水素ガス・酸素ガスで色と蛍光を 制御する分子技術の開発 熊本大学 大学院先端科学研究部 基礎科学部門 化学分野 准教授 石川 勇人 1 背景:多環芳香族化合物 有機材料 ・柔軟性に富み、軽量であり、低毒性 ・骨格変換、置換基導入などにより多様な分子を合成可能 多環芳香族化合物 化学的安定性 広いπ共役系 →優れた光学特性(可視、蛍光特性)、半導体特性 化学安定性 応用例:色素レーザー、有機電界発光素(有機EL)素 子、有機太陽電池、有機電界効果トランジスタ(FET)、 2 多環芳香族化合物スイッチング技術 ピセン ペンタフェン オン 2 置換基の導入 オフ 共役系の伸縮をコントロールできれば、 スイッチのオンーオフをコントロールすることが可能となる 。 3 オルトキノン構造によるスイッチング技術 ・簡便なスイッチング方法 ・試薬が残存しないクリーンな条件 ・明瞭な変化が観測される系 ・ピンセットなどで容易に取り出し可能 ・繰り返し使用可能 ・原料や生成物を吸着しない 還元触媒 Sulfur Modified Au Supported Pd catalyst (SAPd) 4 コンピューター計算による物性予測 色や蛍光は計算化学で予測できる。分子設計が自在に。 予測UV-Vis 予測最大蛍光波長 黄色 413 nm 反芳香族性 NICS(0) value = +13.2 ppm NICS(10) value = +5.5 ppm 無色 718.8 nm f = 0.002 蛍光強度が低い; 無蛍光 464.3 nm f = 0.117 青色蛍光 芳香族性 NICS(0) value = –10.0 ppm NICS(10) value = –9.6 ppm 計算ソフト: Gaussian09, TD-DFT (B3PW91) 5 化学合成法の開発 O O H Tf2O DMAP OH H PdCl 2(PPh 3) 2 Pin 2B 2, K 2CO3 OTf dioxane, H 2O 92% CH 2Cl 2 76% HO O H H N Br S (20 mol%) DBU HO OH DMF rt, 1.5 h quant. O O O air 市販品から3段階、高収率、基質適応性も広い。 6 ガスによるレドックススイッチング O O H 2 bubbling, SAPd CHCl 3, 23 °C quant. HO OH O2 bubbling, SAPd CHCl 3, 23 °C quant. 可視光条件下 紫外光(365nm) 照射条件下 (ブラックライト) 7 ガスによるレドックススイッチング 8 ガスによるレドックススイッチング 9 ペンタフェン-6,7-ジオン N HO O O S DBU Br O O DMF 73% ペンタフェン-6,7-ジオン 低分子量で赤色固体蛍光を実現 10 ガスによるレドックススイッチング2 O O H 2 bubbling, SAPd HO OH O2 bubbling, SAPd 23 °C, CHCl 3, quantitative conversion 可視光条件下 紫外光(365nm) 照射条件下 (ブラックライト) 11 従来技術との比較 多環芳香族化合物の有機材料としてのスイッチング 光、熱によるスイッチングは既知 例: 大きな構造変化を伴わず、ガスのエネルギーを使った π共役系のスイッチング技術は世界初! 12 新技術の特徴 • 分子の構造を大きく変えることなく、多環芳香族 化合物の共役系を変えられる。 • クリーンなガスエネルギー(水素、酸素)により 光学特性の大きな変化を生み出せる。 • 副生してくる物質は水だけ。 • 繰り返し、スイッチングができる。 • オルトキノンを芳香環に導入することで、酸化ー 還元によるスイッチ機能を自在に作製可能。 13 想定される用途 • 水素ガス、酸素ガスのセンサー; ※例えば、食品の腐食は酸素に依存するので、封を切らずに 酸素に暴露されているかがわかる。 • 発光特性を利用した有機EL • 固体状態でスイッチングできれば有機半導体へ応用可能 → トランジスタ、有機EL・太陽電池の電荷輸送層に組み込めば レドックスによる有機薄膜素子の特性制御が可能に(新概念) • 酸素/水素に限らず、酸化能、還元能を持つ分子を検出可能 ※例:硫黄ガス、ビタミンCなど。 14 実用化に向けた課題 • 固体状態での酸化ー還元は、まだ達成されてい ない。Pdや金の基盤の上に蒸着し、ガスでス イッチングを目指す。 • 実用化に向けて、ガスの検出能力を定量化する。 • 電導性および半導体特性評価を行い、実用化 を目指す。 • 電気化学的酸化還元の適用 15 企業への期待 • 有機光学材料や有機電子材料のスイッチング が産業として何に使えるのかを提示。 • 酸素、水素、硫黄などの酸化ー還元能を持つ ガスの検出技術の社会への応用について提 示。 16 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :レドックススイッチング材料、並びに、 当該レドックススイッチング材料を利 用したデバイスおよび当該デバイスの 運転方法 • 出願番号 :特願2016-139608 • 出願人 :国立大学法人熊本大学、 国立大学法人山口大学 • 発明者 :石川勇人、松田真生、 隅本倫徳 17 お問い合わせ先 熊本大学 社会連携課・研究コーディネーター 松浦 佳子 TEL 096-342 - 3145 FAX 096-342 - 3239 e-mail y-matsuura@jimu.kumamoto-u.ac.jp 熊本大学 社会連携課・研究コーディネーター 和田 翼 TEL 096-342 - 3247 FAX 096-342 - 3239 e-mail t-wada@jimu.kumamoto-u.ac.jp 18
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