生体分子固定化のための 流動性ある自己組織化膜製造法 岐阜薬科大学 薬物送達学大講座 薬品物理化学研究室 教授 近藤 伸一 1 高分子を基材とするバイオチップ開発の問題点 • 高分子基材の利点:焼却処分が可能 (ガラス基材では廃棄と取り扱いが問題) • 高分子基材の問題点: 生体分子を固定化するための官能基がない 表面処理による官能基の導入 → 経時的に脱離する 2 プラズマを利用した持続性ある親水性表面構築法 疎水性プラズマ架橋性高分子 VEMAの収着 O O O CH2 CH CH CH O CH3 アルゴンプラズマ照射 によるVEMAの固定化 n VEMA Maleic anhydride-methylvinylether copolymer 加水分解 架橋反応 加水分解によるカルボ キシル基の生成 HOOC COOH CH2 CH CH CH 持続性ある親水性の導入 O CH3 n VEMAC Maleic acide-methylvinylether copolymer 3 プラズマ表面処理による生体分子の固定化法 O= O =O CH2CH CH CH OCH3 n プラズマ 表面処理 プラズマ架橋反応に よる高密度固定化 -特徴・持続性ある高分子の固定化が可能 →繰り返し利用可能 VEMAの収着 ・様々な官能基を有する高分子の 固定化が可能 プラズマ架橋性 高分子基板 加水分解 →幅広い応用 抗体の固定化 酵素の固定化 高密度のカルボキシル基 による高活性表面の構築 アミド結合 H N O =C スペーサー 分子の導入 抗原結合部位 プロテインA H N O =C 抗体 プロテイン H N Aの導入 O =C 抗体のFc 部位との 特異的結合 スペーサー スペーサー 分子の固定化 N H C=O H N O =C 抗体 H N O =C 基板 4 プラズマを利用したリン脂質自己組織化膜の構築 生体分子 タンパク質 リン脂質 バイオミメティックアプローチ 生体膜 リン脂質 LDPE シート 本研究のリン脂質自己組織化膜構築法の概要 PC HMDA カルボキシル基 ( -COOH ) Hexamethylene diamine (HMDA) ホスファチジ ルコリン (PC) 懸濁液 縮合反応 LDPE-VEMAC LDPE-HE LDPE-PC-SA 5 リン脂質自己組織化膜の表面構造の特徴 LDPE-HE CH2OCOR CHOCOR + N (CH3)3 CH2 O O P O CH2 CH2 O (PC) 1700cm-1 1077cm-1 Absorbance LDPE-HE (自己組織化前) LDPE-PC-SA LDPE-PC-SA (自己組織化後) 1800 1600 1400 1200 1000 cm-1 6 リン脂質自己組織化膜への脂肪酸の導入 1.リン脂質自己組織化膜へのス テアリン酸(StA)の導入とそ の膜安定性 LDPE-HE CH3-(CH2)16-COOH ステアリン酸 (StA) 2.StA含有リン脂質自己組織化膜 へのアルブミンの固定化 リン脂質自己組織化膜 へのステアリン酸の導入 LDPE-StA-PC-SA CH2OCOR CHOCOR + N (CH3)3 CH2 O O P O CH2 CH2 O Phosphatidyl Choline (PC) 生体分子の固定化 LDPE-StA-PC-SA-Biomolecules 7 0.4 0.3 0.2 0.1 0 StA / PC Ratio of eluted PC / % Surface density of StA /nmol/cm2 リン脂質自己組織化膜への脂肪酸の導入と膜安定性 100 80 60 40 20 0 0 10 2 4 6 8 Ratio of StA against PC. Fig. Effect of the ratio of StA against PC on the surface density of StA on LDPE-StA-PC-SA. PC concentration ; 1mM. LDPE LDPE-VEMAC LDPE-HE LDPE-StA-PC-SA 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 Temperature / ℃ Fig. Plots of the elution ratio of PC adsorbed on LDPE,LDPE-VEMAC and LDPE-HMDA against temperature. 8 Surface density of immobilized Albumin /nmol/cm2 StA含有リン脂質自己組織化膜表面へのAlbuminの固定化 0.008 FITC FITC 0.007 0.006 0.005 LDPE-StA-PC-SAAlbumin 0.004 LDPE-StA-PC-SA-Albumin LDPE-StA-PC-SAAlbumin-FITC LDPE-StA-PC-SA 0 0 0.1 0.2 0.3 Surface density of StA /nmol/cm2 Fig. Effect of surface density of StA on surface density of immobilized Albumin. Method ; Bradford method Dye ; Coomassie Brilliant Blue G-250 Standard ; Albumin,Bovine 100 µm 100 µm Fig. Confocal fluorescence microscopy of surface modified LDPE conjugated with FITC-I. FITC-I ; Fluorescein-4-isothiocyanate 9 リン脂質自己組織化膜の膜流動性 FITC-I treated Untreated LDPE-StA-PC-SA-Albumin 0 min After 10 min After 1h 10 新技術の特徴 • 処理した高分子基材をリン脂質の懸濁溶液 に浸漬することにより、容易に自己組織化膜 が形成される。 • リン脂質自己組織化膜は熱安定性に優れて いる。 • リン脂質自己組織化膜内に脂肪酸を導入す ることにより酵素などの生体分子の固定化が 可能である。 • 流動性ある自己組織化膜が得られる。 11 想定される用途 • リン脂質膜をインターフェイスに用いることによ り酵素や抗体などのタンパクの固定化にとっ て有効である。 • 本方法は流動性ある表面への固定化である ため固定化された生体分子間の相互作用を 利用した新しいデバイスの開発が期待される。 ・バイオチップ ・バイオセンサー ・バイオリアクター 12 想定される業界 1) バイオチップ、ヘルスケアチップ産業 ・疾病の早期発見のためのバイオチップ ・在宅医療のためのヘルスケアチップ 2) 製薬企業 ・創薬のためのバイオリアクター ・経皮吸収型DDS 3) 環境関連業界 ・有害物質等検出のためのバイオセンサー 13 実用化に向けた課題 • 大量生産可能なプラズマ表面処理装置はす でに市場にあるので、リン脂質自己組織化膜 を構築するうえでは問題はない。 • 高い活性を保った生体分子を固定化法に関 しては、さらに検討していく必要がある。 • 流動性ある膜上に固定化した生体分子間で の相互作用の確認が必要である。 14 企業への期待 • リン脂質自己組織化膜への生体分子の固定 化およびその評価の各段階での開発協力 • バイオチップ、バイオセンサーあるいはバイ オリアクターを開発中の企業、または開発を 予定している企業には、本技術の導入が有 効と思われる。 15 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称: リン脂質膜を有する高分子 基材及びその製造方法 • 出願番号 :特願2008-192125 • 出願人 :岐阜市 • 発明者 :近藤伸一、笹井泰志、 葛谷昌之 16 お問い合わせ先 岐阜薬科大学 薬物送達学大講座 薬品物理化学研究室 教授 近藤 伸一 TEL 058-237 - 3931(内線 FAX 058-237 - 5979 e-mail skondo@ gifu-pu.ac.jp 238) 17
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