平成27年度 沖縄県内の表面処理に関する実態調査事業 調査報告書(概要版) 平成28年3月 1.目 的 沖縄県では「沖縄21世紀ビジョ ン基本計画」に基づき、本県ものづくり産業の 振興を図るため、ものづくり基板技術の高度化やサポーティング産業の育成、 企業誘致等に取り組んでいる。 機械装置に係るめっき等については、現在、県内で対応できる企業がなく、県 外で対応している状況にあり、県内の関係企業や県内立地を検討している県外 企業等からその整備が求められている。このことから、本県ものづくり産業振興 を図るためにも、めっき等の表面処理の導入・整備の必要性が指摘されている。 本業務では、県内における表面処理の現状と課題について調査を行い、本県 における表面処理のあり方、方向性等について検討し整理を行う。 <背景>沖縄県のものづくり産業の現状(各種統計資料より) 平成25年 産業中分類 構成比 平成24年 対前年増減率 対前年増減額 構成比 万円 % % 万円 万円 % 合計 62,778,773 100.0 1.4 894,957 61,883,816 100.0 14,688,218 23.4 11.5 1,514,830 13,173,388 21.3 6,991,086 11.1 11.8 740,099 6,250,987 10.1 平成25年 産業中分類別製造品出荷額(右図) 09 食料品 10 飲料・たばこ 製造品出荷額 11 繊維 343,731 0.5 27.5 74,092 269,639 0.4 12 木材 67,882 0.1 28.6 15,117 52,765 0.1 13 家具 352,709 0.6 △ 4.8 △ 17,877 370,586 0.6 14 パルプ・紙 573,681 0.9 7.7 40,835 532,846 0.9 15 印刷 2,002,433 3.2 4.1 79,423 1,923,010 3.1 16 化学工業 1,224,898 2.0 2.0 24,241 1,200,657 1.9 17 石油製品 23,112,638 36.8 △ 6.9 △ 1,699,784 24,812,422 40.1 18 プラスチック 835,370 1.3 6.7 52,116 783,254 1.3 19 ゴム製品 - - - - - - 20 なめし革 X X X X X X 21 窯業・土石 5,232,295 8.3 1.0 49,864 5,182,431 8.4 22 鉄鋼 2,359,077 3.8 0.9 21,147 2,337,930 3.8 23 非鉄金属 X X X X X X 24 金属製品 3,317,204 5.3 △ 6.0 △ 212,161 3,529,365 5.7 25 はん用機械 20,443 0.0 5.2 1,017 19,426 0.0 26 生産機械 144,052 0.2 36.1 38,228 105,824 0.2 27 業務用機械 186,520 0.3 △ 0.5 △ 1,001 187,521 0.3 28 電子部品 X X X X X X 29 電気機械 409,260 0.7 5.1 19,918 389,342 0.6 30 情報通信 - - - - - - 31 輸送機械 186,845 0.3 10.7 18,129 168,716 0.3 32 その他 304,037 0.5 △ 6.6 △ 21,562 325,599 0.5 約6,278億円 (石油製品を除く製造品出荷額 約3,967億円) 沖縄県の製造業は、工業統計の製造品出荷額 において、全国平均約62,147億円に対して約 6,278億円と約1割程度となっている。 都道府県別で、高知県の約5,218億円に次い で小さい規模となっている。 <背景>沖縄県のものづくり産業の現状(各種統計資料より) 県内で発生する需要に対して、県内で供給している割合を自給率/内製化率として以下に示す。 