短期間で癌を発生させる 新規モデル動物

短期間で癌を発生させる
新規モデル動物
名古屋市立大学大学院医学研究科
教授 津田洋幸
1
研究背景
動物への発がん物質の投与による化学発がん
では、がんの発生に約半年から一年の期間を
要する。
↓
飼育期間の短縮はコスト削減に大きく貢献。
↓
短期間で発癌するヒトがんのモデル動物を開発
した。
2
従来の化学発がんモデル
・肺がんモデル
化学発がん(25-30週間)
DHPN、NNK、4-NQO
・乳がんモデル
化学発がん(20-30週間)
MNU、DMBA
・大腸がんモデル
化学発がん(24-32週間)
AOM、DMH
3
・膵がんモデル
・
化学発がんではマウスおよびラットに膵
管がんを発生させることが困難
・
ほとんどのヒト膵がんは膵管由来の膵
管がんである。
・
ハムスターにおいてのみ化学発がん物
質(BOP)によって膵管がんを発生させ
ることが可能(10週間〜)
4
・膵がん
5年生存率が5%以下という極めて予後不良
な悪性がんである。膵がんの克服には早期
診断・早期治療が重要である。新しい診断・
治療法の開発が待たれている。
・K-ras
膵がん、肺がん等で高頻度に遺伝子変異
がみられる。
5
遺伝子改変動物
6
Proto type
B
human Ha-ras
gene(6.9 kb)
S
S
I
II III
IV S
B
*
12 Gly 61 Gln
B: BamH I
S: Sac I
* a point mutation in the last intron
a b c d e f g h i j k l m n o p q r
a, uterus; b, skin; c, muscle;
d, bladder;e, ovary; f, kidney
g, large intestine; h, small intestine;
i, glandular stomach;
j, forestomach; k, spleen; l, liver;
m, heart; n, lung; o, thymus;
p, salivary gland; q, cerebellum;
r, cerebrum
q
1
1
2
3
2
1
2
3
4
3
1
2
3
4
5
6
Chr 5q24-q31.1
ヒトプロト型 c-Ha-ras 遺伝子トランスジェニックラットHras128 (3
コピー)
(特許:米国,6576811・日本,平46594 取得済み)
7
化学発がん物質による乳腺腫瘍の短期発生
0 (50 days old)
8w
0 (50 days old)
MNU, 50mg/kg, i.v.
Rats with tumors (%)
80
60
40
20
0
100
14.1/rat
0.46/rat
Wild
0 1 2 3 4 5 6 7 8w
80
60
40
20
0
12w
PhIP, 100mg/kg X 8
Hras128/ Wild
Hras128
MNU
0(50d old) 4
DMBA, 40mg/kg, i.g.
Hras128/ Wild
100
16w
Hras128/Wild
100
Hras128
9.39/rat
0.83/rat
Wild
0 2 4 6 8 10 12 14 16w
80
60
Hras128
9.67 /rat
40
20
Wild
0/rat
0
4 5 6 7 8 9 10 1112w
8
Summary of Susceptibility to Various Carcinogens
Mammary
carcinogen
Route
MNU
DMBA
PhIP
3-MC
B[a]P
i.g., i.p
i.g., Painting
i.g.
i.g.
i.g.
Non-mammary
carcinogen
Test compound
Mammary gl.
Female Male
DHPN
Anthracene
Pyrene
NNK
IQ
MeIQx
AOM
DEN
TPA
NMBA
DMA
i.g.
i.g.
i.g.
i.g.
i.g.
i.g.
i.g.
i.g.
Painting
s.c.
i.g.
+, Yes ;
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
-
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
-
Skin Esophagus
Male
Male
+
+
+
+
-, No
9
ヒト活性型H- / Krasトランスジェニックラット
loxP
CAG
loxP
loxP
neor
Stuffer
neor pA
loxP
CAG
pA
OFF
H- / K-rasv12
GpA
Cre adenovirus vector infection
ON
H- / K-rasv12
GpA
2〜4週間でがんが発生!
