Development of pest control fomulation by plant-derived materials 国立大学法人 琉球大学農学部 田場 聡 植物寄生性線虫類による作物の被害 ①ネコブセンチュウ ②シストセンチュウ Meloidogyne incognita (Kofoid and White) Chitwood 防除方法 ③ネグサレセンチュウ D-D剤やクロルピクリンを用いた土壌消毒 環境への影響やリサージェンス現象の発生が深刻な問題 環境負荷の小さい防除法の開発が重要 物理的防除法 耕種的防除法 生物的防除法 沖縄に分布する植物(未 利用資源)を活用した防除 法を開発できないか? 有効種の選抜と効果 メカニズムの解明 ①未利用植物のサツマイモネコブセンチュウに対する抗線虫活性の検討 約 種 40 最も高い抗線虫活性(不動化および致死作用)が認められたのは・・ アワユキセンダングサ Bidens pilosa var. radiata Scherff. アワユキセンダングサ抽出液の作用により致死 したネコブセンチュウ ①不動化作用 ②致死作用 ③孵化阻害作用 ④忌避作用 表. 植物寄生性線虫の運動および生存に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出液の影響 線虫名(学名) 希釈倍率1) 2) 作用 原液 10 20 100 アレナリアネコブセンチュウ Meloidgyne arenaria (Neal) Chitwood 不 致 ,100.0±0.0a3) 100.0±0.0A 99.4±0.5a ,99.5±1.2A 88.5±23.8ab, 50.6±30.1BC 0.2±0.3b 1.0±1.0A サツマイモネコブセンチュウ M. incognita (Kofoid and White) Chitwood 不 致 100.0±0.0a 100.0±0.0A ,95.1±2.9b ,,,79.9±10.9B ,75.0±5.3b、、 ,43.3±11.5C、 3.0±3.0b 0.6±2.3A ジャワネコブセンチュウ M. javanica (Treub) Chitwood 不 致 100.0±0.0a 100.0±0.0A 99.8±0.5a ,95.9±4.0A ,92.7±10.1ab, 、73.4±25.2ABC 2.1±1.7b ,4.9±3.3A ダイズシストセンチュウ Heterodera glycines Ichinohe 不 致 100.0±0.0a 100.0±0.0A ,99.3±1.5a ,98.3±2.3A 100.0±0.0a、、 99.7±0.6A、 ,3.2±2.1b ,,5.5±2.9A ミナミネグサレセンチュウ Pratylenchus coffeae (Zimmermann) Filipjev &Schuurmans Stekhoven 不 100.0±0.0a ,,99.7±0.7a 99.0±1.8a、 ,18.9±3.8a 致 100.0±0.0A ,,,,,91.6±4.2AB ,,,83.5±10.8AB ,,,,6.3±5.4A 1)乾燥したアワユキセンダングサ10 gを50 mlの蒸留水にて煮沸抽出して濾過したものを原液とし,各希釈倍率に調整したものを実験に供試した. 表は7日後の結果を示す. 2)不:不動化率(%), 致:致死率(%)を表す. 3)平均±標準偏差. 異なるアルファベットは有意差を示す(Tukeyの多重比較検定, p<0.05) 世界三大線虫であるネコブ、シストおよびネグサレセンチュウに対して高い抗線虫活性が認められた 効果的処理法の検討 1.灌注 2.種子浸漬 3.葉面散布 4.抽出液吸着担体 5.乾燥細断物混和 6.堆肥化物混和 ①灌注 ②根浸漬 ④担体混和 ③種子浸漬 ⑤植物体細断物混和 複数の処理法において防除効果が認められた 表 異なる土壌におけるトマトの生育およびサツマイモネコブセンチュウの根こぶ形成 1) に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出液の影響 表 異なる土壌におけるトマトの生育およびサツマイモネコブセンチュウの根こぶ形成に及ぼすアワユキセンダングサ抽出液の影響 土壌線虫数(土壌20 g) 草丈(cm) 地上部重(g) 根重(g) 根こぶ程度 処理区 サツマイモネコブ 自活性線虫 センチュウ 国頭マージ 18.3±2.4 a 2.2±0.3 a 0.2 c 0.0±0.0 b 585.0±18.4 ab 原液 29.8±1.6 a2) 10倍希釈液 25.1±2.8 a 13.6±1.7 b 2.2±0.5 a 1.8 b 0.7±0.6 b 140.3±31.8 b 3) 29.4±2.2 