産業別・部門別 自給率の推移 自給率 平成7年 平成12年 平成17年 0.0% 50.0% 55.8% 第1次産業 52.1% 48.3% 55.8% 第1次産業 第2次産業 54.3% 53.1% 50.8% 第2次産業 1200 鉄鋼 40.0% 44.1% 55.5% 1200 鉄鋼 1300 非鉄金属 14.0% 15.6% 15.9% 1300 非鉄金属 1400 金属製品 38.3% 31.9% 36.5% 1400 金属製品 1500 一般機械 4.8% 9.1% 1.1% 1500 一般機械 1.1% 1600 電気機械 1.4% 1.4% 2.3% 1600 電気機械 2.3% 1700 輸送機械 1.9% 5.8% 7.5% 1800 精密機械 1.2% 1.5% 3.2% 84.7% 83.9% 86.1% 72.5% 72.1% 74.1% 第3次産業 合 計 平成17年沖縄県産業連関表(平成22年3月発行)より ※ 輸移入率の計算方法(%) 輸移入額÷(県内需要合計額-製品・半製品・仕掛品在庫純増額) ※ 自給率の算出方法(%) 100-輸移入率 50.8% 55.5% 15.9% 36.5% 7.5% 1700 輸送機械 1800 精密機械 100.0% 3.2% 86.1% 第3次産業 74.1% 合 計 平成17年 平成12年 平成7年 ※グラフ中の数値(%)は平成17年データ 土木建築分野では 一定の供給体制が あるものの、機械装 置系ものづくり分野 では県外海外から の移輸入に頼って おり、本県固有の ユーザーニーズに 対応できていない 現状にある。 <背景>沖縄県のものづくり産業の現状(各種統計資料より) 誘致企業数、従業者数、搬出額 H11 沖縄県では、本県の地理的環境を 最大限に活かすべく、アジアから世界 に向けた玄関口として物流ハブの構 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 企業数 1 3 6 8 10 11 19 22 24 25 22 27 33 34 37 従業者数 0 0 100 89 186 214 306 443 503 445 434 446 468 496 607 搬出額( 百万円) 企業誘致状況 H12 県内 0 76 134 114 358 974 1,663 2,025 2,276 1,607 927 1,096 1,217 1,255 1,839 県外 0 31 221 413 397 1,628 1,420 2,361 1,965 2,869 1,820 2,160 2,642 2,971 3,351 海外 0 57 65 185 215 701 848 1,046 1,014 1,210 857 1,053 2,121 2,827 2,725 計 0 164 420 712 970 3,303 3,931 5,432 5,255 5,686 3,604 4,309 5,980 7,053 7,915 築に取り組んでいる。 誘致企業数および従業者数 その取り組みの一環としても位置付 40 700 35 600 30 けられるものづくり関連の企業誘致が、 500 うるま・沖縄地区において37社となっ ている。 400 20 300 15 200 10 100 5 0 0 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 企業数 19年 20年 従業者数 21年 22年 23年 24年 25年 従業員数 H25年の国際物流拠点産業集積地域 企業数 25 2.調査方法 (1)基礎情報の収集 表面処理の技術的分類や用途について、文献等より情報収集し整理する。 (2)県内企業ヒアリング 誘致企業を含む県内ものづくり関連企業等にヒアリングを実施し、表面処理 の対応状況を調査する。このとき、過去調査からも表面処理の対応例は少 ないことが予測されることから、アンケートでは収集困難な潜在的なニーズ (表面処理の活用可能性)を現場での作業を確認しながら聞き取ることとす る。 2.