光で物体形状計測 ~ナノからメートルまでを1台で~ 金沢大学 理工研究域 電子情報学系 教授 飯山 宏一 1 本発明について • 内容 – 電磁波による測距装置 – FMCW 法を利用 • 特徴・新規ポイント – 受信器アレイを用いる • 測定対象までの距離分布を一度に測定する ⇒ 高速な物体形状計測への応用 – 受信器アレイの各素子の信号間の位相差を測定 • 波長以下の形状測定が可能 ⇒ レーザ光を使えば,nm 領域での測定 2 研究背景 電磁波を用いた距離計測技術の開発・発展 ■特徴 ・非接触測定・遠隔測定 ・耐電磁無誘導 ・高感度 ・高精度 ■応用例 ・自動車レーダー ・物体形状測定 3 応用例(自動車レーダー) パルス法 ・短パルスを照射 ・パルスが戻ってくる時間を測定 ・精度や分解能はパルス幅に依存 ・短パルスは受信が困難 FMCW 法 ・周波数チャープ波を照射 ・反射波と送信波のビートを測定 ・ビート周波数は距離に比例 ・精度や分解能はパルス法より高い ・周波数解析が必要 4 FMCW 法 振幅 送信波の波形 時間 t: 反射波の遅れ時間 fB: ビート周波数 DF:周波数変化幅 周波数 送信波 fB t 反射波 DF ビート周波数: 距離分解能: 時間 5 FMCW 測距システム 鏡 参照光 BS 光周波数掃引 レーザ光源 測定対象 信号光 FFT 解析 ビートスペクトル fB t DF 振幅 光周波数 光検出器 1 / fm 時間 fB 周波数 6 FMCW 法の応用 • 従来の適用範囲:1点の距離測定 • 新たな応用:距離分布の測定 – レーザ光を空間的にスキャンする – 距離分布を測定する – 物体形状を計測する 参照光 光周波数掃引 レーザ光源 光検出器 鏡 BS ビーム スキャナ FFT 解析 測定対象 7 物体形状計測の問題点・解決法 • 問題点:レーザ光スキャンにより測定時間が長い • 解決法:距離分布を一度に測定する 鏡 光周波数掃引 レーザ光源 光検出器 アレイ 参照光 信号光 測定対象 ビート周波数 – レーザ光を大口径化し,測定範囲一面に照射する – 多チャンネル(アレイ構造)の光検出器で受光する – 各素子のビート周波数を測定して物体形状を測定する FFT 解析 光検出器アレイの素子番号 8 測定例(3 mm 段差) Ch0 Ch1 Ch2 Ch3 Ch4 測定サンプル(段差 3 mm) Ch5 Ch6 20 mm Ch7 Ch8 Ch9 ・ ・ ・ ・ Ch10 Ch11 Ch12 80 mm Ch13 16 素子 光検出器アレイ Ch14 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 測定対象までの距離 ( cm ) 5 Ch15 9 測定例(3 mm 段差) Ch0 Ch1 光周波数掃引幅:150 GHz Ch2 Ch3 Ch5 Ch6 Ch7 Ch8 Ch9 Ch10 Ch11 Ch12 測定された距離 ( cm ) Ch4 3.40 3.35 3.30 3.25 3.20 3.15 3.10 3.05 3.00 0 2 4 6 8 10 12 14 16 光検出器アレイの素子番号 Ch13 Ch14 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 測定対象までの距離 ( cm ) 5 Ch15 10 測定例(1 mm 段差) Ch0 Ch1 光周波数掃引幅:500 GHz Ch2 Ch3 3.02 Ch5 Ch6 Ch7 Ch8 Ch9 Ch10 Ch11 Ch12 Ch13 測定された距離 ( cm ) Ch4 3.00 2.98 2.96 2.94 2.92 2.90 0 2 4 6 8 10 12 14 16 光検出器アレイの素子番号 Ch14 Ch15 2.4 2.6 2.8 3 3.2 測定対象までの距離 ( cm ) 3.4 11 干渉信号の位相差を用いた測定 • 光検出器アレイを用いた距離測定の特徴 – 高速測定が可能(一度に距離分布を測定) – 形状測定精度は 500 mm 程度 • 改良すべき点 – 形状測定精度の向上 ⇒ 