微細表面形状に応じて高効率に平滑化 できるローラバニシング加工法 福井大学 新技術説明会 2016. 08. 30 JST東京本部別館1Fホール 福井大学 学術研究院 工学系部門 機械工学分野 講師 岡田 将人 従前技術と問題点 バニシング加工 工具を工作物表面に押し付けて, 表面凹凸を平滑化する加工法 メリット・特徴 図.バニシング加工の一例 ■工作機械(切削加工)で加工が 可能 ■改質層の生成が期待できる (耐摩耗性・疲労強度の向上) 切削 < バニシング < 研削 中仕上げにおける有効性に期待 良 仕上げ面粗さ ■研削加工と比べ加工効率が高い (㈱スギノマシン 様 Webサイトより) 研削 バニシング 切削 加工効率(仕上げ面積) 良 バニシング加工の位置付け 2 従前技術と問題点 チップバニシング加工(チップ加工) バニシング加工 ローラバニシング加工(ローラ加工) チップ加工 チップ 微小凹凸 チップを擦りつけて対象面 上の微小凹凸を押しならす 加工後表面 微小凹凸にチップの摺動作 用を付与 工作物 工具摩耗 チップ加工の概要 仕上げ面にむしれ 3 従前技術と問題点 チップバニシング加工(チップ加工) バニシング加工 ローラバニシング加工(ローラ加工) ローラ加工 ローラを転がして対象面上 の微小凹凸を押しつぶす 微小凹凸 ローラ 加工後表面 微小凹凸にローラの転動作 用を付与 微小凹凸の残留 工作物 ローラ加工の概要 高い押付力の付与 4 先行技術の概要 摺動と転動の 両者を作用 軸形状品を対象とした 傾斜ローラバニシング加工法(先行技術)を開発 従前のローラ加工用工具 20 mm ボディ部 ヘッド部 シャンク メインローラ ・自由回転 ・工作物に接触 リテーナ ・メインローラを支持 メインローラ拡大 サポートローラ ヘッド部拡大 ・自由回転 ・メインローラと接触 5 先行技術の概要 摺動と転動の 両者を作用 軸形状品を対象とした 傾斜ローラバニシング加工法(先行技術)を開発 従前のローラ加工 工作機械により回転する工作物外周面に自由回転するローラを押し付けて 工作物軸方向に工具を送る ローラ加工用工具 ローラ加工中の外観 6 先行技術の概要 従前技術 Main roller 先行技術 傾斜 Main roller 平行 Workpiece Workpiece 工作物の回転軸とローラの 工作物回転軸からローラ回 回転軸は平行 転軸を傾斜 7 先行技術の概要 Z Y X 工作物 リテーナ X Z 工作物 工具送り方向 Y 工作物の 中心軸 サポート ローラ メイン ローラ 工具側面 メインローラの 中心軸 工具正面 ・工作物とメインローラの中心軸は一致 8 先行技術の概要 工作物の 中心軸 工作物の 回転方向 加工点 工具送り方向 メインローラの 回転方向 メインローラの 中心軸 工作物の 周速度ベクトル = 加工点における工作物とメイン ローラの周速度ベクトルは等しい メインローラの 周速度ベクトル 摺動は発現しない 9 先行技術の概要 ・工作物とローラの回転中心軸に傾斜角を設ける ・メインローラは工作物に対して斜めに回転 傾斜ローラバニシング加工(先行技術) 工具送り方向 傾斜角α α = 0º 従前技術 工作物の 中心軸 α ≠ 0º 先行技術 工作物の 回転方向 加工点 10 先行技術の概要 X Z 工作物軸方向の速度差 Vwcosαsinα Y メインローラの Y軸方向の速度 Vt=Vwcos2α 工作物周方向の速度差 Vw(1-cos2α) 傾斜角α メインローラのZ軸方向の速度 Va=Vwcosαsinα メインローラの周速度 Vr=Vwcosα 工作物の周速度Vw 11 先行技術の問題点 ■摺動の作用方向はローラの傾斜角度に依存 ■旋削加工時の軸方向の凹凸形状に対し,軸方向のみに摺動 を作用させることは不可能 軸状工作物の対象面上の微小凹凸に対する転動・摺動作用 そこで開発したのが… 12 新技術の概要 ■工作物と同様にローラも能動的に回転させることで,任意の方向に摺 動作用を発現可能 ■ローラの工作物周方向成分速度を工作物周速と同一にすれば,軸上工 作物に対し軸方向の摺動作用のみを発現可能 この速度,方向で摺動が発現 能動回転型傾斜ローラバニシング加工(新技術) 13 新技術の概要 ■能動回転型傾斜ローラバニシング加工(新技術)用工具を製作 ■押付力はばね,ローラ回転はDCモータにより制御 ■卓上旋盤への設置において,工具全体を傾斜 製作した加工試験機 卓上旋盤に設置 14 新技術の効果検証 同一条件下における先行技術と新技術による仕上げ面比較 仕上げ面粗さ Ra Profile curve [µm ] 2 µm = 45° F = 60 N 先行技術 Ra = 1.09 mm 新技術 Ra = 0.72 mm 検証結果 th = 90° 0.1 mm Measurement distance (axial direction) [mm] 断面曲線の比較 同一条件下においても,ローラ を能動的に回転させることで平 滑な仕上げ面を創成 先行技術の傾斜ローラ加工に対 する優位性を確認 15 まとめ 新技術の特徴・従来技術との比較 ■先行開発した傾斜ローラバニシング加工のローラを,工作物と同様 に能動的に回転させることで,ローラと工作物の加工点における周速 ならびにローラの傾斜角度から決定される方向に摺動作用を発現する ことを可能にした. ■新技術により,従来技術ならびに先行技術に対して同一の加工条件 下において,より平滑な仕上げ面が得られた.特に先行技術より同一 のローラ傾斜角において算術平均粗さRaで約30%の向上が認められ た. 想定される用途 ■摺動方向を制御することが可能なため,平滑化に限らず製品の用途 に応じた微細表面形態を,従前と同様の加工法により創成することが 可能である. ■小さな押付力で従前より良好な仕上げ面が得られるため,小径材料 など強度が低く,高い押付力を付与できない材料に有効である. 16 まとめ 実用化に向けた課題 ■現状は,新技術のコンセプトを確認するために,簡便な加工機によ り,その効果を実証した段階であり,一般的にバニシング加工に期待 される程度の仕上げ面粗さが得られるに至っていない. ■今後は加工機の高剛性化,ローラの材質ならびに表面形態の適正化 により,良好な仕上げ面性状の獲得が課題となる. 企業への期待 ■ローラの材質,表面形態の適正化には硬質薄膜の表面処理技術を適 用することにより解決が可能と考える. ■ローラバニシング加工に限らず,高硬度材質からなる固定工具を対 象面に摺動させるチップバニシング加工に関する研究も実施している .ベアリングメーカーなど製品表面の平滑化,高機能化に対して課題 を共有できる企業との共同研究を希望している. 17 まとめ 本技術に関する知的財産権 発明の名称: 能動回転型ローラバニシング加工法 出 願 番 号: 特願2016-065093 出 願 人: 国立大学法人福井大学 発 明 者: 岡田将人,大津雅亮,宮越侑輝 お問い合わせ先 福井大学 産学官連携本部 知的財産部 漆崎 行乃利 TEL 0776-27-9725 FAX 0776-27-9727 E-mail [email protected] 18
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