調査方法 (3)先進地調査 表面処理を事業として運営するための条件等について、県内にはめっき等 表面処理を扱う企業がないことから、県外めっき企業から情報収集を行う。 (4)モデル工場での事業化検討 先の(2)項で抽出した県内潜在ニーズを市場規模と置換え、(3)項で収集 した事業化の条件を、モデル工場(案)として設定し比較することで、事業化 可能性を検討する。 (5)検討委員会での意見交換および方向性の検討 収集・検討した情報等について、表面処理に係る県内外の有識者による意 見交換と情報提供をいただく。 2.調査方法 【調査・検討の流れ】 県内産業 ・県内における表面処理の実施状況の把握と、導入可能性の抽出を行う 【装置ユーザー】 ニーズ 集約 食品分野 土木建築 分野 農業分野 ・・・ 【県内における表面処理ニーズの対応状況】 ・産業毎、技術毎に整理する 潜在ニーズ 対応せず /代替策 顕在ニーズ 【県内ものづくり産業】 機械 加工 メンテ ナンス 誘致 企業 ・・・ 県外対応(装置ユー ザーのメンテ含む) (一部)県内対応 ヒアリング調査 導入シナリオ検討 実施体制 沖縄TLO 工技センター 情報共有/連携 【方向性の検討】 情報/助言 個別相談/ 情報収集 検討 委員会 有識者、先進企業 技術CD ●技術分類(用途)を整理 → 県内の状況を整 理(ニーズ有無や、現在の回避策) ●優先順(必要性から、実現可能性から)の検 討 → 導入するための条件を検討し整 理(提示)する 2.調査方法 【委員リスト】 (敬称略/50音順) 役職 氏 名 所属等 1 委員長 糸村 昌祐 国立大学法人琉球大学工学部 名誉教授 (元国立沖縄工業高等専門学校校長) 2 委員 呉屋 良和 金秀アルミ工業株式会社 常務取締役 3 委員 座安 治 沖縄県商工労働部ものづくり振興課 課長 4 委員 島袋 太悟 タイガー産業株式会社 代表取締役社長 5 委員 千田 実 株式会社沖縄先端加工センター 上席執行役員 6 委員 廣瀬 伸吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員 7 委員 宮地 康次 ハムス株式会社 代表取締役社長 8 委員 吉長 盛信 沖縄ガルバ株式会社 代表取締役社長 (沖縄県工業連合会建材関連産業部会 副部会長) 3.調査結果 機能・特性 各種表面処理 分野 主な産業分類 装飾性 土木、建設、建築、構造物 鉄骨製造業、溶融めっき業 建設用金属製品製造業 7 生産・電気機械器具 配電盤・電力制御装置製造業 2 はん用機械部品 生産用機械部品 金属用金型部品・付属品製造業 各種機械部分品製造修理業 無電解Ni 電気機械部品 配電盤・電力制御装置製造業 アルミ 土木、建設、建築、構造物 各種機械部分品製造修理業 2 土木、建設、建築、構造物 鉄骨製造業 塗装工事業 3 生産・電気機械器具 配電盤・電力制御装置製造業 包装・荷造機械製造業 2 生産用機械器具 半導体製造装置製造業 土木、建設、建築、構造物 鉄骨製造業 塗装工事業 5 電気機械器具 金属製品 配電盤・電力制御装置製造業 製缶板金業 5 土木、建設、建築、構造物 アルミニウム 同合金圧延品製造業 1 はん用機械器具 生産用機械器具 金属用金型部品・付属品製造業 各種機械部分品製造修理業 2 (1)表面処理の技術分類 Zn めっき 表面処理の技術別・機能 金属皮膜処理 別に整理を行った。 溶射 Cr フレーム溶射 コーティング (2)県内企業ヒアリング 非金属皮膜処理 塗装 32社に対しヒアリングを 陽極酸化(アルマイト) 化成処理 4 1 1 建築用金属製品製造業 1 はん用機械器具 生産用機械器具 各種機械部分品製造修理業 包装・荷造機械製造業 2 火炎 はん用機械器具 各種機械部分品製造修理業 1 高周波 はん用機械器具 生産用機械器具 半導体製造装置製造業 各種機械部分品製造修理業 2 電子ビーム - - レーザー 窒化 1 各種機械部分品製造修理業 焼入れ 鋼の 表面硬化処理 9 はん用機械器具 黒染め を(1)の表に盛り込んだ。 