a 15.0±1.7 ab 1.5±0.2 ab 0.0 c 0.0±0.0 b 130.3±31.0 b ホスチアゼート粒剤 4) 27.5±3.2 a 12.8±2.2 b 2.1±0.4 a 0.0 c 0.0±0.0 b 1016.5±87.0 a 無処理Ⅰ 5) 14.9±4.0 b 5.7±3.3 c 1.1±0.7 b 3.7 a 29.0±17.0 a 392.5±97.3 b 無処理Ⅱ 島尻マージ 125.0±8.5 a 27.3±2.2 a 13.0±1.7 a 2.3±0.3 a 0.4 c 0.0±0.0 b 原液 10倍希釈液 17.8±2.1 c 5.6±1.3 b 1.5±0.2 ab 1.8 b 4.0±2.0 b 35.7±7.4 c 24.0±4.5 ab 8.4±2.5 b 2.1±0.7 a 1.3 b 3.0±1.0 b 74.0±12.7 abc ホスチアゼート粒剤 22.0±0.9 bc 8.2±0.8 b 2.0±0.2 ab 0.0 c 0.0±0.0 b 91.3±25.1 ab 無処理Ⅰ 10.9±2.3 c 1.9±1.1 c 1.2±0.6 b 4.0 a 9.3±6.7 a 61.7±30.7 bc 無処理Ⅱ ジャーガル 23.4±1.2 ab 9.6±0.4 a 2.1±0.2 a 0.0 b 0.0±0.0 b 288.0±18.9 a 原液 10倍希釈液 21.6±1.4 b 6.7±1.3 b 1.9±0.3 ab 2.1 a 7.0±4.2 a 259.0±58.0 a 21.7±2.3 b 7.0±0.9 b 1.8±0.1 ab 0.3 b 0.0±0.0 b 300.3±42.0 a ホスチアゼート粒剤 28.6±5.0 a 7.9±0.6 b 1.7±1.2 b 0.0 b 0.0±0.0 b 260.3±13.8 a 無処理Ⅰ 6) 無処理Ⅱ 1)サツマイモネコブセンチュウ2期幼虫をポット当たり1,000頭/10 ml接種し45日間栽培を行った 2)平均値±標準偏差.土壌種別の縦列の異なるアルファベットは有意差を示す(Tukeyの多重比較検定,P <0.05) 3)ワグネルポット(1/5,000 a )当たり0.3 g(15 kg/10 a) 国頭マージ:強酸性、国頭礫層(母岩) 4)抽出液無処理および線虫無接種区 島尻マージ:弱アルカリ性、琉球石灰岩(母岩) 5)抽出液無処理および線虫接種区 6)初期侵入過多による枯死 ジャーガル:アルカリ性、泥炭岩(母岩) 性質の異なる3種土壌においても高い線虫被害の抑制効果が認められた 表.主要作物の生育に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出液の影響 1) 草丈 (cm) 地上部重 (g) 根長 (cm) 根重 (g) 処理区 ツルレイシ(ニガウリ) 3) 3.0±0.6 a 31.0±4.8 a 4.0±0.2 a 0.1 (6) 2) 41.0±9.7 a 0.05 (12) 35.0±4.7 a 4.0±0.8 a 29.0±4.7 a 4.0±1.1 a 0.05 (30) 34.0±2.8 a 4.0±0.3 ab 35.0±1.3 a 4.0±0.6 a 4) 42.0±4.0 a 5.0±0.5 a 31.0±2.5 a 3.0±0.4 a 対照区 キュウリ 0.1 (6) 13.0±1.5 a 2.0±0.5 ab 27.0±11.4 a 1.2±0.3 a 0.1 (12) 15.0±3.2 a 2.9±0.9 a 22.0±7.2 a 1.4±0.3 a 0.05 (12) 14.0±1.7 a 2.7±0.5 ab 22.0±8.4 a 0.9±0.3 a 1 1.0±0.1 b 24.0±7.5 a 0.2±0.1 a 0.05 (30) 8.0±1.4 b 11.0±1.6 a 2.0±0.4 ab 24.0±2.5 a 0.8±0.1 a 対照区 ナス 0.1 (6) 6.9±1.3 ab 0.8±0.2 a 25.6±8.5 ab 0.4±0.1 a 1 0.5±0.1 a 32.3±11.1 a 0.5±0.1 a 0.1 (12) 5.8±0.8 b 0.05 (12) 5.5±1.9 b 0.6±0.2 a 20.1±8.5 ab 0.4±0.3 a 0.05 (30) 7.5±0.8 a 0.9±0.2 a 15.8±6.9 b 0.3±0.1 a 5.6±1.6 b 0.6±0.2 a 16.8±5.5 b 0.2±0.0 a 対照区 インゲンマメ 0.1 (6) 28.0±3.3 a 4.6±1.9 a 40.6±2.2 a 4.4±1.3 a 0.1 (12) 30.9±2.8 a 8.3±2.1 a 42.4±4.8 a 8.1±1.2 a 0.05 (12) 26.5±7.7 a 5.8±2.5 a 40.0±9.0 a 5.4±2.8 a 0.05 (30) 23.1±2.3 b 3.3±1.7 b 40.3±5.4 a 3.7±2.4 a 対照区 27.4±5.9 a 5.3±1.5 a 43.5±1.9 a 6.3±1.7 a 1) 抽出液はトマト定植2日後に連続して行った.