平成 27 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究Ⅰ

平成 27 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究Ⅰ
論文題目
Benzyne の炭素置換基導入法に関する調査と新規反応
の提案について
Invesigation of the introduction methods of carbon nucleophiles
into benzynes and suggestion of the novel method of it
薬化学研究室 4 年
11P158
吉井 美穂
(指導教員:田代 卓哉)
要旨
ベンゼンに炭素置換基を導入するには、Friedel-Crafts 反応や、Grignard 試薬への変換を
経た置換反応など、ベンゼンを求核剤として用い、求電子剤を反応相手とする方法が一般
的である。一方、ベンゼンを求電子剤として用い、求核剤を反応相手とする方法の一つに
ベンザインを用いる方法がある。ベンザインとは C6H4 分子式で表される反応性が高い中間
体である。本論文では、ベンザインに対してどのような炭素置換基導入方法が報告されて
いるのか調査した。
ベンザインに炭素置換基を導入する方法は、炭素求核剤を用いる反応と π 電子系を有する
化合物を用いる環化付加反応の 2 種類に大別される。炭素求核剤を用いる反応では、ベン
ザインに対してビニル Grignard 試薬が付加する反応と、n-ブチルリチウムが付加する反
応、ベンザインに対しエトキシエノラートが付加する反応の3例のみが報告されている。
一方、π 電子系を有する化合物とベンザインとの環化付加反応による炭素置換基導入法につ
いては、フラン等の共役ジエンとの[4+2]環化付加反応、オレフィンとの[2 +2]環化付加反
応などが報告されている。ベンザインと求核剤との反応による炭素置換ベンゼン誘導体の
合成に関する報告が少ないことに興味を覚えたため、新規反応を提案する。即ち、ベンザ
インと iso-BuLi との反応を検討する。ベンザインに3当量の iso-BuLi と1当量の tert-ブ
チルプロピオン酸エステルのエノラートとを連続的に反応させることで、イブプロフェン
のより簡易的な合成方法につながるのではないかと考えた。ベンザインと炭素求核剤との
反応の適用範囲を広げ、医薬品を効率的に合成できるものと考える。
キーワード
1.aryne
2.benzyne
3.Diels-Alder 反応
4.[4+2]環化反応
5.[2+2]環化反応
6.求核付加反応
7.ビラジカル
8.Grignard 試薬
9.アルキルリチウム
10.ベンゾシクロブタン
11.炭素求核剤
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<補足(ベンザインとの[2+2]型環化付加反応について)>
この反応は、ベンザインの LUMO とオレフィンの HOMO が相互作用して起こる協
奏的反応であり、そのエネルギー準位差が小さいほど反応が進行しやすい。オレフィン
に電子供与性官能基が付加した場合、HOMO のエネルギー順位が上昇する。一方、オ
レフィンに電子求引性官能基が付加した場合、HOMO のエネルギー順位は低下する[9]。
このことから、2頁「[Benzyne の環化付加反応について]②Benzyne の[2+2]型環化付
加反応について」の項において、オレフィンに電子供与性官能基が付加した場合は高い
収率を示し、電子求引性官能基が付加した場合は低い収率を示したものと考えられる。
引用文献
[9] I.フレミング, フロンティア軌道法入門-有機化学への応用, 福井 謙一 監修, 竹内
敬人, 友田 修司 訳, 講談社サイエンティフィック, 東京都新宿区新小川町 9-25 日商
ビル, 1978, pp.145-146
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4.謝辞
はじめに、本論文を作成するにあたり日ごろから熱心かつ丁寧にご指導頂きました薬
化学研究室の杉原 多公通 教授に、心より感謝申し上げます。また、薬化学研究室の本
澤 忍 准教授に感謝申し上げます。薬化研究室の田代 卓哉 助教からも熱心にご指導
頂き、感謝いたします。また、薬品製造学研究室の北川
幸己 教授に感謝致します。
薬化学研究室の皆様からも、日常から多くの知識や示唆を頂きました。ここに感謝の意
を示します。
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