絶縁性 耐摩耗性 土木、建設、建築、構造物 クロメート処理 実施し、ニーズの所在 防食性 耐熱性 (耐食 耐酸化性 (断熱 性) 性) - - 土木、建設、建築、構造物 アルミニウム 同合金圧延品製造業 1 はん用機械器具 各種機械部分品製造修理業 1 ガス窒化 ⇒ 県内では防錆用途の表面処理ニーズが高い 3.調査結果 <調査検討>ヒアリングによる企業活動状況から、表面処理に係る業務発生額を推定した。 2.耐摩耗性用途 1.防食性用途 (1)はん用機械器具、生産用機械器具 (1)土木、建設、建築、構造物分野 各種表面処理 Zn ヒアリング 回答数 (ニーズ) ※1 主な産業分類 (対象の部品、製品) 7 鉄骨製造業、溶融めっき業 建設用金属製品製造業 (土木建築資材) めっき 同産業 ヒアリングにて確認し ヒアリング結果から推 ヒアリングにて確認し 分野企 た1社あたりの県外へ 定した1社あたりの発 た県内実施分の当 業数 の実績発注量 注量 該表面処理取扱量 (県内) (年額) (年額) (年額) ※2 55 - - - - 10,000トン 6億円 県内推定 市場規模 (年額) 12億円 推定 処理単価 溶射 2 県内シェア50%として推定した。 フレーム溶射 3 塗装 非金属皮膜処理 各種機械部分品製造修理業 (配管、パイプ) 4 (建設業)塗装工事業 103 5 陽極酸化(アルマイト) 1 アルミニウム圧延品製造業 (アルミサッシ) 1 50万円 - - - - 200万円 - - - - - - - 75,000円/トン 県内企業で一定程度の対応が出来て - - - - - 25,000円/トン - - - - 2,000トン 2億円 8億円 250円/kg 処理のニーズはあるものの、用途が限定 的で規模も小さい(石油プラント海水飛 散エリア等。 2トン 100万トン 250億円 各種表面処理 ・溶融亜鉛(Zn)めっきについては、県 内で一定程度の対応が出来ている。 60,000円/トン ・県内推定市場規模は、売上6億円を 金属皮膜処理 アルミ 備 考 100円/kg 9 金属用金型部品・付属品製造業 各種機械部分品製造修理業 (シャフト、ローラー) 5 10件 150万円 溶射 フレーム溶射 4 各種機械部分品製造修理業 (シャフト) 4 - - 1 半導体製造装置製造業 (機械加工部品) 3 - - - 1 各種機械部分品製造修理業 (機械加工部品) 4 - - - 高周波 2 半導体製造装置製造業 各種機械部分品製造修理業 (機械加工部品) 7 - - ガス窒化 1 各種機械部分品製造修理業 (機械加工部品) 4 - - ヒアリング 回答数 (ニーズ) ※1 主な産業分類 (対象の部品、製品) 1 配電盤・電力制御装置製造業 (銅バー) 金属皮膜処理 非金属皮膜処理 クロメート処理 1 建築用金属製品製造業 (土木建築資材) コーティング 火炎 18 - - - - 6000トン 8億円 8,000万円 ・亜鉛めっき処理含む ・県内企業で一定程度の対応が出来 133,000円/トン ている。 ・推定市場規模は、売上8億円のうち 県内向け出荷を10%として推定した。 焼入れ 鋼の 表面硬化処理 各種表面処理 主な産業分類 (対象の部品、製品) ※3 同産業 ヒアリングにて確認し ヒアリング結果から推 ヒアリングにて確認し 分野企 た1社あたりの県外へ 定した1社あたりの発 た県内実施分の当 業数 の実績発注量 注量 該表面処理取扱量 (県内) (年額) (年額) (年額) ※2 推定 処理単価 備 考 ・当該処理を県内で対応できないた め、県外発注や材料等で対応してい る。 ・ZAM鋼板単価:180円/kg はだか鋼 板:80円/kg 差額をめっき処理に充て られる費用と仮定した。 