栽培は35日間行った. 2) 希釈倍率(灌注回数). 3) 平均値±標準偏差.各処理区の濃度間における異なるアルファベット有意差を示す(Tukey’s HSD multiple comparison test, p < 0.05). 4) 滅菌蒸留水. 表 土壌微生物数に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸 表 土壌微生物数に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出液 抽出液の影響 の影響 微生物数(cfu/g) 処理区 細菌 糸状菌 ×10⁶ ×10³ 国頭マージ 3.6 a 原液 3.1 a1) 2.3 a 1.0 b 10倍希釈液 2) 1.8 a 0.9 bc ホスチアゼート粒剤 1.4 b 0.3 c 無処理3) 島尻マージ 1.7 a 3.2 a 原液 0.7 ab 3.0 a 10倍希釈液 0.8 ab 3.2 a ホスチアゼート粒剤 0.3 b 2.6 a 無処理 ジャーガル 9.5 a 4.5 a 原液 6.1 a 6.4 a 10倍希釈液 6.9 a 7.4 a ホスチアゼート粒剤 3.0 b 5.4 a 無処理 1)平均.土壌種別の縦列の異なるアルファベットは有意差 を示す(Tukeyの多重比較検定,P <0.05).統計処理はlog 変換後に行った 2)ワグネルポット(1/5,000 a )当たり0.3 g(15 kg/10 a) 3)無処理区Ⅱ(抽出液無処理,線虫接種) 表糸状菌相に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出液の影響 糸状菌相に及ぼすアワユキセンダングサ煮沸抽出液の影響 表 国頭マージ 島尻マージ 属名 1) 10倍 ホスチ 無 原 10倍 ホスチ 無 原 原 ジャーガル 10倍 ホスチ 無 2) Aspergillus - a - a - a 64.0 a 64.0 a 56.0 a 44.0 a 38.0 a 36.0 a 34.0 a 48.0 a - a Chaetomium - a 2.0 a 4.0 a 4.0 a - a - a - a - a - a - a - a - a Cladosporium 2.0 a -a -a 2.0 a - a - a - a - a 2.0 a - a - a - a Coelomycetes fungus - a -a -a 4.0 a 4.0 a 4.0 a - a 12.0 a - a - a - a 2.0 a Cunninghamella - a -a -a -a - a - a - a - a 2.0 b - b 10.0 a - b Fusarium - a -a -a -a 2.0 a - a 4.0 a 2.0 a 4.0 a - a - a - a Gongronella 8.0 a 4.0 a 4.0 a -a - a - a - a - a - a - a - a - a Hansfordia - a -a -a -a - a - a - a 2.0 a - a - a - a - a Humicola - a -a -a -a 2.0 a - a - a 4.0 a 2.0 a 2.0 a - a - a Mastigomycotina fungus - a 2.0 a -a -a - a - a - a - a - a - a - a - a Mucor 14.0 a -a -a -a - a - a - a - a - a - a - a - a Paecilomyces 14.0 b 10.0 ab 20.0 a 4.0 b - a - a - a - a - a - a - a - a Penicillium 56.0 a 50.0 a 58.0 a 56.0 a 4.0 a 8.0 a 4.0 a 10.0 a 20.0 a 24.0 a 28.0 a 18.0 a Phialophora - a 6.0 a -a -a 2.0 b 14.0 a 12.0 a 12.0 a 22.0 a 30.0 a 28.0 a 24.0 a Staphylotrichum - a -a 2.0 a -a 2.0 a - a - a - a - a - a - a - a Trichoderma 6.0 b 26.0 ab 12.0 ab 28.0 a 16.0 a 6.0 a 12.0 a 10.0 a - a - a - a 2.0 a Unknow - a -a - a 4.0 a 4.0 a 4.0 a 12.0 a 4.0 a 10.0 a 8.0 a - a 6.0 a 1)処理区.