Ⅱ 明日の臨床に向けた撮像法の実際 3.Synthetic MRI の臨床応用と 今後の展望 萩原 彰文* 1,2 / 堀 正明* 1 / 中澤 美咲* 1 Andica Christina * 1 / 青木 茂樹* 1 * 1 順天堂大学医学部放射線診断学講座 * 2 東京大学大学院医学系研究科放射線医学講座 従来法の MRI では,撮像時にあらかじ 画像を取得する(図 1)。Synthetic MRI FLAIR では脳表が高信号に描出される め設定した TR,TE,TI を用いて 1 種類の では複数の TI で取得された画像から T 1 アーチファクトが出現するため,読影の コントラスト強調画像しか取得することが 緩和曲線を推定し,曲線から T 1 値およ 際には注意が必要となる。これは組織間 できない。一方,Synthetic MRI では,1 回 び PD を算出する。また,複数の TE で でのパーシャルボリューム効果に起因し のスキャンから任意のコントラスト強調画 取得された画像から同様に T 2 値を算出 たアーチファクトと考えられる。現在は, 像を取得することができる。撮像時間の短 する。これらの定量値を基に任意のコン Synthetic MRI は 2 D でしか撮像するこ トラスト画像を合成することができる とができないため,3 D 撮像が可能とな 縮が可能であり,また,撮像前には予測 されなかった病変に対してより適切なコン トラスト強調画像を提供することも可能 である。順天堂大学医学部附属順天堂医 院では,350 例程度の症例の集積があり, その経験を踏まえて Synthetic MRI の臨 ればこのような問題は解決できうるもの (図 2) 。 Synthetic MRI の定量値 および画質の評価 と思われ,その登場も待たれるところで ある。 Synthetic MRI では各組織の定量値 を計測しているため,T 1(R 1)値,T 2 (R 2)値,PD を定量マップとして表示 床応用や定量値を用いた病変解析につい Synthetic MRI と従来法 MRI で取得 て紹介していく。 した画像を比較したところでは,T 1 強 することができる(図 3)。ソフトウエア Synthetic MRI の原理 調画像・T 2 強調画像ではあまり差はな ( “SyMRI” ,SyntheticMR 社製,ス いが,Synthetic FLAIR では正常構造 ウェーデン)上では,ROI を使用して任 のコントラストノイズ比が従来法に比し 意の部位の各定量値や散布図を表示す Synthetic MRI では,1 回のスキャン て若干低くなる 。また,S y n t h e t i c ることができる。 3) データから T 1 値,T 2 値,プロトン密度 (以下,PD)の定量を行う。これらの定 量 値を用いて,後から仮 想 上の T R, real TE,TIを設定することにより任意のコン トラスト強調画像を作成することができる。 TE 1 この設定はプリセットで行うことができ, imaginary また,リアルタイムに変更することも可能 である。Synthetic MRI の撮像には, QRAPMASTER(quantification of real relaxation times and proton density by multi-echo acquisition of TE 2 saturation-recovery using turbo spinecho readout)と呼ばれるパルスシーケ imaginary ンスが用いられる 1)。QRAPMASTERは multi-delay,multi-echo で行われ,1 つ のスライスで 4 種類の TI と 2 種類の TE を用い,実画像・虚画像の合計 16 枚の 〈0913-8919/16/¥300/ 論文 /JCOPY〉 TI 1 TI 2 TI 3 TI 4 図 1 Synthetic MRI 撮像データ 各スライスで 4 種の TI,2 種の TE を用いて実画像・虚画像の 16 枚を撮像する 2)。 INNERVISION (31・9) 2016 13
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