108 当会会員● 村田 「 人 工 知 能(AI=Artificial Intelligence) が 弁 護 士 に 取 って代わるのではないか」 、 このような話を目にされたり 耳にされたりしたことのある 和希(67期) ●Kazuki Murata 『人工知能は 人間を超えるか ― ディープラーニング の先にあるもの ― 』 能研究の歴史における大きな ブレークスルーとして位置づ けています。今までの人工知 能研究においては、人間がコ ンピュータに注目すべき特徴 先生はかなり多くいらっしゃ を教えて学習させていた(例 るのではないでしょうか。私 えば、「こういう特徴を持っ も、大先輩の先生から「いつ たものがネコである」と人間 か契約書のレビューなんかは が教えていた)ので、学習の AIのディープラーニングでで 精度は結局人間が選択する特 きるようになってしまうだろ 徴の適切さに依存しており、 う。君らの時代は大変だね」 そこに限界がありました。し などとことあるごとに言われ かし、ディープラーニングに よってコンピュータが大量の ており、戦々恐々としていま した。しかし、「敵を知れば …」ではないですが、何も知 松尾 豊 著 中経出版 1,512円 (税込) らないものに怯えていても仕 データをもとに注目すべき特 徴を自ら見つけ出し概念を獲 得する(例えば、コンピュー 方がないので、何かAIに関す の実力・状況・可能性を正し タが様々な画像を見て「こう る本を読んでみることにしま く理解してもらうことが本書 いう特徴を持ったものが『人 した。そうして手に取ること の目的であるとのことです。 間がネコと考えているもの』 になったのが、日本における 本書は、そもそも人工知能 である」という概念を自ら作 人工知能研究の第一人者によ とは何なのかという議論から り出す)ことができるように る本書です。 始まり、過去のブームにおい なったことで人工知能が飛躍 著者によれば、人工知能は てどのような研究がされてい 的に発展する突破口が開かれ 1956年 か ら60年 代 に 第1次 ブ たのかが語られ、そして、今 たのです。 ー ム、1980年 代 に 第2次 ブ ー までの人工知能研究が超えら 今後、弁護士の業務が進化 ム が あ り、 い ず れ の ブ ー ム れなかった壁がディープラー した人工知能によって本当に も、当初人々が期待していた ニングの技術によってどう変 取って代わられてしまうの ほど技術が発展せず失望のう わっていき、人工知能の進歩 か。仮に一部の業務は取って ちに終わってしまったという によって今後人間社会はどう 代わられるとして、人間の弁 ことを踏まえ、三度目にめぐ なっていくのかについての著 護士にしかできない業務は何 ってきた現在の人工知能ブー 者の見通しが示されています。 なのか。そのようなことを考 ムにあたり、以前のブームの 本書のサブタイトルからも えるきっかけとして、本書を ような実力を超えた期待をさ うかがえるように、著者は、 一読してみてはいかがでしょ れないよう、人工知能の現在 ディープラーニングを人工知 うか。 NIBEN Frontier●2016年8・9月合併号 D12535_56-59.indd 57 57 16/07/07 14:33
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