験の機会が減っ ている中で大きな意義を持つものであり、引き続き充実を図ることが必要である。 ○ スタートカリキュラムについては、入学当初の児童の生活面の支援に関する人的なサ ポートも含め、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活 用しながら効果的に組み合わせるカリキュラム・マネジメントが重要となる。校区内の 公立私立の幼稚園等との連携体制、教育委員会と首長部局の連携も望まれる。 ○ 児童の体験的な活動を重視した学習を実施するため、学校内外の様々な人的な協力、 交流が必要となる。学校と地域の円滑な協働体制の構築、関連する施設との連携、獣医 師等の専門家の協力も必要である。 189 生活科において育成を目指す資質・能力の整理 視点 学習 対象 【自分と人 や社会との かかわり】 健康で安全な生 活、身近な人々 との接し方、地 域への愛着、公 共の意識とマ ナー、生産と消 費、情報と交流 (ア~カ) ①学校の施設 ②学校で働く 人 ③友達 ④通学路 知識・技能の基礎 (生活の中で、豊かな体験を通じて、何を感じた り、何に気付いたり、何がわかったり、何ができる ようになるのか) 190 生活 小学校 身近な自然との 触れ合い、時間 と季節、遊びの 工夫(キ~ケ) ⑨公共施設 ⑧公共物 ⑩地域の行 事・出来事 ⑪身近な自然 ⑫身近にある 物 【自分自身】 ⑬動物 ⑭植物 成長への喜び、 基本的な生活習 慣や生活技能 (コ、サ) 学びに向かう力・人間性等 (どのような心情、意欲、態度などを育み、より よい生活を営むか) ■身近な人々や地域に 関わり、集団や社会の一 ■身体を通して関わり、対象に直 員として適切に行動しよう ■具体的な活動や体験を通して形成 接働きかける力 とする態度 する、社会事象に関する関係的な気 付き ■比較したり、分類したり、関連 付けたり、視点を変えたりして対 象を捉える力 ⑥家庭 ⑦地域で生活 したり働いたり している人 (生活の中で、気付いたこと、できるように なったことなどを使って、どう考えたり、試し たり、工夫したり、表現したりするか) ■具体的な活動や体験を通して獲得 する、社会事象に関する個別的な気 付き ⑤家族 【自分と自 然とのかか わり】 思考力・判断力・表現力等の基礎 別添7-1 ■具体的な活動や体験を通して獲得 する、自然事象に関する個別的な気 ■違いに気付いたり、よさを生か 付き したりして他者と関わり合う ■具体的な活動や体験を通して形成 する、自然事象に関する関係的な気 ■試したり、見立てたり、予測し 付き たり、見通しを持ったりして創り出 す力 ■具体的な活動や体験を通して獲得 する、自分自身に関する個別的な気 ■伝えたり、交流したり、振り 付き 返ったりして表現する力 ■具体的な活動や体験を通して形成 する、自分自身に関する関係的な気 付き ⑮自分のこと ■具体的な活動や体験を通して身に 付ける習慣や技能 学 生精 ■身近な自然と関わり、 自然を大切にしたり、遊 びや生活を豊かにしたり しようとする態度 習 活神 上 上的 の のな 自 自自 立 立立 ■自分のよさや可能性 を生かして、意欲と自信 をもって生活しようとする 態度 生活科における教育のイメージ 小学校中学年 探究的な見方・考え方(案) 理科の見方・考え方 各教科等における見方・考え方を総 合的に活用して、広範な事象を多様 な角度から俯瞰して捉え、実社会や 実生活の文脈や自己の生き方と関連 付けること 身近な自然の事物・現象を、 質的・量的な関係や時間的・ 空間的な関係などの科学的な 視点で捉え、比較したり、関係 付けたりするなど、問題解決の 方法を用いて考えること 具体的な活動や体験を通して、身近な生活に関わる見方・考え方を生かし、自立し 生活を豊かにしていくための資質・能力を、次のように育成することを目指す ○活動や体験の過程において、自分自身、身近な人々、社会及び自然の特徴やよさ、そ れらの関わりに気付くとともに、生活上必要な習慣や技能を身に付けるようにする ○身近な人々、社会及び自然を自分との関わりで捉え、自分自身や自分の生活について 考え表現する力を育成する ○身近な人々、社会及び自然に自ら働きかけ、意欲や自信を持って学んだり生活を豊か にしたりしようとする態度を育てる 「スタートカリキュラム」を通じて、各教科等の特質に応じた学びにつなぐ 健康 健な 康心 なと 心体 と体 自立 自心 立心 協同 協性 同性 道徳 道性 徳・ 性規 ・範 規意 範識 意の 識芽 の生 芽え 生え 社社 会会 生生 活活 とと のの 関関 わわ りり 思考力の芽生え 自然 自と 然の と関 のわ 関り わ・ り生 ・命 生尊 命重 尊重 数量・図形、文字等への関心・感覚 言に 葉よ にる よ伝 るえ 伝合 えい 合い 言葉 豊 か豊 なか 感な 性感 と性 表と 現表 現 幼 児 期 の 終 わ り ま で に 育 っ て ほ し い 姿 ※各教科等の「見方・考え方」を踏まえて、関係性を示したものである。