原:原液,10倍:10倍希釈液,ホスチ:ホスチアゼート粒剤{1/5,000 a ワグネルポット当たり0.3 g(15 kg/10 a)}, 無:無処理区Ⅱ(抽出液無処理,線虫接種) 2 2)50菌株中の割合(%).-:0.0%.各土壌の処理間における異なるアルファベットは有意差を示す(χ 検定,P < 0.05) ①土壌微生物に対する影響は極めて小さい ②栽培作物(ウリ科、ナス科およびマメ科)に対しても生育阻害や発芽阻害効果は認め られない. 圃場試験の様子 害虫(ハスモンヨトウ、アブラムシなど)に対する忌避作用 対照区(滅菌水) 処理区(植物 抽出液浸漬) 強制食害試験方法 1a,b:植物葉片 2a,b:ガラス製バイヤル 3:プラスチック容器 3a:通気口付き蓋 4:害虫 投入直後 24H後 表.農業害虫に及ぼすアワユキセンダングサ抽出液の影響 害虫名 効果の種類 ハスモンヨトウ(幼虫) 忌避 モンシロチョウ(幼虫) 忌避 ワタアブラムシ 忌避および殺虫 モモアカアブラムシ 忌避および殺虫 新技術の特徴・従来技術との比較 • 植物成分が害虫に対して殺虫または忌避効果 を発揮する • 有害線虫のみに選択的に作用する • 有益線虫には無害である • 作物や土壌微生物に対して影響が小さい • 作物の種類によっては生育促進効果が認めら れる • 化学合成農薬のみに依存しない害虫駆除方法 を確立できる可能性が高い • 激発圃場では農薬と併用することで農薬使用量 を低減できると考えられる 想定される用途 • • • • • 農業害虫の駆除剤 農業害虫の忌避剤 衛生害虫の忌避剤 有害線虫駆除効果を有する土壌改良材 植物生育促進剤 想定される業界 • 利用者・対象 農薬製造メーカー 殺虫剤メーカー 土壌改良材、肥料関連企業など 実用化に向けた課題 • 活性成分の特定および効果的組み 合わせについて検討が必要 • その他、多くの農業害虫、衛生害虫 に対する活性試験 • 実用化に向けた、さまざまな作物に おける実証試験 企業への期待 • 様々な有害生物に対する活性検定 • 製剤化技術を持つ企業との共同研究を 希望 • また、天然由来成分を用いた殺虫剤を 開発中の企業、農業分野(農薬関連)へ の展開を考えている企業には、本技術 の導入が有効と思われる 本技術に関する知的財産権 • • • z • • • z • • • z 発明の名称① 出願番号 出願人 発明者 :ネコブセンチュウ防除剤および防除方法 :特許出願2006-308331 :国立大学法人 琉球大学 :田場 聡、諸見里 善一 発明の名称② 出願番号 出願人 発明者 :ネグサレセンチュウ又はシストセンチュウの防除剤 :特願2009-222112 :パネフリ工業株式会社、国立大学法人 琉球大学 :永松ゆきこ、高良綾乃、田場 聡、諸見里善一 発明の名称③ :キク科センダングサ属植物を用いた害虫防除剤および害虫 防除方法 出願番号 :特願2009-057064 出願人 :パネフリ工業株式会社 藤田裕一、国立大学法人琉球大学 岩政輝男 発明者 :永松ゆきこ、高良綾乃、田場 聡 産学連携の経歴 • 2007年: JST地域イノベーション創出総合支援事業 重点地 域研究開発推進プログラム シーズ発掘試験に採択 研究課題名: 「未利用植物資源を活用した根こぶ線 虫病の防除に関する研究」 • 2007∼ 2008年: JST地域イノベーション創出総合支援事業 重点地 域研究開発推進プログラム シーズ顕在化ステージ に採択 研究課題名:「沖縄産未利用植物を活用したネコブ センチュウ防除剤の開発」 パネフリ工業株式会社(科学技術研究所)との共同 研究 • 2009年 特許①の特許使用許諾契約(2企業) 植物寄生性線虫に対する防除剤の開発を推進中 お問い合わせ先 国立大学法人琉球大学 産学官連携推進機構 研究開発推進部門長 近藤 義和 TEL :098−895−8598 FAX :098−895−8957 E-mail :kondoyos@lab.u-ryukyu.ac.jp 産学官連携推進機構 客員准教授 文部科学省産学官連携 コーディネーター 宮里 大八 TEL :098−895−8599 FAX :098−895−8957 E-mail :daiya@lab.u-ryukyu.ac.jp
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