『人工知能は 人間を超えるか 』

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当会会員● 村田
「 人 工 知 能(AI=Artificial
Intelligence) が 弁 護 士 に 取
って代わるのではないか」
、
このような話を目にされたり
耳にされたりしたことのある
和希(67期) ●Kazuki Murata
『人工知能は
人間を超えるか
― ディープラーニング
の先にあるもの ― 』
能研究の歴史における大きな
ブレークスルーとして位置づ
けています。今までの人工知
能研究においては、人間がコ
ンピュータに注目すべき特徴
先生はかなり多くいらっしゃ
を教えて学習させていた(例
るのではないでしょうか。私
えば、「こういう特徴を持っ
も、大先輩の先生から「いつ
たものがネコである」と人間
か契約書のレビューなんかは
が教えていた)ので、学習の
AIのディープラーニングでで
精度は結局人間が選択する特
きるようになってしまうだろ
徴の適切さに依存しており、
う。君らの時代は大変だね」
そこに限界がありました。し
などとことあるごとに言われ
かし、ディープラーニングに
よってコンピュータが大量の
ており、戦々恐々としていま
した。しかし、「敵を知れば
…」ではないですが、何も知
松尾 豊 著
中経出版
1,512円
(税込)
らないものに怯えていても仕
データをもとに注目すべき特
徴を自ら見つけ出し概念を獲
得する(例えば、コンピュー
方がないので、何かAIに関す
の実力・状況・可能性を正し
タが様々な画像を見て「こう
る本を読んでみることにしま
く理解してもらうことが本書
いう特徴を持ったものが『人
した。そうして手に取ること
の目的であるとのことです。
間がネコと考えているもの』
になったのが、日本における
本書は、そもそも人工知能
である」という概念を自ら作
人工知能研究の第一人者によ
とは何なのかという議論から
り出す)ことができるように
る本書です。
始まり、過去のブームにおい
なったことで人工知能が飛躍
著者によれば、人工知能は
てどのような研究がされてい
的に発展する突破口が開かれ
1956年 か ら60年 代 に 第1次 ブ
たのかが語られ、そして、今
たのです。
ー ム、1980年 代 に 第2次 ブ ー
までの人工知能研究が超えら
今後、弁護士の業務が進化
ム が あ り、 い ず れ の ブ ー ム
れなかった壁がディープラー
した人工知能によって本当に
も、当初人々が期待していた
ニングの技術によってどう変
取って代わられてしまうの
ほど技術が発展せず失望のう
わっていき、人工知能の進歩
か。仮に一部の業務は取って
ちに終わってしまったという
によって今後人間社会はどう
代わられるとして、人間の弁
ことを踏まえ、三度目にめぐ
なっていくのかについての著
護士にしかできない業務は何
ってきた現在の人工知能ブー
者の見通しが示されています。
なのか。そのようなことを考
ムにあたり、以前のブームの
本書のサブタイトルからも
えるきっかけとして、本書を
ような実力を超えた期待をさ
うかがえるように、著者は、
一読してみてはいかがでしょ
れないよう、人工知能の現在
ディープラーニングを人工知
うか。
NIBEN Frontier●2016年8・9月合併号
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