空間分解能によるビート周波数測定の限界 • 解決法 – ビート周波数を利用しない測定方法 ⇒ 光検出器アレイの各素子の信号間の位相差を利用 12 位相差測定法 鏡 測定対象 光周波数掃引 レーザ光源 光検出器アレイ 同位相 鏡 測定対象 光周波数掃引 レーザ光源 平行 光検出器アレイ 傾き 位相ずれ 13 位相差測定法 鏡 測定対象 光周波数掃引 レーザ光源 光検出器アレイ 傾き 測定対象の傾き 空間的に距離差が発生 位相差の発生 位相ずれ 微小距離差を測定 位相差 360° ⇒ 距離差 l/2 に対応 (l:レーザ光の波長) 14 位相差測定法 500 Ch0 Ch2 Ch3 Ch4 位相差 ( ° ) Ch1 400 300 29°/ch 200 100 Ch5 Ch6 Ch7 Ch8 Ch9 Ch10 0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 光検出器アレイの素子番号 全位相変化 434° Ch11 Ch12 Ch13 傾きによる距離差 790 nm Ch14 (l = 1310 nm) Ch15 15 まとめ • 光検出器アレイを用いた FMCW 方式の測距装置 を開発した。 • 各素子の受光信号のビート周波数測定より,物体 形状計測を実現した。 – 500 mm 程度の形状測定精度を達成 • 各素子の受光信号間の位相差測定により,物体形 状を波長精度で測定する方法を実現した。 – レーザ光を用いることにより,1 mm 以下の測定精度 を達成 16 その他の特徴 • 1 つのシステムで 3 つの測定モードを持つ。 – 1 個の光検出器を用いる測定モード (光検出器アレイ全体の平均値を測定するモード) • リモート計測に最適(1 m 以上) • ビームスキャンによる大型建造物・構造物の形状計測 – 光検出器アレイの各素子のビート周波数をそれぞれ 測定するモード • 比較的短距離(100 mm ~ 1 m) • 部品の形状計測 – 光検出器アレイの各素子間の位相差を測定するモード • 高精度測定(nm の精度) • 精密部品の表面精度の計測 17 想定される用途 • 工業製品などの組み立て検査 – 正しく実装されているか,の検査 – ビート周波数測定法が利用可能 • 精密部品・デバイスの表面精度 – 十分な平坦度が得られているか,の検査 – 位相差測定法が利用可能 • 長い測定距離に着目すると,大型構造物の遠隔で の検査にも利用可能と思われる。 18 実用化に向けた課題 • 高精度の形状測定に関して – 現在は傾けた鏡で実験している – ナノメートルの段差サンプルでの実証実験が必要 • 測定範囲の連続性について – ビート周波数測定での最小精度は,数 100 mm – 位相差測定での測定範囲は,1 mm 程度 – 両者の隙間を埋めるための改良が必要 • 2 次元光検出器アレイを用いて,3 次元物体形状 計測への適用も検討課題 19 企業への期待 • 未解決の「測定範囲の連続性」については,波長 可変幅の大きなレーザ光源を用いることにより, 克服できると考えている。 – 距離分解能の向上 ⇒ 測定精度の向上 – 連続波長可変レーザ光源の共同開発・貸与を期待 • 高速信号処理技術(FPGA, DSP, 並列演算など) を持つ企業との共同研究を希望。 – アレイ化が進めば,データ数は膨大になる • 測距装置・物体形状計測装置を開発している企業 と協力して,開発を進めたい。 20 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :測距装置、及び測距方法 • 出願番号 :特願2016-048959 • 出願人 :金沢大学 • 発明者 :飯山 宏一,五十嵐 彬宏 21 お問い合わせ先 有限会社 金沢大学ティ・エル・オー ライセンシング・アソシエイト 山田 光俊 TEL: 076-264-6114 FAX: 076-234-4018 E-mail: [email protected] 22
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