26 会員 寄稿 カリフォルニアの化石の森 山 﨑 芳 彦 硅化木(Petrified Wood)は、木が莫大な年月 どの巨木の茂っていた森が埋もれて、数千年の時 を経て化石化したもので、世界中でみられ、日本 を経て化石となった(写真1) 。Redwood は、今 でもあちこちで発掘されている。樹木が火山の爆 は北カリフォルニアの海岸沿いに多く、世界一の 発や洪水、崖崩れなどで土砂に埋もれ、そこにケ 高さを誇る巨木もここにあり、 レッドウッド国立・ イ酸を含んだ水が流れ込み、 巨大な圧力が加わり、 州立公園として、多くの人を集めている。北カリ その形態をとどめたまま二酸化ケイ素に変化して フォルニアの化石の森は内陸部にあり、現在、周 化石化したもので、石炭といっしょに発掘される 囲には巨木が見られるわけではないが、かつては ことも多いという。年輪までくっきりと残ってい 内陸部も巨木で覆われていたことが示唆され、こ ることもあり、多くは観賞用に利用されるが、ブ れらから太古の森の形態を伺うことができるとい レスレット、数珠玉などに加工されることもあり、 う。ここには、直径4m、長さ26メートルに及ぶ 高値で取引されるという。 大木の化石がそのままの姿をとどめて横たわって これらの硅化木が多数埋もれている場所が化石 おり (写真2) 、 長さ42メートルのものも見られる。 の森(Petrified forest)と呼ばれ、米国アリゾナ このような化石が地中から掘り出され、あちこち 州の砂漠の中にも広い産地があり、周囲の砂漠地 に数多く転がっている。木の皮も年輪もそのまま 帯も含めて国立公園になっている。 一方、 カリフォ 化石になって残っており、巨大なワニが横たわっ ルニア州サンフランシスコから US101号線を北 ているようにもみえる(写真3) 。直接手で触れ に90km 走り、サンタローサの街から10km 内陸 ることができるものもあり、叩いてみると確かに 側に入ると、ソノマバレーの山中にもここに劣ら 石である。ここの硅化木は、大きさではアリゾナ ない大きな化石の森がある。1870年に発見され、 州のものをしのいで、世界最大であるという。日 私有地の中にあるが、一般に公開され、いつでも 本でも小さなものは時々掘り出されて、一部は国 見学することができる。ここは340万年前に、近 の天然記念物に指定されており、これ自体は特に くのセントヘレナ山の爆発により、Redwood な 珍しいものではない。訪れた時は12月下旬で、北 写真1 硅化木が多く重なってみられる 写真2 巨大な硅化木が横たわっている 新潟県医師会報 H28.8 № 797 27 しかし、ここに佇むと、当時の地球の様子はどう だったのだろうか、どんな生き物がこの森をあち こち動きまわっていたのだろうかとの思いがめぐ り、そのスケールの巨大さに悠久のロマンが伝 わってくる。 辺りは、日本人も多く入植したサンタローサ近 くで、アプリコット、ブドウ、リンゴ、桃などの 広大な農場が見られ、畑の前には作物の名前が書 かれている。さぞや花の季節は見事であろう。こ こは、カリフォルニアワインの一大産地であるソ 写真3 巨大なワニが潜んでいるように見える硅化木 ノマバレーのなかにあり、ナパバレーも近くて有 名ワイナリーが多く、ワイン好きにはたまらない カリフォルニアの空は暗く、訪れる観光客もまば 場所だが、ここを訪れたらついでに足を延ばして らであったが、米国に住んでいるという日本人の みてはいかがであろう。 中年カップルにたまたま出会った。 “こんなとこ (白根大通病院) ろに来る物好きは日本人位だね” 、と笑っていた。 27 渡部会長ホットライン 渡部会長へのホットラインを開設しております。ぜひ、忌憚のないご意見をお寄せ下さい。 F A X:025︲224︲6103 E-mail:[email protected] ※ご連絡は、会員の方に限定させていただきます。 新潟県医師会報 H28.8 № 797
© Copyright 2024 ExpyDoc