Zn 2 配電盤・電力制御装置製造業 各種機械部品製造修理業 10 - - 60トン 600万円 - - 6,000万円 100円/kg フレーム溶射 - - - - - - - めっき 金属皮膜処理 2 配電盤・電力制御装置製造業 包装・荷造機械製造業 7 - 塗装 5 配電盤・電力制御装置製造業 製缶板金業 23 - - - - - - - - 陽極酸化(アルマイト) 2 金属用金型部品・付属品製造業 各種機械部分品製造修理業 5 - 10万円 - - - - 50万円 - クロメート処理 1 各種機械部分品製造修理業 4 (調査中) (調査中) - - - - (調査中) (調査中) 黒染め 2 各種機械部分品製造修理業 包装・荷造機械製造業 5 (調査中) (調査中) - - - - (調査中) (調査中) 溶射 非金属皮膜処理 化成処理 推定 処理単価 備 考 対象物が多様で設備設定が困難かつ - - 750万円 15万円/件 他の技術分野(前処理、みがき等)も 必要になるため単独導入不可。 120本 1,800万円 県内製造修理業者にておいて県内で 7,200万円 15万円/本 一定程度の対応が出来ている。 - - DLC 1万円/um (大きな市場規模は見込めない) - - - - - - - - - - - 県内推定 市場規模 (年額) 推定 処理単価 180万円 250円/kg ・Niめっき銅板:1,000円/kg はだか銅 (1)はん用機械器具、生産用機械器具 各種表面処理 県内推定 市場規模 (年額) 県内推定 市場規模 (年額) 3.装飾性用途 (2)金属製品(建設、建築除く)、はん用機械器具、生産用機械器具、電気機械器具分野 ヒアリング 回答数 (ニーズ) ※1 同産業 ヒアリングにて確認し ヒアリングにて確認し 分野企 た1社あたりの県外へ た県内実施分の当 業数 の実績発注量 該表面処理取扱量 (県内) (年額) (年額) ※2 Cr 窒化 化成処理 主な産業分類 (対象の部品、製品) めっき いる。 ・建築資材(アルミサッシ)については、 県内で一定程度の対応が出来ている。 ・県内推定市場規模は、売上2億円を 県内シェア25%として推定した。 ヒアリング 回答数 (ニーズ) ※1 金属皮膜処理 めっき 無電解Ni 同産業 ヒアリングにて確認し ヒアリングにて確認し 分野企 た1社あたりの県外へ た県内実施分の当 業数 の実績発注量 該表面処理取扱量 (県内) (年額) (年額) ※2 備 考 ・県内で対応できないため、Ni処理済 品を県外より購入している。 6 1.2トン 30万円 - - 板:750円/kg 差額をめっき処理に充 てられる費用と仮定 県内で対応できないため、県外発注や 材料等で対応している。 ⇒ 推定市場規模が多い、機械装置向け『亜鉛めっき』の事業化可能性を検討する 3.調査結果 (3)県外企業視察 新和金属株式会社(広島県東広島市) ハムス株式会社(京都府京都市) タイガー産業株式会社(大阪府東大阪市) 株式会社特殊鍍金化工所(東京都三鷹市) 東京都立産業技術研究センター多摩テクノプラザ(東京都昭島市) 株式会社染めQテクノロジィ(茨城県猿島郡五霞町) 桑名商事株式会社(栃木県真岡市) [技術相談]株式会社板通(群馬県太田市) 3.調査結果 (4)モデル工場の検討 県内潜在ニーズ(取扱い見込み)が比較的高い機械装置向け「(電気)亜鉛 めっき」でモデル工場(案)を検討した。 県外めっき企業や専門家から情報収集し、広いニーズに対応できる部品サ イズを想定し、それに見合った設備規模や人員配置等を設定した。さらに、 国内めっき業界における一般的な償却年数や変動比率を参考に、年間運 営費を算出した。 (5)委員会による意見交換(計3回開催) 専門的な知見から、モデル工場を想定するうえでの考え方や注意点を示唆 いただき、より現実的なモデル工場(案)を検討した。 3.調査結果 (4)モデル工場の検討 ①亜鉛めっき専用ライン 設定条件 部品寸法80cm角以内 手動ホイスト使用 許容負荷40kg/1ハンガー 排水処理能力5t/h (排水処理設備は将来性を考 慮し余裕をもった設定とする) 3.