10
膵がん病変
Cre発現ベクター
コントロールベクター
Cre発現ベクター
膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)
膵管がん
11
アデノウイルスは膵管、腺房中心細胞、介在管、
腺房細胞に感染する
Acinar Cells
Centroacinar
Cells
Duct
Intercalated
Duct
Duct
Centroacinar
Cells
Intercalated
Duct
Centroacinar
Cells
Acinar Cells
Intercalated Duct
12
Ductal cell hyperplasia (PanIN-1a/b)
13
Ductal carcinoma
14
Centroacinar cell
Acinar cell
Centroacinar cell
proliferation
Acinar cell
tumor
Acinus
Ductal
proliferation
Intercalated
duct
Pancreatic
duct
Duct epithelial
proliferation
PanIN
lesion
Normal Pancreas
ras ON
Early lesions
Papillary
tubular
carcinoma
Ductal
carcinoma
15
これまでに報告された膵がんモデル動物
Animal
Carcinogen
Route
Tumor
Type
Hamster
BOP
BOP
(+ethionine
+methionine)
BOP
s.c.
s.c.
Ductal
Ductal
Pour, P (1975, 1984)
Konishi, Y (1990)
s.c.
Acinar
>>Ductal
Pour, P (1975)
Acinar
Longnecker,D (1975)
Promoter
Tumor
Type
Reference
Elastase
K19
Pdx-1
Acinar
Ductal
Ductal
Grippo, PJ (2003)
Bembeck, FH (2004)
Hingorani SR (2003)
Rat
Azaserine
Transgene
Mouse Mutated
K-ras
(conditional)
i.p.
Reference
16
従来技術とその問題点
ヒトのほとんどの膵がんは膵管由来の膵管が
んである。動物モデルにはハムスターにおいて
化学発がんによる膵管がんモデルがある。
ハムスターはSPF動物ではない。
ハムスターのゲノム情報の不足。
17
新技術の特徴・従来技術との比較
• ヒトに類似した膵管由来の膵管がんをラットで
発生させることに成功した。
• ハムスターモデルではゲノム情報が限られて
いる。ラットのモデルができたことにより、ゲノ
ム情報を有効活用することが可能となった。
• 本技術の適用により、飼育期間が短縮できる
ため、コストが大幅に削減されることが期待さ
れる。
18
想定される用途
• 抗癌剤の治療効果判定
発がん期間が短いので、抗癌剤の治療効果判定
に用いれば費用削減のメリットが大きいと考えられ
る。
• 血清診断
ラットはマウスに比べ充分量の血液が採取可能な
ため、血清診断法の開発に有利である。
19
想定される業界
• 想定されるユーザー
製薬メーカー研究所等
診断薬開発メーカー
20
実用化に向けた課題
• 現在、肺がん・膵がんを短期間で発生させることに
成功した。他の臓器では未実施である。
• 企業ではウイルスの使用・持込が禁止されている場
合がある。ウイルスベクター以外の遺伝子導入方法
を用いCreを発現させてがんを発生させる方法を確
立する必要がある。
• 抗癌剤の治療効果の判定方法を開発する必要があ
る。(in vivoイメージング、血清診断など)
21
企業への期待
• トランスジェニックラットの生産・販売
• がんのバイオマーカーの探索(特に初期膵が
んのマーカー)
• 新しいがん診断方法の開発
• 新規抗がん剤の治療効果の判定
22
本技術に関する知的財産権
・発明の名称:ヒト変異型K-ras(K-rasV12)遺伝子をコンディ
ショナルに発現するトランスジェニック非ヒ
ト哺乳動物
・出願番号 :特願2007-243313
・出願人
:公立大学法人名古屋市立大学
・発明者
:津田洋幸、深町勝巳、David B Alexander
23
お問い合わせ先
知的財産、受託研究、共同研究に関するご相談など
名古屋市立大学事務局 学術推進室学術推進係
(産学官・地域連携推進センター)
担当:林 泰司、片山 恵美子
TEL:052-853-8041 / Fax:052-841-0261
E-mail:[email protected]
皆様からのご相談を心よりお待ちしております
24