また、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の項目の濃淡は、 小学校教育との関連が分かるように示したものであり、基本的にはすべての教科に関わっているが、濃い部分は特に意識的につながり を考えていくことが求められるもの。幼児教育において小学校教育を前倒しで行うことを意図したものではない。 特 別 活 動 <身近な生活に関わる見方・考え方(案)> 身近な人々、社会及び自然を自分との関わりで捉え、比較、分類、関連づけ、試行、予測、工夫 することなどを通して、自分自身や自分の生活について考えること 道 徳 生活科 体 育 <未就園段階: 家庭や地域での生活> 社会的事象の見方・考え方 理科 図 画 工 作 幼児教育 遊びや生活の中で、 幼児期の特性に応じた 「見方・考え方」や 資質・能力を育む学び 総合的な学習の時間 音 楽 接続 幼児期の終わりまでに育ってほしい 姿を手がかりとしながら、幼児の得 意なところや更に伸ばしたいところを 見極め、それらに応じた関わりをした り、より自立的・協同的な活動を促 したりするなど、意図的・計画的な 環境の構成に基づいた総合的な 指導の中で、バランスよく「見方・ 考え方」や資質・能力を育む時期 算 数 191 生活科を中心としたスタートカリキュラ ムの中で、合科的・関連的な指導も 含め、子供の生活の流れの中で、幼 児期の終わりまでに育った姿が発揮 できるような工夫を行いながら、短時 間学習なども含めた工夫を行うことに より、幼児期に総合的に育まれた 「見方・考え方」や資質・能力を、 徐々に各教科等の特質に応じた学 びにつなげていく時期 社会 位置や空間的な広がり、時期や 時間の経過、事象や人々の相互 関係などに着目して社会的事象 を見出し、比較・分類したり総合 したり、国民の生活と関連付ける こと 国 語 小学校低学年 教科等の特質に応じた 「見方・考え方」や 資質・能力を育むとともに、 教科横断的にそれらを 総合・統合していく学び 別 添 7 - 2 生活科の学習過程のイメージ 別 添 7 - 3 生活科の「見方・考え方」(身近な生活に関する見方・考え方) 身近な人々、社会及び自然を自分との関わりで捉え、 比較、分類、関連づけ、試行、予測、工夫することなどを通して、自分自身や自分の生活について考えること 思いや願いをもつ 活動や体験をする 表現する・行為する 感じる・考える 思考力・ 判断力・ 表現力等 192 ■比較したり、分類したり、関連付けた り、視点を変えたりして対象を捉える ■違いに気付いたり、よさを生かしたり して他者と関わり合う ■試したり、見立てたり、予測したり、見 通しを持ったりして創り出す ■対象に関心を持つ ■身体全体で対象と関わる ■自ら対象に働きかける 学びに向かう力・ 人間性等 探究心 他者尊重 好奇心 地域への愛着 自然との触れ合い 意欲 自信 成長 適切な関わり 感性 公共 生命尊重 自分らしさ 創造 感謝 ■伝えたり、交流したり、振り 返ったりして表現する ■生活に生かしたり、生活を 豊かにしたりする 安全 (主に人や社会との関わり) (主に自然との関わり) (主に自分自身) 知識・ 技能 人、社会、自然に対する個別的な気付き 人、社会・自然に対する関係的な気付き 自分自身への気付き (例:学校生活を支えている人々がいること、季節に (例:空間の中でつながり関わっていること、きまり や一定の変化があること など) (例:自分自身が成長したこと、役割が増 えたこと など) よって生活の様子が変わること など) 具体的な活動や体験を通して身に付ける習慣や技能(例:生活のリズム・病気の予防・ルール・マナー、道具を使って物を作る・動植物の世話ができる など) 資質・能力の三本柱、生活科の三つの視点と内容項目(9項目)の関係 資質・能力の3本柱 : 知識・技能の基礎 思考力・判断力・表現力等の基礎 (生活の中で、豊かな体験を通じて、 (生活の中で、気付いたこと、できるようになったことなどを使 って、どう考えたり、試したり、工夫したり、表現したりするか) 何を感じたり、何に気付いたり、何が わかったり、何ができるようになるのか) 参 考 資 料 学びに向かう力・人間性等 (どのような心情、意欲、態度などを育み、よりよい生活を 営むか) 生活科の3つの視点 : 自分と人や社会とのかかわり(●)、自分と自然とのかかわり(■)、自分自身(◆) 生活科の内容項目(平成20年3月告示) (1) 学校の施設の様子及び先生など学校生活を支えている人々や友達のことが分かり(●),楽しく安心して遊びや生活がで きる(●)ようにするとともに,通学路の様子やその安全を守っている人々などに関心をもち(●),安全な登下校ができる ようにする(●)。 (2) 家庭生活を支えている家族のことや自分でできることなどについて考え(●),自分の役割を積極的に果たすとともに(◆), 規則正しく健康に気を付けて生活することができるようにする(◆)。 193 (3) 自分たちの生活は地域で生活したり働いたりしている人々や様々な場所とかかわっていることが分かり(●),それらに親 しみや愛着をもち(●),人々と適切に接することや安全に生活することができるようにする(◆)。 (4) 公共物や公共施設を利用し(●),身の回りにはみんなで使うものがあることやそれを支えている人々がいることなどが分 かり(●),それらを大切にし,安全に気を付けて正しく利用することができるようにする(●)。 (5) 身近な自然を観察したり(■),季節や地域の行事にかかわる活動を行ったりなどして(●),四季の変化や季節によって 生活の様子が変わることに気付き(■),自分たちの生活を工夫したり楽しくしたりできるようにする。 (6) 身近な自然を利用したり,身近にある物を使ったりなどして,遊びや遊びに使う物を工夫してつくり(■),その面白さや自 然の不思議さに気付き(■),みんなで遊びを楽しむことができるようにする(●)。 (7) 動物を飼ったり植物を育てたりして(■),それらの育つ場所,変化や成長の様子に関心をもち(■),また,それらは生命 をもっていることや成長していることに気付き(■),生き物への親しみをもち,大切にすることができるようにする(■)。 (8) 自分たちの生活や地域の出来事を身近な人々と伝え合う活動を行い(●),身近な人々とかかわることの楽しさが分かり (●・◆),進んで交流することができるようにする(●)。 (9) 自分自身の成長を振り返り,多くの人々の支えにより自分が大きくなったこと,自分でできるようになったこと,役割が増え たことなどが分かり(◆),これまでの生活や成長を支えてくれた人々に感謝の気持ちをもつとともに,これからの成長への 願いをもって,意欲的に生活することができるようにする(◆)。 ※下線は学習対象 (7)音楽、芸術(音楽) ①現行学習指導要領の成果と課題を踏まえた音楽科、芸術科(音楽)の目標の在り方 ⅰ)現行学習指導要領の成果と課題 ○ 音楽科、芸術科(音楽)においては、音楽のよさや楽しさを感じるとともに、思いや 意図を持って表現したり味わって聴いたりする力を育成すること、音楽と生活との関わ りに関心を持って、生涯にわたり音楽文化に親しむ態度を育むこと等に重点を置いて、 その充実を図ってきたところである。 ○ 一方で、感性を働かせ、他者と協働しながら音楽表現を生み出したり音楽を聴いてそ のよさや価値等を考えたりしていくこと、我が国や郷土の伝統音楽に親しみ、よさを一 層味わえるようにしていくこと、生活や社会における音や音楽の働き、音楽文化につい ての関心や理解を深めていくことについては、更なる充実が求められるところである。 ○ 今回の学習指導要領の改訂においては、これまでの成果を踏まえ、これらの課題に適 切に対応できるよう改善を図っていくことが必要である。 ⅱ)課題を踏まえた音楽科、芸術科(音楽)の目標の在り方 ○ 音楽科、芸術科(音楽)で育成を目指す資質・能力について、 「知識・技能」、 「思考力・ 判断力・表現力等」、「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱は相互に関連し合い、一 体となって働くことが重要である。このため、必ずしも、別々に分けて育成したり、 「知 識・技能」を習得してから「思考力・判断力・表現力等」を身に付けるといった順序性 を持って育成したりするものではないことに留意する必要がある。 ○ 芸術系教科・科目における「知識」については、一人一人が感性などを働かせて様々 なことを感じ取りながら考え、自分なりに理解し、表現したり鑑賞したりする喜びにつ ながっていくものであることが重要である。知識が、体を動かす活動なども含むような 学習過程を通じて、個別の感じ方や考え方等に応じ、生きて働く概念143として習得され ることや、新たな学習過程を経験することを通じて、知識が更新されていくことが重要 である。 (なお、ここで言う概念の習得が一般概念の習得にとどまるものではないことに 留意する必要がある。) ○ このことを踏まえて、 「知識」に関しては以下のことが重要であり、発達の段階に応じ て整理していくことが必要である。 ・ 〔共通事項〕を学習の支えとして、音楽を形づくっている要素などの働きについて実感を 伴いながら理解し、表現や鑑賞などに生かすことができるようにすること 143 脚注 44 参照。 194 ・芸術に関する歴史や文化的意義を、表現や鑑賞の活動を通して、自己との関わりの中で 理解すること ○ また、芸術系教科・科目における「技能」についても、一定の手順や段階を追って身 に付く個別の技能のみならず、変化する状況や課題に応じて主体的に活用できる技能と して習熟・熟達していくということが重要である。 ○ 以上のような「知識・技能」の整理とともに、 「思考力・判断力・表現力等」、 「学びに 向かう力・人間性等」についても三つの柱に沿った整理を行い、小・中・高等学校を通 じて、音楽科、芸術科(音楽)において育成を目指す資質・能力を別添8‐1のとおり 整理した。 ○ これらを踏まえ、学校段階ごとに育成を目指す資質・能力について、別添8‐2のと おり整理しており、学校段階ごとの教科の目標についても、このような資質・能力の整 理に基づき示すことが求められる。 ○ また、高等学校芸術科は、芸術への永続的な愛好心を育み、感性を高め、豊かな情操 を養う教科であり、一人一人がそれぞれの興味・関心や個性を生かして、芸術と幅広く、 かつ、多様な観点から主体的に関わっていくことが重要である。したがって、今後も現 行と同様に、音楽、美術、工芸、書道の選択制のもと、人間の精神の働きによってつく りだされた有形・無形の成果の総体と言える芸術文化に対する理解を深め、愛着を持つ とともに、学校を卒業した後も、生涯にわたり我が国及び諸外国の芸術文化を尊重する 態度の育成を重視していくことが大切である。 ⅲ)音楽科、芸術科(音楽)における「見方・考え方」 ○ 音楽科、芸術科(音楽)の「見方・考え方」については、以下のとおり整理した。 【小学校音楽科】 音楽に対する感性を働かせ、音や音楽を、音楽を形づくっている要素とその働きの視 点で捉え、自己のイメージや感情、生活や文化などと関連付けること。 【中学校音楽科】 音楽に対する感性を働かせ、音や音楽を、音楽を形づくっている要素とその働きの視 点で捉え、自己のイメージや感情、生活や社会、伝統や文化などと関連付けること。 【高等学校芸術科(音楽)】 感性を働かせ、音や音楽を、音楽を形づくっている要素とその働きの視点で捉え、自 己のイメージや感情、芸術としての音楽の文化的・歴史的背景などと関連付けること。 ○ これらの教科・科目の「見方・考え方」は、現行の学習指導要領において、小学校音 楽科、中学校音楽科で示されている表現及び鑑賞に共通して働く資質・能力である〔共 195 通事項〕とも深い関わりがある。今後、その関連について検討していくことが求められ る。 ○ こうした芸術系教科・科目の「見方・考え方」の特徴は、知性と感性の両方を働かせ て対象や事象を捉えることである。知性だけでは捉えられないことを、身体を通して、 知性と感性を融合させながら捉えていくことが、他教科等以上に芸術系教科・科目が担 っている学びである。また、個別性の重視による多様性の包容、多様な価値を認める柔 軟な発想や他者との協働、自己表現とともに自己を形成していくこと、自分の感情のメ タ認知なども含まれており、そこにも、芸術系教科・科目を学ぶ意義や必要性がある。 ○ また、特に重要な「感性」の働きは、感じるという受動的な面だけではない。感じ取 って自己を形成していくこと、新しい意味や価値を創造していくことなども含めて「感 性」の働きである。また、「感性」は知性と一体化して創造性の根幹をなすものである。 このため、子供たちの創造性を育む上でも、感性を働かせ育む芸術系教科・科目がこの ことを担っている。 ②具体的な改善事項 ⅰ)教育課程の示し方の改善 ア 資質・能力を育成する学びの過程についての考え方 ○ 音楽科、芸術科(音楽)において、資質・能力を育成する学習過程の在り方について、 別添8‐3のとおり図示した。 ○ 音楽科、芸術科(音楽)においては、音や音楽との出会いを大切にし、音楽活動を通 して、音楽を形づくっている要素を聴き取り/知覚し、感じ取って/感受して、音楽的 な特徴と、音楽によって喚起される自己のイメージや感情、音楽の背景などと関連付け ることを、表現及び鑑賞の学習において共通に位置付けた。 ○ このことを支えとして、表現領域の学習では、音楽表現について創意工夫し、音楽表 現に対する思いや意図を持ち、音楽で表現できるようにする過程を示した。