調査結果 (4)モデル工場の検討 ①亜鉛めっき専用ライン ZAM小部品の置換え951万円(年間)、他の防錆 亜鉛めっき処理 モデル工場 必要数量/売上高 808 トン 8,077 万円 亜鉛めっき処理費用 100 円/kg 減価償却費 2,429 万円 対策部品も処理した場合1,632万円(年間)に対し、 工場運営には8,077万円(年間)が必要。 設備規模 めっき設備(付帯設備、床工事含) 排水処理設備(追加拡張分含) 建屋 県内推定市場規模 ヒアリング結果から推定した小物部品の生産量 (ZAM鋼板からの置換えに既製品/塗装品を加えた分) 約 163.2トン 約 1,632万円 ヒアリング結果から推定した小物部品の生産量 (ZAM鋼板からの置換え分のみ) 約 95.1トン 約 951万円 0.9 億円 0.6 億円 0.2 億円 人件費 1.7 億円 1,400 万円 従業員数 処理品準備 1 名 設備操作 1名 出荷検査他 2 名 4名 人件費(平均) 変動費 (材料費、電気代、上下水道費、その他) 350 万円/人 4,249 万円 売上高に占める変動費割合 52.6% 3.調査結果 (4)モデル工場の検討 ①亜鉛めっき専用ライン 設定条件(詳細) 県外めっき企業およびめっき設備商社から、100円/kgの処理に見合うめっき設備、排水処理設備と従業 員数を設定(土地取得費は含まず) 経産省地域経済分析より、沖縄県製造業の平均賃金水準267万円(年間)に会社負担分と県内ものづく り企業の実績を加味し設定 県内調査結果より、ZAM鋼板単価:180円/kgとはだか鋼板:80円/kgの差額をめっき処理に充てる 矢野経済研究所「めっき市場に関する調査結果2011」より、売上高に占める変動費の割合52.6%を適用 償却期間は検討委員会での意見および県外企業の事例調査より、7年と設定 3.調査結果 亜鉛めっき+ニッケルめっき処理 モデル工場運営費(年間) (4)モデル工場の検討 ②亜鉛めっき+ニッケルめっきライン 必要数量 売上高 必要総量 736 トン 総売上 亜鉛分 ニッケル分 629 トン 108 トン 亜鉛分※7 ニッケル分※7 ※3 100 円/kg ニッケルめっき処理費用※4 250 円/kg 亜鉛めっき処理費用 県内推定市場規模(a + b)(年間) 約 2,372万円 ヒアリング結果から推定した銅バーの生産量 (めっき済銅板からの置換え分) 約 29.6トン 約 740万円 (a) ヒアリング結果から推定した小物部品の生産量 (ZAM鋼板からの置換えに既製品/塗装品を加えた分) 約 163.2トン 約 1,632万円 (b) 減価償却費 ※6 2,857 万円 めっき設備(付帯設備、床工事含) 排水処理設備(追加拡張分含) 建屋 1.4 億円 0.6 億円 0.2 億円 人件費 2.0 億円 1,400 万円 従業員数※1 処理品準備 出荷検査他 1名 1名 1名 4名 人件費(平均)※2 変動費 (材料費、電気代、上下水道費、その他) 約 95.1トン 6,287 万円 2,694 万円 設備規模※1 設備操作 ヒアリング結果から推定した小物部品の生産量 (ZAM鋼板からの置換え分のみ) 8,981 万円 350 万円/人 4,724 万円 約 951万円 売上高に占める変動費割合 52.6% ※5 3.調査結果 (4)モデル工場の検討 ②亜鉛めっき+ニッケルめっきライン 設定条件(詳細) 県外めっき企業およびめっき設備商社から、100円/kgの処理に見合うめっき設備、排水処理設備と従業 員数を設定(土地取得費は含まず) 経産省地域経済分析より、沖縄県製造業の平均賃金水準267万円(年間)に会社負担分と県内ものづく り企業の実績を加味し設定 県内調査結果より、ZAM鋼板単価:180円/kgとはだか鋼板:80円/kgの差額をめっき処理に充てる 県内調査結果より、Niめっき銅板:1,000円/kgとはだか銅板:750円/kgの差額をめっき処理に充てる 矢野経済研究所「めっき市場に関する調査結果2011」より、売上高に占める変動費の割合52.6%を適用 償却期間は検討委員会での意見および県外企業の事例調査より、7年と設定 県内推定市場規模に占める各めっき処理の生産額比率(亜鉛7、ニッケル3)から算出 4.