含ケイ素高発光型蛍光物質を 用いた蛍光プローブの開発 群馬大学 理工学研究院 分子科学部門 准教授 森口 朋尚 技術の背景 蛍光プローブ法 蛍光物質 標的分子 発光 特定の標的分子と結合したときのみ蛍光発光を示す分子検出型 プローブ レセプタータンパク質とリガンド 正常遺伝子と変異型遺伝子の区別 蛍光核酸プローブ 特定の配列をもった標的遺伝子が存在する場合のみ結合して 蛍光発光を示す モレキュラービーコンプローブ 標的遺伝子 消光剤 蛍光剤 標的遺伝子が存在する場合のみ、結合して高次構造が解消して 蛍光発光を示す 従来技術とその問題点 • モレキュラービーコンプローブは実用化されて いるが、プローブ分子に蛍光剤と消光剤を同 時に導入する必要があり、コスト面、合成技術 面で問題点がある。 • 高感度で生体分子をセンシングするためには、 より高発光型の蛍光物質を開発する必要が ある。 新技術の概要 Me Me Si λem = 377 nm ΦF = 0.64 λem = 373 nm ΦF = 0.32 Me Me Si λem = 439 nm λem = 448 nm ピレンやペリレンなどの多環性芳香族化合物にケイ素原子を 導入すると蛍光波長が長波長化し、蛍光強度が増加する 新規蛍光物質の合成方法 Br Me Me Me Si Cl Me Si N3 Me N MeN Si N 種々の官能基を導入可能 Me Me Si Me Me Si HO Me NH2 O C Me Si N H O C DNAへの導入法 Me Me Si Cl Me Me Si OH DNA自動合成機へと適用可能な 合成ユニットが合成できれば、通 常のDNA合成プロトコールを用 いてDNAへと容易に導入可能 Me Me Si O O P N(i-Pr)2 CN ダンベル型モレキュラービーコン DNA中に導入し、遺伝子解析プローブに応用 G A TACTGTTTT C G TGACAAAA G A A 標的遺伝子 CAGTAAGTACTGTTTTCGGAAAAA TGTTTCATGACAAAAGCC 消光 Me Me Si O O P O O 標的遺伝子の有無を 目視により識別可能 標的なし 標的あり 新技術の特徴・従来技術との比較 • 標的遺伝子の一塩基の違いを蛍光発光強度 の変化で識別することができる。 • 蛍光発光が核酸塩基によって引き起こされる ので、消光剤を導入する必要がない。 • 蛍光剤をDNAの5′-末端に導入するので 、 DNA自動合成機を用いて簡便に合成できる。 想定される用途 • 特定遺伝子の変異による一塩基の違いを簡 便に識別可能 • 均一溶液での検出が可能であり、DNAマイク ロアレイなどを用いることなく、遺伝子解析が 可能 技術の背景 コレステロール分布異常は脂質異常症や動 脈硬化等の生活習慣病を誘起することや、コ レステロール動態に異常のある先天性疾患 等が知られており、細胞内輸送機構の解明は、 コレステロール分布の制御を知るうえで極め て重要 HO 従来技術とその問題点 細胞内のコレステロールの挙動を追跡する手法 蛍光等で標識されたコレステロールアナログを膜 に取り込ませる 現在汎用されている蛍光性 コレステロールアナログ HO デヒドロエルゴステロール (DHE) 欠点:蛍光強度が弱く、明瞭 な蛍光像が得られにくい 新規蛍光コレステロールアナログ O H Me Me H N (CH2)n N Si n = 2, 6 リンカーの構造 HO O Me H N (CH2)n Si Me n = 1~3 蛍光剤 HO 目的に応じて蛍光剤の種類、リンカーの構造を組み合わせる 蛍光プローブの合成例 Me Me Si Cl Me Me H Si N (CH2)n NH2 H2N (CH2)n NH2 O OH O H Me Me H N (CH2)n N Si HO HO 利点:市販の試薬を用いて短工程、高収率で容易に合成できる 新技術の特徴・従来技術との比較 5 min 1 hour 2 hours 16 hours DHE (50 µM) Pyrene-Chol (25 µM) 従来の蛍光プローブ(DHE)に比べて、明瞭な蛍光像が得られる 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来のコレステロールプローブ同様に、細胞 内でコレステロールと同様の挙動を示した。 • 従来から用いられているDHEと比較して、よ り強い蛍光発光を示し、さらに細胞内挙動に ついてDHEでは得ることができなかった明瞭 な像を得ることができた。 • 抗ピレン抗体を用いた多重染色が可能 想定される用途 • コレステロール以外の生体分子にも導入可 能であり、ガンマーカーなどの微量生体成分 の可視化も可能 • 脂溶性の高い蛍光色素であるため、細胞や 組織などの脂溶性領域を特異的に染色可能 • 環境汚染物質などの生体成分以外の検出 実用化に向けた課題 • 蛍光物質の光安定性 蛍光物質は光照射により、徐々に分解する 性質をもっている • 蛍光プローブの生体適合性 蛍光プローブを用いることによる毒性評価 • 種々の測定装置との適合性 蛍光顕微鏡などの既存のハードとの組み合 わせの評価 企業への期待 • 蛍光物質を蛍光プローブ以外の分野への応 用を希望。 • 種々の官能基の導入が容易であり、新規な 蛍光標識化試薬としての適用範囲が広く、試 薬としての需要があると考えられる。 本技術に関する知的財産権 発明の名称:含ケイ素蛍光化合物および該化合物 を用いた蛍光標識剤 出願番号:特願2007-75414 出願人:国立大学法人群馬大学 発明者:篠塚和夫、森口朋尚、竹内利行、穂坂正博 お問い合わせ先 群馬大学TLO TEL 0277-30-1171 FAX 0277-30-1178 e-mail: [email protected]
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