また、鑑賞 領域の学習では、音楽のよさや美しさなどについて自分なりの考えを持ち、味わって聴 くことができるようにする過程を示した。 ○ こうした学習過程を通して、生活や社会の中の音や音楽の働きの視点から学んでいる こと、学んだことの意味や価値を自覚できるようにし、このことによって、音楽文化に ついての理解を一層深めることにつなげられるようにすることが重要である。 イ 指導内容の示し方の改善 ○ 音楽科、芸術科(音楽)においては、現行の学習指導要領において、育成する資質・ 能力を明確化しているが、今後、学習内容との関係について三つの柱に沿って整理され 196 た資質・能力や学びの過程の考え方を踏まえて、それらの趣旨を実現すべく、次の点か ら指導内容の示し方を改善する。 ・現行の学習指導要領で複数の資質・能力を関連付けて示している学習内容を、三つの 柱に沿って見直し、A表現、B鑑賞それぞれの領域の中で育成を目指す「知識・技能」 及び「思考力・判断力・表現力等」について整理する。また、別添8‐3に示す学習 過程を学習指導要領の構造に反映する。 ・表現及び鑑賞に関する能力を育成する上で共通に必要となる資質・能力である〔共通 事項〕を、「見方・考え方」との関連を考慮して位置付ける。 ・主として専門学科において開設される教科としての音楽科については、音楽に関する 専門的な内容を指導する教科であることから、各科目における専門的な学習を通して 育成を目指す資質・能力について、三つの柱に沿って整理する。 ⅱ)教育内容の改善・充実 ○ グローバル化する社会の中で、子供たちには、芸術を学ぶことを通じて感性等を育み、 日本文化を理解して継承したり、異文化を理解し多様な人々と協働したりできるように なることが求められている。このため、音楽の伝統や文化を尊重し、実感的な理解を深 めていくことが重要である。 ○ 芸術系教科・科目においては、子供たちが、世の中にある音楽、美術、工芸、書道等 と自分との関わりを築いていけるようになることを大切にしている。しかし、授業の中 で、なぜそれを学ばなければならないのかということを実感することについては、教員 の意識としても、子供たちの意識としても弱いのではないかという指摘もなされている。 このため、授業で学習したことが、これからの自分たちの生活の中で生きてくるという 実感を持てるよう、指導の改善・充実を図ることが求められる。 ○ 子供たちが置かれている生活環境がこれまでと大きく変わってきている。こうした環 境の変化を踏まえて、例えば、我が国のよき音楽文化を伝える教材を扱ったり、実際に ものに触れて感じ取ることや体を使って体験する活動を重視したり、伝統的な書式で和 紙の便箋や封筒を使用して手紙を書いたり、実感を伴う学習にするために畳や床の間と いった伝統的な生活環境を活用したりするなど、学校教育において取り上げなければ出 会うことのない教材や経験することのない活動を、子供たちに提供することも、学校教 育の役割の一つである。 ○ 芸術系教科・科目においては、思考力・判断力・表現力等を高めるため、言語を用い た言語活動を行うほか、言語以外の方法(音や形、色など)を用いた言語活動や、音や 形、色などにより表現されたことを捉えて言語化する言語活動を行っている。また、捉 えたことを、喩えたり、見立てたり、置き換えたりすることは、表現や鑑賞を深めてい く際に重要な活動である。このため、アクティブ・ラーニングの「深い学び」、「対話的 な学び」、「主体的な学び」の視点からの学習・指導の改善・充実を図る上でも、現行の 197 学習指導要領において重視されてきた言語活動については、芸術系教科・科目の特質に 応じた充実を図ることが求められる。 ○ また、 「プログラミング的思考」など、子供達が将来どのような職業に就くとしても求 められる力を育むため、小学校の各教科等においてプログラミングを体験する教育が求 められている。小学校音楽科では、例えば、音楽づくりの学習の中で、プログラミング を体験することなどが考えられる。その際、音楽の学びの本質に照らして適切に位置付 けられるよう、機器の操作に傾斜した学習にならないよう留意するとともに、つくった 音楽を実際に自分の音や声で表すことを大切にすることが重要である。 ⅲ)学習・指導の改善充実や教育環境の充実等 ア 「主体的・対話的で深い学び」の実現 ○ 従来、音楽科、芸術科(音楽)においては、心と体を使って触れたり感じたりする体 験や、人との関わりを通してよさや価値を実感する活動を重視してきた。今後、アクテ ィブ・ラーニングの視点に立ち、活動と学びの関係性や、活動を通して何が身に付いた のかという観点から、学習・指導の改善・充実を進めることが求められる。 ○ 以下、高等学校芸術科(音楽Ⅰ)を例に、 「主体的な学び」、 「対話的な学び」、 「深い学 び」の実現する学習・指導の改善・充実の視点を示す。 ・ 「主体的な学び」の実現のためには、音楽によって喚起されるイメージや感情を自 覚させることが重要である。このことが、イメージや感情を喚起させる要因となった 音楽的な特徴を探ったり、芸術としての音楽の文化的・歴史的背景との関わりを考え たりすることの原動力となり、表したい音楽表現や音楽のよさや美しさなどを見いだ すことに関する見通しを持つことにつながる。また、音楽表現を創意工夫して音楽で 表現したり音楽のよさや美しさを味わって聴いたりする過程で持ったイメージや感情 の動きを振り返り、音や音楽が自分の感情及び人間の感情にどのような影響を及ぼし たのかを考えることが、学んでいること、学んだことの意味や価値を自覚するととも に、音や音楽を生活や社会に生かそうとする態度を育成することとなる。このことが 次の学びにつながっていく。 ・ 「対話的な学び」の実現のためには、一人一人が「音楽的な見方・考え方」を働か せて、音楽表現をしたり音楽を聴いたりする過程において、互いに気付いたことや感 じたことなどについて言葉や音楽で伝え合い、音楽的な特徴について共有したり、感 じ取ったことに共感したりする活動が重要である。客観的な根拠を基に他者と交流し、 自分なりの考えを持ったり音楽に対する価値意識を更新したり広げたりしていく過程 に学習としての意味がある。 ・ 「深い学び」の実現のためには、中学校音楽科における学習を基礎として、生徒が 音や音楽と出会う場面を大切にし、一人一人が「音楽的な見方・考え方」を働かせて、 音楽と主体的に関わることができるようにすることが重要である。その際、知覚・感 198 受したことを言葉や体の動きなどで表したり比較したり関連付けたりしながら、要素 の働きや音楽の特徴について他者と共有・共感したりする活動を適切に位置付ける。 このことが、曲想と音楽の構造や文化的・歴史的背景との関わり及び表現方法、音楽 様式、伝承方法の多様性などの音楽文化について理解することや、どのように音楽で 表すかについて表現意図を持つこと、また楽曲の特徴や演奏のよさや美しさ、自分や 社会にとっての音楽の意味や価値は何かなどの価値判断をすることに関する思考・判 断を促し、深めることにつながる。 イ 教材や教育環境の充実 ○ 音楽科、芸術科(音楽)においては、我が国の音楽文化に親しみ一層の愛着を持つ観 点から、我が国の自然や四季、文化、日本語の持つ美しさなどを味わうことのできる歌 曲を取り上げるようにする。小・中学校音楽科においては、我が国のよき音楽文化を、 世代を超えて受け継がれるようにする観点から、引き続き、歌唱共通教材を示していく 必要がある。なお、その選曲や指導の在り方については検討が必要である。 また、我が国や郷土の伝統音楽を含む我が国及び諸外国の様々な音楽のうち、児童生 徒の実態を踏まえ、指導のねらいに適切なものを幅広く取り扱う必要がある。特に、地 域にある郷土の音楽を、適宜、教材として取り入れることとする。主たる教材などにつ いては、一人一人が「音楽的な見方・考え方」を働かせて、 「主体的な学び」、 「対話的な 学び」、「深い学び」の視点からの学習過程の質的改善につながるような示し方の工夫な どが求められる。 ○ こうした学習指導要領の趣旨を実現できるよう、引き続き、教員養成や教員研修によ る教員の資質・能力の向上、教材や材料、用具、環境等の整備を図ることが求められる。 199 音楽科、芸術科(音楽)において育成を目指す資質・能力の整理 知識・技能 思考力・判断力・表現力等 ・曲想と音楽の構造や文化的・歴史的背景と 200 高等学校 芸術 (音楽) 別添8-1 学びに向かう力・人間性等 ・感性を働かせ、音楽を形づくっている要素 ・音や音楽のよさや美しさなどの質的な世界を の関わり及び表現方法、音楽様式、伝承方法 を知覚し、それらの働きを感受しながら、知 価値あるものとして感じ取る感性 の多様性などの音楽文化について理解するこ 識や技能を得たり活用したりして音楽表現を ・協働して音楽活動する喜びの自覚 とや、音楽を形づくっている要素及び音楽に 創意工夫し、楽曲の背景などと関わらせなが ・芸術としての音楽の学習に主体的に取り組む 関する用語や記号などについて、音楽表現上 ら表現意図を創造すること の働きと関わらせて理解すること 態度 など ・生涯にわたり音楽を愛好する心情 など ・よりよい音環境を求める態度 ・感性を働かせ、音楽を形づくっている要素 ・音楽によって生活や社会を明るく豊かなもの ・個性を生かした音楽表現を創意工夫したり、 を知覚し、それらの働きを感受しながら、知 にする態度 表現意図を音楽で表現したりするための技能 識を得たり活用したりして音楽を自分なりに ・我が国及び諸外国の音楽文化を尊重する態度 を身に付けること 解釈したり、音楽と生活及び社会などとの関 ・美しいものや優れたものに接して感動する、 など 連から音楽を捉えたり、自分や社会にとって 情感豊かな心としての情操 の価値を考えたりし、よさや美しさを味わい、 など 音楽の意味や価値を創造すること など ・音楽に関する専門的な知識及び音楽表現の 技能 高等学校 音楽 ・感性を働かせ、音楽を分析的かつ総体的に ・音や音楽のよさや美しさなどの質的な世界を 捉え、根拠をもって解釈し、明確な表現意 など 価値あるものとして感じ取る感性 図をもったり、音楽作品や演奏などについ ・音楽の専門的な学習に主体的に取り組む態度 て批評する能力を高めたりして、音楽の社 ・音楽文化の発展と創造に寄与する態度 会的・文化的な意味や価値から芸術文化の ・美しいものや優れたものに接して感動する、 発展について考え、創造すること 情感豊かな心としての情操 など など 下線部は、表現及び鑑賞の活動の支えとなる指導内容 音楽科、芸術科(音楽)において育成を目指す資質・能力の整理 知識・技能 思考力・判断力・表現力等 ・曲想と音楽の構造や背景との関わり及び音 ・音楽に対する感性を働かせ、音楽を形づ ・音や音楽のよさや美しさなどの質的な世界 201 楽の多様性などの音楽文化について理解す くっている要素や要素同士の関連を知覚し、 ることや、音楽を形づくっている要素及び それらの働きが生み出す特質や雰囲気を感受 ・協働して音楽活動する喜びの自覚 それらに関わる用語や記号などについて、 しながら、知識や技能を得たり活用したりし ・音楽の学習に主体的に取り組む態度 音楽における働きと関わらせて理解するこ て、音楽表現を創意工夫し、どのように表す ・音楽を愛好する心情 と かについて思いや意図を生み出すこと など 中学校 音楽 学びに向かう力・人間性等 を価値あるものとして感じ取る感性 ・音環境への関心 など ・音楽によって生活を明るく豊かなものにす る態度 ・自分なりに音楽表現を創意工夫したり、思 ・音楽に対する感性を働かせ、音楽を形づ ・我が国の音楽文化への愛着や、諸外国の いや意図を音楽で表現したりするための技 くっている要素や要素同士の関連を知覚し、 能を身に付けること それらの働きが生み出す特質や雰囲気を感受 ・美しいものや優れたものに接して感動する、 など しながら、知識を得たり活用したりして、音 楽を自分なりに解釈したり、音楽と人々の暮 様々な音楽に関わる態度 情感豊かな心としての情操 など らしなどとの関連から音楽を捉えたり、自分 にとっての価値を考えたりし、よさや美しさ を味わい、音楽の意味や価値を生み出すこと など 下線部は、現行の学習指導要領で示している〔共通事項〕と関連する箇所 音楽科、芸術科(音楽)において育成を目指す資質・能力の整理 知識・技能 思考力・判断力・表現力等 ・曲想と音楽の構造との関わりについての理 ・音楽に対する感性を働かせ、音楽を形づ ・リズム感、旋律感など音楽の特性を感じ取 解、音符、休符、記号や音楽に関わる用語 くっている要素を聴き取り、それらの働きが の意味や働きについて音楽活動を通した理 生み出すよさや面白さなどを感じ取りながら、・協働して音楽活動する喜びの実感 解 知識や技能を得たり活用したりして、音楽表 ・音楽の学習に主体的に取り組む態度 など 202 小学校 音楽 学びに向かう力・人間性等 現を工夫し、どのように表すかについて思い ・音楽を愛好する心情 や意図を見いだす力 ・自分で音楽表現をしたり友達と一緒に音楽 ・生活の中の様々な音や音楽への気付き など 表現をしたり、自分の思いや意図を音楽で 表現したりするための技能 ・音楽経験を生活に生かし、生活を明るく潤 いのあるものにする態度 ・音楽に対する感性を働かせ、音楽を形づ など る感性 くっている要素を聴き取り、それらの働きが ・我が国や諸外国の音楽に親しみ、それらを 大切にする態度 生み出すよさや面白さなどの感じ取りながら、・美しいものや優れたものに接して感動する、 知識を得たり活用したりして、楽曲や演奏の よさなどを考え味わい、自分にとっての音楽 情感豊かな心としての 情操 など のよさなどを見いだす力 など 下線部は、現行の学習指導要領で示している〔共通事項〕と関連する箇所 音楽科、芸術科(音楽)における教育のイメージ 別添8-2 【高等学校】芸術科(音楽Ⅰ) ◎ 音楽的な見方・考え方を働かせて、音楽の幅広い活動を通して、生活や社会の中の音や音楽、音楽文化と深く関わる資質・能力を次のとおり育成 することを目指す。 ① 曲想と音楽の構造や文化的・歴史的背景との関わり及び音楽文化の多様性について理解するとともに、創意工夫を生かした音楽表現をするため に必要な技能を身に付けるようにする。 ② 音楽表現を創意工夫したり、音楽を価値判断しながらよさや美しさを深く味わって聴いたりする力を育てる。 ③ 音楽活動の喜びを味わい、我が国及び諸外国の様々な音楽と幅広く関わり、生涯にわたり音楽を愛好する心情をはぐくむとともに、感性を高め、芸 術としての音楽によって生活や社会を明るく豊かなものにする態度を養う。 【中学校】音楽科 ◎ 203 音楽的な見方・考え方を働かせて、表現及び鑑賞の幅広い活動を通して、生活や社会の中の音や音楽、音楽文化と豊かに関わる資質・能力を次 のとおり育成することを目指す。 ① 曲想と音楽の構造や背景との関わり及び音楽の多様性について理解するとともに、創意工夫を生かして音楽表現をするために必要な技能を身に 付けるようにする。 ② 音楽表現を創意工夫したり、音楽を自分なりに価値判断しながらよさや美しさを味わって聴いたりする力を育てる。 ③ 音楽活動の楽しさを味わい、音楽を愛好する心情をはぐくむとともに、音楽に対する感性を豊かにし、豊かな情操を養う。 【小学校】音楽科 ◎ 音楽的な見方・考え方を働かせて、表現及び鑑賞の活動を通して、生活や社会の中の音や音楽と豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成するこ とを目指す。 ① 曲想と音楽の構造との関わりについて理解するとともに、表したい音楽表現をするために必要な技能を身に付けるようにする。 ② 音楽表現を工夫したり、楽曲や演奏のよさなどを見いだしたりしながら音楽を味わって聴いたりする力を育てる。 ③ 音楽活動の楽しさを味わい、音楽を愛好する心情と音楽に対する感性をはぐくむとともに、豊かな情操を養う。 【幼児教育】 (※幼児期の終わりまでに育ってほしい姿のうち、特に関係のあるものを記述) ・身近な事象に積極的に関わり、物の性質や仕組み等を感じ取ったり気付いたりする中で、思い巡らし予想したり、工夫したりなど多様な関わりを楽しむようになるとともに、友達などの 様々な考えに触れる中で、自ら判断しようとしたり考え直したりなどして、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにするようになる。(思考力の芽生え) ・みずみずしい感性を基に、生活の中で心動かす出来事に触れ、感じたことや思い巡らしたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりして、表現する喜びを味わい、 意欲が高まるようになる。(豊かな感性と表現) 音楽科、芸術科(音楽)における学習過程のイメージ 表現領域の学習 (主体的・創造的に音楽表現する) 音や音楽との出会い 別添8-3 鑑賞領域の学習 (主体的・創造的に鑑賞する) 歌ったり、楽器を演奏したり、音を出したり、聴いたりしながら 聴き取る/知覚すること 感じ取る/感受すること 知覚・感受したことを… 言葉や体の動きなどで表す 比較する 関連付ける 音楽活動を通して、音楽的な特徴と、音楽によって喚起される 自己のイメージや感情、音楽の背景などと関連付けて… 表したい音楽表現を見いだす見通しをもって 協働的に学習する 創意工夫を生か した音楽表現に 必要な技能を身 に付ける 試行錯誤しながら、 どのように音楽で 表現するかについて 思いや意図をもつ 音楽のよさや美しさなどを見いだす見通しをもって 協働的に学習する 言葉で説明したり批評したりするなどしなが ら、楽曲の特徴や演奏のよさなどを考えたり、 音楽を解釈したり、価値を考えたりする 思いや意図を音楽で表現する 知識 などしながら、音楽との一体感を味わったり、要素の働きや音楽の特徴について他者と共有・共感したりする 関連付けたり組み合わせたりしながら、習得・活用する 知識・技能 204 関連付けたり組み合わせたりしながら、習得・活用する 音楽を形づくっている要素 (や要素同士の関連)の働きが生み出 すよさや面白さ、特質や雰囲気などを 音楽を形づくっている要素 (や要素同士の関連)を よさや美しさなどを味わって聴く 生活や社会の中の音や音楽の働きの視点から、学んでいること、学んだことの意味や価値などを自覚する 豊かな情操 音楽に対する感性
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