まとめ 導入する表面処理技術の絞り込み 県内ものづくり企業が扱う県内向けの部品、誘致企業が扱う県外海外向け の機械装置に用いる部品ともに、防錆用途のニーズが大きい。 バレルめっきによる大量生産は、全国規模の市場(取り扱い量)が必要とな ることから、電気めっきによる少量多品種に対応した事業化を検討する。 耐摩耗性等の機能を付与する表面処理ニーズは、金型製作や大型プラント の製造装置メンテナンスで存在するものの、取り扱い量が少ないことと、Cr めっき等は技術的にも難易度が高く定常的なノウハウの蓄積が必要である こと、さらに、当該処理を施した後に研磨(みがき)や熱処理といった後工程 も必要になることから、表面処理技術単独での導入は困難である。 4.まとめ 事業化可能性(モデル工場)について 県内で多く発生する表面処理ニーズとして、電気亜鉛めっきを想定したモデ ル工場の場合、成立条件として約5倍の市場(取扱い量)が必要である。 この差を埋める方策として、①市場拡大に向けた検討、②モデル工場の運 営費軽減の検討、があげられる。 案① さらなる誘致企業の集積。めっき企業が地域に存在することでそれを 念頭においたものづくりの発生(機械装置に限らず他分野からの利用)。 案② 減価償却費(設備投資)や人件費の負担軽減を図る公的支援。他業 務と合わせて(既存業務に加えて)運営することで人件費の負担を軽減。 4.まとめ その他検討課題とその支援策について 立地場所の制約条件等の確認 立地場所によっては、近隣住民や事業者の理解も必要となる。その際は公 的機関の協力支援も必要となる。 工場排水に関して、管理・監督方法の検討 公的機関による、工場の管理運営状況に対する管理・監督が発生する。 技術ノウハウ集積のため、専門人材の育成が必要 公的技術支援機関や県外企業との連携が必要となる。 事業実施にあたり、各種管理者・資格取得者の配置 公的技術支援機関や県外企業との連携が必要となる。 5.今後の取り組み ①市場拡大に向けた検討 さらなる誘致企業の集積 ものづくり系誘致企業の集積が進むことで、機械装置部品に対する表面処 理ニーズの増加が期待できる。また一方で、材料入手経路や排水・廃棄物 処理の仕組み、電気・水の運営費といった条件が整えば、めっき企業が自 社業務を持ちこんで立地する可能性もある。 複数めっき処理の取り込み 設備投資を抑えつつ、対応するめっきの種類を増やすことで、取扱い量の 増加を図る。また、このような新たな用途開発については、公的技術支援機 関の支援を始めとする産学連携を活用しながら拡充を検討する。 5.今後の取り組み ①市場拡大に向けた検討 めっき企業が地域に存在することでそれを念頭においたものづくりの発生 県内ヒアリングで抽出した潜在ニーズの他にも、現行業務の中から表面処 理に置換える作業が見いだせる可能性がある。 また、土木建築といった他の分野においても、現行の溶融亜鉛めっき企業 の業務過多による納期の問題や、適用範囲(部品厚さ等)拡大の要望があ り、それらの受け皿となる可能性がある。 5.今後の取り組み ②モデル工場の運営費軽減の検討 減価償却費(設備投資)や人件費の負担軽減を図る公的支援 工場建設や賃貸工場の利用に係る支援、人件費や電気・水等の運営費の 軽減を図る支援、公的技術支援機関の設備利用による支援等。 表面処理に係る薬剤等の共同購入 県内で発生する表面処理材料を一括購入することで、材料費の低減を図る 他業務と合わせて運営することで人件費の負担を軽減 県内ものづくり企業が自社業務に加えてめっき処理を行うことで、建屋等の 設備や人員の共有化を図り、めっき処理事業の成立を目指す。 5.今後の取り組み ③技術支援等 • 沖縄県工業技術セン ターの取り組み めっき企業の事業実 施にあたっては、普段 の性能評価から、新た な用途開発まで、公的 技術支援機関との連 携が重要となる。
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