より - 新潟県医師会

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郡市
医 師 会 より
十日町市中魚沼郡医師会
富
十日町市では平成の大合併から10年を経過した
が、人口減少に歯止めがかからない。津南町とあ
わせても9千人余りが減って十日町医療圏の人口
は6万6千人程となった。高齢者人口はすでに横
ばいなので医療ニーズや介護ニーズには変化がな
いはずであるが、在宅での介護の担い手がいない
高齢者単身世帯、老夫婦世帯や、老親と独身の子
世帯などが増えており、要介護認定者数は年4%
以上の割合で伸びている。
十日町市・津南町では、この春に2病院の閉院
と縮小で療養病床が一気に142床なくなった。患
者数の減少というよりは、医師、とりわけ看護師
の不足によるところが大きい。4ヶ所あった市営
の診療所も相次ぐ医師の退職により、2診療所は
休診中(実質廃止)
。残った2診療所も1人の医
師の午前・午後での掛け持ち診療となっている。
一般診療所会員の高齢化も進んでいる。人口減に
よる外来患者数の減少もあってか、新規開業の話
も聞かれなくなった。いったい2025年にいくつの
診療所が残っているのだろうか?
この5月にようやく新外来棟が完成した県立十
日町病院でも常勤医師が減っている。各科の人員
削減と眼科・放射線科などの休診が続いているが、
地域の救急を一手に担う現体制を、魚沼基幹病院
との連携強化でなんとか維持していただきたいと
願っている。
そんな中で6月22日魚沼医療圏での地域医療構
想会議が開催された。構成団体の多さと、準備さ
れた資料の膨大さに驚く。しかし資料はアップ
デートされていない。例えば十日町医療圏の診療
所数は40となっていた。このデータは、休診中の
国保診療所や週数時間しか開かれない特養の施設
内診療所を含んでおり、
実情を反映していない
(実
際は19)。病床数も訂正されておらず、これで圏
域の将来を決める重要な協議が進むのだろうかと
不安になった。
地域医療構想では地域をひとつの大きな病院と
考えることになる。病床機能転換と再配置により
新潟県医師会報 H28.8 № 797
田
浩
急性期とリハ病床からなる入口は決めることがで
きるが、出口となる慢性期病床と在宅医療等のあ
るべき形がまったく見えて来ない。前述のように
病床数がすでに自然に整理されてしまった上で
は、慢性期の治療を要する要介護状態の患者さん
は、介護施設入所か在宅医療のどちらかを頼るこ
とになる。昨年10月の時点では、十日町市の特養
待機者は731人。要介護3以上の在宅療養者は336
人という。乏しい医療資源のもと、東京23区より
広い地域に在宅医療や介護の必要者が点在し、雪
国特有の高床式の住宅構造(一階が車庫で二・三
階が住居)や、とりわけ真冬の豪雪には命の危険
も伴うなど、訪問診療・訪問看護・訪問介護を阻
む要素も多い。できれば市・町の中心部に入居型
介護施設を集めて運営してもらえると往診する側
には有り難い。しかし頼みの社会福祉法人でもそ
れぞれが深刻な人手不足だという。
そんな中で十日町市中魚沼郡医師会は、4月1
日より在宅医療と介護・福祉の連携を目指して「つ
まり医療介護連携センター」を立ち上げた。国・
県の地域医療介護総合確保基金をもとに運営する
「在宅医療推進センター」と市町村の介護保険に
資する「在宅医療介護連携支援センター」を一体
化させた組織である。基金・補助金の出所が異な
るため財務が面倒になるが、両センターの目指す
ところはほぼ一緒、地域包括ケアの推進である。
当医師会はこれまでも新潟県のモデル事業や地域
医療再生基金を利用して、各種講演会を企画した
り、研修会や事例検討会を開催したりと、医療と
介護での顔の見える関係づくりに努めてきた。ま
た、多職種が効率的に連携するための ICT の開
発と利用を進めてもいる。いずれにしても少ない
医療資源(施設・人材・資金)を有効に利用して
行かなければ生き残れないからだ。今後も行政を
はじめとして、在宅療養支援病院(中核病院)
、
介護支援専門員、訪問看護ステーションなどとの
協議が目白押しである。
(十日町市中魚沼郡医師会長)