SLE(全身性エリテマトーデス)を対象とした I型インターフェロンの制御を目的とする 新たな薬剤の開発 関西医科大学血液呼吸器膠原病内科 伊藤量基 [email protected] 宮本理恵 [email protected] 1 研究背景 Ⅰ型インターフェロンの産生亢進が 自己免疫疾患の病因に関与。 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、強皮症(SSc)、 シェーグレン症候群、皮膚筋炎(DM) 2 全身性エリテマトーデス 全身の臓器に原因不明の炎症が起こる、自己免 疫疾患の一種である。 原因は不明だが、免疫の異常が関与。 難病に認定されている。 難病申請者:43,177人(平成8年) 20-40歳代の若年女性に多い。 症状は多彩。 3 全身性エリテマトーデスの治療 現在、根治にいたる治療法はなく、終生に わたるステロイド療法が中心である。 そのため、ステロイドの副作用(肥満、骨粗 鬆症、高血圧、糖尿病、易感染性など)が 問題となる。 近年、新たな治療法の研究が加速してい る。 4 樹状細胞とは? Dendritic cell(DC) 免疫監視機構の中枢に位置し、抗原提示細胞として種々のエフェクター細胞を 制御する樹状細胞は、様々な炎症性疾患の発症ならびにその進展に重要な役 割を果たすことが判明してきている。 CD11c+ mDC Plasmacytod DC 5 リンパ球系樹状細胞=Ⅰ型インターフェロン産生細胞 Anti-microbial response TLR-9 Viruses, CpG-DNA ssRNA IFN-α TLR-7 Autoimmune response リンパ球系樹状細胞:plasmacytoid dendritic cell 6 Pathogenic spiral in SLE ウィルスまたは細菌感染 トリガー リンパ球系樹状細胞 I型 IFNs 自己DNA I型 IFNs 分化 単球 活性化 活性化 自己抗体 抗原提示t 自己反応性 CD4+ T cells 自己反応性 B cells activation 組織障害 抗原提示 ミエロイド系樹状細胞 自己反応性 CD8+ T cells アポトーシス 取り込み アポトーシス小胞 7 New agent BAY11-7082 (E)3-[(4-methylphenyl)-sulfonyl]-2-propenenitrile) (NF-κB 阻害薬) MW: 207.3 BAY11 は、 NF-κB経路の上流を阻害する試薬として発 見された。BAY11は、IκB kinase (IKK) の阻害薬である。 また、BAY11 は、アジュバント関節炎モデルのラットの 下肢の浮腫を減少させたとの報告がある。 BAY11のヒト樹状細胞に対する作用の検討報告は、 現在のところない。 8 Plasmacytoid DC Plasma membrane endosome TLR7 BAY11 TLR9 MyD88 MyD88 TRAF3 IKKβ OPN TAKI TRAF6 IRAK1 IRAK4 IRF7 PI3K Iκ B MAPK p50 p65 IRF4 ? BAY11 IKKα IRF5 IRF8 Iκ B p50 IRF7 p65 cytosol nucleus MAPK p50 p65 IL-6 TNF-α CD80 CD86 IRF7 IFN-α IFN-β IFN-ω IFN-λ 9 Method BAY11-7082 CpG 健常人 単核球(PBMCs) 24 h analysis BAY11は、CpG刺激によるヒト単核球(PBMC)からのIFN-α産 生を阻害する IFN-α (pg/ml) TNF-α (pg/ml) 10000 500 * 7500 400 * * CpG ** 5000 300 200 2500 100 0 BAY11(M) 0 (-) 10-9 10-8 10-7 10-6 (-) 10-9 10-8 10-7 10-6 10 Method CpG or Loxoribine BAY11-7082 24 h analysis ヒトリンパ球系樹状細胞 11 BAY11 はヒトリンパ球系樹状細胞からのIFN-α産生を阻害する A B IFN-α (pg/ml) TNF-α (pg/ml) * 75000 3000 * * * 50000 2000 ** ** ** 1000 0 0 5000 2000 4000 1500 * loxo * * ** ** 1000 500 ** ** ** 0 2.1 34 33 3.8 BDCA4 0 (-) BAY11(M) 11 1000 * 2000 36 ** 25000 3000 BAY11 (3×10-7 M TNF-α CpG BAY11 (10-8 M) (-) 4000 IFN-α 100000 (-) -9 10 -8 10 -7 10 10-9 10-8 10-7 12 IFN-α産生に関わる重要な転写因子であるIRF7の核内移行を BAY11は阻害する BAY11は、NF-κBのリン酸化を軽度抑制する 13 CpG BAY11-7082 Method 24 h analysis 全身性エリテマトーデス患者の単核球(PBMCs) BAY11 は、全身性エリテマトーデス患者の単核球より 産生されるIFN-αを阻害する 14 Method BAY11-7082を腹腔内に投与 (10 mg/kg or 5 mg/kg bodyweight) 50 μg/head poly Uを静脈内投与 1h 1h 3h 6h C57BL/6 mice 血清を回収 15 マウスにBAY11 を投与すると、 poly U投与により上昇した血清IFN-αが低下した IFN-α (pg/ml) 500 ** ** * ** ** * 400 300 200 100 0 3h 1h 6h control BAY 5 mg/kg body weight BAY 10 mg/kg body weight 16 Plasmacytoid DC Plasma membrane endosome TLR7 BAY11 TLR9 MyD88 MyD88 TRAF3 IKKβ OPN TAKI TRAF6 IRAK1 IRAK4 IRF7 PI3K Iκ B MAPK p50 BAY11 p65 IRF4 IKKα IRF5 IRF8 Iκ B p50 IRF7 p65 cytosol nucleus MAPK p50 p65 IL-6 TNF-α CD80 CD86 IRF7 IFN-α IFN-β IFN-ω IFN-λ 17 自己免疫疾患においてインターフェロンが引き起こす悪循環 IFN-related vicious spiral in autoimmune diseases 組織障害 リンパ球系 樹状細胞 agent BAY11-7082 悪循環 自己免疫疾患 サイトカイン インターフェロン-α/β 18 まとめ BAY11 は、樹状細胞の機能を調節することにより、イン ターフェロン環境を抑制する。このBAY11による抑制効果 は、今後全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患に対 する治療戦略の開発の新たな基盤に繋がる可能性がある。 19 従来技術とその問題点 全身性エリテマトーデスに対して、現在、 根治にいたる治療法はなく、終生にわたる ステロイド療法が中心である。 そのため、ステロイドの副作用(肥満、骨粗 鬆症、高血圧、糖尿病、易感染性など)が 問題となる。 20 新技術の特徴・従来技術との比較 全身性エリテマトーデスの新規治療として幹細胞移植 やrituximab が有効であるとの報告があるが、それら と比較し、BAY11は低分子化合物であり、安定性が 高いため、合成コストを抑えられる可能性がある。 ステロイドの副作用(肥満、骨粗鬆症、高血圧、糖尿 病、易感染性など)が避けられる可能性がある。 21 想定される用途 全身性エリテマトーデス、尋常性乾癬などⅠ型IFNの過 剰産生を原因とする自己免疫疾患の治療。 関節リウマチやクローン病などのTNFαが関与する自己 免疫疾患の治療。 多発性骨髄腫、乳がんなどNF-κB関連の抗癌剤 想定される業界 医薬品メーカー 22 実用化に向けた課題 BAY11の生体内投与による安全性、副作用に 対する検討。 現在は研究試薬であり、医薬品としての開発 企業への期待 医薬品としての開発に対するサポート 23 本技術に関する知的財産権 発明の名称:インターフェロン関与自己免疫疾患 抑制剤 出願番号:特願2010-102624 出願人:学校法人関西医科大学 発明者:伊藤 量基、宮本 理恵 お問い合わせ先 関西医科大学 知的財産アドバイザー 三島 健 TEL 06−6993 − 9628 FAX 06−6992 − 1409 e-mail mishimak@takii.ac.jp 24
© Copyright 2024 ExpyDoc